ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
遅れるみたいなこと言って遅れませんでした。
それはさておき、ゲートのセカンドシーズンで仮にミリッタの使徒が出て来て
エロフじゃなくても怒らないで下さい。絶対にエロフじゃないんで。

そして栗林ヒロインの投稿が増えて嬉しい限り。何を隠そう、庵パンめも栗派です。
当小説の栗林は(漫画版で)三発でゾルザルを半殺しにした栗林を80%強化したゴリ林であります。
いや、原作の栗林も本気出したら何処まで強いか解りませんが……。


第四話 ケモナー冥利

陽が西に傾いたアルヌスの丘の中腹。

倉田や出蔵、その他大勢の自衛官とジゼルが見てる前で新兵器らしいパイプの口を空に向ける。

放たれた光弾は空中で爆発し、空に大きな火花を咲かせてアルヌスに轟音を轟かせた。

「おぉ、凄っげ。リアルガンダルフだ」

某指輪物語の登場人物を引き合いにして倉田が火威を賞賛する。

「いや待て、灰色のガンダルフは発射機なんて使ってないだろ」

日本語で話してたのが災いとなったのか、それを聞いていたジゼルが言う。

「ハゲ色のがーだるふ?」

「…………猊下、そういうイジメは堪忍してつかぁさい」

ジゼルは神殿の向かえに火威の忍者屋敷が建ち、火威本人が官舎から引越して来てから、火威に対するアプローチの方法を変わって来ていた。今のように気軽に話し掛けれたのは、日本語の意味が解らなかったからだ。

火威が懸想している相手の事も火威を逐一見ていれば判るし、その相手の武勇伝や剣技大会での戦いぶりを見ても、その資格があると納得せざるを得ない……と、思ってしまうのは彼女の之までの人生で「強さ」というものが、濁流の如く人々を翻弄してきたからだ。

そして火威もその女も、ちょっとした濁流には流されない強さを持っている。そればかりか逆流しかねない。

そんな火威と閨を共にする妄想は、食堂での仕事のちょっとした所作が切っ掛けだった。

一瞬悦に浸れたジゼルだが、改めて考えて見ると非常に気拙い。だが淫靡な妄想の誘惑は魔薬のようにジゼルの心にちょくちょく顔を出して、完全に消え去ってくれない。

そんな妄想の直後に、知り合いに会うと言いようの無い気拙さが漂うし、ロゥリィや火威本人に会うと逃げ出してしまいたくなる。

以前、出蔵が言ってた言葉をアテにすれば、もし火威が懸想してる相手と結ばれても、ニホンでは火威の身分だと難しいがファルマートでは事実婚出来るらしい。

だが問題は相手の女が事実婚を認めるかどうかだし、火威という男も義理堅かったり堅物なところがある。

火威と逢瀬……などと本気で考えている訳ではないが、もし出来るとしても完全に独り身の今くらいだろう。

「つーか、コレ花火用に作ったんじゃないんだけどさ」

「えー……んじゃ何用ですよ?」

当然の疑問なのだが、火威的には細かいことに食いつく出蔵に、火威は少しばかり躊躇った。まさか以前夢に見た対モビルスーツ用とは言えない。

「あ、これね、対巨大ゴーレム用。カトー先生が若い頃にロンデルに出現して大変だったんだって。あと対古代龍にも使える」

「花火でドラゴン倒すんスか?」

聞いてきたのは倉田だ。倉田達が囲む筒状の代物は、日本の工事現場に行けば見れそうなパイプで一見するととても武器には見えない。

このパイプは、帝国領の鍛冶屋で真金代わりにした石の柱に細かい鉄を貼り付け、何度も鍛えて拵えた代物である。

作業したのは火威一人だから情報漏洩の心配も無く、魔導を大いに利用して作った一品である。ちなみに細く細かい金属の存在は、内戦の最後にテルタに行くヘリ部隊にゾルザル派帝国軍の翼竜部隊が使用した鉄製の網があるから、その程度の鍛鉄能力がこの世界にあることは明らかになっている。

「だから花火じゃねぇって。74式と同じ105mm弾を装填出来る口径あるだろ? 実戦で使う時はアレくらいの大きさの弾を使うんだよ」

「ちょっ、どうやって撃つんすか?」

出蔵が聞くと、火威は事も無げに答えた。

「とある精霊魔魔学の超電磁砲(レールガン)として」

これを聞き、自衛官達は武器密造の罪にならないのかと心配になった。だが火威に言わせれば、「武器等製造法」で処罰されるのは信管用いたもので、作ったのは帝国領内で、主が暫し遠出して空ける鍛冶屋を借りたのだと言う。

そして何より、とても武器には見えないし、武器として使えるのも超電磁砲の原理を知り精霊魔法が使える火威だけである。

「本当は神鉄で出来た砲弾とかが良いんだけどねぇ……。今のところ雷球しか撃てねぇや」

「“ななよんしき”の弾使うんじゃなかったのかよ?」

聞いて来たのはジゼルだ。火威は不死身の亜神と違うので言わねばならない。

「発射する時の燃焼ガスで真っ先に俺がやられてしまいますよ」

それを聞いて出蔵も倉田も合点が行ったように頷く。超電磁砲にする発射機はただの筒でしかないのだ。

「しかし火威三尉も普通の課業の他、帝都に行ったり武器(仮)作ったりロゥリィに剣術学んだり忙しいスね。息抜きしてる間が無いっしょ?」

倉田に指摘され、火威は気付く。

帝都に行くまでの時間は魔法を使うが、長時間に渡って魔法を使い続ける事など以前なら余暇を使って半ば自分の趣味としてやっていたことだ。

武器を作るのも火威自身が必要だと思ったから、日本の法律が及ばない帝都で材料を集めて兜跋のアマコアめいたオプションパーツを作ったに過ぎない。

ロゥリィに剣技を学んでるのは、お突き合いで栗林に勝つ為という動機で始めたことだ。

つまり、火威は何一つ仕事してない。

勿論、薔薇騎士団合の女性達から合コンの参加者を集める為の努力の他、ピニャから受け取るゲイ術以外の書信、例えば狭間や上級士官に届けるべき報告書を届けるのは仕事だが、一人で二つも三つも仕事をする隊員が居るのに比べたらサボってるも同然である。

「そうかなぁ。余り仕事してる気がしないんだが……」

「そりゃ先輩が体力徽章付きの冬技戦だからそう思うんじゃないすか?」

この話しを続けていると、火威の仕事してない感が露骨になりそうな気がしたので強引に話題を変える事にした。

「そだ。帝都で合コンの下準備してたらな、面白い人に会ったよ。出蔵は知らないだろうけど悪所の鴉系ハーピィーで要領の悪いハズキっていう娼婦が居たろ?」

その言葉に、倉田は帝都の悪所事務所に居た時の事を思い出した。

 

 

*  *                               *  *

 

彼、カトリ・エル・フォートが主戦派を排した帝国元老議員に列っせられたのは、弱小貴族の彼が亜人愛好家だったことが由来する。

元々亜人の女性には興味を持っていた彼だが、数年前に思い切って悪所の亜人娼婦と閨を共にした時の心地好さが彼のケモナーとしての信念を確固たるものにした。

以来、弱小貴族ながら時を見て暇を見て、身分を隠して悪所に通い詰めた。

中でもお気に入りは、彼の細腕でも抱き上げることが出来るハーピィー種だ。中でも比較的体重のある猛禽系のハーピィーや、蓮っ葉な物言いながらも閨では可愛い子猫ちゃんと化すハズキと言う黒い羽毛のハーピィーだ。

彼女の羽が朝日に透けた時に見えた高貴な紫色が、カトリには美しいと思えた。そしてカトリのケモナー嗜好は更に加速する。

だが彼も弱小とは言え、家臣も使用人も小さな荘園を持つ貴族である。ある時、ハズキに客として予約し、先に逢瀬する宿にもハズキと言う名のハーピィーが来る事を伝えておいていたのだが、思わぬ……というか、帝国貴族なら当然ともいうべき所から横槍が入った。

ハズキが待っている宿に行こうとしたところ、暫く彼の動向を見ていた古い家臣から止められて半ば強制的に荘園に留め置かれたのである。

先代からの家臣はカトリの代でも精力的にフォート家に仕え、そして的確に時節を読む。

だからカトリには彼の不興を買うよなことは出来ず、荘園に引き込んでるしかなかった。

信用出来る使用人に謝罪の手紙を持たせ、娼婦達が集まるサロンに行かせたが、ハズキは空腹で倒れていたという話しを後に聞いている。

ゾルザルが政権を掌握した時もカトリは自身の荘園内に居て、帝権擁護委員から目を付けられる事がなかったのは、帝国軍と連合諸王国軍がアルヌスでの大敗し、早々に講話派に組したフォート家には幸いした事だろう。

そしてゾルザルがテルタに遷都しようと勢力を率いて移動した時、カトリの動きは速かった。

少ない私兵を引き連れ帝都に忍び込み、以前より交遊の有った亜人の手を借りて帝都を制圧したのである。

本当は帝都に残る身内や悪所の娼婦を心配しての行動で、戦闘も皆無であったが、この事がモルトからの評価を得る事に繋がった。

そしてイタリカで正統帝国政府が立ち上がり、カトリもイタリカに喚ばれた時に自身の考えが間違いではなかった事が証明される。

「全くケモっ娘は最高だぜェ!」

そんなケモナー自衛官みたいな事を考えたかどうかは知らないが、内戦でピニャ殿下が勝利すれば亜人の地位も帝国内で格段に上がる事が予想された。

そして内戦が終わりカトリの予想通りに最近では亜人の貴族までいるし、ハズキをフォート家の使用人として雇い入れても表向きでは変な目で見られないようになった。

そのカトリは今、皇城内にいる。

彼には内戦の決勝の場となったフォルマル領で、古代龍の如き働き振りでゾルザル派帝国軍に多大な出血を強い、 ハリョの刺客部隊を全滅させたヒオドシと言う男をジエイタイから引き抜く任務をモルトから与えらるてる。

というか、カトリがそのようにモルトに示唆したのだ。

「いや、フォートさん、そりゃちょっと無理かなぁ」

ところが初っ端から勧誘は失敗した。

カトリの勧誘の文句がストレート過ぎたのだ。

「ざ、残念です……ヒオドシ卿には是非とも帝都で共に働きたかったのですが」

「まぁ、私は日本の陛下に仕えてますからねェ」

心の底で諦めず、カトリは社交辞令に載せて相手の所属欲を擽ってみたが、既に仕えてる人物がいるなら仕方ない。

火威としても多額の報奨金を貰っていながら不義理を感じるが、自身の力の影響力は理解してるし隊には好きな女が居る。

「って、準男爵って帝国では貴族なんですか?」

「いえ、ヒオドシ卿は我が国にとっても多大な功績を積んでおられますから、貴族の称号の何れかを受けて頂こうかと」

「えー、貰っても何も出ないっすよ」

短い返しの言葉は素に戻っていたが、これが火威の本音である。

「まぁ月に五万スワニのお給金と牛みたいな乳と誰もが羨む美貌の種付け用女奴隷が頂けたら考えちゃうかも知んないっすけど」

「ヒィッ……!」

カトリを怯えさせたのは牛みたいな乳と美貌の種付け用女奴隷では無い。悪所でそんな感じのミノ姉ちゃんが居たから心当たりは多いにあるのだ。

意思の強そうな瞳の彼女に子作り専門の奴隷になってくれなんて言ったら殴られそうだが、普通に知り合っていけば可能性が無い訳では無い。

問題は月に五万スワニの給金だ。実際にそれだけの給与を支払ってたら帝国の財政は直ぐに傾くし、その金で私兵などの軍備でも揃えられたら帝国と反比例して近場に強固な国家が出来上がってしまう。

「まぁ日本としても隊としても、今更ファルマートで戦国乱世ってのは御免ですからね。帝国を脅かすような事があれば呼ばれますよ」

 

 

*  *                               *  *

 

 

「っていう事が今日帝都に行ったら有ってさ」

「いやいやちょっと、合コンの参加者募集はっ?」

倉田にもアルヌスでの男性参加者を集めて貰っているので、火威がちゃんと仕事してくれないと困る。

「あ、それは大丈夫。最初は騎士団の娘さん方の警戒心を解くのに少々手間取ったけど、ピニャさんが協力してくれたよ」

「手間取ったって一体何を……」

出蔵や倉田の疑問に、火威は親指を曲げた片手にもう片手を沿え、我が日本の超技術と称して種がバレバレの人体切断マジックを披露したのである。

「げェー、ただのウザいオッサンじゃないっすか」

「せやろか」

従卒の少女には好評の一発芸だったが、女性騎士には余り受けが良くなかった。

だがピニャのゲイ術の結果と、それに対する感想を求められる内に女性騎士の火威に対する心証は良くなって行った。

「え、何で絵の感想言うだけで……?」

「三尉、なんか上手いこと言って株上げたんじゃないっすかぁ?」

「違っげェーよ。それは、まぁ良く解らん」

とは言うものの、画伯レベルの801系イラストを見せつけられて、表情一つ変えずに感想を言えたことが原因だと理解していた。

アレを見た者はつい噴き出して笑ってしまうか、退いてしまうものだ。だが事前に心構えを持った火威は眉一つ動かさない鋼のような精神力で試練に挑めたのである。

そして理解したことは、彼女達が精神的に成熟した大人の男を好むことだ。これは神子田に伝えるべき情報である。

「っつーかヒオドシよぉ、そろそろ決勝の時間じゃねぇのか?」

課業後に火威達複数の自衛官とジゼルは新兵器と花火ののテストと言うことで、アルヌスの中腹に向かったのだ。そして今日は剣技大会の決勝戦がある。

既に陽が西に傾き、そろそろ決勝戦が行われる時間であることを会話に没頭しているように見える火威に伝えたのだ。

「あ、そっすね。そんじゃ行ってきましょうか」

健闘を祈願する言葉はジゼルからは出ない。もし火威が勝つと、彼が更に遠くへ行ってしまいそうな気がするからだ。

火威は丘を駆け上がり、試合が行われる練武館に向かう。

 

 

*  *                               *  *

 

 

試合が終わり、陽が沈んだアルヌスの街で火威は茫然とした不安を抱いて佇んでいる。

近くには火威の剣術の師事をしたロゥリィも居て、彼女も試合結果に疑問が残るのか、眉間にしわを寄せて考え込むようにしていた。

「何故、火威殿が勝てたのか……」

ヤオの口から零れるように言われたのが事実である。

「栗林の眷属がどっかでダメージを受けてたとか?」

少しばかり茶化すように言ったのは伊丹だが、その言葉の通りに今日の栗林は試合相手の火威にも、ロゥリィの目にも動きが悪く見えた。

そして、そのことについて伊丹には心当たりがある。

「ギリギリで負けるつもりだったのに、何なんだろ……コレ」

火威には、栗林の実力低下が何かの凶事の前触れのように感じられた。




また猊下が目立ってません……。
でも次回はジゼル回の予定なので、猊下メインの筈です。
っていうかエロいです。
魔神英雄伝風に言うと面白エロぜ! っていうヤツです。
まぁ実際面白いかは解らないですけど。

そんなワケで感想や疑問質問、誤字脱字等有れば、お教え頂けると幸いです!

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