今回は前回よりも間隔短く投稿できました。
火威は行き成りフラれませんできたが、実力次第の世界に行きました。
そんなことより、ゲートの二期は来年の後期と予想します。
理由? 理由ですか?
願 望 で す
どうしてこうなった……。
などと、みなまで言う必要も無い。原因は自分自身にあることは解っているのだから。
昨日は撤収作業で忙しく、ゆっくりと栗林と話している時間も無かったし、一昨日の夜に交際を申し込んで以来、顔を合わせるのも気まずくて喋ってなかった。
だが今朝、食堂で朝飯を食っている最中に栗林から、課業後の
一昨日の夜に最上級の土下座で交際を申し込んでから、栗林は冷たい目をしつつも平温の声色で「了解しました」と言って去ったからフラれたと思った。それに比べれば大きな前進と言える。
とは言え、一昨日の冷たい目線を思い出すと、今回は本気で
しかし、この時の為にロゥリィに真剣で稽古に付き会って貰って来たのだ。火威はお付き合いを申し込んではいるが、お突き合いすることを前提に準備してきたのだから今の事態は予測の範囲内と言える。
欲を言えば交際を申し込んで即日恋人関係になれれば良かったのだが、一発で断られなかったのだし有難いくらいなのだ。
しかし、これで勝っても円満な交際関係を結んでいられるのか? と、思う。だが今はもう振り返らずに、やるべき所までやるしかない。
お突き合いで勝ち、交際出来るようになって交際し、その結果が最悪の交際関係になっても命が取られる訳ではない……はず。
結婚するまでの交際した異性がが複数人いるなど、一般的なことだ。
ならば……と、火威は特地害獣乙種…
火威は今回のお突き合いでは、本気で栗林に勝つつもりである。ならば、どうすれば勝てるかを考えなければならない。
通常、近接戦闘の可能性が高い普通科隊員には、女性自衛官は配属されない。にも関わらず、栗林は普通科隊員で、普通科の誰よりも近接戦闘を得意としている特別な存在だ。
その強さは、容易に相手が得意とする間合いを取らせないものだと推測する。過去に第三偵察隊がイタリカで盗賊に堕ちた連合諸王国軍の敗残兵を圧倒していたのがその理由だ。
あの時に火威がヒューイから見た背の低い自衛官は、明らかに栗林である。近くでじっくり見れなかったのが残念だが、素人ではない敗残兵を銃剣で圧倒していたのだ。
栗林は、見た目通りに自衛官の採用基準あるか無いかの身長である。だが以前に特地戦力調査隊で同じ隊になった丸山の情報では、栗林は高校時代に空手部と新体操部を兼部していたと聞いている。
新体操は演技の中でも、手の先や足の先を伸ばす方が採点が高いと予想できる。そしてまた、空手での演武も拳先、足先は少しでもダイナミックに動て見せた方が採点が高い筈。
それが栗林が強者でありえる理由の一つだと、火威は予想する。栗林のリーチが長いように
そして敵への踏み込みも速いし、自身を敵に捉えさせない程に動きも素早い。ニャミニアに白兵戦を挑む程に思い切りあるし、戦場を把握する能力にも長けている。
早い話が超高性能AIを搭載した可愛い系の爆乳高性能戦闘マシンである。
「これ……勝てねぇよ」
自分で考えておいて絶望的な勝率に、我ながら嫌になった。
だが栗林は可愛い系の爆乳娘でもAIでは無い。人間である以上は突破口がある筈だ。
火威は課業後のお突き合いに備えて、報告書片手間に策を練るのだった。
そして終業後、栗林と火威はアルヌス唯一の体育施設と言ってよい錬武館に向かう。
だが予想外な事に、お突き合いで場所を借りる予定だった練武館の使用は、予約制に変わっていた。
暫く栗林も火威も利用してなかったから、これには少し驚いた。
だがアルヌスが、日に日にシステマチックになることは、アルヌスが避難民の町だった頃から知る栗林も火威も嬉しく思う。
それは、小さな頃から知り、見続けてきた子供が成長して立派になっていくのを見守り続けて来た大人に似た心境かも知れない。
最近では閉門騒動畤のような混乱は避けようと、アルヌスの中ではホウ「報告」レン「連絡」ソウ「相談」が徹底されるようになって来た。その甲斐あって、住民の悩みを良く聞くことがある。
その殆どが住民同士の協力で解決出来るものなのだが、最近になって聞いたテュカの悩みはアルヌスの住民ではどうにも成らないものだし、自衛隊も個人の為に装備を使う訳にも行かない。
相談するべき相手はジゼルだと、火威は考える。
* * * *
栗林 志乃は、一昨日の夜に火威から交際を申し込まれたこと自体は、好ましいし嬉しい。
だが、問題は申し込まれた時の火威の態度が良くない。
バック中と違って前方宙返りは着地時に足場が見れないから難易度は高い。従って夜間に行うのは運動神経の高さを証明することだから、それはまだ良い。何故あの場でやったのかは意味不明だが。
問題はそれからだ。突然、地に這いつくばって第五匍匐でも始めたのかと思ったら、どうも土下座をして頼み込んでいたらしい。
栗林の過去の記憶が正しければ、あれは五体投地という仏教において最も丁寧な礼拝方法の一つで、対象への絶対的な帰依を表す行為だ。
日本に於いては天台宗、高野山真言宗、あとは何だったか……。
「火威三尉、三尉は宗教とか、宗派とかは何処を信じてます?」
「えっ? 俺は神道寄りの日蓮宗で神仏習合にロゥリィ教徒だけど?」
特に五体投地とか関係ない宗派の人だった。そして大多数の日本人と同じように、多神教を無宗教という建前でコーティングした
そして早くもロゥリィの信徒になっている。聞けば、日本にも非公認ながらロゥリィの信徒は多いと彼は言う。
確かに、栗林も門が開いている時に伊丹が紹介してくれた特戦群の面々とお突き合いして(そして栗が勝つ)いた時にも、一度国会に参考人として出ていただけのロゥリィやテュカやレレイの人気は長らく続いていて、本人非公認のファンクラブまでもがあった。
当時はキモオタ共が騒がしいとしか思っていなかったが、確かに日本でもロゥリィは神様として認知されているのでロゥリィ教徒が非公認で多数存在しても可笑しくない。信徒のメインは、どうせキモオタ共だろうが。
だが目の前の三尉は実際に何度もロゥリィと話しているし、稽古も付けて貰っている。神様に稽古を付けて貰うという得難い経験は、充分にロゥリィの信徒となる資格と言えよう。
まぁ、宗教の選択は個人の自由だから、栗林が意見出来ることではないのだが。
長々お突き合いの場所を探していた火威と栗林だが、遂に練武館に代わる場所を見つけることが出来た。
そこはヤオが代表を務める、アルヌス傭兵団の訓練場だった。
「いやぁ、有り難う御座いますヤオさん」
「陽が落ちてからは訓練も出来ぬしな。御身が精霊を使役して灯りを確保出来るなら、此の身らが使ってない時は何時でも使用してくれて構わない」
ということで早速、人頭大より少し大きめの光球を試合の場になる石畳の訓練場の各所に浮かべた。
流石に昼の明るさという訳には行かないが、蛍光灯ほどの明るさを発する光球が訓練場の各所に六つも有ると足元に気を払う必要も無くなる。
そうして試合環境を整えると、いよいよお突き合いが開始された。
お突き合いを見守る立会人は、組合の仕事を終えたロゥリィ・マーキュリーだ。彼女はこの手のイベントが好きらしい。
もしかしたら棒倒しも、彼女が当事者でなかったらワレハレンやモーターのように立会人の立場を選んで雛壇から観戦し応援してたかも知れない。
「先ず、お互いにこの試合は不殺であることを言い渡しておくわぁ」
それはまぁ、火威としては当然である。恋人にし、妻としようとしている相手の命を奪う道理など無い。
「次にぃ、ヒオドシは魔法が不使用であることぉ」
その為にロゥリィの元で、厳しい修行をしてきたのだ。火威から意見は無い。
「最後にぃ、ヒオドシは相手が女故、クリバヤシの顔を傷付けないように注意することぉ」
火威が魔法を使える分、多めに制約されたような気もするが、可愛い系の栗林の顔に傷を作りたくないのは火威も同じだ。
自分の顔に傷がつくのも痛いから勘弁して欲しいが、これ以上は恐面になりようが無いから良しとする。
「以上の三つを守る限り、好きにしなさぁい」
いよいよか、と思ったが、ロゥリィの卓宣はまだ続く。
「これを破ったり、負けを認めたりぃ、倒されて十数える間に戦う姿勢を取れなかった時はぁ、その者の負けとするぅ。わかったぁ?」
一体何処の龍玉ですか、と問いたくなるような宣言に続いて、ロゥリィはお突き合いが開始されたことを告げた。
「でわぁ、第一次ヒオドシ対クリバヤシ
「ちょっ! 聖下、今のルビ付ける位置おかしっ」
開始と同時にロゥリィに突っ込みを入れる火威に、栗林は容赦なく踏み込んで正拳突きを叩きこむ。
火威は咄嗟に顔前に掌をかざし、防ぐとともに後ろに滑って間合いを取った。
「三尉、気を抜いていると負かしますよ?」
ロゥリィの発言に反応している隙に、危うく一撃で負けそうななった火威は栗林に向かい構え直し、丹田に力を篭めたる。
「フフ、そう簡単に負けるかい。お前の強さは以前にイタリカで見ている。油断なぞするかよ」
とは言うが、先程は思いっきり油断していた。ロゥリィの稽古を受け、反応力が付いてなかったら負けていたかも知れない。
栗林の動きを見極め、踏み出した火威が栗林の土俵である白兵を開始する。
* * * *
既に陽は落ち、自衛官同士の実戦形式の格闘試合を聞き付けた者達が、傭兵団の訓練場に顔を出して、ある者は賭け事などしている。
栗林の突きを左腕で逸らし、踏み込んでから身体をぶつける。しかし栗林は素早く後退して間合いを取り直した。
「は、速ぇ……」
火威は心の中で呟く。
理解してはいたが、実際のお突き合いとなってみると栗林の素早さは火威が今までの人生で対峙してきた誰よりも速い。そして、その拳は非常に重かった。
お突き合いだから本気で殴って来てる訳ではないのだろうが、それでも火威の手が痺れる程に重いのだ。
昨日、舎弟になり下がったエルダー一家やグランハムと共にフレアの神殿に帰った眷属のユエルは惜しい人材を見逃していたと思う。
「三尉、どうです? 降参しますか?」
「いや、まだまだ」
肩で息する火威を見て、栗林はそんな事を言う。
今に至るまで、走らされ、多く間合いを取らされているのは火威であった。栗林は背が小さいにも関わらず、その3m……少なくとも2m以内は確実に彼女の攻撃範囲内だ。
終業前から栗林の突破口を考えていたが、結局思い当たらなかった。
精神攻めという手段も考えたが、それで勝っても悪い場合は仮面恋人……みたいな状況になる。
「だったら行きますよ!」
距離を取った栗林から仕掛けてくる。火威と栗林の身長差は30cm程度あるから、拳を振り下ろすと栗林の顔に当たってしまうのだ。まさか、ここに来て火威への制約がここまで行動を縛ることになるとは思わなかった。
火威はガードしながら弧を描いて後退する。火威が最強と考える引き撃ち戦法である。後退しながら栗林の首から下に向けてジャブを打つのだ。爆乳に触れちゃうかも知れないけど、まぁ仕方ないよね?
しかし、二発の拳が栗林に防がれ、それでも退ろうとしたところでジャンピングソバットが火威しを見舞った。
某アメリカ空軍の少佐を思わせるような技だが、火威は右腕で防ぎ切る。だが某アメリカ空軍少佐(後に中佐)の如くサマーソルトキックが放たれることを警戒した火威は右に体を
だが栗林はその火威目掛け、全身のバネを使った強力なアッパーカットを突き上げる。
寸でのところで躱した火威だったが、その頬を生暖かい物が垂れる事に気付く。
直感的にそれが血で、現実に血なのだが、某空軍少佐のような
現実には胴より上の爆乳をきつく拘束してしまったのだが、火威はそのまま上体を反らしてバックドロップを敢行した。
しかし相手は背の低い栗林である。
しかも拘束したのは胴体では無く爆乳である。
ドタッ……と音がして、二人は強かに石造りの床に脳天をぶつけて昏倒してしまった。
その衝撃は栗林が四割、火威が六割に髪の毛が無い分、一割増加。
二人は十秒経っも立ち上がれなかった。
「せ、聖下、この場合の勝者は……」
お突き合い開始当初から、もう一人の立会人のように見ていたヤオがロゥリィに尋ねる。
「引き分け……と言いたいところだけどぉ、オツキアイだとそうも言ってられないわねぇ」
ロゥリィは続ける。
「先に立って勝ち名乗りを挙げた方が勝者よぉ」
混濁した意識の中で、栗林と火威はそのやり取りを聞いていた。
火威は、この時、初めて頑丈に産んでくれた自身の母親に感謝する。
考えがハッキリすると、彼の行動は速い。
「勝った! 第三部、完ッ!」
また火威が勝手に三部を終わらせてますが、まだ終わりません。
まぁ三部はここで終了させて、四部も栗林のターンにして良かったのですが、
章のタイトルになってる凍結帝国が全然出て来ないので続行させます。