れいむとシロ   作:ねっぷう

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第77話 「夏陽炎 後編」

「あれ?何か詰まったかな?」

 

鬼の少女は動かなくなってしまった装置に近寄る。

プスプスと黒い煙が上がっている。

 

「あちゃー…こりゃバレたら何て言われるか…」

 

その不思議な装置の隙間に手を突っ込む。

一体何が詰まっているのか…早く取り除かねば。

実はこの装置、地獄に落とされて罰せられた亡者から抜け出た邪念を吸い込み、除去する役目を持っている。

なのでこの装置が壊れれば邪念が処理されきれずに溢れ出してしまう。

 

「ごほっごほっ…煙が…!」

 

しかし時すでに遅し、多すぎた邪念は装置の中で固形と化し、動きを止めてしまったのだ。

それによって処理されなくなった邪念は煙となってその場に立ち込める。

 

「…きゃああああああ!!」

 

媒体と成る存在に憑りつくために…─

 

 

 

閻魔の宮殿・地獄の裁判所。

 

「ふむ、地獄行き…地獄行き…」

 

この場で死者を裁いているのは是非曲直庁に勤め死者を裁く閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥ。

彼女がいつものように仕事をしていると、突然緊急の報が舞い込んできた。

 

「四季様、大変です!外をご覧になってください!」

 

裁判所に飛び込んできたのは映姫の部下である死神の小野塚小町。死者の魂を彼岸へ運ぶ三途の川の船頭だ。

主に幻想郷の死者を担当しており、船に乗せた魂との会話が仕事中の楽しみでもある。

サボり癖があり、映姫に見つかってはよく怒られている。

そんな彼女がえらく慌てた様子でやってきたのだ。

 

「なんですか?とりあえず落ち着きなさい」

 

「落ち着いてなんかいられないですよ!とにかく外を!」

 

「外…?え…!?」

 

外に広がっていたのは真っ黒な煙。

 

「これは一体…」

 

映姫が見ている前で、その煙は七色に変色し固まったかと思えばそれは強力な結界となってしまった。

映姫はすぐにその結界に近づき、強力な一撃を浴びせる。

しかし結界は攻撃をものともせず、逆にそれを吸収してしまった。

 

「どうやら他の区域の閻魔宮殿も結界で遮られてしまっているようです!」

 

「というよりも、閻魔宮殿を含めた地獄そのものが封鎖されています!」

 

別の死神の二人組がそう告げた。

 

「で、では…これでは…閻魔たちの力が及ばず、死者の魂たちが地上に溢れ出て行ってしまう…!」

 

映姫がその場にへたり込みながら呟いた。

 

 

 

そのころ、地獄観光を終え自宅へ戻って来たヘカーティア達。

 

「どうだったー?地獄もいいところでしょー」

 

クラウンピースが車から降りながら聖にそう言った。

 

「まぁ、いいところというか…」

 

「こら、聖ちゃんが困ってるじゃない。そんなこと言っちゃ…」

 

そう言いかけたところで話を辞める。

不安そうな顔で上を見上げた。

 

「どうかされました?」

 

「おかしい…あまりにも邪気が強すぎる。まさか!」

 

ヘカーティアはふわりと浮かび上がると上に飛んでいく。

 

「わ、私も…!あれ?」

 

聖も浮かび上がろうとするが、飛ぶことができない。

 

「残念、生身の者は地獄じゃ飛べないんだ。あたいが連れてってあげるよ」

 

クラウンピースは聖の両脇を掴んで抱きかかえる。

妖精とはいえ凄い力だ…と聖が思っている間に、クラウンピースもヘカーティアを追いかけるように飛び上がっていった。

3人がある程度上まで行くと、七色のグミのような半透明の巨大な球体が浮かんでいた。

 

「中にあるのは…閻魔宮殿ね」

 

ヘカーティアがその球体を覗き込んだとたん、分厚い壁の奥に映姫が居るのが見えた。

 

「おー、確か四季映姫ちゃん…何が有ったの?」

 

「貴方はヘカーティアさん…?実は、突然発生した邪念の煙が結界と化し各区域の閻魔宮殿を封鎖していて…」

 

「邪念?まさか、処理装置が…。分かったわ、地獄の女神として私が何とかするわ」

 

「しかし、邪念処理装置が壊れたとなれば、いくらヘカーティアさんと言えど…!」

 

映姫は結界越しにヘカーティアを止めようとする。

だが…

 

「男なら誰かの為に守り抜け。女もそうさ、見てるだけじゃ始まらない」

 

「それは…?」

 

「現世にある歌の歌詞よ。女だって女神だって、ただ待ってるだけじゃダメ。見てるだけじゃダメなのよねぇ。だったらどうすればいいって…男どもに負けないくらい働けるんだぞってアピールしてやるのよん」

 

ヘカーティアは今までの若干おちゃらけた雰囲気とは打って変わった真剣な顔つきでそう言った。

その迫力に、映姫も聖も、部下であるクラウンピースも何も口出しが出来なかった。

 

「クラウンピースと聖ちゃんはこの結界を頼むわ。私は下に行くから!」

 

「ラジャー!任せて!」

 

クラウンピースのその言葉を聞くと、ヘカーティアは下に降りて行った。

地獄の空の黄色い雲を突き抜け、いよいよ地獄に降りる。

 

「…やっぱり」

 

この短時間で地獄の様子もえらく変わってしまったようだ。

閻魔宮殿を覆ったグミのようなカラフルな結界が泡のようにそこら中に転がっている。

サイケデリックな不思議な雰囲気だ。

二頭身のキャラクターが住んでる世界にでも来てしまったのかと思うほどだ。

地獄街は廃墟と化したような荒れようで、鬼も亡者も妖精の気配も感じない。

 

「もうここには居ないのね」

 

そう言って地獄街を後にする。

地獄街の近くの荒れ地に降り立った時、何者かの気配を感じた。

気配というよりはハッキリと見えたというべきだろうか。

 

「久しぶりね、邪念鬼ちゃん?」

 

目の前で立ちはだかったのは岩の上で座っている鬼。

いや、鬼の形をした何かだ。

 

「…ケケ」

 

真っ赤な身体に両目の上から後頭部に伸びる一対の長い角。

腹や四肢に纏わりついた渦のような甲殻に、腰から伸びる尻尾。鬼の原型を残しているが、もはや鬼とは呼べない容姿へと変貌していた。

 

「いや、久しぶりって言ってもあの時とは別の邪念かしら。だったら久しぶりじゃないわね」

 

「ギェアァ!」

 

邪念鬼は地面を踏みしめ、そのまま飛び上がる。

蹴られた地面がまるでクレーターのように凹み、突風が巻き起こる。

飛び上がった邪念鬼はヘカーティアの真上まで来ると拳を振り下ろしながら急降下してくる。

 

「可愛いわぁ」

 

それを横に飛びのいてかわすと、首から鎖で繋がっている月の球体を巨大化させる。

その球体を邪念鬼に向けて振り回した。

 

「ヌア!」

 

野太い声と共に横から向かってくる月を両腕で受け止め、そのまま押しのける。

それと共に球体から伸びる鎖を引っ張ってヘカーティアをこちらに引き寄せ、頬を殴りつける。

だがヘカーティアも負けじと地面に手を付き、逆立ちをするような形で邪念鬼の顎を蹴り上げた。

 

「ギィ…!」

 

「コイツは骨が折れそうね…」

 

 

 

「これでも喰らえーッ!!」

 

閻魔宮殿を覆っている結界に弾幕を撃ちこむクラウンピース。

しかし、何度撃ちこもうが結界はビクともしない。

 

「『喝』!」

 

かつては霊夢やシロを苦しめた得意の法力も結界には通用しない。

 

「くそー…なんでビクともしないのよ…このバカー!!」

 

そうクラウンピースが結界に向かって大声で罵倒の言葉を放った瞬間。

結界にひびが入り、表面がガラスのように欠けたではないか。

 

「…どういう事でしょう?」

 

クラウンピースに抱えられたままの聖が呟く。

 

「アホー!!」

 

もう一度クラウンピースは結界に向かって罵倒を浴びせると、やはりひび割れて少し削れた。

 

「分かった、悪口を言うと結界が壊れるんだ!だったら聖ちゃんも早く悪口を言って!」

 

「へぇ!?わ、私が悪口を…ですか?」

 

仏教徒で寺の住職でもある私が何かを侮辱する言葉を言わなければならないなんて…。

 

「向こう側の閻魔様!アナタも早く悪口を言って!」

 

「私も!?」

 

クラウンピースは結界の向こう側の死神たちと映姫に向けてもそう言った。

死神たちは乗り気なようだが、映姫は困ったようにため息をついた。

 

「封印結界が砕けるのは、邪念…つまり悪い心が悪に染まる前の弱い心が反応を示すから。邪念鬼の元となった悪の気の、奥底に押し込められた罪悪感を揺さぶることになるのでしょうが…私まで…」

 

「ダメですよ、閻魔様だからって。今はプライドとか気にしてる場合じゃないんですから」

 

小町は映姫の肩に手を置きながらそう言った。

 

「く…あーもう、クソッタレ~!!」

 

ピシィ

 

耳が痛くなるような悪口による罵倒の嵐で徐々に結界は削れていく。

 

「ば…」

 

だが聖だけはどうしても口を開けずにいた。

ああ、どうしましょう…私も何かしなければいけないのに。

私は憎む心を改めるために修行の旅に出た身…ここで罵倒なんて事をしてしまえば…。

 

『女だって女神だって、ただ待ってるだけじゃダメ。見てるだけじゃダメなのよねぇ。だったらどうすればいいって…男どもに負けないくらい働けるんだぞってアピールしてやるのよん』

 

先刻にヘカーティアが言った言葉を思い出す。

 

「そうよ、人間も妖怪も神も仏もみんな同じ…。同じだったら、喧嘩くらいするわよねぇ…」

 

そう思ったとたん、何だかやる気が出て来た。

思う存分に侮辱して、今までの嫌な事全部ぶちまけてやる。

 

「アイツめ、私をまんまと利用したわね!?どこの誰だか結局分からなかったけど、人にやらせないで少しは自分でやったらどうなの?この意気地なし!」

 

春に聖に付け込んだのは月の三剣士、ミツルギのムジカという月の民だった。

それに対する不満と怒りと、代わりに邪念鬼の結界にぶつけてやった。

 

パキパキ…

 

聖の罵倒が他よりも効果があったのか、今までよりも大きく結界がひび割れた。

 

「おお、すごい!一気に削れた!!」

 

クラウンピースが叫んだ。

 

「はぁ…この調子ですね」

 

 

 

一方、邪念鬼との戦いを続けるヘカーティア。

 

「ぐあっ…!これほど苦戦したのは、シロちゃんに次いで二人目よ…」

 

「ケケケケケ!」

 

邪念鬼は空間に穴をあけ、そこに腕を突っ込み別の位置までワープさせる。

それによって邪念鬼は一歩も動くことなく着実にヘカーティアを痛めつけていった。

 

「ケケ…」

 

空間の穴の中にパンチをすると、それはすぐにヘカーティアの目の前から飛び出す。

何処に逃げようとも、腕を伸ばしたり腕が分身したりするので避けようにも避けられない。

 

「く…」

 

確か、前にも一度邪念鬼が出現したことが有ったな…。

百万年以上前だったと思うが、あの時は今よりも地獄の闇を深める太陽が多かったから、その力を借りて楽に倒せたが…。

その時は邪念鬼の媒体となっていた鬼の子ごと滅ぼせざるを得なかった。

そんな事があったから邪念処理装置を設置したんだ。だから今回は…あの子も取り戻して見せる!

 

「喰らいなさい!」

 

首から繋がる月と地球の球体を巨大化させ、邪念鬼の両サイドから挟み込むように振り回す。

だが、邪念鬼の身体は突然細かいブロック状に分離して避けられてしまう。

二つの球体は互いにぶつかり、ブロック状に分離した邪念鬼はヘカーティアに近づいていく。

邪念鬼はヘカーティアの目の前で再び元の形をとり、X字型の鳥のような足で両肩を掴んだ。

 

「な、何をする気?」

 

邪念鬼はヘカーティアの肩を掴んだままその場を滑空する。

まるでサーフィンかスケートボートでもしているかのようにヘカーティアを地面に押し付けながら。

 

「ホ────ゥ!」

 

地面を削りながら滑空していき、先にあったのは血の池地獄。

掴んだままのヘカーティアで水を切りながら血の池を通過し、更にたどり着いたのは針の山。

それを見た邪念鬼は更に加速し、針の山に突っ込んだ。

もちろん、針の山なんかに突っ込んでいけば無事で済むはずがない。

だが山を抜けても邪念鬼だけは何事もなく滑空と滑走を続けている。

次に差し掛かった灼熱地獄の燃える地面を捲りあげながら通り過ぎた後、地面がズレて出来上がった岩盤にヘカーティアを叩きつけた。

 

「ケケケ…」

 

そのまま動かないままのヘカーティアの身体に刺さっている針を抜くと、それを剣に変化させた。

その剣を、ヘカーティアに突き付けた。

 

「…かは…」

 

くそう…せめて、せめて私のもう二つの身体さえ来てくれれば…。

だが地獄はコイツの結界で封鎖されている…あの子たちが結界を解いてくれるまで頑張らないと。

 

「この出来損ない!!」

 

「ゲ…ゲア…!」

 

その時、邪念鬼に向けての罵倒と共に聖がその場に舞い降りた。

 

「『喝』!」

 

悪口を言われたことで頭を押さえたままふらつく邪念鬼に法力を浴びせる。

だが聖の法力ではやはり邪念鬼本体はどうにもできなかった。

 

「キ、キケ…ケケケ」

 

邪念鬼の握っていた剣が元の針に戻り、灰のように崩れて無くなってしまった。

 

「ひ、聖ちゃん…?」

 

「もう少しで閻魔宮殿の結界は解けます。そうすれば閻魔様のお力で地獄を覆っている結界も自然と壊れるでしょう。それまでの時間稼ぎです!」

 

聖の背後に巨大な千手観音像が出現する。

それの驚き、後ずさる邪念鬼に向けて観音様の有り難い連撃が放たれる。

千本の腕にもみくちゃにされながらもなんとか抜け出し、聖の顔面を殴った。

しかし、肉体強化の魔法を施した聖の前にはそのパンチも金属音のような音と共に跳ね返された。

 

「ケ…」

 

痺れる腕をさすりながら邪念鬼が聖の周囲を歩き回る。

 

「どうしました?おバカさん?」

 

「ゲゲ…」

 

一瞬苦しそうに顔をしかめる邪念鬼。

だが直後に先ほどのように体を分解し、聖の真後ろで再構築する。

 

「な…!?」

 

聖の右足首と頭を掴み、そのまま自分の上まで持ち上げる。

握りつぶすように力を込めながら聖の身体を引きちぎろうとする。

 

 

 

「よぅし、あともうちょっと…」

 

その時、クラウンピースの周りに他の地獄の妖精たちが集まって来た。

邪念鬼の弱点は悪口、それを軽率に口にしてしまう妖精を真っ先に恐れた邪念鬼はあらかじめ妖精をそれぞれ封じていたのだ。しかしそれも一時的な処置に過ぎない、時間が経てば妖精たちは自力で結界を破ってこのように自由となってしまう。

 

「おー、みんな来てくれたねぇ。それじゃあ、この結界にどかーんとやっちゃおうよ!」

 

パキィン

 

無数の妖精たちの悪口にさらされた閻魔宮殿を覆う結界に、ついに穴が空いた。

これを待っていた映姫が穴から飛び出す。

 

「ふぅ…」

 

「出た!四季様たち閻魔王は地獄を司る力を持つ…これで地獄の結界を解くことができる!」

 

小町がそう言った。

ちなみに、映姫が今まで結界に苦戦していたのはこれが「閻魔宮殿を覆う結界」だったから。

「地獄を覆う結界」ならば閻魔の能力で簡単に解くことができるらしい。

その通りに、映姫が結界に触れたとたんそこを中心に波紋のように結界が粉々に砕けていく。

 

 

 

「ヌア!」

 

引っ張っても中々千切れない聖に腹を立て、今度は足を掴んだままスイングして投げ飛ばした。

 

「ぐっ…」

 

倒れ込んだ聖を頭を踏みつけようとした瞬間、何かが邪念鬼の背中に激突した。

邪念鬼は前によろけた後、後ろを振り向いた。

 

「おまたせ。ようやく地獄に戻ってこれたわ」

 

やってきたのはヘカーティアそっくりの二人組だった。

同じように頭の上と両サイドに惑星のような球体が浮かんでいるが、青い髪は地球の球を、黄色い髪の方は月の球体を頭に載せている。

そう、3つの身体を持つヘカーティアの残り二つの身体がやってきたのだ。

 

「よぉし…聖ちゃん、ありがとう。これからは攻守交代よん」

 

3つの身体が揃ったことによっていくらか力が戻った赤い髪のヘカーティアが立ち上がった。

一人が背後から邪念鬼の背中を殴り、前につんのめる邪念鬼の顔面を殴りつける。

このようにして3人の間を殴られながらたらい回しにされている。

 

「どうしたの?さっきまで私の一人を痛めつけていた時の勢いは?」

 

邪念鬼が手も足も出せず、正に圧倒的な差ができている当然だ。

単体でも月の民や霊夢たちとの戦いをお遊び程度であしらった地獄の女神が、今は三人分揃っているのだ。

 

「ギョエアアアアアアアア!!」

 

さすがに逆上した邪念鬼は叫びながら周囲に衝撃波を発生させる。

しかしやはり三人の前ではそれも意味なく、合計九つの巨大化させた球体に吹っ飛ばされる。

 

「ヌアァ!」

 

怒りに目を血走らせながら突進し、赤髪のヘカーティアに殴りかかった。

だが既に聖から喰らった法力がじわじわと内側から邪念鬼を蝕んでおり、殴った時に拳がヘカーティアに当たった時の衝撃で上から粉々に崩れていった。

崩れた邪念が煙となって消えていったあと、その場には装置の管理当番である事をサボって直接的な原因となった鬼の娘が放心したような状態で座り込んでいた。

所詮は地獄の亡者から抜け出た邪念の塊、地獄の全てを司る女神には敵わなかったのだ。それと…吹っ切れた超人には。

 

「…は、私は…?」

 

「ふふふ…」

 

「あ、ヘカーティア様…私はどうしたのでしょうか?それに、この地獄の荒れ様は?」

 

 

地獄を巻き込んだ戦いは終わったのだ。

その後、邪念鬼の結界に閉じ込められていた亡者を含めた地獄の住人たちは全員解放され、すぐに今までと何ら変わりない生活を取り戻した。

邪念処理装置も修理され、今度はヘカーティア直属の信頼できるエリートの鬼たちが管理することとなった。

 

 

「じゃあね、聖ちゃん」

 

「ばいばーい!」

 

あれから3日、ヘカーティアによって地上の幻想郷に送り届けられた聖。

丁度ヘカーティアに助けられた山の麓の場所までクラウンピースと一緒に見送りに来てくれたようだ。

 

「今までありがとうございました。色々あったけど、楽しかったです」

 

「こっちも色々話が聞けて面白かったわん。地獄に生身の人間、しかも尼さんが来るなんて珍しかったから」

 

「…あれ、たった数日だけだったのに、涙が…」

 

「ふふふ、私は魔術の神様でもあるから、会いたくなったらいつでも呼んで頂戴ね。待ってるから」

 

「では…達者で」

 

網代笠を深くかぶりなおすと、聖はその場を後にした。

ヘカーティアとクラウンピースは聖の姿が見えなくなるまでそこで手を振っていた。

 

 

「それにしても…。女もそうさ、見てるだけじゃ始まらない…か。たまには吹っ切れてみることも大事ってね」

 

山を下りたところの草原の真ん中にできたあぜ道を歩いていく。

まだ真夏の日差しが真上から射してくる。

 

「おや」

 

歩いていると、網代笠の内側に虫がとまった。

笠を外して見てみると、それは緑色の身体の薄羽蜻蛉。

それの羽根をつまんで逃がしてやる。

 

「…うぇ」

 

ふと指の匂いを嗅ぐと、何とも言えないような匂いが鼻を突いた。

今の蜻蛉の匂いか…。どうしても気になる、どこかで手を洗えないだろうか。

 

「ちょっと寄り道してから、寺に帰ろうかしら」

 

陽炎とは、局所的に密度の異なる大気が混ざり合うことで光が屈折し、起こる現象。よく晴れて日射が強く、かつ風があまり強くない日に道の上などに立ち昇る、もやもやとしたゆらめきのこと。

そんな夏の陽炎の中を、聖は一人歩いていた。




【邪念鬼】─じゃねんき
地獄の邪念が鬼に憑りついた存在。
大昔にも一度出現したらしいが、その時は数が揃っていた地獄の太陽の力で退治された。


はい、話の元になったのは劇場版ドラゴンボールの復活のフュージョンです。
それをパクって東方風にアレンジしてみました。

ヘカーティアなんですが、公式でも最強宣言がされてます。
個人的にはヘカーティアはドラゴンボールに出てもやっていけるぐらい強いんじゃないかな~と思ってます。界王様ぐらいは強そうですよね。
そのヘカーティアを追い詰めた邪念鬼は、脳内設定では白面よりも断然強いのです。

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