サブタイは四逆散という漢方薬から取りましたが、何か良い感じに体調を整える効能とむくみや体重増加の副作用があるので、このサブタイにしました。
……
…………はい、思いっきり言い訳です。全然考え付かなかったので頭に思い付いた言葉を色々とこじ付けただけです。
まぁ、内容的に今の状況の特地派遣隊や火威がそんな感じ立場なので、勘弁して下さい。
そんで今回はデート回です。ただ書いてる本人からしても、一番書きたい辺りだったんですが、
どうしてこんなにツマラナクなっちゃったのか……。
そんなワケで、内容的に盛り上がりに欠ける一話になっています。これでデートってアカンやろ……。
ここ暫く、課業後に個人の私物である兜跋を装備してアルヌス周辺の害獣を駆除して回る火威は、周辺の村々から感謝されると共に、彼が兜跋の下に着ている浮世絵が元絵の歌舞伎役者と、四隅に「不撓不屈」という文字がシルクスクリーンで描かれた文字Tシャツから「オニノハンゾウ」と呼ばれるようになった。
無論、歌舞伎役者が鬼の格好をしている訳では無い。異世界人から見て浮世絵の人物画は化け物に見えるらしく、子供達から「オバケ」と言われるようになった。
そして以前、アルヌスにいて駐屯地近くの特別図書館で火威が持ち込んだ「妖怪の本」を見た者によって、日本のオバケ=鬼……つまり鬼の絵を背中に背負った戦士の火威となってしまったのである。
「オニノヒオドシ」では無く「オニノハンゾウ」の理由は不明だが、アルヌス周辺の人々が選んだ語呂が良い方なのだろう。
ちなみに、このTシャツは火威が自作したものでは無く、彼が高校時代の体育祭で配布されたものだ。
当時は今よりも細い体格の彼であったが、貧乏人の知恵で、どれだけ体格が変わっても使えるフリーサイズになるように一番大きなサイズを選んでいる。
御蔭で、当時より筋肉が付いた今でも首回りも腕回りも余るくらいなのだ。
そんな普段着の上に兜跋を着込んで、昨夜も遅くまで害獣駆除に勤しんでいた火威だが、習慣とは恐ろしいもので陽の出る直前にこの日も起きてしまった。
このところ、夜の内に怪異をブチ殺しまくっている御蔭で出動も少なくなってきているが、それでも週に何度かは周辺の村から鸚鵡鳩通信の救援要請がある。
今日は珍しくもう一眠り、と思った火威だが、妙に寝難い。
理由は解らないが妙に苛々するし、落ち着かない。忘れていることや焦燥感を感じる理由でもあったのかと思い、目を空けて起き上がると、その理由らしきことが解った。
目の前に、妙に青白い上半身裸の悪役レスラーが居たのだ。
「おい、人ンちで何やってんだお前」
寝起き一発目に見る光景としては最悪である。しかも悪役レスラーは弁明する素振りも見せず、火威に向けて拳を振り上げる。完全な居直り強盗だ。
「ンだッ?ヤンのかゴラァ!?」
寝起きにご苦労な事だが、機先を制して悪役レスラーを霊格付きのショートアッパーで殴り付けた。
妙に青白い悪役レスラーは普通の人間より些か色合いが霞み、大祭典で見たべルティのようであったから普通の人間ではないと判断したのだ。
ただの居直り強盗でないまら……と、些細なことを気にしない火威は霊格パンチを振り貫いた。
技名はシンプルな「霊格パンチ」。火威が編み出した対霊用の必殺技である。
霊的な意味で壁にめり込んだ悪役レスラーは霊的な力を削り取られ、丁度良い按配の大きさになった。
聖下や猊下の神殿に運ぶのにも便利な大きさである。
この場で死んだ者と言えば、自衛隊が特地に来た当初、一方的に吹き飛ばした連合諸王国軍が思い当たる。
しかし死者は皆、エムロイかハーディの元に行く世界なので、幽霊が人の家にいる理由が解らない。
最近の気候は日本で言えば彼岸頃の気候に似ているから、特地の冥府でも地獄の釜の蓋を空けて虫干しでもするような行事があるのかも知れない。
であれば、ハーディの使徒である向かいの神殿に連れて行ってジゼルに渡す必要がある。
だが一方的に吹き飛ばしたとは言え、一応は防衛戦争の中での死者である。
戦死者ならばエムロイの神殿の使徒であるロゥリイの元に連れて行った方が良いかも知れない。
しかしその場合は、アルヌスの街を死霊を引き摺って突っ切ることになる。早朝ではあるが、特地の人々は早起きだ。死霊が人の目に付く可能性があるのだ。
ならば、行くべきは向かいのジゼルの神殿だ。
早速、着替えてから小さくなった霊魂の首の後ろを、子猫でも摘むように持って行く。
予想通りにジゼラの戸は開き、大祭典後に神官見習いになった少女が神殿前の道を掃除してた。
この歳の子だと人間の魂を見たことある子は少ないかもなぁ……、と思いつつも火威は彼女に声を掛けた。
「おはよぉー、朝っぱらから悪いけど猊下いる?」
「おはよう御座います。ヒオドシさん……っ!?」
少女が掃除の手を止めて、火威に振り向いて挨拶を返そうとするが、その手が持っている青白い物体を見て息を呑んだ。
冥府を管理する神の神官とは言え歳は若い。実際には少ないどころか、多くの神官……ましてや神官見習いなら人間の霊魂が転生や冥府に行く姿を見たことない者が大多数なので、そんな人間が霊魂を見れば狼狽えて今の仕事を改めてて見直すこと請け合いである。
火威はハーディの神殿会に相当、迷惑なことをしていた。だが前向き考えて見れば「何時か来る道」とも言える。
少し待っているとジゼルが顔を見せるが、やはりハーディの管轄に含まれる霊魂では無く戦死した霊魂であると言う。
「っつか、何でまだ
「そりゃあ、
しかしジゼルはこれから間もなく、アルヌスに来て新たにこの地でハーディの信徒になった者達への顔見せがあると面倒臭そうに言う。
結局のところ、火威がミニ幽霊を摘んでロゥリィの所まで行かなくてならないようだ。
朝方とは言え、霊魂をぶら提げて街の中を突っ切って行くのはパニックを生みそうで阻まれることだ。
そうなると、街を迂回して行くしかないのだが、素手で霊魂を摘んでいるのは火威の精神衛生上よろしく無い。
せめて先日のベルディのような肉感の溢れる綺麗処だったら……。
そんな考えても仕方ないことを考えながら、火威は街を迂回して丘を上がって行く。
祠のような小さなロゥリィの神殿に行くと、まだ誰の姿も見えない。
来るのが早過ぎたか……と思って待っていると、神殿傍の社務所のような施設から出てきたのは助祭のニーナだ。
火威はこのニーナというメーラ種の美女が苦手である。
褐色肌の美人なのは実に結構なのだが、それを差し置いて彼女から向けられる殺気が半端な物でない。
「あの、ちょっと戦死者の魂を拾ったんですけど……」
考えて見るに、普通では有り得ない届け物なのだし、火威本人が溶かして(?)今の大きさにして神殿に持ってきた霊魂なのだが、この時間には既に神殿に来ていて社務所内に居たロゥリィに話しを通す事が出来た。
火威が持っていた霊魂を見たニーナが、緊急事態と考えてロゥリィまで通してくれたのだ。
ロゥリィが言うには、この霊魂は連合諸王国軍の士官で、理由は解らないがエムロイが治める戦死者の冥府から弾き出されたそうだ。
火威の家に居たのは彼が死んだ場所であり自身で選んだ訳ではない。
地上に還った時、火威が見るからに自分の
「何とはた迷惑な……」
「こういうことは滅多に……というより、有り得ない筈なのよぉ」
ロゥリィは直ちに主神エムロイに聞いて来ると言う。
エムロイの総本山であるフェンブロン神殿が何処にあるかは知らないが、今から行くのか? と思う所であるが、亜神たるロゥリィは結構すぐにエムロイと話せるらしい。
火威が考えてみても理解の範囲を越えているのは当然である。特地の神々の身内の中の制度だとか方法を、異世界人である火威が知れる筈もなく、霊魂を私は火威は素直に引き返した。
* * * *
現在の火威しは第四戦闘団から引き抜かれ、門の再建やエルベから輸送される原油の精製に関しては無能力者で戦闘能力が著しく高い者が第五戦闘団隷下の部隊に配属されていた。
一人一人が志願さえすれば、特殊作戦群の選定を受けられそうな技能の持ち主である。
このような部隊が出来たのは、大祭典後になってからアルヌス付近で乙種・丙種、列びにその他の害獣や怪異が異常発生した為である。
異常発生の理由が不明なのは前にも述べたが、コダ村や帝都まで続く街道周辺の村々から上がった情報を纏めると、帝国の北から来た害獣がアルヌス周辺に溜まって人々の脅威になっているらしい。
最初に害獣の大群の報告がに有った当初は、特地の傭兵が徒党を組んで対処に当たっていた。
それでは対処が難しくなると、狭間は特地派遣隊の中で対害獣の部隊を編成するように指示することになったのである。
そうして先日から、火威達は火威の魔導を使って害獣駆除に勤しむこととなった。
そして最初の任務で、任務中に二つ以上の救援要請が舞い込み、(一応は)恋人の栗林や部下達を危険な目合わせる経験をした火威が、私物と特殊能力を使って連日連夜に渡って害獣を殺戮し続け、今までの数以下に減らして来たのである。
動物愛護団体が聞いていたら訴えるどころか卒倒してただろう。
そこまでやってアルヌス周辺の治安を回復させてきた火威ら害獣処理の隊の面々は、この日はアルヌスの街の中で待機を命じられていた。
平たく言うと休暇扱いなのだが、休暇だからと言って街の外まで行かれると救援要請があった場合に対応出来ないので、あくまでも「待機」状態なのだ。
仕事も任務も無いまま、遠くに行くなと言われるのは、人によっては拷問に等しい。
だが、これは後にも説明するが、自衛隊員全般が特定の場所でのみ暇を潰すスキルといのが存在する。
部隊の隊員の多くはアルヌスの街を見回ったり、筋トレしたり、特別図書館で伊丹なんかが提供した漫画を読み耽ったりしている。
武隊の長に上番した火威はというと、何時ぞや栗林と約束したデートをしていた。
女の買い物に付き合うと悲惨な目に合う……と人は言うが、火威は高校や大学時代にも姉の買い物に付き合わされて慣れている。しかも今回はデートという枠組みの中で初めて経験することだから非常に新鮮な心持ちだ。
暖かい季節なら栗林の爆乳を包んだ水着姿を拝むために近くの小川で水浴びを提案出来るのだが、今年は冬が来るので現在は秋を思わせる気候である。
だからデートで出来ることも限られる。二人はアルヌスの街でショッピングを楽しんでいた。
現在一般的にアルヌスで販売されている服飾は、一時期帝国の服飾業界を席巻したものでは無い。ボーゼスの結婚式で使われたウエディングドレスは女性自衛官の知り合いの結婚式の写真を元に、組合に残っていた日本製の生地とアルヌスの針子が総出で作ったものである。
少ないながらも女性物の衣装の型紙は残されてて特地製の生地で数着の服が作られてはいたが、栗林が購入したいものでは無かった。そもそもサイズが合わなかったという。
「サリさんはどっから生地用意して服作ってたんだろうな」
何となしに呟く火威。エルベから帰還して数ヶ月経つというのに、今更な疑問である。
「それにあの紐水着、どうやって作ったんでしょうね。明らかに三尉を誘惑するために用意してましたよ」
「いや、ありゃサリさんの普段着だろ?」
あのサリメルというエロフなら、常日頃からエロ衣装を着ていても可笑しくない。ちゃんとした服を着たのは火威がお願いしたからなのだ。
その火威は、栗林には乳牛系ビキニなんかを着てほしいと思っている。口にするとほぼ命が無いので言わないが、サリメルにスリングショットを作る技術があるなら栗林にも乳牛ビキニを作ってくれたらなぁ……とか考えているのである。
そんな感じで盛り上がりに欠けるデートが続くが、昼の時間になると連れ添ってアルヌスの食堂に向かう。
デートの中で一番テンションが高くなるのがこの瞬間というのが情けないが、身体が資本の火威達には無視できない時だ。
一応は仕事中なので、酒類が好きな栗林も酒精のあるものを頼んだりはしない。その代り少し多目の昼飯を注文している。
「ちょっ、栗林。頼み過ぎじゃね? っつか食えるの?」
この小さい身体でどれだけ食うのかと心配になる火威だが、栗林はさもありなんと答える。
「夕飯まで時間がありますし、このくらい余裕ですよ」
「っつーても、栗林なら隊の食堂で食べた方が安いだろ?」
「それじゃデートにならないでしょ」
隊内の食堂で出されるそうになった特地の食材の中には、時折精力剤のような作用を持っている食物やその部位が混じっていることがある。催淫作用は無くとも身の内を焦がすような獣欲を突き上げることは、この後に予定していることでは避けておきたいのだ。
その時、火威は塀の影からこちらを伺っている者がいることに気付いた。
「誰だッ?」
「!!」
プラチナブロンズの髪を持ったその人物は、火威達に気付かれると申し訳無さそうに二人の前に姿を現す。
「ってレレイ……師匠ぉ?」
「ちょっ、なんでレレイが……」
火威は以前、レレイに「先生と付けるのは、先に産まれた貴方から言われるのは不適格」ということで「レレイ師匠」と呼ぶようにしている。
「気分を害して申し訳ない」と謝罪するレレイは伊丹の好みの異性の研究をしていたのだと言う。
曰く、彼女が伊丹を研究し、その中で伊丹の絵草紙から伊丹の好む女性像を割り出した結果が「普段は突き放すような言動をしていて、時折優しくしたり依存する女性」であることが解り、普段から突き放すような言動の栗林が特定の人物と交際し始めたと聞いて観察していたらしい。
「二尉はツンデレ好きだったのか……」
今まで特に気にするようなことでは無かったし、多分これからも気にはしないと思う火威だが、レレイには色々と魔法を師事して貰っているし協力出来る事があれば協力しようとも思う。それでもだ……。
火威は席から少し離れた栗林には声が届かない場所にレレイを連れ合いくと、こう言葉を切り出す。
「師匠には申し訳無い。栗林のデレ期は未だ未確認です。その存在性を疑うくらいに」
現時点での交際状態をレレイに伝えると、彼女は諦めたように俯いた。
「……了解した。これからの貴方の健闘を祈る」
無表情で無口なレレイだが、無口は無口なりに心の中ではお喋りと火威の知る時代劇の主人公が言っているし、実際その通りだと思う。
実際にレレイが心の中ではお喋りかは解らないが、今し方言葉を返すのに間が有ったところを見ると火威に同情していたのかも知れない。
* * * *
「コレ、栗林は楽しいのか?」と、思う火威の目線の先には、特別図書館で不正規戦用装備のカタログを熱心に熟読する栗林がいる。
以前、日本に帰還した丸山から栗林にお突き合いで勝てば、とても嬉しいご褒美を貰えると聞いたことがある彼は、デートに漕ぎ着けても、お突き合いの決まり手が掴み技だと駄目だったのかと悔いもした。
栗林としては、この男が何を求めているのか様子見でデートに応じたが、隊からはアルヌスから出るなと言われてるのでアルヌスの中で余り行った事の無い図書館をデートで訪れたのである。
だが彼女はここで思わぬ掘り出し物を見つけた。多くの国々の軍で使われる不正規戦用装備のカタログを見つけたのだ。
余り自分の事に没頭すると火威に悪いかな……とは思ったが、火威を見てみると彼も不正規戦用装備が掛かれた本を読んでいる。
武器の形が刀剣類だったり、パワードスーツだったりと自分達が来た時代の日本とは違うが、火威と自身の趣味に取り分け大きな違いはないように見える。
「三尉」
しかし会話が長時間無く、彼が何も喋らない時間が続くと、退かれているんじゃないか、という気にもなるのだ。
「三尉は図書館デートとか、楽しいですか?」
「や、俺は栗林見てんのが楽しいよ」
予想しなかった答え……寧ろ予測すらしなかった答えを意外に思えて少しばかり声を漏らす。
「そりゃあ、栗林と同年代の女が不正規戦のカタログ見る姿って見る機会ないじゃん」
至極最もな話しである。日本に居る栗林の友人らが、こういった不正規戦用装備を見るシュチュエーションが想像できない。
結婚を前提に突き合わって下さい、と申し込まれて突き合って栗林に勝った相手とは言え、軽々に身体を許すような事を栗林 志乃はしなかった。
火威が本気を出せば圧倒的な戦闘能力を発揮する事は、閉門騒動時に蟲獣を吹き飛ばしたのを一番近くで見ていた栗林には至極解っている。
にも関わらず、心の大部分で火威に気を許さないのは、彼が以前の隊長に似た雰囲気を時々見せるからだ。
特に、エルベに行った時に高校が同じだったという出蔵三尉と話し合ってた時は、任務と関係ない話しをしていた時間は短かったものの、オタクの可能性が高い話しをしていた。
そういう意味ではサリメルというエルフの賢者も大変オタクっぽかった。アルヌスから輸出された漫画を熟読していたからオタクの素養はあるのかも知れない。まぁ、あの1500歳は子供還りを患っている可能性があるから仕方ないとも言えるのだが……。
そう考える栗林は、だいぶ狭量で無理解なところがあった。
営内生活が多い自衛官は、先輩数人と相部屋で自身のプライベートスペースはベッドとその周りの二畳しかない。
その上、残留という制度が自衛隊にはあるので休日も部屋から余り出れない日がある。そうなると、自然と狭いスペースで楽しむことが出来る趣味を選ぶ者が多くなるのだ。
* * * *
火威も栗林も、予定が無い上に仕事も無いので図書館に行った後は午後三時くらいまで練武館でお突き合いになってしまったのだが、火威はこの時に大きな発見をした。
したと言うより、以前にも倉田から聞いているので再発見と言った方が良いのだが、栗林はお突き合いなり白兵する時は実に楽しそうだ。
それが興に乗って来ると、楽しそうと言うより実に色っぽい……ハッキリ言うとエロいイってしまった顔を見せてくれる。
お突き合いの最中だからゆっくり見ていられないのが残念だし、本音を言わなくてもベッドの上でこそ見たい顔なのだが、一分でも長く栗林と「行為」を続ける為に火威が精進する事を決定付けられた瞬間だった。
ここで「栗林、エロい」とか言うと、今後はお突き合いどころかデートもしてくれなさそうな気がするので黙っておいたのは正しい判断だと火威は考える。
言うのは関係が進んでから~……などと考えていたら、栗林のガゼルパンチが火威の顔面を捉えて爪先が浮く程に突き上げた。
「げっ、三尉。大丈夫ですか?」
自分で意図的にやっておいて片腹痛いが、今のモーションの大きいパンチなら避けると思ったのだろう。
「いや、ちょっとボーっとしてた。スマン」
殴られた方が謝るという意味不明な状況だが、かなり強く殴られておきながら鼻血も出ない出ないことに、栗林は素直に鍛え方の違いかと感心していた。実際はサリメルの眷属になっているためであるが。
二人しか居ないので、練武館を借りれる時間も全体の開館時間からすれば非常に短い時間であった。
しかし栗林や火威には、デートの中で最も密度の濃い時間と言えただろう。
お突き合いの時間が制限がある中で、火威は全体的に見れば負け試合なのだが、それを理由に交際解消ということにはならなかった。
お突き合いの後、やつ時から二人はペリエと言う店を訪れていた。
大祭典で火威が世話になった店だが、女性向けの調度品が揃えられた店内で菓子やら甘い物を食べるのが本来のスタイルである。
火威は以前、この店に蒸しパンのレシピを売って小金を稼いでいた。
公務員が副業とも思える事をして良いのかと言うところだが、現在の特地派遣隊は日本から隔離され、給料も引き出せない状況だから隊員個人の収入として特例で認められている。
「栗林さぁ……」
マカロンめいた菓子を咀嚼し、呑み込んでから隣の女性自衛官に呟く。
「プライベートで階級で呼ぶの辞めね?」
「一応、今も任務中ですよ」
実際その通りなのだが、直ぐに戦闘服を着れるように駐屯地に用意してあるとは言え、今は私服でデート中なのだから……と、火威は言いたい。
この後、ペリエにて待機中にデートする場合のお互いの呼び方について暫し議論がされた。
こうして火威と栗林のデートは、お突き合い以外の盛り上がりもなく終えたらしい。だがその様子を見ていたアルヌスの住民からは「フトーフクツのヒオドシ」と「亜神クリバヤシ」が付き合い始めた話が伝播していったのである。
書いててツマランところとか言っておいて、投稿する時になって気付いてみると8000字越えてました。
そろそろ三部の舞台に移りたいところですが、一部では本番の舞台に移ったのが3話からなんですよねぇ……。
まぁそろそろアルヌスで書くべきネタも尽きるので、移動する予定ですが三部が一番長い予定なのでアルヌスでもうちょっと続けたいところ。
でも一部ヒロインと二部ヒロインも出る予定ですし……ぐぎぎ、難しいところです。
それはそうと、タグ増やしました。
そろそろ付けた方が良いかなと……。
そして、この小説に於ける最強キャラは原作と同じようにロゥリィですが、
それを除けば人間になります。ヒト種になります。ヒロインになります。火威? 知らんなぁ。