あの宴会の次の日。
ようやく後片付けを終えた霊夢は縁側でぐったりと寝に入り、シロは神社の上で日の光を浴びながら丸まっていた。
シロ「…」
先刻の宴会での、伊吹萃香との会話を思い出す。
萃香『なぁ白面…じゃなくてシロだっけ?お前さん、そんなにここでの生活が退屈なら地底にでも行ってみたらどうだい?』
シロ『…地底?』
萃香『ああ、嫌われ者が沢山住んでるところさ。そこならアンタが望むような、憎しみや恐怖の感情をたくさん食えるんじゃないかい?』
シロ『…』
萃香『その地底に一本角のでかい鬼が居たら「伊吹萃香の知り合いだ」って言えば歓迎してもらえるさ』
シロ『…そうか』
シロ(地底か…)
霊夢「…」クカー
シロ「おい霊夢!!」
霊夢「うわぁ!…ってシロ、何よ?」
シロ「地底とはどこから行けるのだ?」
霊夢「なに、アンタ地底に行きたいの。妖怪の山まで行って天狗たちにでも聞けば?」
シロ「…そうか、あの山のどこかに入り口があるのだな」
霊夢「気を付けてねー。それと何か面倒事起こさないでね!」
シロ「わかっておるわ!」
シロは尾を引きながら妖怪の山の方角へ飛んでいった。
文「…いやぁ、この写真なんてどうです?」
にとり「お、いいねぇ。鬼と一緒に料理を食べる9尾の妖怪かぁ」
美しい滝が見える岩場で写真を見せあっているのは鴉天狗の射命丸文と河童の河城にとりだ。
河童は外の世界と比べても恥は無いほどの科学力を持ち、昔の妖怪の山では天狗たちと共に鬼のもとで働いていた。
ズドォン
にとり「おや、何だい!?」
文「…アレは…」
シロ「我は白面の者也!天狗は居るか!?」
上空に見えるのは大きな獣の姿となり、尾を振り回しながら火炎を吐くシロだった。
にとり「あ、あ、アレってましゃかか…は、はく…」
文「あやや、一体何の用でしょうか?」
記憶に残る恐ろしい白面の者を前に怖気づくにとりを置き去りにシロのもとへと恐る恐る飛んでいく文。
シロはそれに気づくと地底はどこから行けるかと尋ねる。
シロ「貴様はいつぞやの天狗か。一つ聞きたき事がある」
文「は、はぁ…なんでしょうか」
シロ「地底はどこから行ける?」
文「なんと、旧都に行きたいのですか?ならば山を上っていくと大きな穴がありますのでそこから…」
シロ「…」ビュオ
それを聞くとシロは何も言わずに山の上の方に向かって飛び去っていく。
文「…大丈夫でしょうか、旧都の人達は危険ですから」
にとり「…あの名前を言うだけでも恐ろしい白面の者がたかが旧都の連中にどうにかできるわけないでしょ…」
シロは山の頂上付近にぽっかりと空いた穴に入り、どんどん下へと降りていく。
真っ暗な旧都への道をうっすらと白く発光する妖怪がとんでもないスピードで下っていくのは、道中の妖怪の目を引いた。
シロ「…」
そしてついに、眼下にはオレンジ色の灯りが見える。
そのまま下っていくと、ついに広い都…街並みが広がった。
シロ「ここが…ほう、確かにあの鬼の言う通りだ…」
街の中に満々に漂う邪な気…。
それはシロにとっての好物であり、確かにシロにとって居心地のよい場所であった。
シロは体をぐにゃりと変形させ、女の姿に変化する。
シロ「少し、見てみようか…」
そのまま街道に降り立ち、道を歩いていく。
ザワザワ
旧都の住民が建物の影などからじっとシロを見ながら何かささやき合っている。
大物が突然地底へ来訪してきたのだ、気になるのも仕方ない。
シロが旧都の中心に向けて歩いていると一人の何者かが前に立ちふさがる。
シロ「この我の前に立ちふさがるお前は何者だ?」
星熊勇儀「…アタシは鬼の星熊勇儀。お前さんの出す悪意満点の妖気にこの旧都の連中がそわそわしてる。お前さんこそ何者だい?」
その白いシャツに紫色の長いスカートをはき、額からは赤い一本角が突き出た鬼は星熊勇儀と言った。
どうやら彼女はこの旧都の妖怪たちの代表としてシロの前に現れたらしい。
シロ「…我は白面の者」
勇儀「!白面…」
シロの白面の者という言葉に対してやはり驚いた反応を見せる。
周りの物陰からこっそりを様子をうかがっていた妖怪もその言葉を聞いたとたん姿を引っ込めてしまう。
シロ「お前はこの地底という場所の長か?伊吹萃香という奴の勧めでこの場所にやって来た」
勇儀「まさかあの白面の者が幻想郷に来ていたとはねぇ。なるほど、萃香の知り合いかい。わざわざこんなところまでよく来たね」
シロ「この地底には陰の気を持つ者が多くいると聞いた。それらの者の感情を食うために我はここを訪れた」
勇儀「ほう、橋姫みたいなものかい。…生憎、私の性分でね、白面の者…お前さんと一度戦ってみたいねぇ」
シロ「浅はかな…我とお前が戦ったとてお前の敗北は天の理地の自明也…辞めておいた方が身のためだぞ」
勇儀「あの白面が他人を心配するとわねぇ」
シロ「…」
シロは都よりはるか上に舞い上がる。
勇儀もそれについていき、空中で2人が相対する形となる。
勇儀「方法はどうするんだい?スペルカードかい?それとも…」
シロ「我はそのすぺるかっどという物がよくわからんのでな、お前の好きな方でよろし」
勇儀「じゃあ、これで!」
勇儀は細腕に力を込めるそぶりを見せると、普通の女と変わらない細い体が引き締まった筋肉質に変化する。
そしてどこからか酒の入った盃を取り出す。
勇儀「ハンデさ。アタシはこの酒をこぼさないように…」
シパン
シロ「…」
シロの尾の先が勇儀の手をかすめ、盃の中の酒がとぽとぽと下に毀れる。
勇儀「やるね、ハンデはかけるなって事かい!いくよ!!」