れいむとシロ   作:ねっぷう

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第16話 「向日葵みたいに」

これはまだ霊夢とシロが妖怪の山に居た頃のお話。

まだセミが五月蠅いほど鳴き、太陽もさんさんと照る夏だった。

 

風見幽香「…いい天気ね」

 

彼女は風見幽香。

この向日葵が咲き乱れる花畑の近くに家を持つ妖怪だ。

彼女は今日も花畑の周りを散歩に出かける。

 

ウオー

 

幽香「…?」

 

声のする方を見てみると、そこでは数体の妖精に纏わりつかれる男が妖精を追い払おうと暴れていた。

 

男「うおーッ、離れろよ!このっ!!」

 

男は拳を振り回し、その拳が妖精に当たる。

顔を殴られた妖精は目に涙を溜めながら逃げていった。

 

男「へっ、ザマーみろって!!…うん?」

 

男は背後に幽香が居ることに気付くとそれに驚く。

 

男「…何だァテメェは!?テメェもやるってのかよ!?」

 

男は混乱しながら幽香を睨みつける。

 

幽香「…何もしないわよ、いいから早く里に帰りなさいな」

 

男「…里?…聞きたいんだがここはどこだよ?」

 

幽香「あぁ、貴方外から来たのね」

 

その男の染められた髪と服装からして、幻想郷の外から来た人間だと気づいた。

男は幽香の顔をじっと見ると安心したようにため息をついた。

 

男「いやぁ、危なかったぜ…さっきのへんなガキどもがちょっかいかけてきたから…よ…」

 

男は喋っている途中で膝を落とし、そのまま気を失ってしまった。

 

 

男「…」パチ

 

幽香「…」

 

男「うわ…何だよここ…」

 

幽香「私の家よ」

 

男「アンタの家かよ、ワルイな。んでよ、ここはどこだよ…?」

 

幽香「ここは貴方が居た外の世界とは隔離された『幻想郷』という世界よ」

 

床に敷かれた布団の上で男は目を覚ます。

 

男「げんそーきょー?どこだそれ?」

 

幽香「…貴方からすれば異世界に迷い込んだってこと。最近はここらも物騒だから、しばらくここに居てもいいわよ」

 

本来なら外来人は博麗神社へ連れていき、そこで元の世界に帰してもらうのだが今は何日も巫女が神社を開けているので巫女が帰るまで自分の所で匿おうと考えたのだ。

 

男「…」

 

 

次の日の朝─

 

幽香「…あれ、あの人どこ行ったのかしら?」

 

幽香が目を覚まし、男が寝ていた部屋を見ると男は布団をひきっぱなしで居なくなっていた。

顔を洗い、外を出ると庭の向日葵を眺めている男の姿が有った。

 

幽香「…何してるの」

 

男「お、いや…起きたら窓から一面に向日葵が見えたんでちょっと見てただけよ」

 

幽香「花とか好きなの?」

 

男「いや、普通。でも向日葵は好きだな。いつでも太陽にツラ向けてまっすぐ立っててよ…」

 

男は自分よりも背の高い向日葵を見上げながら呟く。

 

幽香「…それは結構だけど、できるだけ勝手に外に出たりしないでほしいわ」

 

男「あ…わり…」

 

その時、地中から大きなギョロ目の海老のような妖怪が2匹飛び出す。

その妖怪は男を細い腕で掴み、持ち上げる。

 

海老妖「久々の人間見っけ!」

 

海老妖「げへへ…はやく食おうぜ!」

 

男「な、なんでぇコイツら…放せよ!」

 

ドゴ

 

男は拳を振り上げるとそれを海老妖の顔に当たる部分を何度も殴る。

その拳は海老妖の殻をガンガン叩き、ひびを入れる。

 

海老妖「い、いってェ~~!」

 

海老妖「この人間、普通の奴より強いぜェ!早く頭からかじっちまえよぉ」

 

幽香「ちょっとアンタら…」

 

幽香はジャンプし、男を掴んでいる海老妖の前足を蹴りつける。

すると海老妖の腕は勢いで男を手放し、海老妖は後ろに倒れる。

 

海老妖「これはオメェの人間か…?だったら俺たちがもらっちま…」

 

幽香「アンタ達…ここが風見幽香の縄張りだって知ってるのかしら?」ギロ

 

海老妖「いてて…」

 

海老妖「…げ、おいコイツ…風見幽香だってよ」

 

海老妖「おうそうかい、あの風見幽香かい!話に聞くほど大した奴じゃなさそうじゃねぇか!!お前も食っちゃるわい!!」

 

2匹の海老妖は殺気立つ風見幽香に食って掛かる。

そして鋭い爪の付いた足を振り回して攻撃する。

だが幽香はそれを軽々と避けて見せ、一匹の海老妖の額に手を当てると衝撃波のようなもので海老妖を吹っ飛ばす。

 

海老妖「うげぇ…強いぜコイツゥ…」

 

海老妖「うへぇ~!逃げようぜ…」

 

幽香「駄目よ…私の縄張りを荒らした罪…その命で償いなさい!」

 

幽香は持っていた日傘の先に何か光を溜め始める。

 

男「やめろよ!!」

 

ガバッ

 

日傘から何か巨大な光線が発射される直前で男は幽香に飛びかかり止めに入る。

2人で地面を転がり、男は数メートル吹き飛ぶ。

 

海老妖「ひえええ~!!」

 

2匹の海老妖は元来た地中の穴に入り、そのまま逃げていった。

 

幽香「いたた…貴方ねぇ…」

 

男「見逃してやれよ…何も殺すこたぁねえと思うぜ…」

 

幽香「…」

 

 

そのあと家に入り、2人は昼食をとる。

 

男「…お前、名前何てんだっけ?」

 

幽香「…風見幽香」

 

岩崎「そっか、俺は岩崎ってんだ」

 

幽香「岩崎…」

 

岩崎「幽香は強いんだからさ、その力を自分より弱い奴に向けちゃダメなんだぜ。俺は自分より強い奴としか喧嘩しねーんだ!だってよ、あの調子こいた面を叩いてやった時のあの顔…面白いんだぜ?」

 

幽香「くく…ふっ…」

 

岩崎「何笑ってんだよ?」

 

幽香「面白いわね、貴方」

 

岩崎「…へへへ」ニコ

 

その時から、私はその岩崎の笑顔を…また見たくなっていた。

 

気付いたわ、この人は私と似てるんだって。

彼は人間だけど他の人間から嫌われる…私も妖怪でありながら妖怪に嫌われる…。

似た者同士だったんだわ。

そう、私は彼に恋をした。決して妖怪と人間は相いる事は無いというのに。

でも私はこの人との生活を楽しもうと思った。

 

もう博麗の巫女が神社に帰ってきていると知っても、私はそれをあえて口に出さなかった。

 

 

─そのころ、無縁塚と呼ばれる結界の綻びがある墓地では。

外の世界からやってきた吸血鬼が無縁塚に落ちて来た。

 

 

岩崎「…今日はずっと雨だったなぁ」

 

幽香「そうね」

 

岩崎「…なぁ、幽香はさ…好きな男とか居んのかよ?」

 

幽香「えっ…どうして…?」

 

岩崎「いんやァ、別に…」

 

幽香「…」

 

岩崎「…」

 

ゴオオ…

 

幽香「!?」

 

岩崎「ん、どうした?」

 

幽香「…近くに妖が居るわ…とても強力な…」

 

岩崎「なに!?」

 

2人が外へ出ると、遠くから黒い衣装に身を包んだ、色白な男が人里の方向へ飛んでいた。

 

幽香「吸血鬼ね。あの様子じゃ人間を求めて人里へ向かっているのね…」

 

岩崎「おい、何とかしなきゃよ!」

 

幽香「どうして…他の人間の為に、危険な目に会おうとするの…?」

 

岩崎「なんでかな…人間だからかな?でもよ、俺ァ向日葵みたいに…お天道さんにツラァ向けて立ってたいんだ!」

 

幽香「…しょうがないわね、じゃあ私たちであの吸血鬼を止めましょう!」

 

岩崎「おう!何か武器になるもんはあるか?」

 

 

 




今回は霊夢とシロではなく風見幽香と一人の人間にスポットを当ててみました。
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