れいむとシロ   作:ねっぷう

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第62話 「初夏の追憶」

ミーンミーン ミッチョワミッチョワ

 

6月だ。

既に桜舞い暖かな春は過ぎ去り、幻想郷は夏を迎えようとしていた。

地面は昨日降った雨でまだびしょびしょだがセミの声が響き始め、良い雰囲気を醸し出している。

 

霊夢「もう夏かぁ」

 

シロ「ああ…」

 

霊夢「何よああ…って」

 

シロは部屋の中で座椅子に座っている霊夢の上で、逆さまに浮かんだまま胡坐をかく。

 

霊夢「あんたねぇ、そうやって素っ気なくしてればカッコいいとでも思ってるんでしょ?」

 

シロ「はぁ?」

 

霊夢「こんな目してさ、ちっとも感情が伝わらないのよね」

 

シロ「何だとォ…我だってな、ほら、いい天気だな~!」

 

霊夢「気持ち悪い」

 

シロ「…もういい、出かけて来る」

 

霊夢「気を付けてね」

 

シロは逆さのままふらりと縁側から外に出るとくるりと態勢を普通に戻し、どこかへ飛んでいった。

 

霊夢「あ!そういえば今日は6月6日…あの時から1年かぁ」

 

ふと壁に掛けてあるカレンダーを見た霊夢が呟いた。

そう、今日は6月6日。丁度1年前の今頃に何を思い立ったか急にまたこの神社に何が祀られているのか気になって、探しに行ってみたところ、間違えてシロの封印を解いてしまったのだ。

 

霊夢(それと、あの時に壊れたままの本殿、まだ治してないわね…)

 

霊夢はシロが復活した際、シロに破壊された本殿の天井や壁をまだ治していないのだ。

というかその日の夜に少し本殿に立ち寄って調べものをしたとき以来一度もあの場所に足を踏み入れていない。

何故だか、あそこに立ち寄る気にはなれない。

いずれ八頭龍を倒すことに成功したら、その後にシロと一緒に見てみようかな。

 

霊夢「いてて…まだあばらが完全に治ってないから安静にって言われてるのよねー…だからまだいいか…」

 

そんな独り言を言いながら、霊夢は座椅子を少し前にやって机の上に置いてあったお茶を啜った。

 

 

シロ「…さて、どうしようか」

 

初夏の幻想郷の空を飛ぶシロ。

涼しい風が吹き、日の光が背中を温める。

 

シロ「あそこだな」

 

神社から飛び立ったシロの足は自然と迷いの竹林へ運ばれた。

前からそうだ、どうしても不思議と一人で出かけた時はこっちへ流れてしまう。

 

シロ「よっと」

 

上手く竹と竹との間をすり抜けながら滑空し、湿った地面の上に踵を擦りながら着地する。

 

妹紅「おや、シロじゃん」

 

目の前で背中に大きなかごを背負って、しゃがみながら何かをしていた妹紅が居た。

妹紅は背後のシロの気配に気が付くとこちらに振り向いて立ち上がった。

 

シロ「久しいな」

 

妹紅「そうだな。色々あったみたいじゃないか、噂で聞いたわ」

 

シロ「お前こそ、あの青藍…だったか?との決着はついたのか?」

 

妹紅「まあ一応ね」

 

シロ「…そうか」

 

シロはくるりと向きを変え、再びその場から飛び去ろうとする。

だが妹紅は飛び去ろうとするシロを呼び止める。

 

妹紅「あ、ちょっと待った」

 

シロ「何だ?」

 

妹紅「これ」

 

妹紅は背中のかごの中から立派なタケノコを3本取り出す。

それを一緒に袋に入れるとシロに手渡した。

 

シロ「これは?」

 

妹紅「お前と霊夢にやるよ。確か、霊夢は怪我してるんだろ?1か月くらい前に永遠亭に向かってるのを見たよ」

 

シロ「…ふむ、霊夢に代わって感謝するぞ」

 

妹紅「いいっていいって」

 

貰ったタケノコが入った袋を尻尾の先に引っ掛ける。

シロは今度こそ飛び上がるとその場を後にした。

 

 

─妖怪の山

 

にとり「たまには釣りもいいもんだねぇ」

 

早苗「ええ、この待っている時間が物思いに耽れていいですよね」

 

九天の滝、という妖怪の山に存在する大きな滝に通じる川。

その川の端に積まれた岩の上で河城にとりと東風谷早苗が釣りをしていた。

しっかりとしたリールも付いている釣竿から伸びる糸の先にミノーという小さな魚型針の付いたルアーを取り付け、水面に垂らしている。

しかし、いくら待っても魚が引っ掛かる気配はない。

 

にとり「あれぇ、おかしいなぁ。いつもはもっと簡単にかかるのに…」

 

ピク

 

早苗「あ、見てくださいほら!」

 

にとり「おお!」

 

ついに何かがルアーに食い付いたのか、物凄い力で引っ張られる。

食い付いた大物が暴れているのか、河底がかき混ぜられ水が茶色く濁り始める。

 

にとり「ふぬぬ…!!」

 

早苗「が、頑張って!」

 

リールを巻きあげながら踏ん張るにとりだが、大物のあまりの力に足が滑っていく。

それを早苗が足を掴んで支えてやる。

 

にとり「あれ、なんかおかしくない?」

 

ついに引っ張り上げたその大物が水面から姿を現す。

 

ザバァ

 

「ギキャアアアアアアアア!!」

 

黒いごつごつした体表の、長い海蛇のような怪物だった。

怪物は口の端に刺さった針を抜こうと長い身をくねらせて暴れまわる。

そのあまりの力に2人は竿ごと引っ張られ、川に投げ出される。

 

早苗「うわぁっ!」

 

川は深さ1メートルほどで、そこまで深くない。

きっとこの怪物は川底の土の下に潜んでいたんだな、と早苗は思った。

しかしそんな事を考えている余裕は無く、怪物は小さな牙の並んだ口を180℃以上にまで開き、2人に襲い掛かる。

 

にとり「コラァ、あっち行けぇ!」

 

にとりは川の水を操り、高水圧の水鉄砲のように水を怪物に浴びせる。

それを鬱陶しそうに顔を背ける怪物。

その時、怪物が首を高く持ち上げたかと思うと胴体まで水面から上がり、動きが止まる。

 

にとり「あれ…?」

 

シロ「おお、お前は…」

 

早苗「あ、確か…シロさん!?」

 

にとり「ゲ、ゲェーッ!?」

 

その黒い怪物の背後からふわふわとシロが飛んできた。

 

早苗「どうしたんですか?こんなところで…それに、その化け物は…?」

 

早苗は相変わらずシロにビビって逃げようとするにとりの腕をガシリと掴みながらそう聞く。

 

シロ「お前達か、我の尾に何かしていたのは…」

 

早苗とにとりがその怪物をよく見ると、胴体から向こう側が白い毛の生えた尻尾になっていて、シロと繋がっているのが分かった。

 

にとり「ど、どどどどういうこと?」

 

シロ「少し腹が減ったので魚を捕ろうと思うてコイツを川底に埋めていたのだが…急にちくりと痛みを覚えたので何かと思って来てみたら…」

 

早苗(いつもよりも魚が少なかったのは、あれが先に魚を捕まえていたからかしら…)

 

2人は今日はよく釣れなかった理由を考え、納得した。

川から上がり、濡れた服の袖を絞る。

シロは怪物の尾の口元に刺さった針と引っ掛かったミノーをにとりに手渡す。

にとりは恐る恐るそれを受け取ると、ルアーケースと見られる箱にそれをしまった。

 

シロ「すまぬすまぬ。詫びと言ってはアレだが、貰って行っても良いぞ」

 

尾の怪物の頭を地面に置くと、そこから10匹ほどの魚を吐き出す。

 

シロ「言っておくが汚くはないぞ」

 

早苗「はぁ…どうもありがとうございます」

 

気が付くと西の空が夕焼けで赤く色づき始めていた。

 

シロ「さて、我は帰るか。じゃあな」

 

シロは一言言い残すとその場から飛び去って行った。

 

早苗「あれぇ、前に会った時はあんな雰囲気だったっけ…?」

 

にとり「…何か優しすぎてちょっと怖いな…」

 

にとりは壺のようなものにシロから貰った魚を入れながら呟いた。

 

 

シロ「今日は捕った魚を食べさせてやろうか。あとタケノコ」

 

眼下に広がる人間の里。

もう夕暮れなので里の子供たちも自分の家へ帰るのだろうか、やかましい声が聞こえる。

 

シロ「…日も随分長くなったな」

 

そんな事を言いながら神社目指して空を飛ぶ。

 

シロ(そうだ、今日は確か…)

 

今日はシロが復活してからちょうど一年が経った日。

初夏のセミの声が響く少し暑いくらいの日の事だった。

 

 

 

 




ほのぼの路線の話を書きたかった…
夏、いいですよね。はやく夏になってほしいです。

あ、それと人間変化時のシロがどんな感じか貼っておきます。


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