シロの鉄の尾の一撃を喰らった聖は後ろに倒れ込む。
再び箱の方を見ると、既に復活は始まっていた。
シロ「おおぎゃあああああああああ!!」
雄叫びと共に粘土を粉砕しながら、さっき粘土に入った時と同じ人間に変化した状態のシロが復活した。
シロ「く…くくく…愚かな女だ。この程度で我を封じられると思うてか?」
白蓮「私が千年の間封印されていた魔界の力を使っても、封じることができないのか…これが白面の者の力か!!」
聖はレーザーと弾幕をシロに向かって放つ。
シロ「…」
しかし、その弾幕もシロの鉄の尾の前には全く意を成さなかった。
白蓮「『喝』!!」
両手を顔の前で合わせ、先ほど霊夢にも使った法力を放つ。
シロは赤い毛が生え、先端に2本の触角のような物が生えた尾をその法力に向けて振るう。
その尾はかつて地底で解き放たれた、外からの力を反射する能力を持つ尾が時が経つにつれ見た目が変わり、能力も若干強化されたものである。
法力がその尾に当たった瞬間、法力は真っすぐに聖に向けて跳ね返された。
白蓮「お、おのれぇ~!!」
シロ「今までの態度はどうした?余裕がなくなって来たのではないか?」
白蓮「もういい、私が直接お前を滅してやるわ!」
シロ「やってみるがいい!」
シロの尾の内の一本が黒く変色していく。
尾の先端が蛇の口のように割れ、黒くなった尾が現実世界のナマコを思わせるようなごつごつした体表へと変化していく。
シロ「お前のおかげで尾の能力がまた一つ解放されたぞ」
その黒い怪物の尾はノイズ音のような唸り声をあげながら聖に飛びかかり、聖もそれを防ごうと怪物と組み合う。
青娥「何と、凄まじい…」
目の前で繰り広げられるシロと聖の戦いを見て青娥が呟く。
とら「この勝負、アイツの勝ちだぜ」
神子「何故分かるのです?私には互角に見えますが…」
とら「何だお前ら、知らんのか」
とらは口を尖らせながら神子たちにそう言うと、今度は目を細めた笑顔で戦いを見る。
とら「今戦ってるアイツはな…かつて単身で幾つもの国を滅ぼし、このわしが認めた…白面の者なんだぜ!負ける訳がねぇんだよ、分かったか?」
霊夢「よぅし、今の内に法力を解くわ」
神子「おお、頼むぞ!」
霊夢は神子らを縛っている法力に手を当て、何か呪文のようなものをブツブツと唱え始める。
しばらくするとパキンという音と共に神子に掛かった法力が解けた。
白蓮「白面~!!」
シロ「来いよ、粕が!」
2人は同時に飛びかかり、腕を掴み合って取っ組み合う。
シロの蹴りが聖の腹に食い込み、聖の千宝輪がシロの首元に突き刺さる。
シロ「けけけ…あいこだな」
白蓮「あいこ?ふふふ、愚かなのはどっちでしょうね?」
首に突き刺さった千宝輪がキリキリと回転しながらシロの首を引き裂く。
傷口から血が噴き出すが、その血のしぶき一つ一つが婢妖に変わっていく。
白蓮「ほほほ、小さいのがわらわらと…でも無駄よ!」
血から変化した十数体の婢妖を取り囲う輪投げのように長い数珠を被せる。
聖が手を叩くと数珠が一瞬で縮まっていき、それに触れた婢妖が消滅していく。
シロ「あの神子とか言う奴から聞いた話では、お前は人間共にも滅多にないほどの善人だったそうだな。お前は何に影響されて我を滅ぼそうとする?」
白蓮「う、うるさい…私がお前を気に入らないから殺してやろうってだけよォ!!」
ドグシャ
シロ「げ…」
聖のタックルに吹っ飛ばされるシロ。
とら「ええい、しっかりしろや!」
白蓮「くたばれ、白面!!」
聖は背後から巨大なお釈迦様の腕を召還する。
その手が握り拳の形を取り、思い切りシロを殴りつける。
勢い良く吹き飛んだシロは床を破壊しながら転がっていき、先ほどの壊れた石の箱の土台に激突する。
神子「シロ殿、大丈夫ですか!?」
神子が倒れ込んだシロの上体を起こしてやる。
シロは頭を振りながら鼻息と一緒に鼻血をピッと飛ばす。
その時にシロの視界に霊夢の姿が映った。
霊夢「あ…」
額から目の下まで乾いた血の跡、その血をぬぐったであろう赤く湿った両袖。
そして手でおさえている脇腹は骨でも折ったのだろうか。
シロ「我は…如何に力があっても、人間一人守ることもできぬのか…」
神子「…霊夢はシロ殿にとって、大切な人間なのですか?」
シロ「…」
シロは何も言わずに瓦礫の中から立ち上がる。
白蓮「ふん、まだ起きるのか…だけど今度こそ叩き潰してあげますよ!!」
魔人経巻を広げると聖の背後に大きな光り輝く男の像が現れる。
左手に杖と右手に宝塔を持ち、肩や腰に鉄の装飾を付けた如何にも神様と言った風貌だ。
白蓮「毘沙門天よ、今こそ白面の者を抹消するために力をお貸しください」
背後に召喚された毘沙門天の掘りの深い目元が光り始める。
神子「く…!」
神子は腰のあたりに手をかけ、どこからか剣を抜くとそれを構える。
シロ「見るな!!」
突然大声を出された神子は少し驚いてシロの方を見る。
シロは片手で自分の顔を隠すと、神子にだけ聞こえるような小さい声で言った。
シロ「これより先、決して我を顔を…見ないでくれ」
次の瞬間、召喚された毘沙門天の身体が引き裂かれた。
先ほどの黒い怪物の尾が毘沙門天に巻き付き、そのまま胸元に噛みつくと毘沙門天の身体はベニヤ板を割った時のようにいとも簡単に砕けた。
白蓮「そんな…!」
さらに最大出力のシロの炎が砕けた毘沙門天と聖を包む。
毘沙門天は消えていったが、聖はその炎が収まるまで耐え凌いでいた。
白蓮「やりましたね、白面~!」
が、流石にあの炎は強すぎたのだろう、髪や衣服は所々黒く焼け、肌にも煤が付いている。
シロ「御出で。遊んであげるよ、お嬢ちゃん」
9本の尾を広げると部屋の天井を壊し空へと舞いあがっていく。
白蓮「場所を変えたとて無駄よ!」
聖も周囲に蓮の花を浮かべた光翼を展開してシロを追うように空へ上がっていく。
霊夢「見た?今の顔…あんなに哀しそうなシロの顔、見た事ない…」
青娥「ええ…」
布都「シロ殿は何故に上へ昇ってゆくのじゃ…?」
屠自古「さぁ…?」
とら「奴は本気になったテメェを見せたくねぇのさ。わしは何度か本気でキレた奴と戦ったが…あんな怒り方してるのを見るのは…初めてだぜ」