れいむとシロ   作:ねっぷう

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【※忠告】この話にはアニメ組、原作未読組にとっての重大なネタバレ要素を含みます。お気を付けください。


第28話 「字を伏せられしその妖」

妹紅「やっと会えたな…」

 

「あぁ?何よ、お前は?」

 

霊夢「やっと会えたって…まさか…コイツが…!」

 

妹紅「そうさ、寺子屋の子供たちを喰い殺し、慧音にも消えない傷を負わせた…」

 

「白面の者に…字伏とはね…。まぁいいわ、お前達まとめて喰ってやるわ!」ボオオオ

 

とら「なにおぅ!テメェ、まさか字伏かよ!?」

 

シロ「…そうか、あの我の紛い物か!」

 

そのシロにほぼそっくりな外見を持ち、とらと似た妖気を放つ妖怪はシロととらに青い火炎を放出する。

シロととらも負けじと炎を吐いて応戦する。

その妖怪は3本の鋭い爪でとらを攻撃し、その自在に操れる髪でシロを攻撃する。

 

シロ「ぬぅぅ…」

 

とら「強いぜ、コイツ…」

 

 

交戦するその妖怪を見つめながら、妹紅は霊夢にその妖怪について明かす。

 

霊夢「じゃあ、アンタの仇の妖怪ってアイツなのね…」

 

妹紅「あぁ、秋ごろに時逆という妖怪に教えてもらったのさ」

 

霊夢「時逆…アイツね」

 

妹紅「霊夢は『獣の槍』を知っているか?」

 

霊夢「紫から聞いたことあるわ。妖を倒すためだけに作られた、使用者の魂を削り邪を裂き鬼を突く退魔の霊槍…!」

 

その槍の事を前に話してもらった時の紫の怯えようったら面白かったけどね。

 

妹紅「…獣の槍を知っている前提で、ここから話そう…。昔、青藍という女が居た。その女は外の世界の山中で獣の槍を見つけ、その使い手となった」

 

霊夢「ちょっと待ってよ、あの妖怪とその青藍という人に何の関係が…?」

 

妹紅「そして、そのまま獣の槍を使い続け魂を完全に削られた者はどうなると思う?」

 

霊夢「…まさか…!」

 

妹紅「獣の妖怪となるのさ。その妖怪共は名前はおろか字さえ伏せられた『字伏』と呼ばれるようになる…」

 

魔理沙「じゃあ、あのとらも…」

 

妹紅「とらも字伏よ。そしてあの妖怪も字伏」

 

霊夢「でも、とらとあの妖怪が同じ種族って言うなら、なんであの妖怪はシロとそっくりなのよ?」

 

 

話している間にも、シロととら、その字伏は戦いを繰り広げる。

シロの尾の攻撃が字伏の体表を切り裂き、人間に化けていた字伏の皮が引きはがされる。

 

とら「へっ、どんな字伏かと思えば…マジかよ…!」

 

その姿は4~5メートルほどの獣で、体つきはとらと似通っているが、獣時のシロとそっくりな頭部を持ち、全身に薄青い毛を持ち、頭からは紺色の長い髪の毛が生えている。

 

【挿絵表示】

 

 

シロ「面白し、我の紛い物が…我はこの世に一体で十分だ!!」

 

 

妹紅「字伏は獣の槍に刷り込まれた白面に対する憎しみだけが強く残る。そしてそのまま憎しみの消えない字伏は何になると思う?」

 

霊夢「それは…!」

 

妹紅「憎しみの化身である白面そのものへと成り果ててしまうのさ」

 

霊夢「じゃあ、あの妖怪は…」

 

妹紅「その女は獣の槍を手にし、やがて変わっていった…自らの名前のままに、青く蒼く…『青藍』!!」

 

 

2か月前─

 

妹紅「お願いです、時逆殿…私に…20年前の出来事を見せていただきたい」

 

時逆「ふぅむ。あたしを見つけられたなら、相応の執念と実力、使命がある者と見た。いいだろう、20年前に連れて行ってやろう」

 

妹紅「私は、20年前に仲が良かった子供たちをある妖怪に食われ、私の親友もその時傷つけられた。その妖怪の正体を教えていただきたい」

 

時逆「よし、じゃあついてきなぁ」

 

妹紅「うわ…」

 

時逆「あたしゃあ時を逆さに手繰る妖怪さァ」

 

妹紅と時逆はともに時間のはざまを移動していく。

そこには過去20年前までの様々な歴史が描かれており、その中に寺子屋が映し出されていた。

だが時逆はそのさらに奥へと妹紅を連れていく。

そこには何百年も前の自分や知り合いが映し出され、さらに奥に行くと白面の者、シロが映る。

 

妹紅「時逆殿、どこまで…?」

 

時逆「お前さんのその仇の妖怪は特別な妖怪なんだ。だからまず何故特別と言われるかをあたしと一緒に見に行くのさァ…」

 

妹紅と時逆は時間のはざまの穴に入っていく。

妹紅は約1300年前の中国の都にたどり着いた。

 

──昔、外の世界の中国という国にある女が居た。

その女は名を『青藍』と言い、夫を持ち、3人の子供と共に普通に暮らしていた。

 

青藍「嫌ねぇ、この都の上を9つの流星のような物が通ったって…」

 

夫「あの噂に聞く白面の者がついにこの都にまで目を付けたか…」

 

青藍「心配ないわ、王様に使える兵隊さんがすぐに倒してくれるわ…」

 

夫「…そうだといいんだがな…」

 

青藍の住む都に白面の者が目を付けた。

それは既に都中に広まっており、都の王とそれに仕える兵士たちは武器を揃え、陰陽道に精通する者を集め白面を撃退する準備を進めていた。

 

その1週間後、ついに都の隣の森から白面の者が姿を現し、都を襲撃した。

強力な武器を持った兵士と陰陽師たちは白面を数日止めたが、それらは全て白面によって滅ぼされた。

 

都を守る者がほとんど居なくなり、都は白面の者に蹂躙された。

やがて都を焼き尽くした白面はいつものように邪悪な笑みを浮かべると、次に滅ぼすべき場所を求めて飛び去って行った。

 

青藍「…貴方…」

 

全滅した都の住民の中で唯一生き残った青藍。

彼女がへたり込んでいる瓦礫の中には焼け焦げた家族の死体が虚しく横たわっていた。

 

青藍「うわああああああああああああああああ!!」

 

おのれ…おのれ白面の者!!

許さぬぞ、いつか必ず滅ぼしてくれる…!

 

狂乱しながら山中へと入り、そのまま7日が経とうとしていた。

白面への憎しみのままに山中を駆け回った青藍は、ついに見つけたのだ。

 

青藍「…これは…」

 

そこに落ちていたのは柄の上の方に赤い布が巻かれた、刃の大きな槍。

正しく獣の槍だった。

 

獣の槍を手にしてから青藍は、己の白面に対する憎しみと獣の槍自身が持つ憎しみが合わさりさらに強力な憎悪と共に白面を探しながら沢山の妖怪を殺して回った。

自分が住んでいた都の事も、夫の名も自分の子供の名前、誕生日も忘れながらも、己の名前だけを心に残して…。

そして槍に魂を削られつくした青藍はその名前のように、青い毛並みの字伏へと変貌していった。

ひびの入った瞳は消え去り、その身体は巨大化してゆく。そして腕は3本の鋭い爪を持つ手へと変化していく。

 

妹紅「コイツが…。だけど待ってよ、これじゃ私が見た影とはあまり似ていないような…」

 

時順「はははぁ、じゃあこの『字伏』と呼ばれる妖怪が、お前さんと仲が良かった子供を喰った時代へと行こうかぁ」

 

妹紅「お願いします…」

 

時逆と妹紅は再び時間のはざまに入り、今度は時を順に昇っていく。

すると見覚えのある寺子屋が映し出される。

その周辺に空いた穴に、時逆と時順に連れられ妹紅は入っていく。

出た場所は正しく20年前の迷いの竹林だった。

 

妹紅「ここは…」

 

時逆「お前さんの姿は誰からも認知されないようにあたしが術をかけた。さぁ、見るものは見、聞くものは聞いてきなされ…」

 

そう言うと時逆はどこかへ消えてしまった。

妹紅はさてどうしようか、とそこらをうろうろしていると、遠くの竹の間に、蠢く青い獣を見つけた。

 

 

青藍「…ここは…」

 

迷いの竹林に一匹の妖怪が流れ着いた。

 

蒼い毛並みを持つメスの字伏、青藍。

中国各地の字伏は外の世界にて石化し、来るべき白面との決戦に備えていたが、その決戦前に大半の字伏が死滅してしまった。

その字伏の絶滅から逃れた数少ない字伏の一体がこの青藍である。

他の字伏よりも白面に対する憎しみを強く持っていた青藍は迷いの竹林にて白面に成りかけようとしていた。

頭部がぐにゃりと変形し、白眼だった目には青い瞳が宿る。

そして腰からは8本の白い尾が伸びる。

 

妹紅(8本の尾、この姿…!コイツだ…あの時の影にそっくり…!しかもシロにそっくりだ、間違えたのも無理はないか…)

 

青藍「腹減ったなぁ…」

 

今まで何百年という時を石化して過ごしていたので、いくら妖怪と言えども腹は減る。

人間の匂いを感じた青藍は、その匂いのもとへ走っていった。

それを妹紅が追って行くと、青藍が向かった先は20年前の慧音の寺子屋だった。

青藍は寺子屋のドアを静かに開け、教室の中へ入っていく。

 

妹紅「…」

 

妹紅が窓の外から中を見た時には、既に殺戮は始まっていた。

突然の大きな妖怪の来訪に怯える子供たちを一撃で全て薙ぎ払い、血まみれになった教室の中で、青藍は動かなくなった子供たちを貪り始めた。

妹紅は今すぐにでも青藍をこの場で殺したい衝動に駆られたが、外からの新たな声が妹紅を冷静に戻した。

 

慧音「いつもより静かだな…お前達、まさかほとんど遅刻でもしてるんじゃ…!?」

 

カバンを持った慧音が教室のドアを開ける。

 

ギチギチ ピチャピチャ

 

青藍「…」クチャクチャ

 

慧音「な…!誰だお前は!?」

 

青藍は口に子供の足を咥えたまま慧音に飛びかかり、その3本の鋭い爪で切り裂いた。

さらに慧音に体当たりを喰らわせ壁に吹っ飛ばし、慧音が気絶したのを確認すると咥えていた足を再び食べ始める。

そして丁度食べ終えた時、20年前の自分がやってきた。

 

妹紅「!?何かあったのか!?」

 

20年前の自分がドアを開け放った瞬間、青藍はドアに一直線に向かって行き、妹紅とのすれ違いざまに背中に3本の爪を突き刺し、そのまま貫通させながら上半身を引き裂いた。

やがて数時間で引き裂かれた体は元に戻り、目を覚ますとそこには一面の血の海と、横たわった慧音だけが有った。

 

妹紅「皆…慧音…うおおおおお…!!」

 

 

妹紅「…」

 

時逆「今のを、止めなくてよかったのかい?あそこでお前さんが止めていれば、子供たちが喰われることも、親友も傷つくことはなかったんじゃないかえ?」

 

妹紅「いや…言ってしまえばこれは運命なのかもしれないわ。それに…ここで運命を曲げてしまっては私が青藍を倒すためだけに学んだ暗黒の符術の意味が無くなってしまう…」

 

そういう妹紅だが、その眼には涙が溜まっていた。

 

妹紅「確かにここで止めればあの子たちも死ぬことは無く、私だってこんな心にまた重りを付けて生きていくことなんて無かった…でもあそこで止めてしまったら…もう私には何もない…何もないんですよう…!」

 

時逆「お前さんも、冷たい人生を歩んできたんだねぇ…」

 

 

 

妹紅「という訳なんだ…そして私は時順に1か月後の未来を見せられ、そこには霊夢とシロ、魔理沙ととらが居て、そこを青藍が襲撃する光景があった…」

 

霊夢「だから急にここに来たのね」

 

一通り説明し終えた妹紅はシロととらと交戦する青藍を見る。

 

 

シロ「ぬぅぅ…!」

 

とら「チィィィ、強えぇぜ、コイツ…!」

 

とらの炎も雷も同族である青藍にはあまり効果が無く、シロの攻撃も既に白面と化し、シロと似た特性を持つ青藍にはやはり効果が無いようだ。

 

青藍「そこの字伏、何故そんな白面の者に味方をするの?」

 

とら「知らねぇよ!わしゃもうコイツを憎んじゃいねぇよ!」

 

とらは再び雷を放つ。

だが青藍も緑色の雷を放ちそれを相殺して見せる。

 

シロ「…そうだ、思い出した!お前はあの時、我がわざと生かした人間の女だな…?」

 

妹紅「そうだよ、随分しゃしゃってるじゃないか…青藍!!」

 

青藍「誰だよお前は?それに、なんで私の名前を知っているの?」

 

ついに妹紅が20年前の恨みを晴らすため、青藍に戦いを挑むのだった。

 

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