れいむとシロ   作:ねっぷう

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第60話 「ヒートアップ」

神子「あ…あ…」

 

布都「な、何だ…あの者が顔を見せたとたん、太子様が…!」

 

青娥「どういうことですの?」

 

膝をついたまま動けない神子を見て布都たちはそのフードの者を見る。

 

霊夢「ちょっと、アイツもあんたの仲間なんでしょ?何者?」

 

星「分かりません…ただいつの間にか私と一緒に聖に仕えていたとしか…」

 

先ほど目を覚ましたばかりの寅丸星が答えた。

だが聖の千宝輪が刺さった傷口からは血が流れ、そこを右腕で押さえている。

 

布都「貴様、太子様に何をしたァ!?」

 

屠自古「そうだ、こっちを向けい!」

 

「…」

 

フードの者がこちらに振り向く。

 

屠自古「ああ…」

 

布都「どうしたことじゃ…」

 

星「体の力が抜けていく…」

 

とら「!?なんだってんだおめぇら…!」

 

霊夢「そうよ、アイツがどうかしたっていうの?」

 

皆がフードの者に顔を向けられた瞬間に身体の力が抜け、思わずその場にへたり込んでしまう。

しかし、不思議なことにとらと霊夢だけはそれが起こらなかったようだ。

 

キイイイイイイイイイイイイイイイイ…

 

青娥「アレは…」

 

その場の全員が天井に空いた穴から上を見る。

耳をつんざく悲鳴のような轟音と共にシロと聖が組み合ったまま落下してきた。

 

 

シロ「けええええええええ!!」

 

白蓮「お前…とっとと死になさい!」

 

まるで小さな隕石のように燃えながら、その炎の中でしきりに殴り合う。

 

シロ「くくく、これでは先に地上に着いたか否かで、勝敗が決まるな…」

 

白蓮「そうか…受けて立とう、私が上かお前が上か!」

 

一度成層圏に達するまで飛び上がり、そこから落下してきたのだ。

このまま地面に激突してしまえばただでは済まないだろう。お互いに身動きが取れないほどの力で取っ組み合っているので体勢を変えようにも変えられないし飛ぼうにもそれもできない。

つまり、マウントを取ったまま地面に着地すれば勝ちなのだ。

 

ドガァァァン

 

2人は寺の東側にある倉に屋根から突っ込んでいった。

当然、倉は破壊され瓦礫が飛び散り倉の中にあった物も跡形もなくなり中の骨組みと土台だけが残った。

そして火の粉と土煙の舞う倉の場所に立っていたのは…。

 

シロ「はぁ…はぁ…」

 

聖「…」

 

シロだった。

足元で蹲ったままの聖を見下ろしながら手の甲で口元の血をぬぐった。

 

 

 

一輪「急いで、村紗!やっぱりおかしいわ、早くやめさせないと!」

 

村紗「うん…間に合えばいいけど…」

 

既に目を覚まし、正気に戻った2人。

2人は聖を止めるべく大部屋に向けて走っていた。

 

村紗「ここね…」

 

外れた大部屋の戸をどかして部屋に乗り込む。

 

一輪「え…!?」

 

2人が部屋に入ってから目に飛び込んできた光景は、聖と一緒に居たフードの者の前で皆がぐったりとしている姿だった。

 

霊夢「あぁ、あんたらも正気に戻ったようね…」

 

とら「ちィィ、コノヤロウ…隙がねぇぜ…」

 

「…」

 

その得体の知れない雰囲気に霊夢もとらもうかつに手が出せないでいた。

他の者もそいつから発せられる謎の光に当たって動くことが来ないのだ。

 

村紗「アイツは確か聖と一緒に居た…。おい、お前は何者だ!?」

 

その時、周囲にドカンという音と共に短く地面が揺れた。

シロと聖が倉に突っ込んだときの衝撃だ。

 

「…聖白蓮め、しくじったか…所詮は穢れを纏いし魔法使いか…」

 

その者は静かにそう呟く。

 

神子「な…、どういうことだ?」

 

その者が少し顔を上にあげた隙を見て神子が立ち上がりながらそう聞く。

 

「しかし、まぁ良い…我らが都を脅かす白面の者も、いずれは滅ぶのだ…」

 

再びフードを被りなおすと、両腕を広げ閃光と共にその場から消えてしまった。

 

布都「都を脅かす…?何を言うておるのじゃ…」

 

霊夢「とりあえず、外へ行って戦いがどうなったのか見ましょう」

 

 

 

シロ「…ぐぁ」

 

蹲ったままの聖をよそに崩れた壁の上に座って欠伸をする。

久々にここまでやられた。身体も節々が痛むし、流石に妖気もほとんど残っていない。

 

白蓮「かは…失敗、だと…私は、お前を滅することはできなかったのか…?」

 

シロ「当たり前だ。所詮は人間の成れの果て、我の相手ではなかったのだ」

 

白蓮「げ…」

 

聖の身体から紫色の気の玉がぽわんと浮かび上がる。

その玉は上へ昇っていく途中でシャボン玉のように割れて、消えた。

 

シロ「アレは…」

 

その消えていった気を見て、シロがそれに見覚えがあるように呟く。

 

霊夢「お~~~~い!どうなったの~!?」

 

シロ「…霊夢」

 

霊夢たちが駆け寄って来た。

 

霊夢「どうやら、終わったみたいね」

 

安堵の声を漏らす。

 

ナズーリン「いてて…」

 

マミゾウ「無理するでないぞ、後で儂が医者のもとへ連れて行ってやる」

 

胸の傷口を押さえたナズーリンが、マミゾウに抱えられながらやって来た。

それを見た星が申し訳なさそうな顔をしながら近づいていく。

 

ナズーリン「…ご主人」

 

星「あの…さっきはごめんなさい。どうかしてたんです…貴方を殴ってしまうなど…」

 

頭を下げる星の肩をナズーリンが軽くぽんと叩く。

 

ナズーリン「いいよ、終わった事だ…気にしないでくれ」

 

星「ナズーリン…」

 

ぬえ「そ、その…悪かったよ、ゴメン…」

 

とら「全くだ、テメェの所為で…!」

 

布都「まぁまぁ、とら殿よ…過ぎた事だ、許してやれい」

 

屠自古「あらら、アンタも言うようになったじゃない」

 

布都「ふふふん、我だってな、やればできるのだよ」

 

聖白蓮及び命蓮寺の者たちの白面の者滅殺計画は失敗に終わった。

皆が各々に事を進める中で、神子は未だ打ちひしがれている聖に手を差し伸べる。

 

神子「大丈夫か?」

 

白蓮「…」

 

神子「なぁ…何故お前が今回のような事を実行しようとした?お前と一緒に居たあの者に…付け込まれたのではないかな?」

 

白蓮「…あの人はいつの間にか私の後ろに居ました。そうして耳元で囁くの…」

 

『あんな最低な白面の者は必要ありません。あいつが居ればこの世の救えるべき妖怪も人間も救えなくなる。そうではないか?』

 

白蓮「それを聞くたびにだんだんとおかしくなって…他の皆も…」

 

神子「…」

 

白蓮はふらりと立ち上がると、その場を立ち去ろうとする。

 

星「もし、聖!どこへ?」

 

白蓮「星、しばらくの間寺をお願いしますね」

 

一輪「待って!」

 

白蓮「私は愚かだった…恐らく、私の心に少しでも白面の者を憎む気持ちがあったのでしょう。そこに上手く付け込まれて今回のような事態を…。私はしばらく旅に出ます、決して追ってこないでください」

 

村紗「お、おい…」

 

追いかけようとする村紗の腕を神子が掴んで止める。

 

村紗「な、何で止めるのさ!?」

 

神子「…今は、彼女の言う通りにしてやれ。今回の事はよほどショックだったようだ、立ち直るには時間が必要だろう。分かってやりなさい」

 

一輪「…」

 

神子「して、霊夢よ。もし良ければ、私らにだけでも教えてもらえないかな?」

 

霊夢「ん…何を?」

 

神子「私はシロ殿が目覚めたのは、シロ殿がこれから起こる大きな事態に必ずや必要と成り得るからと考える。なので、これから起こる事を…霊夢とシロ殿は知っているのではないか?」

 

霊夢「そうねぇ…」

 

霊夢は神子、布都、屠自古に全てを話した。

500年前の事、博麗大結界ができた本当の訳、そして幻想郷の2枚の結界の間に八頭龍という八つの頭を持つ強大な龍が閉じ込められていること。

その八頭龍が近いうちに目覚め、その時自分とシロは戦わなければならないこと。

 

神子「…何と、この幻想郷にそのような事が…」

 

霊夢「まぁ、巻き込まれたくなかったらさっさとどこかに身を潜めるのもアリよ」

 

神子「ふむ、決めた。その八頭龍とやらが復活したときは、お前と共に私たちも戦います。いいですよね、2人とも?」

 

布都「もちろんですぞ。我は一生太子様に付いていきまする!」

 

屠自古「…ふん」

 

霊夢「あら…中々心強い味方が手に入ったわね」

 

シロ「くくく、別に我一人でも問題は無いのだがな。八頭龍を滅ぼした後は我がお前達ごと幻想郷を滅ぼすので…覚悟しておけよ」

 

神子「…ふふふ、楽しみにしておきますね」

 

霊夢「さてと、じゃあ帰りましょうか!」

 

霊夢とシロは朝日に照らされながら神社へと帰っていった。

 

 

 

────────────────

 

紫「そう、聖白蓮たちのシロ抹殺は阻止されたのね」

 

藍「はい、危うく八頭龍を倒すためのキーを失う所でした」

 

八雲亭の一室で紫と藍がそんな事を話し合う。

 

藍「しかし気になりますね、聖白蓮に付け込んだという不思議な者…」

 

紫「…八頭龍の脅威以外の何かが…もう起こってるのかもしれないわね」

 

 

 

キュリキュリキュリ カシャン

 

そのころ、妖怪の山。

そこに住む誰もが気付いていない事だが、その山を生き物ではない何かが徘徊していた。

 

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