れいむとシロ   作:ねっぷう

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第2話 「2人と1匹」

霊夢「ちょっとー!紫ー!!居るんでしょー!?居るなら出てきなさいよー!!」

 

シロ「…」

 

霊夢「ちょっとー!居ないのー!?聞きたいことがあるんだけどー!!」

 

シロ「…」

 

部屋の中で霊夢は紫の名前を叫び続ける。

おかしい、いつもは呼ばなくても出て来るのに、今日は忙しいのか?

 

霊夢「…そうそう、アンタが出てきた場所をもう少し調べてみたわ。500年前からずっと眠ってた大妖怪なんだってね」

 

シロ「よく覚えていない…が、我は眠る前に我自身に封印をかけて丁度この地で眠りについた…だが何故眠りについたのか覚えていない」

 

霊夢「ふぅん、アンタが昔に何かやらかしちゃって、それで封印されちゃったんじゃないの?この妖怪は超絶に恐ろしいので眠ってる間にガチガチに結界で固めて封印しちゃいまーすみたいな事書いてあったし」

 

シロ「くどいぞ、覚えておらぬわ。だが、それより前の事なら覚えておるぞ」

 

霊夢「なになに?アンタの事教えてよ?」

 

シロ「…ふふふ…誰が貴様のような一個の人間に教えるか!!」クワッ

 

ふわふわと浮かびながら寝転がっていたが、急に立ち上がり両手を上に挙げ牙の並んだ口を開いて大声を出す。

 

魔理沙「…」

 

部屋の開けられた戸の外から誰かがこっちを覗いていた。

 

霊夢「あら、魔理沙来てたの」

 

魔理沙「だ、だだ誰だソイツ…?」

 

 

霧雨魔理沙「なんだァ、びっくりしたぜぇ。てっきり霊夢がまた訳のわからん奴でも捕まえてきたのかと…」

 

霧雨魔理沙、人間の魔法使いだ。

人間でありながら人間の里での生活を避け、森に籠っている。

森に籠もる理由の一つは、人が寄りつかないからである。研究中に邪魔が入って欲しくないし、人に会いたいときは自分から出掛ければいい。

背格好は霊夢と似ているが、服装は正反対で霊夢は巫女で和風っぽい服装をしているのに対し、魔理沙は白いブラウスの上に黒いベスト、下は黒いサロペットスカート、頭には黒い三角帽と如何にも西洋の魔法使いっぽい感じだ。

 

シロ「訳の分からん奴だと!?よいか、我ははく…」

 

訳の分からん奴と言われ少し怒り気味に声を荒げるシロだが、背後からの霊夢の視線に気づくと声のボリュームを落としていった。

 

霊夢「…」

 

シロ「…シロだ」

 

魔理沙「シロって、何か犬みたいな名前だなー」

 

魔理沙はそう呟いた。

 

シロ「…」

 

しかし、シロは何かの気配を感じ取ったように少し険しい顔をして遠くを見た。

 

霊夢「どうしたの?」

 

シロ「匂うな。また我の妖気に誘われた奴が現れたようだぞ」

 

霊夢「ええっ、また?」

 

シロ「我の妖気をたかが鬼や獣と侮るでないぞ。500年分の妖気が一気に放出されたのでしばらくはそんな奴がうじゃうじゃ出てくるだろうなぁ、くっくっく」

 

霊夢「また魚妖や虫怪って奴ら?」

 

シロ「いんや、確かに虫怪の一種だが、虫怪にしてはデカいな」

 

霊夢「そう!じゃあ魔理沙、行きましょ!」

 

魔理沙「お、おい!わかったから腕引っ張るなって!」

 

シロ「…理解できぬな、2人の人間」

 

2人で外に出ようとするシロが何気なくそっぽを向きながら尋ねた。

 

魔理沙「ん?何がだ?」

 

シロ「何故人間は他の奴の事を気にする?血のつながっていない、あわや顔を合わせた事もない奴らの為に何故足を動かせる?」

 

霊夢「私だってめんどくさいわよ、でも…役目だからね」

 

シロ「…」

 

霊夢「っていうか、アンタも行くのよ!」

 

シロ「いだだだだ!!わかったからその札を仕舞え!」

 

霊夢はシロを封印していた札の角でシロの頭をつつきながら腕を掴んで外に連れ出した。

 

 

 

人間の里付近の林では大きな虫の妖怪が人里へ向けて進んでいた。

 

「モウスグダ…!モウスグデニンゲンガクエル…!!」

 

だがその巨大な虫怪は途中でその足を止める。

ショウリョウバッタを思わせるやや細い体躯に、顔はトノサマバッタのような丸みを帯びた頭部。

茶色い甲殻に覆われた巨大な体から杉の大木のように伸びる太く長い脚。

 

「ナンダ…コノチカヅイテクルヤツラハ…」

 

顔の半分以上を占める大きな丸い目に映る小さな黒目を動かして、向かってくる3つの影を見る。

 

霊夢「居たわ、アレね!」

 

魔理沙「でっけぇバッタの妖怪だな!!」

 

シロ「恐らくは我の妖気を吸って巨大化したな…」

 

魔理沙「…シロ、お前目つき悪いな」

 

シロ「目…?」

 

魔理沙「さっきからずっと下から睨むみてぇな目しててよ…」

 

シロ「…目に関しては前にも何者かに言われた気がするが…」

 

眼を斜め上に向けながらこめかみを爪でぽりぽりとかく。

 

「ワシノマエヲジャマスルノカキサマラ!」

 

霊夢「うらっ!!」

 

低い声を響かせながらなお前進する虫怪霊夢は弾幕を放ち、虫怪を攻撃する。

しかし巨大なバッタの虫怪は弾幕をジャンプで避けたり、当たっても硬い甲殻で防いでしまう。

 

霊夢「効かない…!?ちょっとシロ!どうすればいいの?」

 

ビシュ

 

シロ「…だまれ」

 

霊夢「いたっ…」

 

シロは近づいてきた霊夢の肩を爪で引っ掻く。

 

シロ「貴様は勘違いしておるな…我を便利な動物とな。なんで我が貴様如きの役に立たねばならん?我は、いわば貴様に憑りついてるのだぞ…それに我にとって人間も妖怪もどうでもいい餌でしかない…よいか、我は大妖怪『白面の者』なのだぞ」

 

霊夢「そう…じゃあアンタが先に滅びなさいよ!!」バシュ

 

霊夢も頭に血が上ったのか、怒りながらシロに札を飛ばす。

 

シロ「そのような攻撃、受けたとて寸分の痛みも感じぬわ!」

 

ゴキャ

 

シロの尻尾が霊夢を突き飛ばす。

 

魔理沙「こ、コラお前らそんな喧嘩してる場合じゃないだろ!」

 

霊夢「くっ…!」

 

シロ「いっ…たたたたたた!!」

 

霊夢が咄嗟に例のお札をシロの足の甲に貼りつけ、そこをお祓い棒の柄の部分をグリグリと押し付ける。

だがその間にも虫怪はこちらに向けて攻撃を準備をしている。

 

シロ(どうもあの娘相手だと調子が出んな~…早いとこスキを見て殺さないと面倒臭くなるな…)

 

霊夢「ちょっと!はやくアイツの事教えなさいよ!」

 

シロ「わかったよ…良いか、あそこまで大きな虫怪となるとお前達では一筋縄じゃ行かなくなるな」

 

魔理沙「じゃあ私たちでスペルカード使いまくってごり押しだ!」

 

シロ「話を聞かんか…。アレは虫怪の中でも虫が変化した奴だ。変化は人間の唾に弱いのでお前達があの虫怪の両目に唾をかけ、そこを我が止めを刺す…」

 

魔理沙「唾ァ!?なんかショボいなぁ…」

 

霊夢「よし、唾ね!わかったわ!」

 

「キサマラモクッテヤルワアア!!」ビュオ

 

魔理沙「あぶねっ!」

 

虫怪が跳躍し大顎を使った攻撃に出る。

シロは尻尾で霊夢と魔理沙を突き飛ばして攻撃を無理やり回避させる。

虫怪の顎が丁度霊夢たちが居た位置でガチンとかみ合わさった。

 

「キサマ、ナゼヨウカイノクセニニンゲンノミカタヲスル!?」

 

虫怪は霊夢らを庇ったシロにそう問いかけた。

 

シロ「くくく、それはなァ、我が…コイツらを殺してみたいからよ…」

 

「フルクサイジジイノケモノガ…ワシニカテルモノカ!」

 

シロ「…」

 

虫怪は口から黒い液体を高圧の水鉄砲のように発射する。

それを霊夢たちは交わしつつさらに上に飛翔し、スペルカードを用意し、その符に唾を付ける。

 

霊夢「魔理沙、次に奴が飛んできた時にせーので符を発動するわよ、いい?」

 

魔理沙「ああ、わかった!」

 

シロ「くっくっく、これは傑作だ…たかが100年生きれば長寿と聞く虫怪が、この白面の者を爺呼ばわりとは…」

 

「ナニガオカシイイイイイ!!?」グオオ

 

シロ「お前の愚暗さが…いと面白いのだァァァ!!」

 

シロは向かってくる虫怪を尾で薙ぎ払う。

その勢いで巨大な虫怪は大きく吹き飛んでゆく。

その方向は…

 

魔理沙「来たぜ!」

 

霊夢「ええ!霊符『夢想封印 散』!」

 

魔理沙「よし、この唾を付けたミニ八卦炉で…恋符『マスタースパーク』!!」

 

ズド ドムン

 

「ギエエエエエエ、メガ~~~~!!」

 

2人の攻撃がそれぞれ両目に命中し、虫怪の目はガラスのように割れてしまった。

割れた目を前足で押さえながら、その場で右往左往する。

 

シロ「貴様…本当に我に勝てるつもりだったのか?思うてはいぬであろう。何せ、貴様は…弱いからなァ」ニタリ

 

ゴオオオオ

 

シロの吐く火柱によって虫怪は消滅してゆく。

最後、虫怪が燃えた後には小さなバッタの死骸が転がっていた。

 

魔理沙「うおお、シロのやつ強いな…」

 

霊夢「自称大妖怪様だからね」

 

2人と1匹の協力によって虫が変化した巨大な虫怪は滅ぼされた。

だが、この場に向かっていたころからずっとシロをこそこそ見ていた影が…

 

シロ「…」




【変化】─へんげ
今回の場合は物や動植物が超常的な理由で外観を変え、化け物になったもの。今回の虫怪は普通のバッタがシロの妖気を浴びて巨大な虫怪に変化したもの。
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