ヘンゼル「俺らに勝てたら教えてもいいぜぇ?」
グレーテル「あたしらの目的とかいろいろね…」
ヘンゼルとグレーテル兄妹の乗るお菓子の家の玄関に当たる部分が横に裂け、人なんか軽く貫けそうなほどの大きな牙が並べられる。
霊夢「甘ったるそうな家ね!魔理沙!」
魔理沙「おう!やっつけちまやいいんだろ?」
霊夢と魔理沙は兄妹のお菓子の家へ向かって行く。
2人は同時に霊撃と光線を放つが…
ゴイィン
ヘンゼル「食べ物に乱暴すんじゃねぇよ…」
グレーテル「この家には特別な魔法がかけてあるの。簡単には壊せないわ」
霊夢「じゃあ直接アンタらをぶっ飛ばしてやるわ!」
魔理沙「あっおい待て!」
お菓子の家の口の中から黒い塊が無数に飛び出し、それは霊夢の顔面に直撃する。
霊夢「いたた…って、甘い…?」
ヘンゼル「そうさ、今発射したのはチョコレートさ!チョコと言えどキンキンに冷え固まった塊を何度もぶつけりゃ痛いだろ?」
魔理沙(先走ったからとはいえ、あの霊夢に攻撃を当てるとはやるな…)
魔理沙「恋符『マスタースパーク』!一気に砕けろ!!」
魔理沙はお菓子の家に向けてマスタースパークを放つが、お菓子の家の壁に跳ね返されてしまう。
魔理沙「な!」
グレーテル「ワッフルの壁よ。そんな攻撃じゃ跳ね返されちゃうわ…」
お菓子の家は再び口を開くと、赤いブヨブヨした舌を伸ばす。
その舌を2人に向けて振り回して攻撃する。
ヘンゼル「グミの舌さァ!」
魔理沙「しまっ…!」
グミの舌が魔理沙を足を掴んだ。
魔理沙「助けて~!」
霊夢「ちょ、こら!足掴まないでよ!」
魔理沙「うわ~~!」
お菓子の家は2人を呑みこんでしまった。
そのころ、シロととらとはまた別ルートから城へ向かった萃香。
小柄な彼女の前には、4~5メートルはあろうかという身長に頭から生える角、赤い肌に雑な服を着た如何にも鬼といった集団と向き合っていた。
鬼「我らは『ももたろう』の鬼ヶ島より来たりし鬼共である!御話の主人公より邪魔者を止めよとの名を受け、お主と戦う所存!」
鬼は手に持っていた、人間など一振りで肉塊に変えられそうなほどの金棒を地面に振り下ろす。
その衝撃で飛び散った地面の破片が萃香に飛んでいくが、萃香はそれを拳で弾いて見せる。
萃香「あたしも、ちと負ける訳にゃいかないんでねぇ…」
鬼「ほう、やるようだなチビ…」
ガキン
霊夢「くそっ、壁はワッフルなのに弾力があり過ぎて壊せないわ!」
魔理沙「窓は氷砂糖なのに枠のカステラが衝撃を吸収しやがる!」
『けけけ、正真正銘のお菓子の家だ!出たけりゃ全部食いつくしてみるんだな!!あははは!』
『ちなみに、ずっと中に居るとこの部屋の中もお菓子の塊になって、貴方たちもお菓子と同化しちゃうから気を付けてね~』
お菓子の家に呑みこまれた霊夢と魔理沙に、兄妹の声が響く。
魔理沙「こんなもん食べたらデブになっちまうぜ~…」
霊夢「ムリムリ、私もこういう甘ったるいお菓子はダメなのよ」
魔理沙「じゃあどうすんだよ?ほら、足元を見ろ。床の隙間から染み出るクリームやら甘い汁だかがもう固まってきてる」
魔理沙の言う通り、床の硬いビスケットの隙間から油交じりのクリームが染み出ている。
常に足踏みをしていないとすぐに足ごと固められてしまうだろう。
霊夢「飛べばいいじゃない」
魔理沙「バカ、出られなきゃ結局この部屋ごとお菓子になっちまうんだぜ?」
霊夢「じゃあどうしよう?」
魔理沙「知るかよ」
霊夢「ん、ちょっと待って…この家の壁を食べぬくくらいなら…できるかもしれないわ!」
ヘンゼル「さてと、今頃アイツらも中で溶けて家の一部になってるころかな…」
グレーテル「それだったら、また魔法で家の内装変えてやらなくちゃ」
ヘンゼル「そうだなぁ、そうすりゃ壁と混ざり合って完全にそいつらは家の一部になる…」
モゴモゴ
その時、お菓子の家の足が震えだし、そのままガクリと地面に付いてしまう。
それを見た兄妹はまさか…と言った感じで互いに顔を見合わせる。
ボゴォ
霊夢「おえっぷ」
家の壁に空いた穴からは口いっぱいにお菓子を頬張り、腹を膨らませた霊夢が飛び出してきた。
ヘンゼル「そんなぁ!一番薄い壁でも1メートルはあるのに、それをまさか…まさか食い破ってくるなんて!」
霊夢「熊を丸ごと一匹平らげたと言われる、『イペカムイ』…その神様の力を借りたの」
グレーテル「そんな…あぁ!!」
魔理沙「悪いな、私たちの勝ちだ。マスタースパーク!!」
魔理沙の八卦炉から放たれたマスタースパークはお菓子の家に直撃し、お菓子の家はバラバラに砕けた。
壁を破られたことで魔法が解け、その時点ですでにただの菓子の塊となっていたのだろう。
霊夢「さぁ、アンタ達の目的とボスについて話してもらうわよ。おえっぷ」
ヘンゼル「く…」
ヘンゼルとグレーテルはお菓子の瓦礫の中から顔を出す。
グレーテル「分かったわ…私たちは『おとぎ話』の世界の住民よ。人間とも妖怪とも違う全く別の存在…。私たちは人間に自分のお話を読んでもらう事で力を貰えるの。でも近頃の外の世界じゃ私たちは見向きもされない…」
ヘンゼル「だから、この世界を選んだ。人間と妖怪、お互いを認識できないようにして、互いに暇をこいているところに俺たちのおとぎ話を読ませる…それが目的さ」
魔理沙「ほう。じゃあ認識できないって訳で、ちゃんと隣に妖怪が居たりしてるんだな…」
霊夢「それで、主犯は?」
ヘンゼル「名前は言う訳にはいかない…でも、あの城へ行けばあのお方はいらっしゃる。もっとも、あのお方までたどり着ければの話だがな…くくく…」
魔理沙「…行こうぜ」
霊夢「ええ…もうしばらくは甘いモノ要らないわ…」
向こうにそびえる巨大な城に向かって、霊夢と魔理沙は進んでいくのだった。
ちなみに補足ですが、人間側からは同じ人間だけしか認識できず、全ての人間以外の者(幽霊、仙人、天人、月人も含め)同士でしか認識できないという感じで。
今回霊夢が呼び出した『イペカムイ』はアイヌ語で食べるを意味する『イペ』と神の意味の『カムイ』を合わせた完全創作のカムイです。