ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

7 / 120
この辺りから自小説の改変が出て来ます。今までは原作通りです。
ちなみに原作と漫画版を元にして書いてます。
従ってグレイは禿げです。
禿げなんです。

大事な事なので二度いいm(ry


第七話 平静と絶望の間

医官に注入されたアミタール剤で直ぐにバーソロミューは真実を喋った。その言葉は、やはり推測の通りに信箋を行商人に横流ししたのだという。

自衛隊やイタリカの憲兵もすぐに行商人が逗留してる市内を探したが、既にもぬけの殻だ。真実を喋らされたバーソロミューは哀れなものだ。拘束されたまま椅子に凭れて力が入る様子は無い。その様子を見ていた火威は借金も女遊びも程々にしようと心に決めるが、借金する程に遊ぶ方法も知らないし、彼を本気で相手するような女は当人が逃げているオークくらいしか居ないので、彼の決心に余り意味は無い。

ちなみ、その後のバーソロミューがどうなったかは知らないが、フォルマル邸には14~15歳くらいの美しいメディサの女性が働き始め、バーソロミューが会ったという行商人の人相描きが出回り始めたという。

ともあれ、犯人は望月紀子という人物がアルヌスに居る事を知る人物、ゾルザルかその周りの人間という事になる。

「オ・ノーレ!」

だから早くゾルザルとかいうバカ皇子はブチ殺しときゃ良かったんだ!と宣う火威を、爆発物でも取り扱うように、富田は宥める。

「しかし手を廻したのがゾルザルとは限りませんし」

「そうですよ。周りの人間が考えたならゾルザル倒しても危険は残りますよ」

言ったのはそのゾルザルを半殺しにした張本人の栗林だ。言う通り、日本人暗殺を指示したのがゾルザル本人ではなく周りの人間なら、帝国兵の日本人憎しの感情が一層増すだけだ。

「うぅむ……」

家臣に殺されるか、事故で死んでくれりゃ一番手っ取り早いんだが……。魔法で上手く事故に見せ掛けて殺れねぇか、と思いながら腕を挙げる。たが。

「おっと、危ない」

次に事務所内で魔法を試したら黒川に指の間を縫い付けられる、と言われたのを思い出して腕を降ろした。

その時、ドアを叩く音が事務所の中に転がった。

 

 

  * * *                       * * *

 

 

「要領の悪い娘ってのは何処にでも居るんだねぇ」

事務所のドアを叩いたのは娼婦のテュワルだった。彼女の後輩で彼女と同じハーピィの娼婦が、普段なら悪所の娼婦が入れないような高級な宿で倒れているのが見つかったからだ。

テュワルが高級な宿に入れたのは、彼女の後輩を呼び出した貴族から「行けなくなった」という謝罪の手紙がサロンに届いたからだ。その時点で陽は沈んでいたが、呼び出された娼婦は朝から宿に行って待っていたのだという。

「なんでまた朝から……」と、保護に向かった黒川も栗林も思うのだがテュワル曰く、彼女はもの凄く要領が悪いらしい。だから市中で取れるか判らない客を待つより、確実に来るであろう貴族の客を待っていたのだと言う。

「にしてもこの娘は……」黒い体毛、もとい羽毛は烏を思わせる。ティワルが見つけた時、羽毛枕を八つ裂きにして中身の羽毛を口にしていたところを見ると、自衛隊員らにはハシブトカラスか猛禽類を連想させた。そしてこの娘はテュワルより少し大きい程度だ。倉田が言うには、ハーピィは飛ぶために体が小さめに出来ているのだという。

「しかしまぁ、昔の訓練を思い出すな」

呟く火威に頷く富田。彼らが腹が膨れるとは到底思えない羽毛を食べた事などあるのかと、疑問に思う黒川であったが、

「レンジャーとかの訓練では蛇や蛙を食べる事があってな……」

「高級食材を引き合いに出すな。揚げムカデとかもう……」

特戦群の訓練ではムカデが常食って聞いたことがあるんだが、今からそれがどんな任務より恐ろしくて恐ろしくて……そんな事を言いながら震えて見せる火威に富田は言う。

「いや、そんなことないでしょう。たぶん」

ムカデなんてそんなに腹が膨れる物じゃないし、極限では何でも非常食にする勇気を付ける意味合いが強い筈。と思いながらも、量を食べれば或は……と断言も出来ない。

「まぁムカデ喰うくらいならドラ肉がマシかなぁ。あとフォルマル邸で食わしてもらった味痢召とか」

「ドラ肉?」

「あぁ、アルヌスに転がってるヤツら」

所々腐っていて食べられる部分が少なくなっていたが、翼竜ならマ・ヌガ肉ではなくマンガ肉が再現出来たという。味痢召は帝国の軍隊に伝わる非常食で、馬の飼料とされるフラ麦と歯抜を量産する白細豆を粥状にごった煮した嘔吐物に似た味の糞マズい飯なので、こちらの方がヤバい。余りの不味さに丸飲みした火威が腹を下す代物なのだが、この場に居る者はお馴染みのミリ飯と勘違いしたようでスルーされた。

「あぁ、アレですか」

火威は頷く。硬度9の鱗で日本でも知られている翼竜の肉も非常に硬いものだった。煮炊きする前に親の仇の如く叩き伏せて肉の柔らかみを増そうとしたが、それでも頑丈な顎を持つ者でなければ翼竜の肉は喰い千切れなかった。次に翼竜肉を調理する時は考えた下拵えを……と思うのが火威ら翼竜肉を食した者の考えである。

「良い方法が出来ればムカデ喰うより有り難いんだけどなぁ」

「そんなにムカデ嫌ですか?」

「そりゃもう生理的に」

ハーピィの介抱に当たっている栗林や黒川も火威と同意見のようだ。互いで顔を合わせて苦笑いしている。

「あー、でも特戦群の選抜試験は日本に帰らないとなぁ……」

「何かあるんですか?」

「オークが待ち伏せてるから」

伊丹や三人娘に遅れること二日、日本に帰った火威が見合い相手という名のオークから逃げ回った末に捕まったのは、新たなトラウマとして火威の心に大きな傷を残していた。だから敢えて日本に帰るような事はしたくない。絶対に帰りたくないのである。そんな事情も知る由もない富田には疑問符しか浮かばない。その後ろでハーピィが艶っぽい黒髪を寝台から落ちてしまう。

「うむ、完全にカラスっ娘」

火威が断言するように言いながら、診療所の寝台で点滴を受けながら眠る彼女を見る。

彼女の名はハヅキと言う。日本から来た自衛隊員なら誰しも思うのだが、実に和風の名だ。テュワルが言うには、ハヅキは東方の国から渡ってきたのだと言う。

そういえば……。と思う。炎龍に襲われてから生き残ったコダ村の住民が各方で伝えた話では、緑の人たる伊丹耀司ら第三偵察隊ら自衛隊を東方から来た傭兵団……と推測されているという話を聞いている。アルヌスの避難民キャンプの住民も、ゲートの向うの日本から来たと知るまでは東方の民族だと思われていたようだ。

ファルマートの東には日本と似た国や組織があるのかと、火威は興味を抱かずにはいられない。しかし、そんな興味心も吹き飛ぶような知らせが次の日の朝に来た。

「炎龍が…………死んだ……だと?」




感想など、御座いましたら遠慮なく言ってやってください。

そして、遅ればせながらお気に入り指定が9つも!!

あ、あざァーっす!!  m(_ _)m

って、ちょっと目を離してる間に11に増えてるーッ!?
ホントに有難う御座います!面白いものが書けるよう精進します!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。