れいむとシロ   作:ねっぷう

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第65話 「月の客」

丁度霊夢らが妖怪の山へ向かったころ、八雲亭へと帰宅した藍。

ふわっと玄関の前に降り立ち、戸に手をかける。

 

藍「…ん?」

 

戸は数センチだけ開いていた。

自分は今朝ここを出た時はしっかり閉めたつもりだが…もしかしたら閉めていなかったかもしれない。

 

藍「紫様…?」

何か嫌な予感を感じながら廊下を歩き、紫の部屋へ向かう。

 

藍「これは…」

 

戸をそっと開けると、部屋には誰も居なかった。

いや、今は誰も居ない、か。

いつもは起きたらすぐたたんでおられるはずの布団が引きっぱなしで、掛布団に至っては布団から跳び起きたように乱雑に置かれている。

その布団の匂いを嗅ぐと、仄かに無臭消臭剤のような独特の匂いがする。

 

藍「紙…か?置手紙かな…」

 

部屋にある茶色い机の上に、折りたたまれた紙が置かれている。

それを開いて読んでみる。

するとそこには、重大な事実が…。

 

 

場所は戻り、博麗神社。

4人を見送ったシロのもとへとらが訪れた。

 

とら「奴ら、その月とかいうとこに行ったのか…」

 

シロ「まさか、月に人が住んでいるとは驚きだな」

 

とら「言ってくれりゃあその月の民とか言う奴ら、わしがぶっ潰してやったのによ」

 

シロ「…む」

 

その時、藍が再びこちらに向かって飛んできた。

だがかなり焦っている様子だ。

 

藍「大変だ、話を聞いてくれ」

 

とら「何だよ、おめぇは?」

 

とらが腕を組みながらそう尋ねる。

 

藍「お前は字伏…いや、今はとら、か。誰でもいい、助けが欲しいのです!紫様が…月の民に!」

 

藍はポケットから先ほど机に置いてあった紙をシロととらに見せる。

 

シロ「これは…何処の文字だ?」

 

とら「だけどよ、しっかりとこっちの言葉で読みがふってある…」

 

月の言語はやはりシロにも藍にも読めなかった。

それを見越しての配慮か、日本語訳も一緒に書いてあるようだ。

 

藍「『八雲紫はこちらで預かっている。取り戻したくば穢れの獣の命を渡すか、我らに勝利せよ』…らしいです」

 

シロ「穢れの獣…」

 

藍「月の民は異常なほどに潔癖です。彼らの世界では地上に住む、生きる、死ぬ、それこそが穢れであり罪。数ある化身を生み出し、数多の命を殺す…シロ殿が、どうやら最大の穢れであるようです」

 

とら「それに、我らに勝利せよ…か。そんな腹立つ連中をぶん殴れるとは、ちょっとラッキーかもな」

 

顎を手でさすりながら笑みを浮かべるとら。

そしていよいよ、月からやってきた軍隊が姿を現した。

 

 

ピピピ…

 

気の抜けるような軽い電子音と、消臭剤のような匂いが立ち込める部屋で八雲紫は目を覚ました。

目を開けたとたん、やけに青い光に満ちている部屋の中に居ると分かった。光がまぶしく感じる。

 

「やっと起きたか」

 

紫「…」

 

いつの間にか紫を囲っていたのは、3人のぶかぶかマントとフードを被った月の民だった。

目を覚ました時は誰も居なかったのにいつの間にか現れるとは、月の不思議な術でも使ったのか。

紫にはその3人が月の民であるとすぐにわかった。

 

「ここは月の民が所有する飛空戦艦の中だ。お前に言うても分からないかもしれないが、月と地上を結ぶ通路を通っている」

 

一人が低い声でそう言った。

月の海を思い出させるこの青い何もない空間は月の軍船の中だったのか。

どうやら私は寝ている間にここへ連れて来られたらしい。

 

「お前はどうやら、我々が向かう異界の重要人であるらしいな。そこで我ら月の三剣士はリーダーの指示のもと、地上の獣共に勝負を持ち掛けた」

 

もう一人がそう言った。

声質的に、この者は女だろうか。恐らく、彼女が言ったリーダーとはあの月の使者のリーダーの姉妹で間違いないだろう。

いくら最終的に目的は達成されたとはいえ、あの時自分にあの屈辱を味わわせた奴らを忘れるはずがない。

それに、月の三剣士とは聞いたことが無い。

雰囲気的にかなりの実力を持つ月人の集まりという事は分かるが。

 

「よく聞くがいい。今、月の都は凍結されている。我らが手出しできない穢れの力を使って都を侵略している愚か者共が居る。その愚か者と同じ気の波長を持つ妖怪がこの地に居るとわかった。つまり、その獣から愚か者の事を直接聞けばよい、豊姫様はそう思い、我ら『ミツルギ』を遣わした」

 

また別の者が口を開く。

どういうこと…?妖怪、シロの事かしら?

シロと同じ波長を持つ者が月を攻めている?全く以ってどういうことかしら…。

 

紫「ッ…!?」

 

どういうこと、と月の民に尋ねようとして喋ろうとするが、声は掠れてしまって出なかった。

喉を潰された訳ではないようだが、どんなに喉を絞っても声が出ない。

 

「言い忘れていたな、お前の声は我らで封じている。我慢しろ」

 

また月の異常に進んだ科学にしてやられたのか。

紫は下唇を噛んだ。

 

 

 

そのころ、妖怪の山上空にて月の兎と交戦を繰り広げる霊夢たち。

流石は月の民といったところか、4人に降りかかる攻撃は半端ではなく、一瞬の気の緩みも許されなかった。

 

清蘭「こちら、清蘭。好戦的な地上人らと遭遇した、これから浄化活動に入る!」

 

浅葱色の髪に、同じく浅葱色のワンピース。

頭には玉兎、月人と共に月に住む兎特有の赤い目とウサ耳がある。

 

清蘭「あらあら、お久しぶりー。元気してたー?」

 

清蘭は鈴仙に向かって気さくに話しかける。

 

魔理沙「知り合いか?」

 

鈴仙「昔のね。でも、残念ながら私は地上の兎になったのよ。つまり貴方は私の敵……いや、貴方じゃ無くてその上に居る」

 

清蘭「メーデーメーデー!緊急事態発生!くっそ~、仕方がない、かつての仲間がいても容赦しない!消滅させてやる!」

 

早苗「いいですよ、勝てるのならね」

 

清蘭と霊夢たちが戦いを繰り広げる中、月と重なった通路より月の三剣士の乗る飛空戦艦が姿を現す。

飛空戦艦は幻想郷を夜空を泳いでいく。

真っすぐに進み、迷いの竹林の上空辺りで停留すると、艦の窓から大量の玉兎部隊と月製の機械兵の軍を放つ。

目前より向かってくるシロ達を、できるだけ消耗させようとして。

 

 

 

とら「でりゃあああッ!」

 

月が出ている方角より襲ってくる月の機械兵と、銃と防護服を装備した玉兎たち。

それを押しのけるように地上へ墜落させていくとら。

 

シロ「…退けよ、粕ども」

 

玉兎の放つ銃弾、機械兵の放つレーザーを全て尾で往なしていく。

さらに行く手に立ちふさがる玉兎たちを尻尾で巻き取ると、それを地面に投げ捨てていく。

 

藍「お前達の親玉は何処だ!?」

 

藍は地面に落ちていく兎の腕を掴み、そのまま問い詰める。

 

「あ、あっち…」

 

玉兎は恐る恐る月を指差す。

その方角には大きな翼のような領巾を持った巨大な戦艦。

 

 

【挿絵表示】

 

 

藍「アレは…何だ…」

 

シロ「やはり、月の兵共の本拠地か」

 

 




月の客です。
紺珠伝の裏話っていうか、少しこの物語風に改変してる箇所が多いので原作のストーリーや設定とは違っているとこが多いです。
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