れいむとシロ   作:ねっぷう

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第64話 「東方紺珠伝」

妖怪の山の草木が枯れていく。

前々からじわじわと山に出現していた金属製の蜘蛛が歩くたび、そこに有った草や木が枯れていく。

だが不思議なことに、その姿は人間にしか見る事が出来なかった。

 

文「号外!号外よー!!」

 

早苗「おや、どうしたんですか?」

 

守矢神社の境内の掃除をしていた東風谷早苗のもとへ射命丸文が自分の新聞を持ってすっ飛んできた。

その慌て様から何かただならぬものが感じられる。

 

文「大変なんですよ、突然山の麓の草木が枯れてなくなり始めたんです!異常事態ですよこれは」

 

文はそう言いながら新聞の一冊を早苗に渡した。

 

早苗「これは…」

 

一面に取り上げられた記事は、この山の植物がどんどん枯れているという内容だった。

だが、その面に載せられた写真を見て、早苗は違和感を覚える。

 

早苗「この写真に写ってるのって…」

 

文「ああ、植物が全部枯れて荒れ地になってしまった場所ですね、惨いもんですよ…」

 

早苗「いや、そうじゃなくて…」

 

その写真には数体の機械の車のようなものが映りこんでいる。

文にはこれが見えていないのだろうか…?

 

早苗(それにこれ、見たことある…確か、火星探査車の「キュリオシティ」だ…)

 

文「それでは、私は他にも回らなきゃいけない所があるのでこれで!」

 

早苗(何だか大変なことが起こってるのね…。そうだ、とりあえず霊夢さんの所に行ってみましょう)

 

 

 

─博麗神社

 

藍「…」

 

霊夢「んで、アンタは何してるのよ?」

 

昼下がりの博麗神社。

 

藍「いつものように、結界の綻びが無いか調べている。話しかけないでほしい」

 

霊夢「あーそう、いつもご苦労ね」

 

藍「…」チラ

 

シロ「…」

 

藍は横目でチラリと縁側で寝転がっているシロを見る。

 

藍(ああ、シロ殿…私は貴方をお慕いしておりますよ…!)

 

その美しい真っ白な毛並みの、流れる川の如くしなやかな尻尾…、妖気溢れる爪…。

そして何かビシッと決まった、惹きこまれてしまうようなあの大きな目…。

この恋にも似た感情は前に一度殴られた時から、密かに抱いておりました…。

 

藍「ふふふ…」

 

霊夢「…きも」

 

早苗「おーい、霊夢さーん!!」

 

霊夢「おや?」

 

遠くの方から早苗が霊夢の名を叫びながらこちらへ向かってくる。

少しうるさい、こっちに来たら文句を言ってやろうと思った。

そして早苗が目の前に降り立ち、こちらへ歩いてくる。

さぁ、文句を怒鳴りつけてやる…と口を開こうとした瞬間、早苗が先に喋り始める。

 

早苗「大変ですよ、山が枯れてます!」

 

霊夢「は?」

 

先に喋られたのと、意味不明な事を言われたので少し苛立ちながらそう返してしまう。

 

霊夢「ごめん、何だって?」

 

早苗「山に金属の蜘蛛が現れて、植物を枯らして回っています!」

 

シロ「…」

 

霊夢「金属の蜘蛛…?まさか…」

 

霊夢は口元に手を当て少し考える素振りをする。

 

早苗「知ってるんですか?」

 

霊夢「私、前に月の都って所に行ったことあるのよ。もしかしたらその金属の蜘蛛ってのを月で見たかもしれないわ…」

 

早苗「あ、これが写真なんですけど」

 

写真付きの新聞のその面を見せる。

 

霊夢「これは…間違いない、これは月の兵器よ!」

 

藍「月の兵器ですって?どれどれ…」

 

藍もその新聞を覗き込む。

が、月の兵器らしきものなど見当たらない。

 

早苗「ああ、どうやら妖怪には見えないように細工されてるようなの」

 

藍「ではまさか、月の民が地上に侵攻しているというのか?」

 

霊夢「…月の民と言えば、アイツらに聞いてみるしかないわね」

 

早苗「アイツらって?」

 

霊夢「永遠亭の医者たちよ」

 

 

─永遠亭

 

永琳「ええ、分かってるわ。今日は満月、今宵は月の民がこっちへ通じる通路を通って幻想郷へやってくるの」

 

永遠亭の八意永琳のもとへやってきた霊夢と早苗。

永琳は元月の民であり、あちらの事情もいくらか把握しているので何か重大な情報が得られるのではないかと思って来たのだ。

 

霊夢「でも、奴らがこっちを攻めて来る理由なんてあるわけ?」

 

永琳「最近、幻想郷でも今までは無かった事が頻繁に起こっているわね?その中心に居るのは…」

 

霊夢「…まさかシロが関係してるとでも言うの?」

 

確かに、シロが復活してからそれに触発された妖怪が増えたり、これまでに例が無かった外の世界のお伽噺のキャラクターが進行してくる、仙高蟹の出現、命蓮寺の起こした事件などの異常ともいえる事態が多発している。

まさか、月の民が攻めてきたのもシロが関係してるのだというのだろうか。

 

永琳「まだ決まったわけではないわ」

 

永琳はすぐに返した。

 

早苗「ですが、現に月の兵器が山を徘徊してるという事は、前々からちょくちょく月の人達がこっちに来てたって事ですか?」

 

永琳「でしょうね、最低でも半年前から徐々に、静かに兵器を送り込んでいたんでしょう」

 

霊夢「やっぱり私たちがそれをどうにかしなくちゃいけないのね」

 

霊夢がやれやれといったように肩をすぼめる。

 

永琳「貴方も行ってみなさい?優曇華?」

 

鈴仙「ええ、私もですか?」

 

永琳は横に立っていた鈴仙に話を持ち掛ける。

さすがに自分が指名されるとは思っていなかったのだろう、鈴仙は心底驚いた、または嫌そうな顔をしている。

当然だろう、自分は月から逃げた身…いわば裏切者が月の民を迎え撃つのだ。

 

永琳「月の民が大勢でこっちに来るなんてよほどのことじゃないと有り得ないから、今は昔に逃げた裏切者に構ってる余裕なんてないはずよ」

 

鈴仙「うわぁ…分かりましたよ」

 

早苗「どうするの、今日の夜に出発ですか?」

 

霊夢「そうね、やっぱり敵が来るのに合わせて行ってみましょう」

 

鈴仙「だったら、もう一人居た方が心強いんじゃない?」

 

霊夢「もう一人って…あ!」

 

永琳「おっと、忘れないうちに…これを持っていきなさい」

 

永琳は4つの錠剤の薬を優曇華に渡す。

 

鈴仙「これは…」

 

永琳「紺珠の薬。少し先の未来が見通せるようになる薬よ。危なくなったら使いなさい」

 

早苗と霊夢は薬を受け取る。

 

霊夢「…ま、本当にヤバくなったらね」

 

 

魔理沙「ほーう、それで私の所に来たのか」

 

鈴仙「そう。アナタならどうせ面白そうとか言ってくるでしょう?」

 

魔理沙は自宅で何やら調べ物をしていたようだ。

そこに鈴仙が訪れ、一緒に月へ行かないかと話を持ち掛ける。

 

魔理沙「月かー、前に行って懲りた覚えがあるんだがどうやら今回は事情が違うみたいだ。いいぜ、面白そうだし私も行こう、丁度調べ物も一段落ついたところだ」

 

親指を立てて見せると、魔理沙はにやりと笑いながらそれを承諾した。

 

 

 

─博麗神社

 

日は半分落ち、空は夜のとばりに包まれようとしている。

暗くなる空に、だんだんと真っ青な光を放つ月が現れ始める。

 

霊夢「準備は良い?」

 

霊夢は地面に転がる2つの陰陽玉をサッカーボールのようにつま先で蹴り上げる。

空中に蹴りだされた陰陽玉は霊夢の横でぴたりと浮かび、ゆっくりと回転し始める。

 

魔理沙「オッケーだ」

 

そう言いながら、色とりどりの魔法の液体が入った小瓶を帽子の中にしまい込む。

そして八卦炉の中に小瓶の中の液体を詰めると、カシュンという音と共に八卦炉が少し変形した。

 

早苗「とっくに」

 

頭に付けた蛙と白蛇の髪飾りがいかにもやる気あり気に唸る。

そして手に持った、霊夢のとはだいぶ形状の違ったお祓い棒を軽く振り回す。

 

鈴仙「…」

 

鈴仙は何も言わないまま、手の平を開いたり握ったりを繰り返す。

そして拳銃のような形をとると、空に向けて指先から銃弾の弾幕を放つ。

 

シロ「気を付けろよ」

 

シロは神社の屋根の上から呼びかけた。

 

霊夢「分かってる、今日はアンタは留守番ね」

 

そして霊夢、早苗、鈴仙はふわりと空に浮かび、魔理沙は箒に跨って空に浮かぶ。

いよいよ、4人が山の植物を枯らしているという月の民のもとへ飛び立っていくのだった。

 

 

 




東方紺珠伝編、始まります。
でもこの章ではあまり霊夢たちはこれ以降出ません。別の、アイツらが活躍すると思います。
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