れいむとシロ   作:ねっぷう

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第57話 「剛の魔法」

シロ「…」

 

落ちていく。

聖白蓮の法力はシロ及びその化身達が相手にしてきた如何な法力使いよりも強かった。

自らの身体に纏わりつき力を封じている結界の所為で本来の実力の何万分の一しか力を発揮できないとはいえ、幻想郷で目覚めてからほとんど負けたことなどない。

 

そのシロが、こうしてただ何もできずに法力に捉えられたまま落ちていく。

下には妖気を奪って固まっていく粘土。入ってしまえばシロは粘土と混ざり合って形がなくなり、それが固まった後に粉々に砕いてしまえばシロは完全に滅んでしまう。

 

霊夢「…!!」

 

シロの背中が粘土に浸かる。

霊夢には粘土に呑みこまれていくシロがとてもスローに見えた。

次に頭も浸かってしまう。その時までシロの目はただただ聖を睨んでいた。

脚も全部呑みこまれ、続いて腕も。

霊夢は箱の縁に身を乗り出してシロの腕を掴もうとする。

しかし、シロの長い爪の生えた真っ白い指は霊夢の手をすり抜けて粘土の中に消えていった。

 

霊夢「シロ!シロ!!」

 

白蓮「無駄ですよ、博麗霊夢。今頃白面は粘土の中で溶け、混ざっている頃でしょう。後は粘土が固まるのを待って、長飛丸に砕かせれば全て終わります」

 

とら「けっ…ようやく、色々してきたツケが回って来たんだ…。おい女、お前もソイツを退治する予定だったんだろ?じゃあいいじゃねぇか」

 

霊夢「確かに、いつかは退治してやる予定よ…でも、今はシロを失っちゃいけないワケがあるのよ…それをアンタは!!」

 

霊夢は七色に光る気を乗せた札を聖に向けて放つ。

しかしそっぽを向いたままの聖は手をかざしただけでそれを相殺してしまう。

手には傷一つついていない。

 

白蓮「さて、そろそろ固まる頃ですかね。長飛丸、来なさいな」

 

霊夢「く…」

 

その時、霊夢の元へ寅丸星が現れる。

 

霊夢「何よ?聖の味方でしょ、やるっていうの?」

 

星「…私がダメでした。私が聖を止めていれば、こんな大事にはならなかった。ごめんなさい…でも」

 

ガシュ

 

星の右肩に法輪の形をした投擲武器、千宝輪が突き刺さる。

妖怪の苦手とする法力の込められた一撃は容易に星の意識を奪った。

 

霊夢「…」

 

白蓮「もう貴方に用は有りません。おとなしくしていれば如何?」

 

霊夢「…尖撃!!」

 

鋭い槍の如き一撃が聖を襲う。

 

白蓮「少し遅いかな?剛の魔法で肉体強化を施せば視力や反射神経を底上げすることも容易。いざ!」

 

白蓮は直立したまま飛び上がって霊夢に攻撃を避ける。

霊夢が聖を目で追おうと視線を少しずらしたその一瞬で聖は霊夢の横に回り込む。

鋼のように強化された腕に気を乗せたパンチが霊夢目がけて放たれる。

床の畳を捲りあげながら下から襲い来る剛撃を、霊夢は咄嗟に結界の防御壁を作って防ごうとする。

 

霊夢「おおお…!?」

 

しかし、聖の一撃はそれすらも軽く押し破り霊夢を吹き飛ばす。

それに生じた衝撃波が床を破壊していき埃がぶわっと舞い上がる。

物凄い勢いで吹っ飛ばされた霊夢は粘土の入っている石の箱に頭を強打する。

 

霊夢「クソッ…!」

 

頭に重たい激痛が走り、眉間を温かい液体が流れていく。

態勢を立て直そうと体に力を入れたとたん、聖のパンチが当たった箇所、脇腹にも痛みを覚えた。

どうやらあばら骨まで持っていかれたらしい。結構な力を使って防御壁を作ったはずだが、それでもこれ程のダメージをもらってしまうとは、聖の尋常ではない魔力が伺える。

 

白蓮「『喝』!!」

 

さらに追い打ちのように聖が法力の衝撃波を放つと、それは霊夢に命中し、霊夢の身体は上へ突き上げられる。

石の箱の側面を上に転がりながら箱の縁まで乗り上げる。

 

霊夢「これは…さっきの粘土がもう固まってる…?」

 

ふと霊夢が先ほどシロが落ちていった粘土を触ると、既に粘土が固まっていた。

 

霊夢(そうだわ…シロはもう…)

 

すっかり気力を失った霊夢は固まった粘土の上に寝転がる。

 

霊夢(そうだ、このまま私まで死んで、皆後悔すればいいわ…八頭龍が復活したときにどうせ皆口々に言うわよ、「あの巫女と妖怪を生かしておけばよかった」ってね…)

 

 

神子「くそ…私たちが動ければ…!」

 

布都「霊夢までやられてしまうとはの…」

 

白蓮「ふふふ、白面の者は消えた。これで私の全人妖救済に、一歩近づいたわ」

 

屠自古「何が救済だ!さっき自分の仲間を攻撃しただろうが…!」

 

白蓮「何を言っても遅いですよ。貴方たちも、今後一切私に関わらないというのなら解放してあげましょう…」

 

 

霊夢はただ固まった粘土の表面を眺めていた。

 

霊夢(アレは…何かしら?)

 

だが霊夢は自分の周りをふわふわと漂う埃のようなものを見つけた。

その埃はどうやら何かの毛のようで、透き通るように真っ白に輝いている。

 

霊夢(そうよ、私だって見たじゃない。外の世界で何千何万の妖怪を相手にして優勢を保っていたシロが、たかがこんな土の塊で死ぬわけないじゃない!)

 

力を振り絞って立ち上がる。

そう考えると、何故だか分からないがシロが生きている気がしてきた。

きっと思い過ごしではない、絶対にシロは滅んでなどいない。

 

 

白蓮「では、先に貴方だけ解きましょう、長飛丸。そうしたら、あの粘土を粉々に砕くのです」

 

とら「チッ…」

 

とらに掛けられた法力が解けた。

 

白蓮「早くしなさい」

 

とら「お前に言われるのは気に入らんが、しゃあねぇよな。何せアイツはもうこの中で生きちゃいねぇんだ」

 

箱に近づきながら右腕に雷と妖気を纏わせる。

 

とら「…あばよ」

 

箱ごと粘土を砕く勢いで、とらは思い切り拳を振り下ろす。

が、拳が箱に当たる寸前でくるりと向きを変え、聖に向かって稲妻を放つ。

 

とら「お前がな!!」

 

白蓮「く…どいつもこいつも…!!」

 

霊夢「おりゃーッ!」

 

白蓮「ぬ!?」

 

箱の上から突撃してきた霊夢のお祓い棒が丁度後ろ、とらの方を見ていた聖の後頭部に当たった。

流石にこの時は先ほどのように強力な肉体強化を行っていなかったようで、霊夢の一撃は応えたようだ。

 

霊夢「残念だったわね、シロはまだ…死んでないから!」

 

白蓮「何だと…?」

 

その時、石の箱の側面を突き破ってシロの尾が一本突き出した。

続いて2本、3本の真っ白い尻尾が箱の中から姿を現す。

そして驚く聖の胸にシロの鉄の尾が叩きつけられた。

 

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