れいむとシロ   作:ねっぷう

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第1話 「出会いと邂逅」

おぎゃああああああああああ

 

 

誰か…名付けよ、我が名を…

 

断末魔の叫びからでも、哀惜の慟哭からでもなく、

 

静かなる言葉で…誰か、我が名を呼んでくれ…

 

我が名は 白面に あらじ。

 

我が── 呼ばれたき名は…

 

 

おぎゃあ おぎゃあ

 

 

ミーンミーン ミッチョワミッチョワ ジーンジーン

 

「…」

 

目が覚めた。

少し、暑いな…。よいしょっと

 

その白き者は立ち上がるが、そこで異変に気付く。

 

「…我は…何を…」

 

ボワァ

 

「目も良く見えぬ…」

 

確かに日光の暖かさを感じる。

しかし、ほとんど真っ黒な視界にわずかに光が入ってくるだけ。

 

その白き者はひどく傷だらけで眼も潰れているようで、腰からは9本の尾があるようだがどれもボロボロに千切れている。

 

「…おかしいな」

 

いくらジャンプし飛び跳ねても自分の体が宙に浮かない。

 

「…少し、疲れたな…」

 

白き者は見えない目を、カラカラな妖力を、千切れた尾を元に戻すため自らの周囲に結界を張りゆっくりと目を閉じた。

 

 

500年後─

 

博麗神社

 

ミーンミーンミッチョワミッチョワ

 

初夏だ。

壁に張り付いているセミがうるさく鳴いている。

 

霊夢「前にも捜したことあったけど…他にも…御神体があるはず…」ゴソゴソ

 

博麗神社はここ、幻想郷の東にある高い丘の上に建つ外見上は普通の神社である。

その前に幻想郷とは何かと思う人もいるだろう。

幻想郷とは人と妖怪が互いに協調し合いながら暮らしている、外の世界とは結界で遮られたいわゆる異界である。

さて、その博麗神社の本殿の散らかった内部を何やらごそごそ探っている人間が居るようだ。

 

霊夢「わざわざ何時も来ない埃まみれなところに来てるんだから…何かあってもいいわよねぇ」ゴソゴソ

 

ガンッ

 

霊夢「イタッ…何よこの木の箱…邪魔よ!」ゲシ

 

博麗霊夢はこの博麗神社の巫女だ。

ふとしたことからこの神社の御神体が何なのか、それはここにあるのかと知りたくなりいつもは立ち入らない本殿を探索していた。

そして霊夢が自分の身長ほどもある大きな木の箱を蹴飛ばすと、まるで箱で隠してあったように佇む不思議な札が貼られた神棚があった。

 

霊夢「何かしら、これ?」

 

霊夢が徐にその札に触れる。

 

バリバリバリ ガキィン

 

赤黒い妖気の雷のようなものが走り、バチリと霊夢の手をはじき返す。

 

霊夢「いっ…な、何今の…」

 

霊夢「まさかこれが御神体に関係が…!?じゃあとっとと剥がして…」

 

バリバリ

 

だがそれにも懲りずに、相変わらずはじき返そうとしてくる不思議な妖気に逆らいながら手を触れようとする。

 

霊夢「ちょ、すごい強いわね…!!何のこれしき…ふんぬうううううう!!!」

 

ペリ

 

その霊夢の頑張りが叶ったのか、札はシールをはがすように普通に剥がれていった。

 

霊夢「あ、解けたわ…」

 

ボゴォ 

 

 

「…我は…我は…」

 

 

気味の悪い声だ。

男とも女とも分からない、まるで泥沼のような低い声と掠れたような高い声が混じり合った何とも表現しにくい声が周囲に響き渡る。

 

霊夢「え、ちょ、ちょっと…何よこの声!しかも床が割れてくし…」

 

直後、床から白い柱のようなものが9本突き出し、それは壁や天井を破壊していく。

そして床の下から白い物体が飛び出していく。

霊夢はかろうじて見えた。飛び散る木片や瓦礫の中に、髪も身体も真っ白くて恨めしそうに上を見上げる赤い目と白い9本の尾を持つ者を。

 

「我は白面の者なり」

 

 

ゴオオオオオ

 

霊夢(今のは…人間?神様?いや…妖怪!?)

 

自らを『白面の者』と呼ぶその白い妖怪は突風を吹かし、本殿を壊しながら外へと出ていった。

 

霊夢「アイツ、本殿ぶっ壊してった~!!って、じゃなくて、何よ…あの妖怪…」

 

「…」

 

その白い妖怪は人間と瓜二つだが体は異常に真っ白で9本の尾をゆっくりと振りながら霊夢を睨みつける。

 

「…くくく…人間よ。我を上から縛り付け押し込めている封印を解いてくれたな…」

 

霊夢「な、何よアンタ…」

 

ゴオオッ

 

霊夢「うっ…凄い妖気…!」

 

ザワザワザワ

 

「…もう来たのか」

 

空に、博麗神社に向けて飛んでくる大量の魚妖や虫怪が見えた。

夥しい数だ、まるで頭に群がってくる羽虫の大群のようにも見える。

 

霊夢「ちょっと何よあれ!?」

 

「知らぬのか、魚妖と虫怪と呼ばれる妖怪どもだ…一体一体はそれほど強くないがあそこまでの数で来られると厄介な相手だなぁ。大方、我の強力な妖気を吸いにどこからかやってきたのであろう」

 

その妖怪曰く、魚妖と虫怪という妖怪はこいつの妖気に中られてやって来たらしい。

 

霊夢「なるほど、じゃあほどほどに退治しなきゃならないって事ね…」

 

「そういう事だ。じゃあな、人間…」

 

それだけ言い残すと、妖怪はすぐにその場から飛び立とうとする。

 

霊夢「ちょっと待て!」フワ

 

「ぬぅ、飛べるのか人間!?」

 

霊夢も空中に浮かび上がると、後ろから妖怪に呼びかける。

この妖怪は今まで飛ぶ人間などあまり見た事が無かったのだろう、驚いた様子だ。

 

霊夢「元はと言えばアンタのせいでしょ?ならアンタも手伝いなさいよ!」

 

その時、白い妖怪は鋭い牙の立ち並んだ口を開くと霊夢の目前に炎を吐いて威嚇して見せる。

 

「調子に乗るなよ人間の娘…。我は大妖怪白面の者であるぞ!誰が貴様のいう事など…」

 

霊夢「いいのかなー?さっきのお札、まだあるんだけど」

 

「あだだだだだだ!いたっ!!」ビリビリ

 

霊夢は神棚に貼ってあった札を白面の背中に押し付ける。

するとまだ札は力を残しているようで、白面は電気を浴びたようにその場で暴れ始めた。

 

霊夢「わかったら一緒にアイツら倒すの手伝いなさい」

 

「ぐぬぬ…まあよいわ、数百年ぶりだからな、うぉーみんぐあっぷというやつだ!!」ボオオオオオオオ

 

霊夢「いくわよーッ!!霊符『夢想封印』!」

 

白面の吐く巨大な火柱と霊夢の放った夢想封印によって一部の魚妖と虫怪が跡形もなく消え去る。

それを見た他の魚妖と虫怪は元来た方向に逃げ帰っていく。

 

「ほう、人間の娘…不思議な術を使うな…」

 

霊夢「アンタもね、さっきの炎は並の妖怪の技じゃないわ」

 

「…じゃあな」

 

霊夢「アンタこれからどうするの?」

 

「決まっておるわ、まずここらの妖怪を惨殺しそれを見て恐怖した人間と他の妖怪の感情を喰ってやるのさ…それを繰り返して我に纏わりつく結界を振りほどく力を取り戻したらこの空間を焼き払ってくれるわ…!」

 

如何にも凶悪そうに顔を歪め、目までもがパキパキとひび割れたような模様が走っていく。

 

霊夢「あっそ、それじゃ返す訳にはいかないわね」

 

「いだっ、いててててて!!その札を我に近づけるな!!」

 

霊夢「アンタみたいな危険な妖怪を、私が放っておくわけないでしょ?それとこの神社の御神体であるアンタにはしばらく働いてもらうわ」

 

「ご、御神体…?我がこのようなボロ小屋の…?」

 

霊夢「でも、いちいちアンタを白面とかって呼ぶのもめんどくさいわね…もっと簡単な呼び名を…アンタは真っ白だから『シロ』!今からアンタの名前は『シロ』ね!」

 

「な、シ、シロだとォ…?おい!我はそんな名前は嫌だぞ!」

 

霊夢「よろしくねシロ!!」

 

シロ「だからそんな名は…」

 

シロ(チッ、面白く無し…こうなったら絶対に殺してやる…ここら一帯の奴らも全員食ってやるぞ…!)

 

霊夢(やっぱりこんな危険な妖怪から目を離すのは危険だわ…いつか退治してやらないと…)

 

霊夢と、シロと名付けられた九尾の妖怪の影が真っ赤な夕焼けに照らされていた。




【魚妖】─ぎょよう
魚の形をして浮遊して移動する妖怪。大きさは数センチのものから数メートルのものまで様々。

【虫怪】─ちゅうかい
ムカデや蜘蛛の形をした妖怪。魚妖と共に群れを成している。
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