とら「白面よ、おめぇ何人間のカッコしてそんな女に憑いてるんだよ。ていうか、なんでここに居る…?」
シロ「…シャガクシャア…!貴様こそ何故ここに居る…?」
霊夢「シャガクシャ…そう、思い出したわ、アンタは外の世界でシロを倒した妖怪ね…!」
とら「何だかわからんがそこの女と白面!わしをシャガクシャなんて名前で呼ぶんじゃねぇ!わしはとらだ」
シロ「貴様もだシャガクシャ!我を白面と呼ぶなよ…我はシロだ」
霊夢とシロ、とらは互いに睨み合う。
だがとらは口の端をくいっと引き上げ、鋭い歯を見せて目じりを下げると大口を開け笑い出す。
とら「ぎゃはははは!お前もどっかの妖怪が変化してできたその結界に雁字搦めにされてちゃ、その様かよ!天下無敵の白面の者が、こんなチャチな結界の中に住む人間の女に憑りついてるだってよ!外の奴らが知ったら奴らも大笑いするだろうぜぇ!」
シロ「貴様こそ、あの時我を倒したのにあの後滅んでしまったのか?情けないな」
とら「うるせぇや!」ブン
とらは剛腕を振るい、シロの細い体を砕かんとばかりに攻撃を仕掛ける。
だがシロはそれらの攻撃を尾で防ぎ、腕をとろうとする。
とら「ぎぃい…!」
シロ「くはは…哀れよのう!」
腕をとったシロはそのままとらの身体を持ち上げ、余ったもう一本の尾をとらの顔面に突き刺そうと勢いよく振り下ろす。
とら「哀れなのはおめぇよ…白面…わしらに渡された引導を忘れたかよ!」
とらの高質化した髪の刃がシロの尾に何本も突き刺さる。
そのまま体をひねると、シロの尾はとらの身体から剥がされ、髪の刃によって切り裂かれる。
シロ「ぎげぇッ…!?」
とら「ほらな!!」ギュオ
シロ「くそめェッ…!!」ボオオオ
シロととらは同時に火炎を吐き、2つの火柱がぶつかり合う。
全てを消し去り闇だけを残す青い炎と全てを燃やし尽くし周囲を明るく照らす赤い炎がつばぜり合いを繰り広げ、最終的にその間で爆発が起こる。
その爆炎がシロに降りかかり、シロが変化していた人間の皮が燃やされていく。
とら「ついに正体を現したな、白面!」
シロ「舐めるなァ~!!」
シロは両腕を振りかざし、とらを引き裂こうとする。
が、とらはシロと手を掴み、そのまま空中で押し合う。
シロ「何故だァ、何故我がお前に対してこれほどまでに後れを取る…!?」
とら「おめぇは他の奴の憎しみや恐怖を喰って強くなる…前にも言ったろ、わしはもうお前を憎んでねぇってよ。憎しみが足りてねぇんじゃねぇか?」
手を離し、シロの胸を蹴りつけるとら。
そして頭を後ろに大きく引くと、雷を纏わせた頭で頭突きを食らわす。
シロ「貴様ァ!やはり汝と我にはよくよくの宿縁があるらしい…!」
とら「けっ、そんなもん糞くらえだぜ!!」グイ
頭突きを喰らった箇所から煙を出しながら吹っ飛んでいくシロにさらに電撃を浴びせようと雷を放出するとら。
だが…
バチィ
霊夢「アンタ…」
とら「な…女…」
雷の前に札をかざし、それを防ぎしは霊夢だった。
シロ「…」
霊夢「やりすぎよ」
とら「…ほ~。ほ~~~~~ぉ?」ヌッ
霊夢「な、何よ…?」
とら「白面よ、おめぇはわしだな」
シロ「…何を言うておる?」
とら「わしもずっと一人だったが…いつしかわしの後ろには一人の人間が付いてた。おめぇも、わしみたいに背後を守ってくれる人間が現れたって事だァ…けひひ。そこの女がお前を助けた時の、お前の安心したような顔を見て分かったぜ」
シロ「愚かな、我はただこいつに憑りついておるだけだぞ…殺すためにな」
とら「お前がその女を殺せる隙はさっきから何度もあった。今もだ。それをなぜ殺さない?」
シロ「…」
霊夢「…」
シロ「ふん、まぁコイツに憑いてれば、退屈はしないのでな…」
とら「そうかよ、お前も変わったな、白面…」
シロ「…我は名も変わった…『シロ』とな…」
とら「ふん、じゃあわしも『とら』だ」
霊夢「それじゃ、仲直りもしたところであの雲、どうにかしてくれない?」
とら「その前によ、わしからも一つ聞きたい。この結界の中に『蒼月潮』って人間は居るか?」
とらがそう問うた時、とらと霊夢たちの間の空間にぱくりと切れ目が入る。
その切り目はさらに開いていき、中にはギョロ目のついた真っ黒い闇が広がっている。
そしてそこから現れたのは、スキマ妖怪・八雲紫だった。
紫「せっかく気持ちよく寝てたのに…まぁいいわ。長飛丸…いえ、とら。その質問は私が答えるわ」
とら「けっ、わしはおめぇなんざ知らねぇや」
紫「ああ、紹介が遅れてしまったわ…私は八雲紫。この幻想郷を管理している妖怪ですわ」
とら「いいから、とっとと答えろよ…」バリ
とらは少し苛立った表情を見せ、額から電気を少し走らせる。
紫「答えは…その蒼月潮という人間はここには居ない」
とら「…そうか…」
紫「この幻想郷は、外の世界で幻想となったものや力を失った妖怪や神様たちが棲むところ…たぶん、その蒼月潮くんは凄く影響力のある人でしたのよね?」
とら「じゃあよ、この外でうしおが死んで、うしおを知ってる奴らも全員死んだら、うしおはここに来れるか?」
とらは紫、霊夢とシロに背を向けながら、少し寂しそうにそう言う。
紫「わからないわ」
とら「ふん…あーあ、わしゃ何でこんなちんけな所に来ちまったんだろうなぁ…」
そう呟きながら両手を上にあげる。
すると幻想郷の空を覆っていた分厚い黒雲が、徐々に晴れ始めた。
どんどん黒雲は白く、薄くなっていき、ついにその隙間から暖かな日の光が差し込んだ。
とら「ほらよ、これでいいんだろ?」
紫「よろしい。じゃあまたね、皆さん~…」フッ
紫は再び空中に出現させたスキマを通ってどこかへ行ってしまった。
霊夢「…さて、とらだっけ?アンタこれからどうするの?」
とら「そうだなぁ…」
魔理沙「おーい!あの妖怪倒したのかー?」ギュオ
魔理沙が箒に乗ってこちらにやってくる。
とら「あの女にでも憑りついてみるか…」
魔理沙「ん?何だよ、まだ何かしようってのか?」
とらは魔理沙の肩に乗り、頭を手で掴み、自分に近づける。
とら「いいか、女…たった今わしはお前に憑りついた…」
魔理沙「私にか?苦労するぜ?」
とら「ふん、何かよくわからんが…お前は…」
とら(アイツみてぇに…)
とら「面白かったからよ!!」
魔理沙「ちょっ、オイオイ…なぁ霊夢、コイツどうにかして…」
霊夢「あら、似合ってるんじゃない?丁度髪の色ととらの色がそれっぽいわよ」
シロ「くくく…」
魔理沙「くぉら他人事だと思って…!」
とらが一人の人間を捜すために黒雲を呼び雷を落とし、幻想郷の天気を狂わせた異変はこれにて解決された。
だがこのとらの幻想入りが、ある者にとっての因縁に終止符を打つことになるとは、まだ誰も知らなかった。