ダイト「我らの提案する戦いは、1対1での決闘だ。それぞれ順番を決め、その順番通りに一人ずつ戦う」
グルカ「丁度互いに3人なので、3回戦って勝ち数の多い方が勝利となる」
ムジカ「もちろん、そっちで順番や戦法を話し合っても構わない」
ミツルギが提案した。
それを聞いた藍たちは3人で円になってひそひそと何やら話し始める。
藍「どうしましょう…?」
とら「そうだな…とりあえず一番最後におめぇを置こう」
シロ「ん、我か?」
ダイト「お、決まったのか?」
順番を決め終わった3人は後ろへ下がっていく。
グルカ「こちらの一番手は私だ」
ミツルギの中から、一人が進み出てくる。
厚ぼったいマントを脱ぎ去り、そのマントに一度触れただけで綺麗に折りたたまれた。
そのマントも月の科学によって不思議とそうなっているのだろう。
グルカ「さ、私の双剣使いで瞬く間に勝敗を決してやろう」
如何にも月の民っぽい好青年だ。
少し癖毛っぽい茶髪のショートに、下瞼の垂れた大きな目が特徴的だ。
サルエルタイプの白い袴に青いベストの服装に、両手にはそれぞれ手裏剣のように刃が数本並んでいる武器を持っている。
グルカ「相手は誰だ?」
グルカがそう言った時、グルカを圧倒するように自分の胸を親指で指差しながらとらが進み出る。
とら「一番手はわしだ」
グルカ「お前か、浅はかそうな獣よ」
とら「そう言っていられるのも、今のうちよ…」
ダイト「では始めてもらおう。その前に、いくつか確認したい。勝敗はどちらかが負けを宣言するか、どちらかが気を失い戦闘不能になるまで行う。ただ、互いに相手を殺してはいけない。我ら月の民は死を拒絶するのでな…」
確認を終えてから、グルカは両手の剣を持ち直し、とらは四つん這いになって頭を低くしいつでも飛びかかれる態勢に入る。
ダイト「はじめッ!」
ダイトが戦い開始の合図を叫ぶ。
その瞬間、とらは相手のグルカに向けて特大の炎をぶっ放す。
対してグルカはそんな炎など無視するように、片足を軸にして回転しながらとらに突っ込んでいく。
とら「真正面からその炎に突っ込んでどうすんだよ!?」
グルカ「やはり浅はかな…。私の二つ名にもあるように、私の剣は森羅万象を切り裂く!だから…」
グルカの剣の刃が炎に近づいた瞬間、まるで炎が剣を避けているように曲がってしまう。
炎は綺麗にグルカの周りを避け、当のグルカは再び回転しながらとらに向かって行く。
とら「ならば…雷だァ!」
とらは額から周囲に無数に雷を柱を落とす。
グルカ「…ぬ」
しかし、一度落ちた雷は再び宙に上り、一つ処に集まっていく。
そしてある程度の雷の塊と化すと、直後に巨大なエネルギー波の如く雷を一気に放出して見せた。
とら「マリサから見て習った技だ。そう簡単に防げるはずがねぇ」
強烈な光から他の2人の剣士はさっと左右に飛びのいて避け、ただ黙ってその雷の渦を見る。
シロと藍も同時にとらの背後に座り、ただどうなるのだろうかと固唾を呑んで見守っていた。
とら「ま、この程度じゃ倒せねぇとわかってたけどな。やるじゃねえか」
雷が一通りおさまり、辺りを包む煙に向かってとらが言う。
案の定、煙が一瞬にして2本の剣で切り払われていき、そこにはグルカが何食わぬ顔で構えていた。
グルカ「お前もな。私以外の奴だったら瞬時に黒焦げになっていたろう。ま、そうなったらお前の負けだがな」
一方、月の都へ向かうべく鈴瑚に案内された槐安通路を通って月へ向かう一行。
どうもこの槐安通路という場所は不思議な場所で、赤い線の入った床や天井の奥には宇宙のような赤黒い空間が広がっており、その先にはびっくりするくらい大きな月が目前に映っている。
これほど大きく見えるのに月自体との距離はまだまだ離れているようで、天体という物の大きさを初めて痛感する。
早苗「それで、さっきから居るあの人は誰なんだろう…」
ドレミー・スイート「驚いた…。まさか生身の奴らがこの夢の世界に飛び込んでくるなんて」
霊夢「生身だけど?」
現れたのは、夢の世界に住む獏という妖怪のドレミー・スイート。
夢の世界を上手く使う事が出来れば何処にでも行けるし、何者にだってなれる。
それに気付いた者が秩序を乱さぬよう、彼女は監視しているのだ。
早苗「えーっと、よく判らないんですが兎に月の都に行けるって言われたんで」
ドレミー「月の都?ははぁん、そういう事ね。良いでしょう…その狂夢、私が処理しましょう。今は眠りなさい。貴方の槐安は今作られる」
魔理沙「はぁ!」
問答無用と言わんばかりに魔理沙はドレミーに向けて弾幕を放つ。
ドレミー「うわぁ…たまに夢を見ている貴方を見かけてましたが、やはり少々乱暴なようで…」
とら「…」
グルカ「どうした?私の剣術の前に何もできぬか、穢れた地上の獣よ」
既にとらの身体には無数の傷が刻まれている。
炎も雷も斬って避け、目にもとまらぬ速さで剣を振るうのはさすが月の民か。
とら「…くくく、お前はわしが相手の時点で負けてるのよ。わしは決して負けだなんて言わねぇし、余程の事がなきゃ気を失うこともねぇ」
グルカ「何を言うておる。では私はそんなお前を気の済むまで切り刻むだけだ」
グルカは体をひねりながら姿勢を低くし、剣を後ろに構える。
するとまるで周囲の空気が剣に集まっていくように青い煙が発生していく。
グルカ「独楽の剣術!」
先ほどよりも強く、竜巻の如く身を回しながらすばやくとらとの間合いを詰める。
とらも両腕を前にかざし防ごうとするが、回転されるグルカの剣によってそれをこじ開けられてしまった。
そしてグルカの4本の刃の付いた剣が、とらの胸に突き刺さる。
グルカ「くくく…」
とら「…おめぇはさっき森羅万象を切り裂くとか言ってたなぁ…」
グルカ「な…!」
とらの胸に深く突き刺さった双剣はグルカがどんなに力を込めてもそれ以上動くことは無かった。
とら「まぁちょっと話を聞けや。『鎌鼬』って妖を知ってるか?アイツらは体中に何でも切れるような鋭い鎌を持ってるんだが…どうにも鋭すぎて斬られても大したダメージにならんのよ。おめぇもそんな感じだ、全然痛くない…」
とらはそのままグルカの腕を掴む。
グルカ「触るなァ!」
そのまま脚を上げ、とらの顎を蹴り上げる。
とら「けけけ、かわいいぜ、月なんて面白くもねぇとこでずっと面白くねぇことしてたんだろ…」
とらは片腕を離すと、その拳でグルカを殴る。
グルカも負けじとそれを受け止めたり避けようとするが、とらの速すぎる動きについては来れなかった。
藍「は、速い…」
シロ「お前は字伏…を知っているんだったな。奴はただの字伏ではない、奴だけが…特別なのだ」
とらは頭に雷を纏わせ、頭を後ろに下げる。
そして腕を掴まれたまま動けないグルカの、とらから見れば小さな頭に頭突きを打ち当てる。
雷のバチッという音と共にゴンと鈍い音が響いた。
グルカ「か…負けた、のか…」
グルカは頭を押さえながら気を失った。
それを地面に投げ捨てるとら。
とら「ま、わしはそのシンラバンショーとやらに収まるようなシロモノじゃねぇけどな」
ダイト「うむ…仕方ない。今の勝負はそちらの勝ちだ」
藍「やった、まずは一勝!」
ダイトは倒れたグルカを片手で抱え上げると竹の側に寝かせた。
そして薄い布のようなものを被せる。これも月の何らかの不思議な物なのだろうか。
藍「次は私が行く。相手は?」
ムジカ「…私よ」
ムジカが藍の前に進み出て、ゆっくりとマントに手をかけた。
ドレミー「あらら、眠らないのですか。でも、ここまでの悪夢は全て処理させてもらいました」
霊夢「アンタは何者だったの?」
ドレミー「私は獏。夢の世界の住人です。貴方は月の都に向かうと言ってましたね、しかも生身で。そこでは今までのとは比べものにならない悪夢が待ち受けている事でしょう」
魔理沙「ていうか、月の都へは本当に行けるのか?」
ドレミー「貴方たちは一応、確実に月の都へと向かっています。道なりに行けばじきに着くでしょう。さて、私も一応形だけでも仕事はしましたので…」
ドレミーは脱げた帽子の中に青い髪の毛をしまい直し、それを被る。
ドレミー「今まで以上に気を付けてくださいね…では」
鈴仙「あっちょっと…まだ聞きたいことが」
彼女は霧のように歪んだと思ったとたん、どこかへ消えてしまったようだ。
さて、どうやら戦っている間にさっきの場所から大分進んでしまったようだ。
もう月の都が確認できるほど近づいている。
4人はそこから見えるどうも様子のおかしい都に向けて槐安通路を進んでいった。
いつものことかもしれないが、全く見どころの無い話になってしまった…
今回、グルカが持っていた剣はこんな感じです。
【挿絵表示】
それと、いつも通りの時間に投稿しようとしたんですが予約投稿の設定を間違えてました…