れいむとシロ   作:ねっぷう

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第73話 「後始末」

純狐「…月の民はここに逃げ込んだ。月の都に居られなくなった月の民はそうするだろうと私は読んでいた。勿論、私は先手を打った。夢の世界に刺客を送り込んでいたのです。さあ出ておいで!地獄の女神、ヘカーティアよ」

 

ヘカ「んもう、待ちくたびれたわよん」

 

純狐があらかじめ夢の世界に送り込んでいた刺客、ヘカーティア・ラピスラズリが純狐と共にシロの前に立ちはだかった。

 

ヘカ「ようやく嫦娥の奴に復讐できるのね?腕が鳴るわー」

 

肩の出た、いわゆるオフショルダーのTシャツとカラフルな短いスカートを着ているようだ。

シャツには英語で何か書いてあるようだが、生憎自分では英語はよくわからない。

 

純狐「いえ、相手は月の民ではなく目の前にいる妖怪です」

 

ヘカ「ええ妖怪?ふーん…どれどれ」

 

ヘカーティアはシロの身体をじっくりを観察している。

シロもこいつは只者ではない、と感じて四つん這いになり睨みつけながらジリジリと後ろに下がっていく。

 

ヘカ「うん、合格!何か現世で粋がってた妖怪か何だか知らないけど…いいわ、相手にしてあげる」

 

純狐「別に殺す必要はない、ただ…気が済むまで痛めつけてくれればいい」

 

ヘカ「どうする?2人でやるの?それとも私の三体全部使って四人で?」

 

純狐「いや、さすがにそれは勿体ない…。今の2人いっぺんに行こう」

 

ヘカ「確かに、同感。気が合うわね、私たち」

 

どうやら勝手に話が進んでいるようだ。

 

シロ「おい、いつまで待たせる?我はいつでもお前たちを殺せる準備はしてある…」

 

純狐「では、たった一人取り残された私の恨み…粉々に喰らうがいい!!」

 

純狐とヘカーティアは同時に飛び上がると、シロに向かって殴りかかってくる。

くらぎ…はダメだ、まだ使えん。両腕も吹き飛ばされたまま治らん…ならば…!

 

シロ「出でよ!!」

 

二人の攻撃を避けると同時に、尾の一本を変化させる。

黒い怪物となった尾を振り回し、二人を呑みこもうと襲い掛からせる。

 

「シャアアアアアア…」

 

ヘカ「可愛いわね、蛇さん」

 

ヘカーティアは首にはめたチョーカーから鎖で繋がる月を模した球体を巨大化させ、それを鎖から外す。

するとその球体はまるで周囲に見えない壁があるかのように跳ね返りながら確実にシロを狙って飛んでくる。

 

シロ「けえ…!」

 

避けているうちに球体はいつの間にか二つに増え、そのうちの一つがシロの目の前まで迫ってきていた。

咄嗟に尾の化身の黒い怪物を自分の前まで持ってきて防ごうとする。

 

グシャア

 

球体に押しつぶされるように黒い怪物は下敷きになり、砂煙のように消えて行ってしまった。

 

シロ「…消えよ、糟ども」

 

潰れた尾を球体の下から無理やり引き抜き、そのまま跳躍する。

そして姿を元の獣の姿に変えていく。

 

シロ「鉄の尾!」

 

ジグザグの軌道を描きながら瞬時に間合いを詰め、二人まとめて鉄の尾で吹っ飛ばしてやった。

 

純狐「くっ…!」

 

ヘカ「大丈夫?」

 

受け身の取れなかった純狐にさっと近づき、手をとるヘカーティア。

しかしそれすらも見逃さずに、シロは残る七本の尾を振り回して攻撃をする。

目にもとまらぬ連撃は次々と二人にヒットし、血しぶきが飛び始める。

 

シロ「け…けけ…どうだ?」

 

二人はズザーッと足を付いて体勢を立て直す。

 

ヘカ「なんで…こんでこんなに純狐を殴るのよ?」

 

シロ「…は?」

 

シロは二人を焼き払おうと口元に溜めていた炎を引っ込める。

何だコイツ…自分から突っかかって来たくせに…。

 

ヘカ「アナタねぇ…純狐は今までどんな思いでアナタを待っていたか、分かってるの!?」

 

純狐「…あ」

 

ヘカーティアはずかずかとシロに近づいてきて、首元の毛を掴みながらそう怒鳴った。

それを振り解こうと身をよじってもヘカーティアは離れようとしない。

 

ヘカ「いい?純狐はね、もう恨むのも憎むのにも疲れているの。だから、自分を止めてくれるのを…誰かが自分を休ませてくれるのを求めて暴れるようになったの。可哀想でしょ…だから、私も純狐に協力してあげてるの。でもね、それでも純狐の心の傷は埋まらない…」

 

シロ「だが、だったら何故我と闘おうとした?」

 

ヘカ「そりゃ…純狐がアナタを憎んでたからよ。アナタなら分かるでしょ?憎しみは憎悪に、憎悪は殺意を起こすの」

 

その時、遠くの方から他に何者かを気配を感じた。

霊夢、魔理沙、早苗、鈴仙の四人と、もう一人いるように見える。

 

ドレミー「はぁ、危険なので二度と人間を夢の世界に生身で入れないようにしたいんですが…今回が最後です。暴れまわる奴らを止められるのは貴方たちしか居ません」

 

霊夢「シロ…待ってて!今助けるから!」

 

どうやら、ドレミー・スイートが静かの海に居る四人をここに連れてきたようだ。

今はずっと遠くにいるようだが、ここに来るのも時間の問題だろう。

 

純狐「ヘカーティアよ、もういいのです」

 

ヘカ「…純狐、何をするの?」

 

純狐はヘカーティアに微笑みかけた。

するとふわりと浮かび上がり、遠くにいる霊夢たちの方へ向かって行こうとする。

 

純狐「今回、悪いのは私です…付き合ってくれて感謝するわ。どれ…今度は私一人であの者らと戦って、潔く負けてくるわ…」

 

シロ「…待て」

 

飛んでいこうとする純狐を、シロが呼び止める。

 

シロ「我はな…今までずっと、長い悪夢を見ていたんだ…。その悪夢にもがけばもがくほど、周りに残してきた爪跡はどうやら深すぎたようだ。今回の件で悪いのは我だ…」

 

シロはそう言いながらいつもの人間時の姿に変化する。

相変わらず両手は再生できないようで、まだ吹き飛んだままだ。

 

シロ「では、こうしよう。奴らが来たら、奴らの目の前で純狐が持つ我に対する憎しみだけを吸い取って喰らう。そうすれば純狐からは憎しみがいくらが消え失せ、喰らった力でこの腕も元に治せる」

 

2人に提案を持ち掛けた。

 

 

 

霊夢「シロの気は確実に感じる、近づいているわ」

 

魔理沙「くそう、私が何もしないまま伸びちまうなんてなぁ…」

 

鈴仙「いてて…こりゃ帰ったらちゃんと手当てしなきゃ」

 

純狐の掴んだ箇所を爆発させる技をモロに喰らった鈴仙の腕は酷い火傷となっていた。

魔理沙も駆け付けたドレミーに少し力を貰ったものの、まだ疲労感が抜けきっていない。

 

早苗「私もちょっと声が出にくいけど…」

 

ドレミー「見えましたよ。アレは…」

 

霊夢「シロと、純狐だ…」

 

五人が駆け付けた目の前で、シロと純狐が対峙しながら睨み合っていた。

互いはボロボロで、まさに最終局面といった感じだ。

 

純狐「は、白面の者…ここまで私と闘えたこと、褒めてやる…」

 

シロ「だが、所詮は我に敵う事はない」

 

純狐「だまれぇ~~!!」

 

純狐は背後になびく七本の尻尾をシロに向けて放った。

だがシロも負けじと口から炎を吐き、その尻尾をはじき返した。

 

シロ「終わりだな…」

 

そのまま尾の一本を伸ばし、それを純狐の胴体に叩きつけた。。

 

純狐「けあ…!」

 

純狐の身体から紫色のオーラのようなものが上がったかと思えば、それはシロに向かって移動していく。

シロは口を開けると、その純狐から抜けた自分に対する憎しみの気を全て吸い取った。

純狐はそんな…と言わんばかりに腕を落し、そのまま立ち尽くしてしまう。

 

霊夢「シロ…純狐を倒したのね?」

 

すぐに駆け寄って来た霊夢が尋ねる。

 

シロ「ああ…。だがな、今回…我は謝らねばならないことが有る」

 

霊夢「あ、ああ…アレはいいのよ別に。私は気にしてないし…」

 

魔理沙「…?何の事だ?」

 

シロ「実はな、この純狐は我のかつての仲間だ。我がかつて言いつけた事を…健気に、ただずっと守っていて…それがちょっと度が過ぎてしまって今回の事を起こしてしまっただけなんだ」

 

早苗「え…?」

 

シロ「…済まぬ」

 

シロは座り込んだまま、頭を下げた。

暗い夢の空間で青白く光る巨大な獣が、あの白面の者が頭を下げたのだ。

 

魔理沙「…あははは!何言ってんだよシロ」

 

魔理沙はシロの額を、まるで友達の肩を叩くようにバシバシと叩いた。

 

霊夢「そうよ、私たちが今まで色んな異変を解決してきたのは知ってるでしょ?」

 

シロ「あ、ああ…」

 

早苗「でも、その異変の主犯をどうこうした事はないですよ。今も普通にしています」

 

鈴仙「つまり、たとえ異変の犯人が純狐でも貴方でも責めないであげるって事ね」

 

シロ「だが、我の所為で地上が滅ぶやもしれないという羽目に…」

 

霊夢「何言ってるのよ、アンタがこうして素直に謝れるようになったって事でも大した収穫じゃない」

 

ドレミー「純狐さん、でしたっけ?夢の世界に居るままの月の民はもう都に戻してもいいんですかね?」

 

ドレミーは純狐にそう尋ねる。

 

純狐「…悔しいが、まだ解放するわけにはいかない。月の民はここに逃げ込んだ。月の都に居られなくなった月の民はそうするだろうと私は読んでいた。勿論、私は先手を打った。夢の世界に刺客を送り込んでいたのです。さあ出ておいで!地獄の女神、ヘカーティアよ」

 

ヘカ「んもう、待ちくたびれたわよん」

 

何と、夢の世界にシロが来た時と同じ流れで再びヘカーティアが現れた。

シロの提案にはあれより先の続きが有った。シロの提案というよりは純狐がいった事なのだが。

これでは申し訳ないと思った純狐は、まず自分が皆の前で倒されてから、再びヘカーティアと共に霊夢たちと戦うと提案したのだ。

シロに対する憎しみが消えても月の民の嫦娥に対する憎しみは消えない。だがもう一度ヘカーティアと二人で戦って敗北したならば自分はそれを諦め、月の民を解放しよう、と。

シロとヘカーティアは目を合わせると、上手くいったな、と言わんばかりにニヤっと笑った。

 

 

───────────────

 

ヘカ「ごめんごめん、ちょっと遊んでみただけよ。勝負は私の負けね。こんな素晴らしい人間の居る地上に攻め込むなんて、月の民は何を考えているのやら…」

 

霊夢「さっさと月の民を開放しなさい!」

 

霊夢はヘカーティアの目前にお祓い棒を突きつける。

 

ヘカ「ねぇ純狐、いいかしら?」

 

純狐「…いいわ、月の民を都へ戻しても。この人間に出会えただけで戦意喪失したから」

 

はぁ、と肩を落としてため息をついたあとに言った。

シロとヘカーティア、純狐とで裏を取っていたとはいえ、既に純狐に戦意が無いのは事実だ。

それにヘカーティアもいちいち純狐に確認を取っているという事は、さきほどシロが見た通り本気で同情しているのだろう。

 

ヘカ「おーけーおーけー、月の民は解放しよう。これでアイツ等も幻想郷から手を引くでしょう」

 

霊夢「何か、永琳に依頼されたこと自体が腹立ってくるわね」

 

純狐「月の民は狡猾で無慈悲なのよ。幻想郷が人質に取られてたって考えられるでしょ?幻想郷を救いたかったら月の都から手を引け、っていう非人道的な策よ」

 

魔理沙「そう考えると、やっぱり永琳の駒の一つでしかなかったことにも腹が立ってくるな」

 

霊夢「そうね、帰ったら一発殴らないと気が済まないわ」

 

純狐「それが地上に居るという月の賢者の名前?私も会ってみたいわ」

 

ヘカ「いいね、私も行きたいわ。こんな素晴らしい人間たちと妖怪に出会えたのもその賢者のおかげだし」

 

霊夢「まあ別にいいけど、幻想郷で問題を起こすようなことが有れば即刻私が退治するからね!」

 

ヘカーティアはそれに対してはーい、と少し軽い感じで返事をした。

これで純狐もひとまずは月の都を襲うのを辞め、都を満たしていた生命力の妖精たちもすぐに都から出ていくだろう。

そうすれば夢の世界から解放された月の民は都に戻り、地上に送られた軍隊も帰っていくはずだ。

 

ドレミー「あ、そこで伸びてる2人もちゃんと連れ帰ってくださいよ」

 

ドレミーは後ろで背中を合わせて疲れ切っている早苗と鈴仙を指差した。

 

霊夢「あ、はいはい…分かってるわよ」

 

 




結局ゴチャゴチャしてよくわからない話になってしまった…。

純狐が掴んだ手から爆発を起こすっていうのはHUNTER×HUNTERのゲンスルーを想像して貰えれば分かりやすいと思います。

今回出て来たヘカーティアと純狐の関係なんですが、すごく素晴らしいと思います。
原作のセリフでも何をするにも純狐の意見を尊重してたり、ほんとに純狐を気遣ってるのが見て取れるんです。
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