一方そのころ、マミゾウを倒してから未だ寺の参道をうろうろしているとら。
とら「全くよー、わしが知ってる寺ってのは妖や霊に入られないように軽く結界を張ったりして守ってるもんなんだぜ。なのにこの寺はむしろ妖怪に入ってくださいって言ってるようなもんだ。あの尼公もよっぽど変わってんだな」
その時、参道の奥から何者かが歩いてくる。
とらはぼんやりとしたその影を目を細めて見る。
「そんなに睨むなよ」
とら「…何だ、おめぇかよ」
歩いてきたのは箒を持った霧雨魔理沙だった。
とら「どうしたんだ?…何かおめぇ妖クセェぞ?」
突然魔理沙の背中から赤い3本の鎌のような物が突き出し、とらの胴体に突き刺さる。
さらに背中から伸びて来た青いグネグネとした先が矢印状になっている触手がとらの腕に巻き付き、持ち上げて地面に叩きつける。
とら「か…テメェ…何モンだよ…?」
封獣ぬえ「お前だって聖に化けてマミゾウを不意打ちで倒しただろう?眠ってろお前…」
10分ほど前─…
「封獣ぬえ殿…何も貴方が出ることはありません」
「そうです、たかがあのような小物妖怪等、我らが捕まえますとも」
封獣ぬえ「お前らが…?あの長飛丸に逃げられただろ?お前らには任せられないな」
地底に封じられていた「鵺」という妖怪の封獣ぬえ。
かつて聖の解放を邪魔したにもかかわらず彼女からは快く受け入れられたことで、「暫くはこの僧侶に付いていくしかない」と思うようになり、後に仏門に入り、命蓮寺で寝泊りするようになった。
そして彼女もまた白面の者を滅ぼすためにその力を振るおうとしていた。
ぬえ「あのマミゾウもやられたんだ…お前らじゃ長飛丸に歯牙にもかけてもらえないよ。それとも何かい…私を腕ずくで止めてみるかい…?」
同じく寺に集まった妖怪たちのギリギリ目の前に持っていた槍を投げる。
床に刺さった槍を引き抜く。
「い、いや…」
ぬえ「ふん、分かったらお前達は聖の所へ行っていろ」
ナズーリン「あれれ、寺はこんなに広くなかったはずだが…」
青娥「確かに。私のかんざしでいくら壁を開けても外に出られる気配がしませんね」
ナズーリン「おや、あれは…」
長い廊下の向こうに見えるのは一人の人影。
良く見ると額に何か紙切れを貼りつけて立っているのが分かる。
青娥「あら!芳香じゃない!私の事が心配で来てくれたのね?」
ナズーリン「え!?」
青娥はその人影を芳香と判断するや否や両手を広げてそれに向かって行く。
しかし、ナズーリンはおかしいと思っていた。
ナズーリンにはその影は前に何度か見かけたことがある封獣ぬえにしか見えなかったからだ。
ぬえの能力、「正体を判らなくする能力」蛇になったり鳥になったりと不定形な「正体不明の種」なるものを対象に仕込み、その対象に対する認識をかく乱する能力。
それを利用したぬえは額に紙切れを貼ることで青娥には宮古芳香と認識させたのだ。
だがこの能力は本来の形を知る者には効果が薄く、普通に見えると言う。
つまりぬえの本来の姿を知るナズーリンには何も変わって見えないのだ。
ナズーリン(芳香…?私には封獣ぬえにしか見えないぞ…?)
ナズーリン「…まさか!青娥くん、離れ…」
そう言いかけた時にはぬえの蹴りが青娥の顔のすぐ前まで迫っていた。
──────────────────
命蓮寺の中央、畳の敷かれ奥に強烈な威圧感を放つ仏像が置かれた大部屋。
白蓮「さァ!この卑劣で邪悪な大妖怪、白面の者がついにこの世から消え去る!」
その大部屋には寺の妖怪たちが集まっており、皆が一心に部屋の上を見上げている。
そして妖怪たちの方を向いている聖の背後に捕えられた者たちが居た。
とら「チッ、不覚だったぜ…」
屠自古「ふん、お前がさぁ…おお、太子様!無事だったのですな!とか言いながら化けた敵に駆け寄らなければ私まで捕まらずにすんだのに…」
布都「何だと~!我もお主も疲弊しておったのだ、精神まで疲れたあの状態でそんな事判断できる訳ないであろう!」
青娥「私こそやらかしてしまいましたわ…てっきり芳香だと思い込んで自ら敵の射程に飛び込むなど…」
神子「結局私も掴まったままとは…。ナズーリンはどうしたのですか?」
青娥「彼女は逃げましたわ。多分巫女をここまで案内してくるでしょう」
法力の鎖でグルグル巻きにされた6名。
そしてすぐ前、聖の後ろには背の高い石の箱が置いてあり、箱の中には真っ黒に溶けてどろどろの粘土が詰め込まれている。
その箱の真上に両手足を独鈷で縫い縛られたシロが吊るされている。
シロ「…」
白蓮「これから白面をこの粘土の箱の中に落とし、粘土ごと焼いて固めてそれを長飛丸が砕く…」
とら「やだね、誰がテメェの言う通りにするかよ尼公が!」
ぬえ「…聖、私はあと一匹の鼠を仕留めて来るよ。小賢しいからな、何をするかわかったもんじゃない」
白蓮「そうですか、では頼みましたよ…」
ナズーリン「はぁ…はぁ…どこだ、あの巫女は…?」
大部屋周辺の通路を見つからないように走り回るナズーリン。
先ほどのぬえの襲撃から逃れた彼女はここに向かっているはずの霊夢を捜しているのだ。
だが、角を曲がったとたん、胸に激痛が走ると同時に身体が壁に固定される。
ナズーリン「ごほ…!」
胸には三又のフォークのように分かれた槍が突き刺さっている。
どくどくと流れる血と地面から離れた自分の足の感覚が気分を悪くする。
ぬえ「よォ…鼠くんよ。そんなに走り回って、何しようとしてんだ?」
ナズーリン「君か…」
ぬえ「さっきは逃がしちゃったからな。今度は捕まえるだけじゃ済まさねぇ…」
動けないナズーリンの左頬にぬえの蹴りがヒットする。
ぬえ「けけけ、気持ちいいなぁ…お前のその無念の顔と血が私にとって快感よ!けけけけけ!!」
ナズーリン(私は死ぬのか…ご主人にも捨てられて…せめてさっき逃げた時に、こんな余計な事せずに一人で生きる事を決めればよかったかな…)
突き刺さった槍が引き抜かれ、彼女は地面にどさっと倒れ込む。
ぬえは手に持った槍をつんつんとナズーリンの顔に当てて狙いを定めると、それを思い切り振り上げる。
ぬえ「じゃあな。白面もあとから行くだろうから、仲良くやんな」
ズドォン
ぬえ「お…?何か近づいてくるな」
何かを破壊する音と共に何者かの膨大な気が押し寄せる。
ナズーリン(誰だろうか…まさか…!)
ぬえ「けひゃひゃひゃ!そういえば、あの出来損ないの古代人から仙術の心得とやらを付け焼刃で習った下衆な人間がいたなぁ!博麗霊夢!!」
霊夢「ゴルァあんた!!私は急いでんの、そこを退きなさい!」
ぬえ「けけけけ…お前が聖を止められるかよ。まあ最も…お前はここで終わ」
物凄いスピードで飛んできた霊夢の膝がぬえの顔面に深くめり込む。
ひざと顔の間から血が噴き出し、ぬえの身体が回転しながら床に激突する。
ぬえ「け、けえええ!やっ」
起き上がって喋る間もなく裏拳が当たる。
さらに間髪入れずに肘鉄が腹に突き刺さり、ぬえが持っていた槍が手から離れ地面にカラン、と落下する。
だがそれでもぬえは背中の鎌のような触手を振り回して霊夢を攻撃する。
霊夢「邪魔!」
手から流れる血を気にすることなく鎌を素手で掴んで止める。
そしてぬえが自分の顔を押さえていた手を掴むと、腰に踏ん張りを利かせて振りかざす。
ぬえ「…!?」
その間わずか5秒。
ぬえは脚を開いたまま無様に空中を舞い、脳天から床にめり込む。
ナズーリン「つ、強いな…」
霊夢「いいから喋らないで。…聖も皆も絶対に正気に戻してあげるから」
「は、博麗の巫女か…こ、ここから先は通さんぞ…」
20匹ほどの妖怪が霊夢を囲い始める。
霊夢「やれやれ…」
神子「く…聖よ、止めるのだ!そんなにそのシロ殿が邪悪だというのなら、何故この幻想郷は無事なのか!」
白蓮「もう、遅いわ…」
聖が両手を合わせて目を閉じる。
シロを吊るしている法力を解く動作なのだろうか。
ギイ…
とら「やっと…来たかよ」
霊夢「アンタ…冗談事じゃすまないわよ…!」
霊夢が妖怪を吹き飛ばしながら大部屋の戸を蹴り破って入ってくる。
白蓮「ふふふ、一番いいところに間に合いましたね…」
霊夢が上を見上げるとそこにはじっと聖を睨みつけるシロが天井から吊るされていた。
霊夢「シロ!」
飛び上がってシロを解放しようと近づいていく。
が、シロを吊るしていた法力の紐の一本がプツンと切れた。
「だが、もう遅いぞ。これで白面の者滅殺は成される」
聖の背後からするりと大きなマントと深いフードを被った人物が現れる。
霊夢(アレは誰…?でもこの感じ…前にも会ったことがあるような…)
霊夢の勘が告げていた。
そのぶかぶかフードの何者かと、この聖は危険だと。
聖が手を合わせ短く呪文を唱えるとシロを吊るしていた法力が途切れ、鉄の重しを付けられたシロが粘土が溜められた箱に落ちていく。
霊夢の前で今まさに、白面の者滅殺が成されようとしていた。
そういえば、いつの間にか評価ポイント?が凄い事になっててびっくりしました。
正直ね、せめて誰か一人にでも見てもらえればいいみたいな感じで書いていたんですが、やはりここまでくるともう適当には書いていられなくなりますね。プレッシャーがあります。
今後ともれいむとシロをよろしくお願いしますね。