れいむとシロ   作:ねっぷう

4 / 101
第4話 「悪精」

数日前、霧の湖─

 

チルノ「な、何よコイツ~!?」

 

何者かの攻撃によって霧の湖から追い立てられていくチルノと大妖精。

 

「私以外の妖精は…皆死ね!」

 

大妖精「チルノちゃん、逃げて~!!」

 

チルノ「くっ…」

 

「そうだ、出て行け!今日からこの湖は…私のモンだ!!」

 

チルノ「くっそ~~~~!!」

 

 

ガシャドクロとの戦いから2日が立っていた。

セミの声の鳴き渡る博麗神社に、チルノと大妖精がやってきた。

 

霊夢「何よアンタたち、またいたずらに来たの?」

 

大妖精「ち、違います…私たちは…」

 

チルノ「最近悪い妖精が霧の湖で暴れてるからやっつけてほしいんだけど!!」

 

妖精のチルノと大妖精。

チルノは氷の妖精で、一年中冷気を身体から出しており、チルノの周りはいつも寒い。

青い服装に薄い水色の肩ぐらいまでの髪、背中の氷の羽根が特徴だ。

妖精は人間以下の存在だが、その中で力のある者が大妖精である。白いブラウスに青いベスト、筋の入った蟲のような羽が特徴だ。

 

魔理沙「だってよ、どうする?」

 

霊夢「面倒臭いわね、ここはシロに…」

 

シロ「嫌だぞ」

 

面倒くさそうにひそひそと話し合い、挙句にそれをシロに押し付ける。

が、シロはそれをきっぱりと断す。

 

チルノ「そうそう!そこの獣の妖怪に頼みたかったんだよね~」

 

シロ「…そうか、たまに我を付けていたのはお前達だったか」

 

ようやく前から時々自分を付けていた奴らが分かった。

こいつらだったのか。

 

大妖精「す、すみません!」

 

シロ「ふん、その妖精とやらは我の邪悪な妖気を吸って凶暴化した奴だな…我を餌としてここまでになるとは面白し…。まぁよい、我が行こう」

 

シロ(その悪精を倒したついでに、この2匹も殺してしまうか…)

 

魔理沙「じゃあ私も行くぜ!面白そうだしな!」

 

シロが行くと言ったとたん気が変わったのか、魔理沙も名乗りを上げた。

 

シロ(…チッ、まぁ霊夢ではなければよいわ…)

 

霊夢「いってらっしゃ~い。シロはちゃんと3人を頼むわね~」

 

シロ「…」

 

軽く手を振って見送る霊夢の言葉を聞いていないふりをして、シロは飛び去った。

 

 

魔理沙「んで、そいつはどういう妖精なんだ?」

 

箒に乗りながら飛んでいる魔理沙がチルノに尋ねる。

 

チルノ「黒い服着てて、炎を使う妖精かな。スペルカードも使ってくるよ。言っておくけど、最強のあたいでもコテンパンにされたから、滅茶苦茶強いよ」

 

魔理沙「じゃあ大したこと無いんだな」

 

大妖精「来ました、悪精の手下の小さい悪精達です!!」

 

小さい妖精の群れがこちらに向かってくる。

結構数が多い。その悪精のやらは妖精を手下にしているか妖精を生み出せるようだ。

 

シロ「雑魚には用無し!」ボオオオオ

 

シロの火柱がこちらに向かってくる雑魚妖精を一掃していく。

するとそれに気づいたのか、黒い服を着た妖精がやって来た。

 

「今度は助っ人を連れてきたのね、お前達!」

 

チルノ「あーっ、アイツだ!」

 

魔理沙「行くぜ、先制攻撃だ!マスタースパーク!!」

 

魔理沙は八卦炉からマスタースパークを放つ。

ミニ八卦炉に溜めた魔力を一気に放出するその攻撃は、悪精が逃げようとしても間に合わないほどの極太のレーザーとなって襲い掛かる。

 

「うおおお!少しはやるようね、魔法使い!」

 

しかし、そのマスタースパークを受けてもダメージを負っただけでとくに支障は出ていないようだ。

元の妖精であれば確実に消し飛んで一回休みになっていたであろう一撃を喰らっても平気という事は、それだけシロの妖気が強いのだろう。

 

魔理沙「何やってんだ!お前も攻撃するんだよ!」

 

チルノ「う、うん!氷符『アイシクルフォール』!」

 

チルノの氷のつぶてが悪精に向かってゆく。

だが悪精はそれをかわしながら一気に魔理沙との間合いを詰める。

 

「まずそこの人間からね!!」

 

悪精は両腕をかざすと、そこから炎の渦が放出される。

 

魔理沙「アブねぇッ!?」ヒョイ

 

魔理沙は乗っていた箒をグイッと引き、素早くそれを避けた。

 

シロ「あーあ、やってるよ…我の妖気をあそこまで吸った奴に、勝てる訳が無かろうになぁ」

 

魔理沙「それを先に言え!!」

 

シロ「…わかっておるな?我ならできるのだぞ…」

 

自分の長い爪の生えた手を顔の前にかざす。

 

魔理沙「じゃ、じゃあ一緒に…」

 

シロ「だがな、我の体中を縛り付けておる何重もの結界のせいで力が思うように出せぬ…今の我ではあの悪精には勝てぬかもなぁ。まぁ我にとってはその湖なぞどうでも良いし、勝手にやるが良い」

 

魔理沙「だよな、私たちの事なんか、大妖怪のシロにとっちゃどうでもいいことだよな。よし、見てろ!絶対に私たちであの妖精を倒して見せるからな!!」

 

シロ「…」

 

少し無理をするように意気込みながら再び悪精に向かって行く魔理沙を、シロはじっと見ていた。

 

 

 

霊夢「…アイツら、ちゃんとやってるかしら…」

 

神社の縁側でお茶を啜りながら、独り言をつぶやく。

もう時間は夕暮れ、少し赤みを増してきた空を仰ぎ見た。

 

 

 

「あはははは!!」

 

ドゴ

 

悪精は箒で飛び回る魔理沙に追いつくと、その魔理沙の肩を殴りつける。

 

魔理沙「うぐ…」

 

チルノ「魔理沙!!」

 

既に魔理沙とチルノもボロボロだ。

チルノの背中の氷のような羽根は数本が割れてしまっている。

 

「弱いなぁ、お前ら3人…そろそろ飽いたわ、トドメと行こうかのう」

 

シロ「…」

 

『私だってめんどくさいわよ、でも…役目だからね』

 

シロ(…役目…か。我の役目…)

 

『シロはちゃんと3人を頼むわね~』

 

シロ(ふん…なんで我があのような下衆な人間の事など…)

 

霊夢の言葉を思い出す。

しかし頭に浮かんだそれを振り払うように頭を振ると、再び空中で寝転がる姿勢をとる。

 

「死ぬが良い」

 

悪精の背中に炎を纏った巨大な針が6本出現し、3人に向けて飛んでゆく。

既にボロボロの魔理沙とチルノの襟を大妖精が掴んで運ぼうとする。

だが炎の針が発射され、3人を串刺しにしようと飛んでゆく。

 

「ははは!妖精と人間の串焼きだぁ!」

 

魔理沙「ちくしょう…」

 

ガキィィン

 

シロ「…」ギロ

 

チルノ「シロ!」

 

その時、シロが颯爽と現れ魔理沙たちの前に割り込み炎を橋を尻尾で防ぐ。

シロの凶悪な目つきが悪精を睨む。

 

「ちィ、お前が残っていたわね!でもすぐに串刺しに…」

 

炎の針がさらに力を強くし、尻尾ごとシロを貫かんとばかりに勢いを上げる。

燃え盛る針を、シロは両腕で掴む。

 

シロ「くくく、迷惑よなぁ…本当にどうでもいいのに、誰が死のうが誰が何をしようがどうでもいいのに…全てが平等に我に滅ぼされる存在なのに…何故なのだ、何故我はお前たちに手を貸してしまう!?そんなお前たちと我に…無性に腹が立つのだ!!」

 

バリン

 

シロの腕から、何かが割れたような大きな音が響く。

今まで人間とほとんど変わっていなかった腕に白い毛が生え、そのままぐにゃりと変形するように肥大化していく。

 

シロ「哀れよのう…」

 

「ひ…!」

 

ジャコン

 

シロの大きな爪がいとも簡単に悪精の身体をバラバラに引き裂く。

さらにバラバラになった悪精に向かって炎を思いきり吐きつける。

 

「そんな…お、お前は…お前は何者だァ…!」

 

シロ「…昔は…『白面の者』」

 

「ぎゃああああああ!!」

 

シュワァ

 

シロ「…」

 

バラバラになった悪精は叫びながら消滅してゆく。

普通、自然の象徴である妖精は倒されてもじきに復活するのだが、この悪精はその素振りが無い。

どうやらあの強力な力と引き換えに復活できなくなっていたらしい。

シロの巨大な獣の腕が、元の腕に戻る。

 

シロ(…今、ほんの数秒だが…右腕にかかっておる結界と封印が解けた…?)

 

チルノ「ありがとう!流石、私が見込んだだけあるわ!」

 

魔理沙「やっぱ強いな…シロは…」

 

大妖精「ありがとうございました…」

 

シロ「…ふん」

 

シロは少し恥ずかしそうに眉間にしわを寄せ、頭の後ろに手を置いた。

 

 

 

そのころ、湖の向こうに見える赤い館、紅魔館。

そこから、その紅魔館の主がシロを見ていた。

 

レミリア「あれ、いいわね」

 

咲夜「…」

 

紅魔館の主、吸血鬼のレミリア。スカーレットが横に控えていたメイドの十六夜咲夜に話しかける。

窓から見えるシロを見定めるようにじっと見つめ、手を叩く。

 

レミリア「決めたわ。あの妖怪を連れてきなさい」

 

咲夜「…は、次はあの妖怪にするのですね」

 

 

 

魔理沙「いてて、さぁ、私たちは神社に帰ろうぜ」

 

チルノ「じゃーねー!」

 

シロ「…」

 

魔理沙「…どうした?」

 

シロは自分に向けられる不思議な妖気を感じ取り、その場を見渡す。

 

シロ(…何だ、この気配は…?我が感じた事のない不思議な気…。これは鬼か…?いや…)

 

魔理沙「お、おい!シロ!」

 

シュパッ

 

 

シロ「…!?」

 

あれ…?我は…どこにいる?

先刻まで湖の上に居たはずだが…周りには紅い煉瓦の暗い部屋…。

 

シロ「ここは…建物の中か…」

 

 

 

魔理沙「おい!シロ!どこ行ったんだ!?シロ!!」

 

突然と消えたシロを、魔理沙が呼び続けた。

しかし呼んでも、シロの返事はなかった。

 




【悪精】─あくせい
前々からこっそりと霧の湖を狙っていた普通の妖精がシロの妖気を吸って邪悪になった妖精。中堅妖怪くらいは強い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。