妹紅「また現れやがったのか!」
青藍「くくく、夜も昼も朝も晩飯時も安心するなよ!」
竹林の中で突如雷の中から現れ妹紅を襲撃した青藍。
12月に博麗神社で一度相まみえた時から、たびたび青藍は妹紅のもとに現れ勝負を挑んでいた。
妹紅「ガ…!」
青藍の雷を纏った爪が妹紅の身体を切り裂く。
さらに緑色の稲妻を放出し、それを命中させる。
青藍「…どうだ?」
煙の中から現れた妹紅は火をつけた札を青藍に投げつける。
だが青藍も負けじと硬質化させた髪を伸ばし札を相殺する。
妹紅「今日こそ…今日こそお前を倒し、恨みを晴らす!!」
青藍「ハッ、倒す?倒すというのはお前が満足するまで私を痛めつける事か?それとも形式的な勝負で私に勝つ事?あるいは…私を殺す事かよ!?」
妹紅「全部やってやらぁ!!」
青藍「甘いのよ、お前は!!」
青藍は長い3本の爪をキリキリと伸ばす。
そしてその爪に雷を纏わせ、向かってくる妹紅の胸を貫く。
妹紅「ぐう…」
刺さった妹紅を引き抜き、それを地面に叩きつける。
青藍「…死んだかな?」
妹紅の傷口を覗き込むが、その傷口は徐々に、ゆっくりではあるが既に治癒が始まっていた。
青藍「まだダメか…もっと、食わなきゃな…」
意味深なセリフを言い残し、緑色の雷と共に青藍は消えていった。
妹紅「…くそう、アイツは…何が目的なんだ?」
妹紅は身を起こし、竹に寄りかかった。
その時、近くから誰かが歩いてくる足音が。
蓬莱山輝夜「あらあら、こんな所で何してるのかしら?」
彼女は蓬莱山輝夜、永遠亭に隠れ住んでいる月人。
禁忌とされる蓬莱の薬を飲み、妹紅と同じく不老不死となった蓬莱人。
妹紅「こんな時に…」
「おや…この仙界に、何か用ですかな…?『字伏』…」
青藍「…」
外の世界、仙人の住む仙界に突如現れた青藍。
「確か20年も前に日本で獣の槍と共に字伏は全て消え─」
青藍は爪を伸ばしながら瞬時にその仙人との間を詰め、仙人がこちらに目を向ける前に胸に爪を突き刺し、そのままサイコロステーキのように切り裂いた。
何が起きたのか分からない、という顔をしたまま地面を転がる頭部を、青藍は踏みつけて潰す。
そしてその仙人の散らばった肉片を、その場に座り込み貪り始めた。
飲み込むたびに、青藍の爪から邪気が溢れ出すように見えた。
1週間後─
妹紅「今日は満月、いつも通り慧音の仕事を邪魔させないように外を見張ってるよ」
慧音「ああ、頼むよ」
上白沢慧音は満月の夜にだけ白沢、簡単に言えば狼人間の白沢版に変身する。
白沢になったときには幻想郷中の知識を持ち、幻想郷の歴史の編纂作業を行なっている。
その間、仕事をしている慧音に対して邪魔が入らないように妹紅は見張りをしているのだ。
慧音「何も毎回私に付き合ってくれなくてもいいのにな…」
妹紅「いいや、今日は特別さ…。大事な客の、相手をしなくちゃいけないから…」
慧音「…?」
その時は妹紅のその言葉の意味が慧音にはわからなかった。
妹紅は建物の外に出ていった。
満月の夜、慧音が白沢に変身し、幻想郷の歴史の編纂作業に取り掛かろうという時に目の前にそいつは現れた。
緑色の雷と共に颯爽と現れた青い獣。
慧音にとっては20年前、自分の教え子らを全員無残に食い殺し、自分の親友にも襲い掛かり憎しみを背負わせた張本人。
憎しみに任せて獣の槍を振るい、異常なほどの憎しみの力で普通よりも早く憎しみの化身である白面の姿に成り果てた字伏、青藍。
青藍「私はこの数か月、外で仙人を何人も食い、能力の上限を上げ続けた…だから今夜はお前も息の根を止めてやるわ!」
慧音「お前はまさかあの時の…!」
素早く放たれた青藍の雷を転がるようにかわす慧音。
そして青藍に向けて光弾を放つ。
青藍「効かんわ!さて、お前を今度はきっちりトドメ刺して殺したら…今度はあの不死の人間を私の能力で痛めつけてからまた子供たちを…喰ってしまおうかな…」
しかし青藍はそれを喰らっても何ともないような顔をして手の3本の爪を伸ばす。
その時…
ザ
妹紅「…」
青藍「くっくっく、出て来たか…」
妹紅「貴様、また私の親友を酷い目に会わせ、子供たちを喰うのか。やってみろよ、今一度…今度は私の目の前でよ…」
青藍の前に躍り出た妹紅の体の周りに炎のオーラがあふれ出る。
そして今こそこの仇である獣との決着が付くときと確信したのか、鋭い笑みを浮かべたまま睨みつける。
妹紅「やってみろよぉ!」
青藍「やってやるよ!」
青藍の爪が妹紅の腹を引き裂いた。
慧音「大丈夫か!?」
妹紅「これは…!」
妹紅は今喰らった攻撃による傷に違和感があることに気付く。
蓬莱人の不死の力が有れば、普通は傷を受けてもすぐに治癒が始まるはず。しかし、青藍から受けた傷は中々治癒が始まらなかった。
彼女も20年前、青藍に背中を斬られた時も疑問に思っていたが、何故彼女の能力があっても傷が治らないのだろう。
青藍「くくく、私の爪は『何にでも傷をつける能力』を持つ。何人も仙人を喰ったことによって強化されたこの能力の前ではいくら不老不死のお前でも痛いだろうね…」
妹紅「鳳凰天翔!!」
鳳凰の形を模した炎の塊を青藍にぶつける。
しかし、青藍の爪はその炎をもかき消しながら接近し、雷が慧音に向かって行く。
妹紅「慧音…逃げろ…」
青藍「ああ、気持ちいいなぁ!私に対するお前らの憎しみが快感だわ!」
青藍は尖がった顔に大きな口を開けて声をあげて笑った。
慧音「妹紅、今までお前がこいつを捜し続け、闘い続けてきたことは私も知ってる…。でもな、こいつが大嫌いなのはお前だけじゃない、私も同じだ。それにな…」
妹紅「慧音…まさか…」
慧音「青藍、お前が私達に倒されるという事も…私の歴史に含まれているぞ!」