れいむとシロ   作:ねっぷう

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第51話 「大敵への挑戦」

いつものように妖怪の山で起こったちょっとした妖怪同士の抗争を治めた霊夢とシロ。

今回のこの件の依頼を出したのは山に棲む鴉天狗の姫海棠はたて。

彼女も射命丸文などの他の鴉天狗と同様に「花果子念報」という新聞を発行している。

勿論、今回依頼したのも抗争とシロについての記事を書くためである。

今は帰ろうとする霊夢とシロを自宅に呼んで取材を行っている最中である。

 

はたて「じゃあ次は貴方は巫女をどう思っているのか教えてくれますか?」

 

シロ「いいだろう。しっかり書けよ、我はその気になればいつでも霊夢を殺しこの地を焼き尽くす事が出来…」

 

お菓子を食べる霊夢の髪を掴みながらそう語る。

その時、はたての家の戸が勢い良く開いた。

 

文「はたて!ちょっと来なさい!」

 

はたて「なになになに!?」

 

やけに慌てた様子の射命丸文が部屋に飛び込んできた。

 

文「おや、霊夢さんにシロさん…丁度いいところに居ました、お二人にもお願いが…!」

 

霊夢「何があったの?」

 

文「山に侵入者…いえ、『来訪者』が!」

 

はたて「来訪者?」

 

文「巨大な蟹よ…。私たちは昔話に登場する巨大蟹と一致していることから『仙高蟹』と呼んでいるわ」」

 

シロ「仙高蟹か、聞いたことがあるぞ。確か仙人のように悠久の時を生き、圧倒的な体高で何百年周期で移動と眠りを繰り返すとか…。我も遥か昔に仙高蟹を殺したことがあるのだが…」

 

霊夢「その時はどうだったの?」

 

霊夢が立ち上がりながら尋ねる。

 

シロ「その仙高蟹は体高6丈ほどの個体だった。あ奴は自分の移動進路に障害物があれば積極的にそれを壊して進む、偶然鉢合わせた我に無謀にも挑んできたので尾を7回当ててようやく砕いた」

 

6丈、つまり20メートルほどの体高である。

シロの言い方からしてその程度ではまだ小型なようだが、それでもあの尾の攻撃を喰らっても耐え続けたという事は中々の生命力と強度な体を持っているらしい。

 

霊夢「しょうがないわね。シロ、行くわよ!」

 

霊夢とシロ、文とはたては仙高蟹が現れたという場所へ飛び立っていった。

飛んでいくと、確かに多少の地響きと慌ただしく飛び回る天狗たちが見える。

奥の方にその仙高蟹が見えた。

どうやら妖怪の山を正面から見て西奥の中有の道を真っすぐ進んできたようだ。

4本の真っすぐ伸ばした足を力強く踏み出しながら歩き、こちらを威嚇するように背中のヤドカリのように背負った巨大な龍の頭骨を見せびらかす。

そして50メートル以上はあろうかという体高が威圧感を出している。

傍から見れば龍の頭の下から4本足が生えているように見えとてもシュールだが、一歩踏み出すごとに足下の林が滅茶苦茶に踏み潰されていく。

その時、どこからか大きな低い声が轟く。

 

「来たか、巫女と白面の者!」

 

文とはたての反応から察するにその声の主は大天狗であった。

 

「見ての通り、あの仙高蟹は道行く林を潰し行く手を阻む哨戒天狗共を蹴散らしながら幻想郷を横断しようとしておる。あのルートで行けば…山の西側の麓を抜けて里を壊滅させなおも進んでいく。関わらずとも良い、放っておけばただ通り過ぎるのみだが…汝らはこの伝説の大敵に挑戦するか?」

 

霊夢「…確かに放っておいてもいいけど、巫女としてはそうはいかないのよね」

 

霊夢はそういうとゆっくりと歩みを進める仙高蟹に向かって行った。

シロもそれに続いて飛んでいく。

 

 

一方、仙高蟹の侵攻を止めようと交戦中の白狼天狗たち。

高い位置にある本体を攻撃しようとしても龍頭骨の中に籠っている本体を攻撃すること能わず、ならばその歩みの要となっている4本の脚を崩そうにも、何百何千年と地を踏んできた鋼のような脚も到底傷つけられるわけが無かった。

 

椛「うおおおお!!」

 

何度斬りかかってもその硬い甲殻に弾かれてしまう。

挙句には仙高蟹の踏み出す脚にまとめて吹っ飛ばされる。

 

椛「コイツ…!私たちを歯牙にもかけない…!!」

 

その時、その脚に霊撃と火炎が叩きこまれる。

 

「ヴィイイイイイイイ…」

 

霊夢とシロの攻撃を同時に脚に受けた仙高蟹もさすがにたまらず、痛みに脚を持ち上げる。

 

文「今ですよ!」

 

椛「博麗とシロ殿を呼んできたんですね!よし!」

 

戦意を喪失しかけていた白狼天狗たちと、文やはたてが加わった鴉天狗が一斉にバランスを崩しかけた仙高蟹の脚を攻撃する。しかしその時、背中の龍頭骨の中から蟹の鋏が突き出す。

仙高蟹は続いて細長い顔も頭骨から出し、今まで後ろ向きに歩いていたのを向きを変えて正面を向いて歩き始める。

 

シロ「…」

 

シロは展開させた鉄の尾を仙高蟹の顔面に叩きつける。

口元の牙や突出した甲殻が砕けるが、それでも仙高蟹は歩きながらシロを鋏のついた長い腕で殴る。

 

シロ「…!」

 

ついに仙高蟹は山の麓の森林を抜けようとしていた。

 

霊夢「まずいわね、怒ってるのか知らないけどスピードが上がってる」

 

霊夢とシロは仙高蟹の振り回す腕をかわしながら顔面に光弾を撃ちこんでいく。

確かにこの大敵は霊夢にとって大きな的に過ぎない。

 

「ヴィイイイイイイイイ!」

 

龍頭骨の中に頭を引っ込めようとしても、シロの9本の尾が引っ掛けられているので引っ込めることができない。

これは仙高蟹も怒り狂い、その長い脚でその場を飛び跳ねる。其のたびにさらに森林が薙ぎ払われ地響きが起こる。

 

パシッ 

 

その時、下の森の中から先端に槍の付いたワイヤーが伸び、仙高蟹の身体に巻き付いてゆく。

 

 

にとり「お待たせ!私たちが作った拘束ワイヤーも役に立たせるよ」

 

椛「おお、ありがとう!さあ…私たちも闘わなきゃ…」

 

 

それから4時間の戦いが続いた。

霊夢とシロと天狗たち、さらに加わった河童の兵器により悠久の時を生き抜いてきた仙高蟹にも限界が訪れた。

 

はたて「や…」

 

文「や…」

 

霊夢「やったー!!」

 

ガクンと脚を曲げ、その場に崩れ落ちる。最後の力を振り絞り低い唸り声をあげながら泡を吐くとジェンガのように倒れ込み、息絶えた。

 

シロ「中々…骨のある奴だったのう…」

 

霊夢「よし、じゃあ一件落着って事でこの蟹をみんなで食べてみない?」

 

シロ「食べるのか?」

 

文「ええ、伝説では討伐された仙高蟹は煮て食べられました。長く生きれば生きるほどその身に栄養と旨みが増していくとか…」

 

はたて「じゃあ決まりじゃない。皆を集めて蟹鍋パーティーよ!」

 

────────────

 

夜、天狗たちの持っている大きな広間に巨大な鍋が置かれた。

中には煮立った仙高蟹の大きな切り身が入っており、これだけの人数が居ても食べきれそうにないほどの量だ。

 

魔理沙「うっはぁ~、蟹鍋って聞いて来てみたが、まさかこれほど多いとは…」

 

身を取り出した後の仙高蟹の殻が山のように積まれている。

 

とら「美味そうな匂いじゃねぇか!これであのはんばっかがあればもっといいだろうけどな…」

 

見慣れた面々も揃っており、もはやこれまでにない規模の大宴会へと発展していた。

今回の事件はあそこで彼女らが踏ん張らなければ幻想郷そのものに甚大な被害が出ていたかもしれないのだ。

 

霊夢「ところで、昼間から文が言ってた昔話とか伝説って何なの?」

 

文「ああ、あれですか?3000年も前から大陸で存在していた話で、仙高蟹という巨大な蟹が百年周期で毎回街を襲いに来るので見事撃退に成功するとその町は豊穣に恵まれるっていう話です。でも仙高蟹も時が経つにつれ成長します、その街にやってくる周期もだんだん遅くなり仙高蟹にまつわる話も風化していきいつしか忘れ去られた結果…幻想郷に姿を現したのでしょうね」

 

霊夢「ふぅん…」

 

 

 

  大敵への挑戦─完

 




【仙高蟹】─せんこうがに
体高が高い蟹。シェンガオレン。
百年以上の周期で眠りと餌を求めて移動を繰り返し、その進路にある障害物や外敵は積極的に排除しにかかる。
文の言っていた通り成長するにつれ眠りと移動の間隔が長くなるため、いつしか仙高蟹の存在は昔話や伝説でしか語られなくなり、幻想郷に姿を現した。
美味しい。
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