私は…何をしているのか。
何故私は獣の槍を振るい、何故この姿になったのか。
私たち字伏は白面を憎む…私も最初は白面への憎しみが強かったが今は何とも思わない。
何でかな?
それは私が既に白面の者と同じ憎しみの化身と成り果てたからさ。
私の名前は青藍。それ以外はどうでもいい。私に家族が居た?男が居た?子供がいた?それらを白面に殺された?うるさい、もうそんな事どうでもいい。
だから、お前たちを苦しめるのが楽しい。お前らの私に対する恨みと憎しみが快感よ…。
青藍「けええええ!」
慧音「負けるか!」
朝、いつもと同じ、何も変わらない朝。
前日に生徒の悪さが過ぎて強く怒鳴り散らしてしまった。
その後反省したよ…自分にもダメな所が有ったなぁって、大人げなかったなぁって。
「今日は里でお菓子も買って来たし、あの子たちも喜んでくれるだろうか…」
その日、きっと子供たちも健気にも皆遅刻しないように早めに来てくれていたのだろう。
「お前達、まさかほとんど遅刻でもしてるんじゃ…」
それが嬉しかったから、口では照れ隠しに文句を言いながらドアを開けた。
だけどそこに待っていたのは…待っていたのは…
妹紅「正直者の死!」
こいつでもない…
また違ったのか…。
次こそ…次こそは仇を…
青藍「外したな!くくく、死ねぇ!」
妹紅「ぐ…」
青藍の吐く青い炎が2人に降りかかる。
妹紅は慧音をかばうように符を炎に向けてかざす。炎は符を避けるように曲がってしまう。
青藍「チッ、まずお前から殺してやる!」
青藍は爪の生えた手で慧音に向かって殴りかかる。
しかし、慧音はその腕を掴むとそれを軸に自分の体を持ち上げ、そのままサマーソルトの要領で青藍の顎を蹴り上げた。
慧音「妹紅、今だ!」
後ろによろめいた青藍に向けて、火をつけた符を2枚放つ。
術によって刃のように硬化された符は真っすぐに飛んでいき、青藍の両目にザクリと突き刺さった。
青藍「ぎゃああああ…!」
刺さった符は煙を上げながら消えていき、青藍の大きな目から血が噴き出す。
妹紅「私の親友を傷つけた青藍…ならばお前の大事なものも傷つけてやろう」
青藍は真っ黒な目から血を流しながら口元を苦痛に歪める。
青藍「…なら、もうどうでもいい…また子供を喰うのも、この目もどうでもいい。お前達だけを!お前らだけを殺してやる!」
その時、青藍の身体に異変が生じた。
今まで8本だった短い尾が、9本に増え自分の体長の2倍ほどもある尾へと変化する。
白面化していたとはいえまだ字伏の特徴を残していたが、それが消え、今青藍が他に向ける憎しみが一気に増大してことで完全に憎しみの化身と化したのだ。
青藍はジグザグの軌道を描きながら走り、そのまま2人に突進する。
そしてぶつかり様に妹紅を爪で再び切り裂き、慧音に雷を命中させる。
慧音「な、何で奴は私たちの位置が正確にわかる…?」
青藍「分かるんだよ、私にはな…!」
妹紅「不死なのにどうやって殺すんだよ…?」
青藍「命を無くすことだけが死ではないことくらいお前も分かっているはずだ…!私の爪はお前の魂を削り取る!いずれお前も滅ぶぞ!」
雷を纏わせた爪を妹紅に向けて振りかざす。
一、二撃目は妹紅の胸を切り裂いたが、3度目に振り落とした瞬間、それを慧音が爪を掴み防いだ。
慧音「今だ!」
慧音はそのまま背中に回り込み、青藍を背後から押さえつける態勢になる。
青藍は尾を振るい、背中に張り付く慧音を振り落とそうとするが離れず、爪を振り回し背中に手を回そうとするが、既に骨格までも変わってしまった青藍では背中まで届かなかった。
妹紅(この20年…長い事戦い続けた。私の一生に比べれば至極短い時だが…とても長く感じた。今こそ…私の背負う業を一つ、消し去ろう。だから私はお前を倒すためだけに覚えたこの技でお前を殺すのさ…)
青藍「キエエエエエ!」ボオオオオ
青藍の大きく開いた口から青い火柱が放たれる。
だが妹紅はそれを受け、なおも前進していく。
ドグ
青藍「か…!!」
更にはありったけの気を込めた符を、青藍の喉元を突き破りながら体内に押し入れる。
妹紅「火の鳥…『禁』!」
その青い獣の首から上が炸裂する。
真っ黒な目から妹紅が符に込めた気があふれ出し、後頭部から止めを刺さんとばかりに妹紅の腕が突き出す。
青藍「ゲエエエエ、こんなァ~~!!」
…私は何をしてんだったか。
何故今まで忘れていたのだろう…
青藍「~~~、~~~~!!!」
蒼き憎しみの字伏、青藍は誰か2人の名前を叫びながら崩れた身を地面に倒した。
終わったよ…終わった…。
それは、誰が思ったことなのだろうか。
妹紅と慧音がようやく20年前の子供たちの敵を討ち、宿命から解き放たれた達成感からの思いか。
それとも、家族を殺され憎しみに支配された女が何百年の時を経て永劫の果てにようやく解放された思いか。
妹紅「私も同じだったよ…でも、お前はいいよな…死ぬことが出来てさ」
慧音「青藍も、何というか…悲しい奴だったのかもな…」
妹紅「分からない…でも彼女も、自分の家族の所に戻ったんだよ…」
煙のように消えていく青藍の身体の上に、慧音は20年前に子供たちの為に買い、今まで残してあった砂糖菓子をそっと置いた。
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妹紅「という事があったのさ。次からは、お前を倒す事だけにまた集中できるようになった」
輝夜「次から…?ふふふ、今からでしょ?ここ20年貴女が何か気を散らしてると思ったらそんな事が…さぁ、今夜こそ貴女に完璧に勝って見せるわ!」
今更ですが、この作品の最大のテーマは『解放』です。