Infinite Stratos ~白き龍騎士と海を掛ける少女達~ 作:夢の翼
第一話 救世主 の 日
「平和だな・・・・・」
大湊警備府の執務室から外に広がる海と曇り一つない大空を見て、海から漂う潮の香を受けながら彼の口から出たのはそんな言葉だった。
「どうかしたのか?提督」
「長門。いや、少し昔の事を・・・・・・な」
白い軍服を身に包んだはこの青年はある戦いの最中。この世界に迷い込んでしまった異世界の住人だった。現在彼がいるこの世界は『深海棲艦』という突如として大海原から現れた正体不明の敵、人類史上最強にして最悪の脅威。その脅威に唯一対抗できるのが、今は遠き過去において日本の命運を懸けて戦った軍艦の英霊的存在、『艦娘』という少女達がいる世界。彼は15歳という若さで彼女達を指揮する提督として『深海棲艦』から海を取り戻す為、『艦娘』と共に戦い続けて来た。そしてその戦いの最中、彼は敵である『深海棲艦』に対話を持ちかけたのだ。当然それを知った大本営は少年を解任しようとするが、少年を信頼している他の鎮守府の提督たちと『艦娘』達に助けられた少年は共に戦った彼女達と共に『深海棲艦』との対話『オペレーション・クアンタ』を発動。『深海棲艦』達との対話に成功し『深海棲艦』を裏で操っていた戦艦レ級を倒し、大湊警備府は人類史上最強の脅威から世界を救った。
「電!いくわよ!」
「はわわ!」
「ヲ。ヲ!」
窓の外にあるグラウンドには駆逐艦の雷と電、そして空母ヲ級が楽しそうにボール遊びしている姿が見えた。その様子を少し離れた場所から見守る同じ駆逐艦の暁とヴェールヌイ。
「楽しそうだな」
「あぁ…そ、そうだな」
青年の横に立つ顔を真っ赤にして少年に気付かれない様ゆっくり両手を広げて抱き着こうとする長門。しかし。
「Hey!提督!Tea Timeにしまショー!」
「榛名!失礼します!」
「提督、お邪魔するわね」
「失礼します、提督」
「お邪魔します、提督」
執務室に入って来たのは青年が最初に配備した第一艦隊メンバーの金剛、榛名、陸奥、加賀、赤城の四人だった。金剛たちが入って来たのを見て長門は素早く身を引いた。
「おう。みんなどうした?」
「あら、あらあらもう忘れちゃったの?提督。今日が何の日かもう忘れたの?」
「今日……あ―――――そうか、今日は」
「提督がこの鎮守府に着任した日ですよ」
そうだったと青年は壁に掛けたカレンダーの日付を見る。今日はこの大湊警備府に着任した日、そして少年がこの世界に来た日であり彼女たち『艦娘』と初めて出会った日。あれから5年目の夏。青年はまた視線を金剛達から青空へと向けた。
「……皆。どうしてんだろうな」
「皆とは……提督が言っていた元の世界の仲間の事か?」
「あぁ。此処に来て5年経ったんだ、今更だけど皆はどうしてんだろうと―――――思ってさ」
青年は自身の腕に付いている白いガントレットへ視線を向ける。その白いガントレットこそ彼の嘗ての相棒。レ級との最終決戦において大破し修復不可能となってしまった相棒。唯一その心臓部だけはまだ微かに機能しているが今はただの便利な通信機として機能している。
「提督は元の世界に帰りたいですカー?」
「そりゃ……帰れたら帰りたいさ、けど今はこっちにも俺にとって大切な仲間がいるんだ。それにもし帰れる方法があったとしても俺は皆を置いていく気はない――――――――俺はもう二度と仲間の前からいなくなったりしない、絶対に」
「提督…!榛名…!感激です…!」
「流石に気分が高揚します」
「提督……!」
「―――――――さて」
青年は立ち上がるとハンガーに掛けていた軍服の上着を手に取りそれを肩に羽織る形で着ると机に乗せていた帽子を取り頭にかぶる。
「そろそろご飯にしよう、今日は俺が皆のご飯作ってやるからな」
「ッ!!!本当ですか!!!提督!!!」
「赤城さん、涎が出ていますよ」
「提督の料理か……楽しみだ」
「ウフフ、そうね。お姉さん楽しみだわぁ」
「提督の料理……是非頂きたいです!!」
「なら今すぐに私達とTea Timeへ行きまショー!」
「はいはい……ふふ、全く」
抱き着いた金剛に引っ張られる形で少年と第一艦隊メンバーは執務室を出ていく。誰もいなくなった執務室を風で揺れる白いカーテン、そしてその机に置かれた二枚の写真。一枚はこの大湊警備府に所属する『艦娘』達と分かり合う事が出来き笑顔を見せる『深海棲艦』達の姿が写った写真。そして二枚目の写真には白い制服に身に包んだ15歳の時の青年とその周りに集まる同じく白い制服を見に包んだ少女達の姿が映っていた。
彼の名は織斑一夏。大湊警備府の提督であり、世界を救った異世界の救世主《セイヴァー》そして世界で唯一IS《インフィニット・ストラトス》を動かせる男《イレギュラー》。
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