人間の里─
ガチャン ガチャン
真夜中の人間の里。
そこで女が一人、遅くまでの仕事を終え自宅へ足を急がせていた。
「…?何この音…?」
が、突然当たりの靄が濃くなったかと思えば金属か骨が入った壺をかき回したときのような音が響き始めた。
その音はだんだんと強くなっていくではないか。
ガチ ガチ ガチャガチャ
「…?」
女もさすがに怖くなってきて、小走りになった瞬間。
目の前に檻のようなものが現れた。
「…アァァァァァ…」
「きゃああああああああああああ!!」
ブシュ
翌朝─
魔理沙「おい霊夢、大変だぜ!ここに来る途中でもらった文々。新聞によ、何かやばいこと書いてあるぜ!」
その次の朝の博麗神社にやって来た魔理沙。
どうやらここに来る途中で新聞屋の天狗に出会い、新聞を渡されたようだ。
その新聞の一面を、霊夢は広げてみる。
霊夢「んー?なになに…『人間の里で妖怪に食い殺された一人の女性が…』まさか…!!」
シロ(くそう…我の体中を覆っている何重もの結界のせいで全然力が出ぬわ…尾の能力も全く使えん…)
神社の屋根の上で寝そべるシロ。
そう、封印が解けたばかりなのか、まだ細かい沢山の適所結界が全身を覆っており力を思うように引き出せないでいた。
シロ「…はやく何か食わねばなぁ…」
それに、復活してからまともな感情を食べていない。
腹の虫が鳴ると、へこんだ腹を軽くさすった。
霊夢「シローッ!!」
シロ「何だ、醜く声を荒げおって…」
屋根の上まで登って来た霊夢がシロを呼ぶ。
霊夢「アンタ、昨夜に里で人間を食べたでしょ!?」
シロ「何を言っておるのだ?そもそも我は感情を喰うだけで…」
霊夢「問答無用!!」シュバ
シロ「危ないなぁ!我は喰っておらぬわ!!」
霊夢は手に持っているお祓い棒をシロに向かって振り回す。
だが当たる寸での所でシロは尾の一本を使って霊夢の両腕を掴み、もう一本で霊夢の腹を締め上げる。
霊夢「ぐ…うぅ…」
ギリギリ
シロ「ふん、我をそこらの人食い妖怪共と同じと見るなよ…人間」
ポイ
霊夢「くそ…待って…」
シロは霊夢を地面に投げ飛ばすと空中に舞い上がりどこかへと飛び立っていく。
シロ(くっくっく、そうだ…人間の集まっている場所…あそこに行こう…)
シロ「くっはっはっはっは!!」
神社がある丘から飛び立ち、とりあえずシロは眼下に広がる人間の里に向かって降りてゆく。
自分は他者の恐怖といった感情を食べる。自らの力を見せ、恐怖させるだけさせたらそれらを殺し、それを見て恐怖した者を殺し、これを繰り返すことで負の連鎖を引き起こすのだ。
里人「…?アレは…」
シロ「…」グオオオオ
里人「妖怪だ!!」
里の上空から猛スピードで降りて来るシロに里の人間が気付いた。
最初は目を凝らしていたが、近づくにつれそれが明らかに襲いに来た妖怪だとわかるとすぐさま一目散に逃げだす。
シロ「くはは…いいぞ…もっと我を見て恐怖するがいい!!」
「おかあさん!助けて!!」
火炎を吐き脅しただけで逃げ惑う人間の中で子供が一人転び、取り残された。
これはいいと言わんばかりにシロは爪を子供に突き立てる。
シロ「死ぬれ、人間よ!!」ビュオ
シーン…
シロ「…?」
何だ、この異様な静まり様は。
いや、周囲は騒がしいのだが、何かが静かだ。
ガチ… ガチ…
シロ「何かいるな…他に…我以外の化け物が…」
ガチャン ガチャン
不思議なガチャガチャという音はだんだんと大きく響いてくる。
シロ「来た!!」
そう覚った瞬間、地面にひびが入りそこから丸い人間の頭蓋骨が姿を現す。
「誰だァ、俺様の縄張りで騒ぐ奴はァ?」ガチャ
「うわああああああああ!!」
パシィ
地面の中から現れた巨大な骸骨の妖怪は子供を鷲掴みにし、そのまま口をぱっかりと空ける。
だが手元に細長いものが当たり、子供を落としてしまう。
「いってぇ…」
シロ「…何だ貴様は?我の獲物を横取りしようとしおって…」
その巨大な骸骨の前にシロが立ちふさがる。
この妖怪はガシャドクロと言って、地面から現れて人間を鷲掴みにして食べると言われる妖怪である。
「お前こそなんだァ、獣のバケモンがァ!!」
シロ「…そうか、昨晩に人を食ったというのも貴様だな…生憎、我は貴様の所為で腹の虫が悪い…」
ボオオオオオ
シロは火柱をガシャドクロの顔面に浴びせる。
炎はガシャドクロの顔は黒く煤が付いただけで平然としている。
「ゆるさんわァ、獣がァァァ!!」グオオオ
シロ「おっと」ヒョイ
大きな腕を振り回すが、シロはそれを簡単に避けてしまう。
「大丈夫!?」
先ほどの子供の母親と思わしき女が子供に駆け寄る。
「うん…見てよアレ」
「うん、怪物が2匹ね…速く逃げましょう!」
「あの尻尾がいっぱいついてる方が、僕を食べようとした骸骨と戦ってくれてるんだ!」
「え…?」
その子供の言葉に驚き、母親はシロとガシャドクロの方に振り向いた。
「お前も俺が喰らってやるわあああ!!」
シロ「…」
ドグシャ
大きな口を開けながらシロに迫る。
だがシロの鋭い爪の付いた腕が、髑髏の眉間を割ってずっぽりと突き刺さる。
シロ「誰が誰を喰うんだと…?まさか、この白面の者をか?」
「ギエ…コイツ…勝てる訳が無い…ならばせめて、そこの人間だけでもおおお!!」
もう勝てないと思ったのか、ガシャドクロの腕や肋骨の一部がガシャンと崩れていく。
じかし、開けた肋骨の中からもう一つ髑髏が現れ周囲を人を食おうと飛んでゆく。
シロ「…!」
霊夢「でりゃああ!!」
ザクン
「ガ…」
霊夢「間に合ったわ…」
咄嗟に現れた霊夢の札が突き刺さった骸骨は縦に割れ、そこから無数の光が空に向かって飛び立ってゆく。
本体が消滅したガシャドクロはその場で崩れ落ちて砂になってゆく。
シロ「…人間の魂が集まってできた妖怪か…。だから人間はダメなのだ…」
霊夢「ちょっと待ちなさい!」
シロ「なんだやるのか?ならば里ごと貴様を焼き払って…」
霊夢「…その、疑って悪かったわね。女の人喰ったの…アンタじゃなかったわ…」
霊夢は分が悪そうに頭の後ろをかきながらぼそりと呟いた。
それを聞いたシロは一気に眉間にしわを寄せて怒鳴った。
シロ「…だから言ったろう!これだから人間はいつまでたっても阿呆なのだ!確たる証左もなしに決めつけおって莫迦が!」
霊夢「だから悪かったって言ってるじゃないの!!」
ガヤガヤ
チルノ「やっぱり…私が目を付けた通りね!中々やるじゃないアイツ!!」
大妖精「え~、やめときなよチルノちゃん…絶対ヤバい妖怪だよアレ…」
【餓者髑髏】─がしゃどくろ
幻想郷のどっかで死んだ人の魂が集まってできた妖怪。ガチャガチャと音を立てながら彷徨っていて人間を見つけると地面の中から現れ鷲掴みにして食べるという。