ラブライブ! ~少年とμ'sが出会えた奇跡~ 作:ハイドレンジア
今回はやはり海渡くんがメインですが、最初はno sideから始まります。
花陽は自分の席の隣ですやすや寝息を立てている幼馴染みの海渡を起こすべきか悩んでいた。
今は国語の授業の途中、凛はいつになく真面目にノートをとっているように見えるが、花陽の予想が合っていればノートに何かの絵を描いているのだろう。
そう思いながら花陽は隣の海渡へ視線を戻す。
——やっぱり海渡くん……綺麗だなぁ……
腕を枕にして筆箱を握っている海渡の可憐な顔に見入り、ノートを取る手を完全に止めてしまう。
「うにゅ……コレは……」
不意に海渡が意味不明な寝言と共に何か手を握るような仕草をし、机の水筒に手を伸ばす。ただ動いただけなのに花陽は海渡の端麗な顔へとすいよせられていった。
花陽が生きてきた15年間の人生の中で、海渡以上に整った顔立ちをした男の子など花陽は見たことがない。
いや、単純に海渡の顔が整いすぎなのだろうが、海渡の数少ない理解者であり、海渡以外の男の子とあまり関わって来なかった花陽には海渡の顔の端麗さが普通に思えてしまう。
「はい、じゃあ次は……園田、ここ読んで」
思い出してみれば、今は国語の授業の途中だった。
いけない、と花陽は熟睡している海渡の脇腹を軽くくすぐる程度でつつく。すると、ヒギッ!と言う謎の悲鳴と一緒に、花陽唯一の男子の友達である園田海渡は飛び起きた。
「あれ……俺、もしかして寝てた?」
「そうだけど、今はこっち」
花陽は自分の弟の様に海渡に読むべき場所を指差し、了承を得たのち、地味に寝癖立ってるよ、と凛、花陽、海渡にだけわかるアイコンタクトをし、自分の席に着席する。
海渡は地味に頬を赤らめながら花陽から視線を外し、教科書の指定された所を読み始めた。
「うわぁー……ねんむ……」
放課後になっても海渡はまだ眠いようだ。授業ということにも関わらず、まるで昏睡したかのように眠っていたはずなのに、まだ眠いとは一体いつも何時に寝ているのだろうか。
花陽は遅くても11時には寝るようにしているので、朝などの目覚めはとてもいい。海渡は昨日ちゃんと来ていたが、今日はいくら何でも遅かったためモーニングコールをした結果、とても機嫌が悪そうな海渡が出た。
「うわぁ……。おぉ花陽、おはようだなー」
「君にとってはおはようだけど……普通の人なら今はもうこんにちは、だよ」
「分かってるよそんな事、昨日は色々あってな……4時に寝たんだ。そりゃあ眠くなるさ」
「ええーっ!いくら海渡くんでもそれは遅すぎるにゃ!」
黒板を消していた凛がかつてないほどの速度で海渡に飛びつき、お互いの吐息が感じられるほどの距離まで急接近した。
「凛お前、近いわ!」
すかさず青髪少年は長年日舞で培った反射神経で椅子から立ち上がり、一瞬で1メートルほど距離をとる。
その速度わずか2秒。素晴らしい。
花陽は小学の頃は一切見なかった彼の妙技に感嘆せざるを得なかった。確か海渡、小学生の時まで超が付くほどの泣き虫だったはずなのだが、今となってはどうだろうか?誰もが驚く程の成長ぶりだ。おととい久しぶりに会った海渡は昔の可憐さを残したまま巨大化しただけのように思えたが、見た目だけでなく心身ともに大人になっていた。
気付けばHRも終わり、海渡の姿はすっかり見えなくなっていた。
——海渡くん……やっぱり、変わってないね……
花陽は胸中でそう呟き、律儀に花陽を待っていてくれた凛と一緒に家へと向かっていった。
——穂むら、か……
俺は和菓子屋の名前を頭の中で何回か再生しながらその穂むらと言う老舗の和菓子屋に向かっていた。
穂むらには小さい頃よく世話になった事がある。定期的にもらえるお小遣いを右手にちょくちょく足を運び、名物の穂むらまんじゅう(ほむまん)を買ったらすぐに花陽と凛の元へと持って行った。今となってはとても懐かしい記憶だが、未だこれだけはかすかに熱をもち、俺の記憶の中でも楽しかった部類のなかに凄い存在感を放ちながら存在している。
「ういーっす、高坂さんはおられます?」
俺が生きてきた史上もっとも悪い態度で穂むら内部へと侵入を開始する。
「あぁ、いらっしゃい。海未ちゃんはもうきてるわよ」
「あざっす、じゃあお邪魔しますね」
様子を見に来た高坂さん父に出来立てっぽいほむまんをたくさん渡されたあと夫婦に見送られ、俺は穂むら一階を後にした。
いつになってもなれない急な階段を登り、二つ目のドアが高坂さんの部屋だ。海未に連れられて何回も来ていれば俺だってこれくらい覚えられる。かなり前だが、一度部屋を間違えてしまい、風呂上がりの雪穂を見てしまった事がある。この事はちゃんと土下座して謝ったので許してもらえた(この事から数日は口も聞いてもらえなかったが)。
俺がドアを開けるともう既にスクールアイドルを始めた3人組はそこにいた。
「やっほー、待ってたよ〜」
「お茶入れようか?」
あれ、ダイエットの事はどこに行ったんだろう?と内心で呟き、高坂さん父から渡されたほむまんを色々なCDが散乱している机の上に置く。
たちまちことりさん、高坂さんはほむまんに飛びついたが、海未の鋭い眼光に貫かれて出来立てホヤホヤのまんじゅうに手を伸ばしていたが、残念そうに引っ込める。
俺は半開きの状態で置いてあったノートパソコンをこちらに引っ張り、映っている映像を見てみたが、非常にどうでもいいが可愛らしい謎のキャラクターが戦っている映像が流れていた。
俺は即ウインドウを閉じる。
「あぁー!それ見てたのにー!」
「今はスクールアイドルの方が優先です、趣味はその後。グループ名決めるのも丸投げしたんですからせめて曲は真面目に考えてもらわないと困ります」
「海渡が……」
「まるで別人みたい……」
「ほえー……」
俺はすぐさまインターネットを起動し、まだ開催は決定していないのだが、ラブライブという大きな大会を開催していた運営のホームページを開き、俺のアカウントを使い、ログインする。
「うわあ!何これ!?」
「むぐぅ!?いきなり大きな声を……」
高坂さんが釘付けになっている場所は、俺のマイページの所だった。
様々な人気アイドルのシールのようなもの、現実に持ってきたら恐らく等身大のフィギュアになるだろう物。
当然アイドルへの愛がなければ揃えたりするのは無理な代物だ、驚くのも無理はないだろう。
「凄いよねぇA-RISE……」
「この曲は誰が作ったのでしょうか?」
「どっかに金出して作ってもらったとか、そんな感じだろ」
本人達に聞かれたらヤバそうな事を平気で言う俺に一瞬視線が集まったが、曲と聞きアッ、と声を上げた高坂さんに俺に集まった視線は消えた。
「そう言えば曲なんだけど、何とかなりそうだよ!一年にすごく歌の上手い子がいるから!」
「ですが穂乃果、曲は出来ても歌詞は?」
「それについてもう穂乃果ちゃんと話はしてあるんだ」
ことりさんは、ねーっ!と高坂さんと顔を見合わせるや、海未にとてもいたずらな顔をしてジリジリと迫り始める。
——何だ?これから何が始まろうって言うんだ?
俺は心の中でブツブツといろんな事を呟いた。
「何ですか……?」
「海未ちゃんさー、中学の時とかよくポエム書いてたよねー?」
「読ませてくれた事も、あったよねえ〜?」
海未、ポエム……くくっ……!ダメだ、堪えられないっ!!
「まっま、マジ!?ぽえ、ポエム!やめろやめろ!死ぬ死ぬ!はははは!」
もう限界です!と言わんばかりに海未は神速をも超える速度で立ち上がりドアへとダッシュする。
だがドアの方にはツボにハマり笑い死かけている俺が転げ回っているそう通れるはずもない。
俺はようやくツボから抜け出せそうになったので、ゴロリと仰向けに転がった、次の瞬間だった。
俺の足を誰かに踏まれ、ヒギッっと本日2回目の情けない悲鳴を上げた直後次は顔面をまた誰かに踏まれる。
こうして海未は逃げようとしたが、俺を踏んだからか出るのが少し遅れ、捕まってしまった。
鼻血が出ていた俺に優しく処置を施してくれたことりさんか彼女はどうとも思っていないと思うが、海未が見たら破廉恥です!と言われることをしたので(決してアウトな事ではない)この事は海未には内緒にしておこう。
「絶対にお断りします!」
「おお、決意の固い海未さんである事」
「ええーっ、海未ちゃんしかいないのにー!」
高坂さんは海未にごますりをしたり正座をしたりしたのだが、やっぱり海未の心は揺らがない。
ならば高坂さんがやれば良いと思うが、そういう訳にはいかない理由がある。小学の頃、俺たちは一度詩を書きあい、見せ合いっこをした事があるのだ。その時の高坂さんの詩は。
——おまんじゅう うぐいすだんご もうあきた
こんな感じだった。ちなみに俺は、にゃ〜だった。
分かる、意味がわからない。
「絶対嫌です……中学の頃なんて思い出したくもないほど恥ずかしいんですから!」
「でも……海未ちゃん……」
とてもヤバい気がする。ことりさんが目を潤ませ、胸元に手を置いた時はあの必殺技がくる合図だ。
とっさの事で俺は防御法を思い出すのに時間がかかってしまった。
——俺はアレを……
「食らうのか……」
運命の時来たれり……
「おねがぁい!」
うぎゃあああぁぁぁあああぁぁぁ‼︎
ことりさんの必殺、脳トロボイスは俺の心を突き穿ち、刺し穿つ。
俺は下に倒れ、海未は負けたような顔をしていた。
恐らくこれで書いてくれるだろう。
ことりさんの力、恐るべし。
俺は改めて脳トロボイスの恐ろしさを心に刻み付けた。
これで、3人の役目は決まった。
3人を束ねるリーダー、高坂穂乃果さん。そして歌詞を担当する俺の姉、園田海未。衣装係担当、南ことりさん。
俺はこの面子をとてもいいと思う。それぞれ性格がバラバラだが、一人一人が目立って、いい気がする。
この時俺は謎の夢のようなものを見た。俺の前に立つ9人のアイドル、あれはこれからの未来なのか、ただの夢なのか、それはいくら神でも分かる事はあるまい。
——いや、わかってたまるか、だな
時間が……
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