れいむとシロ   作:ねっぷう

14 / 101
第14話 「オヤウカムイ」

神奈子「強い…!私たちでもここまで苦戦するなんて…」

 

諏訪子「これが…悪神の力!!」

 

妖怪の山にある守矢神社。

その前にある湖に突如出現した巨大な蛇神。その名は…オヤウカムイ。

 

オヤウカムイ「…キエエエエエエエ!!」

 

 

そのころ、霊夢とシロは妖怪の山を下りる途中で休憩を取っていた。

 

霊夢「…」

 

シロ「…匂うな」

 

霊夢「また何か変な妖怪でも?」

 

シロ「違う、何か匂わないか?」

 

霊夢「…ほんとだ、臭いわね…」

 

突如妖怪の山に広がる何とも言えない悪臭。

それは霊夢とシロが会話をしている間にも強く広がっていく。

 

シロ「…」

 

霊夢「くさっ…!」

 

シロ「匂いはあそこからか…」フワ

 

霊夢「ちょっと待ちなさ…くさっ…ちょっと!」

 

匂いの根源の場所へと向かうシロとそれを追いかける霊夢。

シロは匂いの根源…大きな神社とその近くにある湖へと向かった。

 

霊夢「何アレ…?」

 

霊夢は湖の中を泳ぐ大きな黒い魚のようなものを見た。

 

シロ「…土地神か…」

 

霊夢「土地神?」

 

シロ「土着神とも言うな、古くより地方などに宿っておる神の事だ…」

 

霊夢「でもここの神って、確かアイツらが居たはずじゃ…」

 

早苗「霊夢さん!なんでこんな所に!?」

 

霊夢「早苗…!あんたこそ何やってんのよ?」

 

早苗「お願いです!私たちに協力してください!」

 

霊夢「協力って…まさかあの土地神を何とかしろって…?」

 

神奈子「『オヤウカムイ』!!」

 

霊夢「神奈子…!え、オヤウ…何?」

 

諏訪子「オヤウカムイ!昨日からこの湖に現れた邪悪な土地神!」

 

その時、湖を泳いでいた土地神・オヤウカムイが水面から飛び上がり、霊夢たちの前に姿を現す。

 

オヤウカムイ「キエエエエエエエエ!!」

 

その姿は頭を二つ持った巨大な黒い蛇で、それぞれの頭の喉元から人間の腕が一本ずつ生えている。

さらに黒い胴体には18枚もの大きな刃のような翼が付いている。

 

【挿絵表示】

 

 

早苗「出た!オヤウカムイ!!」

 

神奈子「あのオヤウカムイは私たち3人でも勝てない大物…」

 

霊夢「げぇ、襲ってくる!」

 

シロ「疾く消えるがいい!!」ギュオ

 

シロは元の姿に変化し、自分の尻尾を使ってオヤウカムイに攻撃を仕掛ける。

だがオヤウカムイの刃翼の前にシロの尻尾は防がれる。

 

シロ「我の尾に切れ込みが…!」

 

ガキイイイン

 

そのままオヤウカムイが身をくねらせるとシロは撥ね飛ばされる。

 

霊夢「次は私の番ね!」

 

シロ「おい、貴様では勝てぬぞ!勝てない相手には一旦逃げるのも手だぞ」

 

霊夢「イヤよ!アイツの出すこの悪臭を止めないと!!」

 

シロ「ふん、我はもう逃げるぞ!という事だオヤウカムイとやら。我は戦わぬのでそっちをやれよ」

 

オヤウカムイの大きな丸い目がギョロリとシロを見る。

するとオヤウカムイの額から浅黒い肌の痩せた鼻の高い老人が出て来る。

 

オヤウカムイ「その神と人間どもに味方しおって…お前も同じことよ!」

 

シロ「なにィ?」

 

霊夢「シロ!」

 

ザクン

 

オヤウカムイの刃上の翼が、シロを頭から真っ二つに裂いていく。

二つに裂かれたシロはそのまま湖の中に沈んでいく。

 

オヤウカムイ「はははは!一度滅ぼされたオレがたどり着いたこの地は良い所よ!!」

 

そう言うとオヤウカムイは再び湖に戻っていった。

 

霊夢「シロが…アレがオヤウカムイ…」

 

諏訪子「あのようにオヤウカムイはとても強力な蛇神…倒すには2人の人間の力が必要…」

 

神奈子「なので私と諏訪子で結界を張りオヤウカムイの動きを制限し、そこを早苗と霊夢が倒す!」

 

早苗「そうなんです!だから協力してください」

 

霊夢「…分かったわ」

 

霊夢(シロが死ぬわけないわよね…)

 

 

神奈子「それではこの湖の周囲に結界を張る。諏訪子」

 

諏訪子「うん」

 

ビリイイイ

 

湖の周囲に結界が張られる。

するとそれに驚いたオヤウカムイが再び湖から姿を現す。

 

オヤウカムイ「お前達、結界でオレを閉じ込めたかぁ!」

 

神奈子「私と諏訪子は結界を張り続ける!お前たち2人で何とかするんだ!」

 

霊夢「ええ!」

 

 

湖の湖底─

 

シロ(くそ…我がこのざまとは情けなし…こうなれば半分になったもう一体に任せるしか…)

 

シロ(我の半分は動けぬか…といっても、我自身もこのままじゃ何もできぬしなぁ…そうだ、人間に憑りついて元に戻ろう…くっくっく…)

 

 

オヤウカムイ「キエエエエエエエエエエ…」

 

霊夢「手ごたえはあるけど…何か決定打にかけるわね…」

 

早苗「そうですね、オヤウカムイを弱らせることはできても決定打となる一撃が…」

 

霊夢(くっ…こんな時にシロが居たら…)

 

オヤウカムイ「はっはー!俺は一度滅ぼされているんでな、もう負けることはないわい!」

 

オヤウカムイは刃状の翼を霊夢たちに向けながら突進する。

だが、その時に巨大な炎が飛びオヤウカムイの前を遮る。

 

オヤウカムイ「ぬう!?」

 

霊夢「…あ」

 

シロ「…んくく…」

 

霊夢「シロ!」

 

湖から飛び出してみたのは半分の片割れのシロだった。

 

オヤウカムイ「はっはっは!それよ!オレはな、刃向ってくる奴を真っ二つにするのが好きなのよ!特に化け物は真っ二つになってもまだ向かってくるがな、半切れのままごちょごちょ動くのを見るのが最高に面白いのだ!」

 

シロ「なあ霊夢…お前の身体を貸しな」

 

霊夢「…は?」

 

シロ「あの悪神は強い…かと言って我と霊夢とそこの緑が協力したとて倒せるかは分からない…」

 

早苗「ちょ、ひどいですね…」

 

シロ「だから我が霊夢に憑りついて戦う」

 

霊夢「でもそれってなんか危ないんじゃないの?」

 

シロ「…凄く疲れるな」

 

霊夢「…具体的には?」

 

シロ「知らん。まぁお前なら数週間は筋肉痛とやら…になるかもな」

 

霊夢「なんでそんな事やんなきゃいけないのよ!だったらそこの早苗にやらせなさいよ!!」

 

シロ「いや、これはお前がその身に心霊を降ろすことのできるが故…。このままではこの結界内で悪神を倒すことはできぬ」

 

霊夢「…分かったわよ、じゃあ早くしなさい」

 

シロ「…」

 

シロの半分の片割れは霊夢に重なると同化したように溶け込んでいく。

すると霊夢の全体に白みがかったオーラが発生する。

 

霊夢「これが…」

 

シロ(そうだ、我がお前に憑りついたのだ。さぁ、もう片割れも来るぞ)

 

湖に沈んでいたシロの片割れのもう一体が飛んでくる。

だがそれに立ちふさがるのがオヤウカムイ。

 

オヤウカムイ「けけけ、妖怪や他の神ではオレを倒せないと踏んで、妖怪が人間を強くしてオレを倒そうとするか!たがそうは行くか!!」

 

早苗「シロさんの片割れが…!」

 

ザクン

 

オヤウカムイの刃によってシロの片割れはさらに半分に切断される。

 

シロ「ぬぐぇ…!!」

 

オヤウカムイ「はははァ!オレは二度は滅ばんぞ!」

 

早苗「…よし!」

 

霊夢「早苗?」

 

切断されたシロのもとへ早苗は向かう。

オヤウカムイの攻撃を上手くすり抜けた早苗は、シロの片割れの2枚を自らに押し付ける。

するとシロは早苗と同化し、早苗も霊夢と同じように白いオーラが発生する。

 

早苗「私だってやれますよ!この湖のためですもん!」

 

シロ(…いいのか?お前では霊夢よりも反動が激しい、下手をすれば滅ぶぞ)

 

早苗「言ったでしょう、私の好きな、この湖のためと!!」

 

シロ(そうか、ならしくじるなよ)

 

霊夢「行くよ、早苗!」

 

早苗「はい!」

 

オヤウカムイ「同じことよ、お前たちも真っ二つに…!」

 

ガキン

 

オヤウカムイの刃は、霊夢と早苗を頭から切断せんとばかりにぶつかる。

だが、それは異常なほど硬くなった2人の皮膚の前ではなまくら包丁に過ぎなかった。

 

オヤウカムイ「オレの刃が…!そんな…またかよォ!?」

 

早苗「奇跡『白昼の客星』!!」

 

霊夢「夢符『封魔陣』!!」

 

オヤウカムイ「うぎゃああああああ!!」

 

2人の攻撃がオヤウカムイの巨体を後方へ吹き飛ばす。

水面に叩きつけられたオヤウカムイは2人に両手をかざす。

 

オヤウカムイ「も、もう懲りた!もう何もしない!オレは前にも神の力を得た人間2人にえらい目に会ってる!」

 

霊夢「…ちょっとシロ、止まりなさいよ」

 

シロ(ちっ、我を切り刻んだ恨みをぶつけようと思ったのだが…)

 

ヒュポン

 

シロ「…まあいいだろう」

 

早苗「一件落着…?」

 

オヤウカムイ「はーッ…オレはここを出て別の土地で暮らすとするか…」

 

神奈子「いや、お前はこの湖に棲んでもいいぞ」

 

早苗「神奈子さま!」

 

諏訪子「伝説ではオヤウカムイは悪神であるけど、その悪臭は病気や災厄を追い払い時に守り神になるという…という事だよ。でも、その匂いは辞めてよね!」

 

オヤウカムイ「…あ、ああ…」

 

オヤウカムイは湖の深くに潜っていった。

 

シロ「ふん、無駄な時間を使ったな」

 

シロは3つに切れた自分の身体を尻尾で抑える。

この程度では死なないがこの傷を治すには時間がかかるようだ。

そして霊夢と早苗も体中を筋肉痛が襲い何週間かは動けないようだ。

 

神奈子「感謝するぞ、シロ…と言ったか?」

 

シロ「…ふん」

 

シロは霊夢と小脇に抱えると博麗神社の方角へと飛び去っていく。

 

神奈子「アレが、あの凶悪な白面の者ねぇ…」

 

諏訪子「でもそんな悪い奴には見えないけどね…」

 

シロの過去を知り、それでもなおシロと共にいると宣言した霊夢。

そして自らをシロと名乗ったこの白い妖怪。

霊夢とシロは他から見れば…いいコンビに見えるのかもね。

 




オヤウカムイ
北海道の洞爺湖に伝わる土地神。自分の意志で悪臭を放つことができ、それは周囲の土地や人間にも被害を及ぼすが、疫病神などをその悪臭で追い払うとされる。巫女の霊力を司るなどの未知の力を持っており、巫女に憑いて低級な霊を祓うという説もある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。