ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

66 / 120
ドーモ、庵パンです。
やけに早く五話が完成したので投稿です。
今回はジゼル回の筈ですが、
妙に栗林が目立ちます。

そしてエロ予告していましたが
余りエロい気がしません。
基本ギャグだからか……。
まぁ15禁に抑えてるのが最大の原因だと思いますが……。
いや、でもきっとエロく出来たハズ。

ちなみに伊丹達のセリフは原作まんまの筈です。
おかげで長くなっちゃったぜ。


第五話 鬼人と乙女

深夜。

街頭も無いアルヌスの街だと、月も出なければ真っ暗闇で足元どころか一寸先も見えなくなる。

だから屋台や食堂が建ち並ぶ地域を出ると、人々はランプを手に提げて足元を照らすしかない。

だが、そんな人々の賑わいから離れた闇の中を動く小さな灯りが二つ。

一つはテュカが精霊を使役して作った暖色系の光。

一つはレレイが掲げる杖から発せられる青白い冷色系の光。

伊丹はレレイが掲げる光の元に居た。

「おい倉田、そっちじゃない」

「おっとっと、ついいつもの調子でつい玄関に足が向いちゃいました」

すると重い荷物を持って方向転換した倉田が足を踏み外し、排水溝に落ちそうになってしまう。

だが夜目の効くペルシアが素早く手を伸ばして倉田を抱き止めた。

「大丈夫かニャ?」

「あ、ありがとうペルシア。助かったよ」

「頼むから静かにしてくれよ、二人とも。煩くすると気取られちまうからさ」

火威はテュカの作った暖色系の光に着いて、伊丹達の後を追う。

彼等は富田とボーゼスが住む『黄薔薇屋敷』の庭に忍び込もうとしていた。

火威も光の精霊を使役して灯りを点けることができるのだが、彼がやると妙に大きな光球が出来てしまうので点けずにいる。この辺り、更なる精進が必要だろう。

富田がボーゼスに結婚式をプロポーズすることで自衛隊祭……改め、大祭典は開かれる。

富田にそのことを伝えたのは伊丹だ。今はちゃんと富田がボーゼスにプロポーズするかを確かめに、特地に残った第三偵察隊の面々とヤオ含む三人娘、そしてフォルマル家のメイドのペルシアと火威が闇の中で行動を共にしていたのである。

栗林は、この事を考えて、剣技大会では普段通りの実力が出なかったのかも知れない。というか、他に考えられない。

伊丹達は、屋敷の裏手に向かいつつあったが、しばらくすると振り返る。

「おい、レレイ、テュカ、ここで消灯。これ以上近付くと見られちまうからな」

二人が呪文を唱えると暗くなり、夜目が効くヤオ、テュカ、ペルシア以外は足元もおぼつかなくなるが、代わりに夜間暗視鏡が用意されていた。

伊丹達自衛官、そしてロゥリィやレレイは鉄帽を被ると暗視鏡を眼前に引き寄せる。

剣技大会の決勝の時、栗林が心此処に非ずの状態だった。なら繰り出された彼女の剣戟は中身の無い物だ。後日お突き合いするとしたら、何の参考も無い状態で挑まなければならない。

それは、火威にとって未知の領域である。

実際にはそんな事は無いのだが、今までロゥリィに付けて貰った稽古が無駄になった気がした。

そうしてる間にも、灯りのついている角部屋に気取られない可能な限り近付き、パラボラ型の集音マイクを向けた。

倉田も荷物から三脚を取り出してカメラを据える。

それらにコード類が付けられる様子をテュカ達は見守っていた。

イヤホンが伸ばされるが人数分は無い。

火威はロゥリィから大祭典が開かれるか否かの分嶺点を確認するかを聞かれ、ついて来ただけだから結果が知れれば良いのである。だからイヤホンは遠慮したが、他にもイヤホンが必要な者はいるので伊丹は音量を小さく流してくれた。

倉田がカメラの画面を開くと部屋の中の様子が解る。

「覗きなんて、趣味が悪い」

「嫌ならついて来なければよかったニャ」

栗林がポツリと零すとペルシアが率直な反論を返す。

「だって……」

と言葉を濁す栗林を見て、火威は剣技大会で勝った直後の予感を再び感じた。

音声の調子を伺う倉田に、マイクの角度を色々と調整していた伊丹がOKを出す。

スイッチを入れると執事の布擦れやメイドがお茶を淹れる時の陶器がぶつかり合う音まで聞こえてきた。

「盗み聞き……」

「なら、聞かなければ良いニャ」

ペルシアはニヤけてゴロゴロと喉を鳴らす。

この人マジ猫だ、と火威は思ったとか思わなかったとか。

戦わせればとても勇敢なのに、男のことになると煮え切らなくなってしまう栗林の様子が、ペルシアには可笑しくて仕方ないのだろう。

ここに来るまでに、火威はペルシアやテュカから聞いていた。

栗林が未だに富田へ横恋募しているというのだ。それは今の様子を見て理解する事が出来る。だが子供が出来たと言うのに、未だに横恋募しているというのだから重症だ。

火威が今までに予想した最悪の事態と言って良い。

「トミタがボーゼス様にプロポーズするのを目の当たりにすれば、クリバヤシも諦めがつく筈だニャ。そうしたらすぐ別の男をあてがったほうが良いニャ」

そうすると立候補したくなる火威だが、想像以上に重そうな栗林に若干ながら気後れする。

特殊作戦群の猛者ですらお突き合いに勝てなかった相手だ。

栗林さん、理想高過ぎ。

「だけど、ほうっておくと泥沼化する恐れがあるニャ」

「泥沼化って……!」

その時、伊丹が口の前に人差し指を立てて静かにするよう注意が走る。

執事とメイド、そして子守メイドが赤ん坊を抱いて、ドアの前に並んでいる。

そして一礼すると、部屋から出て行こうとしいた。

扉か閉じて、シンとしてから少し経つと、富田がボーゼスに『あのさ……』と話しかけ始めた。

最近の出来事など当たり障りの無い事を話している。

「見せたいってぇ、トミタがボーゼスにプロポーズするところのことぉ?」

「そ。心の挫けちゃたボーゼスさんを奮い立たせるしかないって、実行委員長からアドバイスされてな。それで富田に、ボーゼスさんにちゃんとプロポーズするよう、半日かけて説得したわけ」

火威は結婚式をやらないでも自衛隊祭はやるものだと思い込んでいたが、確かにボーゼスの結婚式でもなければ騎士団の女性が来る理由が無い。神子田や出席希望の自衛官を(ぬか)喜びさせて白い目で見られるところだったと思うと冷や汗が出た。

富田はというと、『ふぅ……』と溜息をついて言葉を途切れさせていた。

小声で文句言うテュカが目の前にいたらポカリとやってしまいそうな勢いだ。

「隊長、富田さん。本当に今夜プロポーズするんですかねぇ」

ここまでやって何も無ければ道化なので、倉田はそのことを心配した。

「大丈夫だ。富田はやれば出来る子。きっとやり遂げる。手続きにこだわっていると、かえって誤解されるって言い聞かせたんだよ。実は結婚する気がないから、手続きを楯に時間稼ぎしてると思われちまうぞって」

「富田先輩がそんなことするわけないっすよ」

「分かってるさ。俺だってそう思う‥‥。けどさ、女の子って男が要所要所で意思表示してやらないと、どうでも良い、あり得ないことを考え出して不安になって来るもんなんだよ」

その言葉に火威は身につまされたような思いがした。

約一名、無自覚で同じことやっている上司がすぐ近くにいるが、火威がジゼルにしているのは、ほぼ同じことだ。

その気も無いのに神殿近くに大きな家を構えてジゼルの気を嫌が応にも引き、悪戯に彼女の心を弄んでいる。

火威にその気が無くても、他者から見ればそうなるのだ。そしてその自覚があってやっている火威の方が、余計に(たち)が悪い。

後に言われた倉田の言葉で、伊丹が離婚していたことを知った火威だが、いよいよ富田もプロポーズする直前まで来ていた。

『だから、その……俺と』

『おれと?』

『俺と、け……け、け』

『け?』

その時、プチッという音と共に一陣の影がボーゼスの屋敷に猛烈な速さで飛び込んでいく。

火威は考えるより先に理解した。

「やめろ!栗林っ。行くなーッ!」

「えっ!? 栗ボーか!?

伊丹が呆然と呟き、皆が我に返った時には既に遅かった。

薩摩武士よろしく「チェストー!」と喚声を上げながら飛び蹴りのような勢いで跳躍。夜風を招き入れる為に開けられた窓から小柄な体躯を生かしてひらりと転がり込んだのである。

「くっ、栗林! なんでお前ここに!?」

ふしゅぅぅぅぅ! か ガルルルルルルルルッ! かは解らないが、獰猛な猫科の肉食動物のような唸り声を上げる栗林。

「とみたあっ! そこから先は口にするなぁ!」

「来ましたわね、横恋慕女が」

富田に飛びつかんばかりの勢いの栗林を阻もうと、両手を開いて栗林の前に立ちはだかるボーゼス。

「いつか貴女とは戦わなくてはならない。以前からそんな予感がしていましたのよ」

「そうだ。そうなのよ。 お前さえ亡き者にすれば、あたしが……」

ホント拙いことになった。火威は剣技大会後に感じた予感が、こうも拙い形で具現化されるとは思わなかった。

世の神様を恨めしく思ったが、実際、神様は近くに居るので、もっと別の存在を恨まなくてはならない。

鋭いサーベルの切っ先を、ナイフで弾く栗林。力量差は歴然だった。

「ふ~ん。ちょっとぬるいかな」

軽くナイフを振っただけでボーゼスの連続刺突を躱す栗林に対して、ボーゼスには必至感が漂う。

「くっ……これほどの手練れだったとは」

「ふふふふふふ、勝ったらどうしてやろうかな~。その縦ロール刈っちゃおうか」

その瞬間、栗林の姿が突如消えたかと思うと風を切ったような音がした。

ベンッ! という音がしたかと思うと、潰された蛙のように栗林が壁に叩きつけられていた。

ずりずりと滑り落ちて床に倒れる。視線をずらすとを決めるロゥリィがいた。

「あ、あの、もし……聖下?」

「怪我はないわねぇ?」

「え、ええ、まぁ別に怪我はないですけど、、どうして聖下が?」

見ると、ぞろぞろと伊丹達まで窓から入ってくる。

「倉田、足もて。足だ」

「小さい身体なのに、結構重いです」

二人は気を失った栗林を運ぼうとしているらしい。レレイとテュカは脈を取って死んだりしてないか確認したり、治療魔法やらで回復させようとしている。慌てた素振りがないところを見ると、大事ないようだ。

「邪魔したわねぇ。そのまま続きをどうぞぉ」

伊丹に続いて出ようとするロゥリィが、手を振りながら富田とボーゼスにそう告げる。

「続きって……あんたら覗いてたんかっ!?」

富田が怒るのも当然っちゃ当然の話だ。

「すまない。本当に富田にはすまないと思っているっ!」

最後に出て行く火威が、拷問のスペシャリストを自負する某連邦捜査官のような謝罪の言葉を残してアルヌスの闇に消えて行った。

 

 

*  *                            *  *

 

 

アルヌスの街から少し離れ、かつて連合諸王国軍の将兵が埋葬されていて、現在では整地されちゃんとした墓地がある場所の近く。

疲れた表情の火威は、精霊を使役しながら家路にあった。

正直、百年の恋も冷める出来事だった。

栗林のあの諸行はオーク並、いや、下手したらオークを凌駕するかも知れない。

頭の中で栗林と奥・オークの悪行較べしていると、何時の間にか家に着いてしまった。

「よお。お帰り」

ジゼルだ。光の精霊を使役して、ぼんやり姿が見えるジゼルは弱った心には、やたら魅力的に見える。

「あれ、猊下。何用でしょうか?」

火威としては、ごく普通のことを聞いたつもりだったが、ジゼルは少し怒ったような反応を見せた。

「お前、剣技大会で一番になったんだろっ。祝勝会だよ!」

そういえば、と、火威は剣技大会で優勝してたことを思い出す。その後にあった出来事が余りにもショッキング過ぎて、すっかり忘れていた。

貰えるのは「アンタはすごい」的な言葉だけかと思っていたが、好みの女神の祝福もあるのは嬉しい誤算だ。

「勝手に上がらせてもらって悪いけど、お前んちに飯とか全部用意したからよ」

ジゼルが言った通り、二階のリビングには料理を乗せた皿がところ狭しと並んでいた。

「げっ、こんなに……。如何程しましたか?」

きっとアルヌスの街からの出前だろうと、衣嚢から革袋を出して立て替えようとする火威にジゼルが言う。

「出前じゃねぇって。オレが作ったんだよ」

「猊下が!?」

ジゼルは神殿長い見習い神官生活の間には、料理を作ることが多かったから、この手の作業はお手の物だと言う。

とは言え、神官になってからは料理なとは格下にやらせてきた。

だが実際に火威も食堂で働くジゼルを見ているし、ジゼルもこの時のために料理の腕前を再度、鍛え直してきたのだ。

ジゼルが作っ料理はどれもが美味く、少々味の薄いところがあるが、店に出しても恥ずかしくない腕前だ。

「そういやよ、お前が帰って来た時に、だいぶ参ってたようだけど何か有ったのか?」

「あぁ、それですか……」

火威は先程起こった事をジゼルに話した。

別に口止めされている訳でも無いし、喋って誰かの不都合になる事も無い。

だが万が一の為に、言い触らすような真似だけは辞めるよう言ったが、ジゼルはそんなことはしないと言う。

「そ、それはキツいな……」

PXに有った場所に入った酒屋で買った酒を開けながら聞いてたジゼルには、恋が破れるという感覚が良く解った。

少し前の自分にも、似たような状況にあったから理解出来てしまったのだ。

だが此処に来て、一筋の光が見えたような気がした。

「取り敢えず、これで祭は開かれるとして……」

「判るんですか?」

「そりゃあそうだろ。お前らがそこまでやってトミタが“ぷろーぼーず”しないワケ無いだろ」

そうだと良いんですが、と呟く火威にジゼルは続ける。

「クリバヤシの奴も、相当迷ったと思うぜ」

「へ? なして?」

「お前、クリバヤシに懸想してんのがバレてないと思ってんのかよ」

ジゼルが言うには、お突き合いで自身に勝てる可能性のある男が、自身に懸想(けそう)していながら、何時まで経っても口を開かない。

そんな時に富田がプロポーズするのを見守る任務だ。想いを寄せていた相手が、わざわざプロポーズするのを見なくてはならない状況というのは誰だって辛い。

そんな時、近くには確かな実力を持った火威がいるのだ。

どうして良いか分からず、栗林は前に進んでしまったのだろう。

ジゼルはそんな『自説』を解いた。

「……それ、富田とボーゼスさんにとっては凄っい迷惑なんですが」

「知らねぇよ。もしそうなら、お前にも責任があるんじゃねぇか、ってこと」

確かに、隠匿は完璧だった筈なのに、多くの人間に火威が栗林に懸想していることが知られている。

その辺りの感覚が鈍いと思っていたジゼルにも知られているのだから、本人が知っていても可笑しくない。

「そうっすね……」

だが猛烈な勢いで周囲の状況が変わる可能性のある火威を可哀相だと思ったのか、ジゼルは話しを変えてエルベ藩国で有ったことを聞きたがった。

以前にも巨大な無肢竜の話しをして、その異常事態をジゼルがハーディに話してお伺いを立てたことが有ったが、門の影響とは違うらしい。

「あぁ、そういやですね、厄介になった宿の主人が変わったエルフでしたよ。多分、テュカと同じ精霊種だと思うんですが……」

火威はそのエルフがミリッタの神官であること、ロンデルに居たことがあること、子持ちの賢者で新しいもの好きで、他の種族の中でも平気でミリッタの神官の務めを果たし、尚且つ男女問わず身体を求めるエロフである事と千五百才を越える美熟女であることを伝えた。

話しをしていくに連れ、ただでさえ青いジゼルの顔から血の気が引いて、寧ろ白くなって行くような気もする。

「あ、あれ、猊下。大丈夫ですか?」

「ぅ……あ、あぁ、問題ねぇ」

ジゼルは、百年ほど前にミリッタの使徒が地上に出現したという話しをハーディから聞いていた。何故神殿に知らせないのかは、ハーディにはぐらかされてしまったが、面白い事でもあるのか、何やらころころと笑っていたのだ。

そしてその人物は、以前に二回、ベルナーゴに来て、一度はジゼルにも会っているという。

「まさか、とは思うが、その女に血を舐められたりしてねぇよな……?」

「ははっ、エルベ藩国では血が出るような怪我は皆しませんでしたからね」

エルベに向かった自衛官は皆、そんな軟な作りに出来てませんよ、と笑い飛ばした火威に安心する。

「あぁ、でもエロフに顔噛まれましたね。魂がどうたらこうたらと……」

突然の告白に、ジゼルの頭は真っ白になった。そして子供の様に泣き喚きだず。

「それ怪我じゃねぇかぁっ!しかも思いっきり眷属になってんじゃねぇかっ!」

火威にはジゼルが突然、怒り始めた理由が解らない。だが眷属というのは、サリメルも言っていた気がした。

「いやっ、大丈夫ですよ猊下っ。魂がエロフの元に行くのも、週に三日……いや、四日だけだし。残りの日は猊下が紹介して下さった天国で暮らせますから」

この男、死後の世界を何だと思っているのかと疑問に思う。まぁ、やって出来ないことでは無いかも知れないが。

泣き止むと、ムスっとした面持ちで火威に言う。

「よし、じゃあお前に頼みたい事がある」

「踏むのとか勘弁して下さいよ」

先回りされそうになったが、今回はそれじゃない。

「オレのことはジゼルと呼べ!お前のこともハンゾウと呼ぶからよ」

妙にエロフめいた事を言うジゼルだが、今回は火威の責任も多分にある。

「あっ、はい。ジゼル……これで良いですか?」

「敬語は要らねぇんだが……まぁ良いや。次に……」

「ま、まだあるんす……あるの?」

その火威の言葉に満足そいな笑みを浮かべ「あと二つある」と言うジゼル。

好きな男の魂を横取りしたというのは、ジゼルの中でそれくらいに重い出来事なのだ。

「祭が終わったらで良いけど、クリバヤシに言い寄れ」

「マジすか!?」

罰ゲームでも宣告されたかのような火威の反応は、ジゼルとしても意外だった。

ジゼルにとっては見れば、火威が自身と共に生きてくれるのは幸福な出来事だが、ヒト種の一生は竜人から見ても極めて短い。亜神ならば猶のことだ。

それに聞く話しに寄れば火威は男の子供を欲している。

亜神たるジゼルには、その願いに応えてやることは出来ないのだ。

「まぁ、その為に鍛えて来たんですからね。良いでしょう。あと一つは?」

するとジゼルが胸の前で指を絡ませ、言い難いことでもあるのか身体を悩ましくくねらせた。

「そ、その……」

乙女になったジゼルの顔が、急に紅潮したかと思うと、彼女は言った。

「オ、オレを抱いてくれよ……」

 

 

*  *                               *  *

 

 

火威が死んだ後の魂が、ミリッタの使徒の元に行くことになったのなら、そのミリッタの使徒であるエロフが何度言い寄っても叶わなかった火威との同衾をやってやろうと思ったのかは、一つの意趣返しである。

だが以前から、もし機会があれば……と考えていたのでジゼルは火威に同衾を切に願った。

火威も課業が終わって自由の時間だし、今は官舎ではない。

言い訳を言うならジゼルに悪いことしたし、命令されたことだし……。本音を言えば美人のケモ娘を抱きたいのだ。

以前にジゼルとアキバに行った時に買ったゴム製品を持ち出し、使おうとしたところジゼルに用途を聞かれて答えたが、「ハンゾウはオレら亜神のことを知ってるようで知らないんだなぁ」と半ば呆れさせた。

特地歴一年ほどの火威には、その辺り大目に見て欲しと思う。

オークとは違う天然物のふくよかなものをまさぐり、尖端を弄るだけでもジゼルは大きく反応し、溜息をもらした。

「ハ、ハンゾウ……こういうこと経験あるのかよ」

火威の経験と言えば、特地に来た当初、外国の工作員を魔法でぶっ飛ばした時にオークに拉致された一回くらいである、が、火威はそれを無かっことにした。

そればかりか、その記憶をギャグみたいな精神力で抹消した。追い出した。塵一つ残らず消し飛ばしたのである。

「いや、うん。ないよ。知識だけしかないよ」

「流石は賢者だな……」

んっ……と、火威の指でジゼルに感じさせる。

前戯を済ませたジゼルは、火威背中を見せて伏臥した。

「ハンゾウ……これで、後ろから頼む」

火威は普段気付かなかったが、随分と尻尾が大きい。というか後ろからすると確実に邪魔になる物がある。

「えっと……猊‥じゃなくてジゼル。普段、尻尾って小さくしてる?」

「してねぇよ。どうしたんだ?」

「いえ、なんでもないです」

火威はジゼルの尻尾を肩に掛け、ジゼルの両腰に手を添える。

「あぁ、そうだジゼル。初めてならちょっと痛いかも」

「えっ、そうなのか?」

肩に掛けたジゼルの尻尾がクルっと跳ねて、火威は少しばかり嫌な予感がした。

「まぁそりゃ初めてだと色々あるからね。でもジゼルは動き回るし膜は自然と破れるかも。じゃ、いくよ?」

この時、火威は失念していた。亜神というのは不死で傷を負ってもすぐに治ってしまうという事を。そしてジゼルが亜神だという事を。

「ぁ、いいぜ。優しく……」

同じような事を行為を始める前にも言っていたジゼルだが、火威が腰を差し込むと初めて感じる痛みに思わず全身の神経を絞めてしまう。そして尻尾も絞めて、火威の首とかも、ついでに絞めてしまった。

げっ、ちょっ! ジゼル! 締めてる締めてる! 言いたいが、首を絞められて声も出ない。

ギブ! ギブギブ! ギブアップ! 周囲を叩いて緊急事態を伝えようとするが、ジゼルの臀部も叩いてしまってますます絞め付けが強くなる。

うヴぉあくぁwせdrftgyふじこlp そんなワケの解らない状態で後ろに倒れたら、取り敢えず助かったとかなんとか。




もうちょっと続けようかなぁ……と思いましたが、うっかり18禁に入りそうなんで止めておきました。
だから取り敢えず後書きで言います。 
火威とジゼルは終いまで 全 部 や っ て い ま す 。
まぁ体位とか変えたりして……。

語尾が特徴的なキャラってセリフが連続する時に凄い助かります。
語尾だけで個性を発揮してるので有り難いです。
そういうキャラって便利だなー、と常々思います。

はい、誤魔化しました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。