─時間のはざま
時順「どうじゃったぁ?シロの過去は?」
霊夢「…どうって言われても、肝心な所が見れてないんだから何とも言えないわよ…」
その時背後から雄叫びと共に何かが迫ってきた。
時逆「ほぉれ、来たぞぉ、運命か必然か…あたしらが幻想郷に帰ろうとするのを、白面の者の魂が付いてきたようじゃあ」
白面の者「ぐげ…待てェ…妖怪と人間…!」ズオオオオ
既に普通の中型犬程のサイズにまで弱体化した白面の者が移動中の時逆と霊夢を追いかけて来る。
眼が潰れながらも、ボロボロの身体を引きずるように必死に、助けを求めるように霊夢を追う。
霊夢「…ッ…シロ…もう大丈夫だからね!」
霊夢はそんなシロをやさしく抱き上げる。
だがその瞬間…
時逆「んんん?アタシら以外に、この時間のはざまに何かいるのかえ?」
ゴゴゴゴゴ
時順「時逆は知らんかぁ、これこそが…シロが幻想郷に入った真実!!」
巨大な龍が霊夢たちを囲っていく。
その龍はあまりに巨大で、見える鱗一枚だけで6畳ほどの大きさもある。
そしてその身をくねらせながら霊夢たちを攻撃するそぶりを見せる。
時順「さぁ、逃げるよォ!」
白面「…」
その時、白面の者がどんどん巨大化していき、ついには6メートル程の元の獣の姿に戻る。
そしてその口から火柱を吐き、龍の肌を焦がしていく。
霊夢「シロ…!」
白面「…娘、名は何という?」
霊夢「霊夢…博麗霊夢よ!」
白面「霊夢か…我もいつかはお前のような人間と共に暮らしてみたいな…」
白面は霊夢たちの元から離れると、単身で龍に戦いを挑む。
だが目も見えないし全身ボロボロの白面は大きな体躯に撥ね飛ばされる。
そして霊夢と時逆も龍に行く手を遮られ、白面は時空のはざまをはるか向こうに飛んでいく。
ある程度行った地点で白面ははざまに生じたひびに吸い込まれていく。
そして、500年前の幻想郷─
ビリビリ
白面「…ぶはぁ…!」
そのひびの先は、今まさに幻想郷の地に移動する妖怪たちの群れの中であった。
妖怪の群れに力なく流される白面の者は、はっきりしないこれまでの記憶に違和感を感じながら、徐々にその意識を失って行った。
そして、数日後…。ある小高い山の上に、白面の者は倒れていた。
鳥が白面の者から流れ出る血を舐める。
すると白面は頭を上げた。
ミーンミーン ミッチョワミッチョワ ジーンジーン
白面「…」
目が覚めた。
少し、暑いな…。よいしょっと
その白き者は立ち上がるが、そこで異変に気付く。
白面「…我は…何を…」
ボワァ
白面「目も良く見えぬ…」
確かに日光の暖かさを感じる。
しかし、ほとんど真っ黒な視界にわずかに光が入ってくるだけ。
その白き者はひどく傷だらけで眼も潰れているようで、腰からは9本の尾があるようだがどれもボロボロに千切れている。
白面「…おかしいな」
いくらジャンプし飛び跳ねても自分の体が宙に浮かない。
白面「…少し、疲れたな…」
白き者は見えない目を、カラカラな妖力を、千切れた尾を元に戻すため自らの周囲に結界を張り再びゆっくりと目を閉じた。
─そして、時と場所は戻り冥界の果ての洞穴。
時逆「─こうして、シロは自らの傷を癒すために、今の博麗神社がある場所で眠りについたのさ」
時順「その時に飛んだ欠片が、偶然ここまで飛んできたんだろうねぇ」
霊夢「さっきの龍みたいのは何なの?」
時逆「わしらにもわからんなぁ。ただあんな場所に居る龍と言えば…幻想郷に伝わる『龍神』ってやつじゃあないのかなぁ」
時順「さぁて、博麗の巫女よ。見るべきものはすべて見せた。どうだ、今のを見て…まだシロと一緒に居たい気はあるか?」
霊夢「…当たり前じゃない!さっきの時間のはざまで、シロはいつか私と一緒に過ごしたいって言ってたもん!!」
時逆「よろしい!ではそれを、あのインチキ妖怪にズバッと言っちゃいなあ」
霊夢「うん!ありがとう!えっと…時逆に時順!またね」
時順「気を付けなぁ」
霊夢「…おっと、肝心な事忘れてたわ。さっきの欠片、何とかしてくれって頼まれてたんだっけ。」キュイイイイ
時逆「ちょっ…まだあたしらがいるよぉ!!」
霊夢「霊符『夢想封印』!!」
霊夢の放った夢想封印はシロの欠片に命中し、欠片は粉々に粉砕する。
粉砕するさいに周囲の結界に籠っていた妖気が一気に噴き出し、霊夢は洞穴の外まで吹き飛ばされていく。
時順「やれやれ…危なっかしいやつじゃあ」
霊夢「さてと…さっさと紫に私の本意を教えてシロを探しに行かなきゃ」
霊夢がそう言い飛ぼうとした瞬間、目の前に八雲紫が姿を現す。
紫「…どう?アレを見て…まだシロと一緒に居たいつもり?」
霊夢「答えはもちろん!シロを封印したり倒そうとする気なんて私には毛頭ないし、これからは私がシロを守るわ!」
紫「本心からの答えね。分かったわ、シロを正式に幻想郷の住民として迎え入れましょう」
霊夢「ありがとう。ところで、シロは?」
紫「シロは今、妖怪の山に居るわ」
霊夢「そう、じゃあ行って来るわ!」
紫に本意を告げ、これからもシロと一緒に居ることを誓った霊夢。
霊夢はシロが居る妖怪の山へ向かって移動を始めた。