れいむとシロ   作:ねっぷう

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第38話 「天邪鬼」

2月中旬。

雪が深く積もっており、道も雪が凍ってしまっていてまともに歩けない。

人里の人間は道に積もった雪を退けるのに午前中の時間を費やし、また寒さの苦手な妖怪は未だ隠れ、冬の妖怪や妖精は大喜びで毎日そこらを駆け回っている。

 

「いやー、毎年2月ごろにこんな雪降るんだもんなー。雪を退けるのも嫌になっちまう…」

 

「まぁいいじゃないか…子供たちも遊んどるようだし…」

 

ビュオオオオ

 

「な…何だ今のは…?」

 

「妖怪が駆け抜けていった…?」

 

 

鬼人正邪「コラァ、いつまで追ってくるんだよォ!」

 

「弱者が見捨てられない楽園を築く」と美辞麗句を用いて、小人族の末裔少名針妙丸を唆して騙した挙句、秘宝「打ち出の小槌」の魔力を利用して幻想郷転覆を企てた天邪鬼の鬼人正邪。

しかし、正邪の計画は霊夢・魔理沙・咲夜ら3名の奮闘によって失敗し、敗走。

行方をくらませたものの、懲りずに再び異変を起こそうとして小槌の魔力の宿った道具を回収しようとする。

 

が、明るみに出てしまい、幻想郷の秩序を重んじる妖怪たちによって指名手配されてしまう。

一度は追っ手共を全て退けた正邪だが、今でもたまに妖怪共に追われる日がある。

 

「はひひ、お前を捕えれば貰える褒美ってのも気になるんでなぁ~」

 

「褒美なんてどうでもいいさ、俺はただお前をぶち殺してみてぇのよ~」

 

2匹のリーダー格らしき妖怪と十数体の妖怪たちが正邪を追う。

容赦のない攻撃が正邪を襲い、ついに2手に分かれた妖怪共に挟み撃ちされてしまった。

 

正邪「ち…ヤバいかもな…」

 

 

博麗神社─

 

シロ「…」

 

霊夢「あら、今日はおとなしいじゃない。いつもは今日こそ殺してくれる~とか言ってくるくせに」

 

シロ「少しな…気になることがあるのだ」

 

霊夢「…前にシンデレラたちが言ってた事?確か、強い妖怪が変化してシロを縛ってる結界に成ったとか言ってたっけ?」

 

シロ「うむ、その強大な妖怪とは何か…我と霊夢はその妖怪の仲間を知ってると言っていたが…。何か胸騒ぎがするわ」

 

シロは座っていた縁側から上へ飛び立つ。

 

シロ「ま、たまには出かけるとするか…」

 

霊夢「ああそう、行ってらっしゃい」

 

霊夢は縁側に腰かけながら気だるそうに手を振る。

 

シロ「とは言ったものの…何処で暇をつぶそうか。里は…嫌だな、あとで霊夢が色々言うてくるだろう。竹林は…あの妹紅とやらに会うのも気まずいしなァ…」

 

そうブツブツと呟きながら空を飛んでいく。

 

シロ「おや…何だ、粕妖怪共の争いか…」

 

眼下に見えたのは十数体の妖怪とそれに囲まれている一匹の妖怪。

その一匹の妖怪とは、鬼人正邪だった。

 

正邪「ぐへ…!」ドサ

 

「オイ、何してんだよ。ソイツ捕まえてやりゃ褒美が手に入るんだぜ」

 

「そんなん後ででもいいだろがァ、もうちょっと痛めつけさせろや…」

 

正邪「お前ら…そんな大勢でうれしい…ねェ…」

 

「はん、天邪鬼は言う事も逆なんだっけか。別にお前のいう事なんざどうでもいいし、喉潰しちまうか」

 

その妖怪は正邪の喉元を殴る。

正邪はせき込みながら後ろへ吹っ飛んでいく。

 

正邪「げほ…!」

 

「へへへ…」

 

その時、妖怪共を何か白い柱のような物が薙ぎ払った。

妖怪共は無様に吹き飛ばされていき、シロがその場へ舞い降りる。

 

シロ「…ふん、他愛のない…」

 

正邪「な…強い…!」

 

「なんだァお前は!?その天邪鬼を匿おうというのか?」

 

シロ「たまたま空に居たら腹が空いてきたので、お前ら粕妖怪の恐怖を喰らうて腹を満たそうと思ってな…」

 

「け、バカが…この数の妖怪に勝てる訳ないだろ!」

 

正邪「そうだよ、誰だか知らないがお前は強い…だけど、お前一匹であの数の妖怪共に勝てるのか…!」

 

シロ「我はな…」

 

シロは地面に座ったままのボロボロの正邪の身体を片腕で抱きかかえる。

 

シロ「我は決めたのだ」

 

正邪「な、何をだよ!?」

 

シロ「我はどちらの味方に付けばよいか分からぬ時は…負け犬の方に付くと。ならばお前は…負け犬か?」

 

正邪「…撫でるぞ」

 

「うおおお、ぶっ殺してやる~~!!」

 

シロは鉄の尾を広げ、向かってくる妖怪共を尾の一振りではじき返す。

 

「げええ…鬼人正邪に、白い妖怪…覚えていろよォ!!」

 

すっかり怖気づいた妖怪共は一目散にその場から逃げていく。

それを確認すると、シロは抱えていた正邪を雑に地面に落とす。

 

シロ「…む、気を失っておるのか…ま、死ななかっただけ有り難いと思うが良い…」

 

シロはそのまま飛び立とうとするが、横目で再びチラリと倒れている正邪を見る。

 

シロ「…けっ、せっかく我が助てやったのに、すぐに死なれては腑に落ちないのでな…」

 

 

正邪「う…私は何を…。あれ?」

 

起きた正邪の体の傷の部分に、真っ白い毛の束が紐で結び付けられていた。

するとその毛の束はにゅるんと正邪の身体から離れ、数体の婢妖になる。

 

婢妖「お前を助けたシロの御方様に…感謝するが良いぞ」

 

婢妖はそう言い残すとどこかへ飛び去っていく。

 

正邪「…さっきの妖怪か…。へっ、感謝しろだと…?本当にメーワクだったよ…」

 

 

 

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