れいむとシロ   作:ねっぷう

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第50話 「怖いのは」

3月下旬、積もった雪は既に地面に薄く残るのみで冬の終わりを感じさせる。

春の妖精もそろそろ私の出番はまだかまだかとうずうずしている頃だろうか。

 

多々良小傘「何か人を驚かす斬新な方法は無いかな…」

 

人間を驚かして腹を満たす妖怪、多々良小傘は考えていた。

この非常識に慣れてしまった幻想郷の人間は自分の下手な驚かし方では驚いてくれない、なので何かもっと斬新な驚かし方を考えていたのだ。

 

「それなら、俺も協力してやりてぇな」

 

小傘「…誰?」

 

「俺も、お前と同じ唐傘の妖や。どうや、俺と組んで…もっと人間を驚かしたいとは思わへんかな?」

 

 

 

魔理沙「そういえば昨日、里で変な話を聞いたな」

 

霊夢「変な話?」

 

縁側に座っていた魔理沙が唐突に霊夢に話題を振った。

 

魔理沙「何か、色んなとこで人間や妖怪が悪夢にうなされるんだ。それですっかりその夢にビビった奴らが夜に引き籠るようになっててさ」

 

霊夢「なるほど、引き籠るなんてそれは異常ね…」

 

シロ「…妖怪の匂いがするなその話」

 

霊夢「じゃあ…近いうちにでも行ってみましょうか」

 

 

それから何日か経ったが、今だ何かに恐怖したまま引き籠る人間や妖怪が増えるばかりだ。

 

 

「ぎゃああああああ~~~!」

 

突然茂みから現れた何かを見たとたん驚いてその場を逃げ去る人間。

そして満足そうにクスクスと笑って茂みから出てきた妖怪。

 

「やったで、小傘はん。また一人成功したで!」

 

小傘の持っていた傘が喋り出す。

 

小傘「う、うん…」

 

「くくく、この調子でどんどんビビらせて行こうかぁ…」

 

だがその時、小傘の前に霊夢とシロが現れた。

霊夢の手にはお祓い棒が握られており、本格的な妖怪退治に乗り出してきたのだろう。

 

霊夢「アンタだったのね…。アンタの所為で色々大変になってるのよ、ほどほどにしてくれない?」

 

小傘「わ、わかっ…」

 

「おっと、そうはいかんのや、ワイらも喰うもんが無くなっちゃ困るからなぁ…」

 

そう言おうとした小傘を遮るように傘が細長いギザギザした歯を見せながら大声を出した。

以前まで小傘が持っていた傘とは色合いや大きさが大きく違っており、言葉に合わせて表情まで変えてきた。

 

シロ「分かったぞ…貴様、ソイツに憑いているな?」

 

霊夢「え?」

 

シロ「お前は意外と鈍いよなぁ…」

 

「けけけ、せやで、その獣の言う通りや。俺はちっと変わった唐傘お化けでな?人を驚かして腹を満たすんやなくて他人を恐怖させて腹の足しにするんや。でも生憎俺のデザインはそこらの唐傘と変わらん、怖がらすにも限界が来てしもうた…しかしなぁ、そこで見つけたのがコイツよ!コイツは傘以外にも現身がある、だから利用しやすかった…」

 

霊夢「なるほど…小傘の心に付け込んで憑りついてまんまと利用したのね。じゃあ、そんな悪質な奴猶更ぶっ倒さないとね!」

 

「ほざけ!」

 

その時、閉じていたその傘が突然開いた。

 

霊夢「うっ…」

 

開いたその傘の全貌は、まさに本人が言った通り驚かすというよりも恐怖させる外見となっていた。

縦に垂直に配置された2つの大きな目が霊夢を睨み、異常なほど白い大きな歯が並んだ口も垂直になっている。

夢にも出てきそうな、一種のトラウマにもなりかねないその不気味なデザインの前にさすがの霊夢も一歩下がってしまった。

しかし、シロはそれにも臆することなく唐傘の前に躍り出た。

 

シロ「全く、やはり人間も他の妖怪も粕だな。このような雑魚の何が恐ろしいというのか」

 

「何だと~?」

 

シロ「どうせそこらにうろついてるような粕ばかり相手にしてきたのだろう?」

 

「くくく、塵も積もれば山となる…俺が弱小妖怪や人間から得た恐怖は集まって今や無敵や!このおかげで今や完全に小傘はんも俺の力の一部や…」

 

小傘は手に握っているその唐傘を思いきりシロに向けて振り下ろす。

 

「獣のひき肉一丁上がりィ~~~!」

 

縦に裂けた大口の堅牢な前歯がシロの頭を完全に覆い隠す。

 

「くくく…」

 

しかし、前歯に力を込めシロの首を噛み千切ろうとするも、それより歯は喰い込むことは無かった。

シロは唐傘の口内で思い切り炎を吐く。流石の唐傘もこれには耐えきれずに顔を離した。

 

「やりおったなぁ!!…ハ!」

 

唐傘が気付いた時にはもう遅い。

霊夢がお祓い棒を構えながら唐傘の目の前に接近する。

 

霊夢「あんまり怖いとビックリして手が出ちゃうのよね」

 

振り下ろしたお祓い棒が唐傘の眉間に当たる部分に命中し、その不気味な面が崩壊していく。

 

「馬鹿なァ!何十人の恐怖を喰い強くなった俺が…!」

 

シロ「その程度では我に勝てぬよ」

 

妖気を失い元のただの古ぼけた傘に戻った唐傘はコロンと地面に転がる。

だがそれを小傘が拾って見せた。

 

小傘「…ありがとう、あとごめんね。この傘は私が直して二度と悪い気を起こさないようにするから」

 

霊夢「そうね…その傘によく言っておきなさい」

 

小傘は拾った傘と自分が最初から持っていた傘を両手に持つとその場から立ち去っていった。

霊夢もさて帰るか、と後ろを振り向くがシロが居ないことに気付く。

 

霊夢「あ、もうあんなところに…待ちなさいよ!」

 

 

どうやらあの唐傘が倒されてからは怯えて引き籠ってしまった人間や妖怪のその唐傘に関する記憶は無くなったらしく、魔理沙の話によるとそれらの人々ももう以前のように生活しているという。

そしてそれから、2本の傘を持った不思議な一本だたらがたびたび目撃されるようになったという。

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