れいむとシロ   作:ねっぷう

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第78話 「呑気な怪鳥を追え」

霊夢「う~ん…」

 

真夜中。

部屋で薄い布団にくるまって眠っている霊夢。

寝間着姿な上に髪留めもリボンも付けていないので一見誰だかわからないかもしれない。

 

「いつまで…いつまで…」

 

霊夢「…?」

 

突然聞こえて来たその叫び声に目を覚ました。

誰が騒いでいるのだろう、シロ?いや、シロはこんな騒ぎ方はしないはずだ。

 

シロ「…」

 

同じく屋根の上で眠っているシロも、その声を聞いた。

顔を上げて声の正体を探ろうと辺りを見回す。

 

「いつまで…いつまで…」

 

シロ「お前か!」

 

シロの隣にゆっくりと舞い降りて来た声の主に対して、口元に炎を揺らめかせながら声を上げた。

それに驚いた声の主は慌てたようにドタドタと屋根の上を走り回り、一回コケてからパッと姿を消した。

 

 

─翌朝

 

霊夢「はー、今日も雲一つないわ」

 

神社の前で掃き掃除をしながら上を見上げ、そう呟く霊夢。

と、そこにある来訪者が。

 

華扇「どうも、ちゃんとやってるかしら?」

 

茨木華扇、妖怪の山に「茨華仙の屋敷」を構え、そこで暮らしている仙人だ。

仙人といっても本人曰く、まだ修行中の身らしい。

包帯でグルグル巻きにされた右腕、頭の両サイドに被せられたシニョンキャップが特徴的だ。

前にひょんなことから神社に頻繁に顔を出すようになっている。

 

霊夢「ああ、アンタか…。見てのとおりよ、ちゃんとやってるでしょ?」

 

華扇「…まあいいけど」

 

華扇はそう言いながら部屋の縁側に腰を掛けた。

 

シロ「む、誰かと思えばお前か。今日も何か面白い話を頼むぞ」

 

シロが屋根の上からにゅっと顔を出したかと思えば華扇の隣に座った。

 

華扇「お、いいですよシロさん」

 

そう、華扇がシロと初めて出会ったのは5月ごろだった。

最初はシロがかつての白面の者だと気づき、ずっと警戒していたが最近シロは以前とは違うということが分かり、このように親しい関係を築いている。

華扇もまさかあの最恐凶悪だった妖怪と話ができるというのは面白いし、シロも仙人から聞く話は興味があった。

 

霊夢「あ、そういえば!アンタ夜中もここに来て説教たれてたでしょ?」

 

華扇「え?」

 

霊夢「とぼけても無駄よ、『いつまで、いつまで』っていう説教臭い声が昨日聞こえたの。どうせまたいつまでそんな生活を…みたいなこと言いに来たんでしょ!?」

 

霊夢はほうきをその場に倒してそう言った。

掃除中にほうきをほっぽってしまうから言われるのだと思うが…。

 

華扇「それって…もしかして怪鳥じゃないかしら?」

 

霊夢「怪鳥?鳥がしゃべる訳ないじゃない。まぁ外の世界には言葉を覚える鳥もいるらしいけど…」

 

華扇「知らないの?怪鳥『以津真天(いつまでん)』よ。差し渡しが6メートル以上もある怪鳥で、家の屋根の上で『いつまで、いつまで』と叫び声をあげるそうよ。一説によると死人の霊が凝り固まったものと伝えられ、前述の鳴き声には『いつまで屍を放置するつもりなのだ』と言う生者への非難が篭められているらしいとか…」

 

恐らく、その以津真天とやらは幻想郷で頼れる、そういう事において専門である霊夢の所にやって来たんだな…。

と、シロは話を聞きながら思った。

 

シロ「確かに、我も夜中に屋根の上で鳥を見たぞ」

 

霊夢「本当に?」

 

シロ「本殿の裏に居るぞ」

 

シロは神社の本殿を顎で指した。

 

華扇「…え!?」

 

 

 

「zzZZ…zzZZ…」

 

霊夢「ほんとだ…いる…」

 

本殿の裏の壁に背を向けるように、立ったまま寝ている大きな影。

しゃくれた嘴、扇形に開いた大きな耳に細い首、羽毛の無い爬虫類を思わせるような青い鱗の並んだ体に、爪の生えた大きな翼。まさに怪鳥と呼ぶにふさわしい不思議な鳥だった。

 

華扇「でも、何か間抜けな顔ね」

 

その時、怪鳥の鼻ちょうちんがパチンと割れて怪鳥が目を覚ました。

丸い目をこちらに向けて、足踏みして威嚇する。

 

「カァ───ッ!」

 

霊夢「毎晩騒がれちゃたまらないわ…今ここで退治する!」

 

霊夢が歩み寄ろうとすると怪鳥はそっぽを向き、翼をバサバサさせて頭を高く上げて短く鳴きながらふらふらと走って逃げようとする。

霊夢も走って追いかけると今度は屋根の上に飛び乗り、そこから助走を付けて飛び立っていった。

 

霊夢「あ、逃げようたってそうはいかないわ!」

 

華扇「あ、コラ!相手は死人の霊の塊…相手が伝えようとしていることを無視して退治など…!」

 

華扇はそう呼びかけるも、霊夢は聞く耳を持たずに追いかけていってしまった。

その時、シロがのそりとこちらにやってきた。

 

シロ「…?何が有った?」

 

 

霊夢「待ちなさーい!」

 

「クァ──ッ」

 

怪鳥は止まる気配もなく飛び続ける。

霊夢が後ろから攻撃をしても華麗な身のこなしでことごとく避けられてしまう。

間抜けな顔に似合わず妖怪としてはなかなかの実力を持っているらしい。

と、突然怪鳥は体を向きを変えて急降下していく。

向かった先は…人里だ。

 

霊夢「あっ、こら…」

 

そういう間もなく怪鳥は人里に降り立った。

霊夢も後を追って里に入るが、既に怪鳥はその場から離れていた。

 

「らっしゃいらっしゃい!今日も今朝採れたばかりの野菜が並んでるよー!」

 

里にある八百屋の店主が手を叩きながら客寄せをしている。

その客寄せの言葉に嘘はないようで、置いてある野菜はどれもみずみずしくいかにも新鮮って感じがした。

 

「えーと、大根ひとつに白菜ひとつ…」

 

その八百屋に訪れたふくよかな体系のおばさんが野菜を手に取ってかごに入れている。

 

「あら?」

 

しかしかごに入れたはずの野菜が一つずつ消えていっている。

変ねぇ、と思いながら消えたのと同じ野菜を入れなおすが、やはり目を離した隙に無くなってしまう。

 

「お、お客さん…うしろ…!」

 

そのおばさんが店主に言われるまま後ろを振り向くと、霊夢が追っている怪鳥がかごに嘴を突っ込んでいた。

 

「コェ」

 

喉を鳴らすのと共におばさんが手に持ってかごに入れようとしていた野菜をつまんで飲み込んでしまう。

 

「きゃーっ!!」

 

「だ、誰かあのでっかい鳥をどうにかしてくれ~!」

 

怪鳥は逃げるようにおぼつかない足取りで走り出した。

それに驚いた通行人が散り散りに逃げ惑う。

 

霊夢「くそ、あの怪鳥はどこ…?」

 

怪鳥を捜して里中を走り回っていた霊夢。

通路を曲がった先から悲鳴が聞こえ、そこに急いで向かって行く。

 

「うわ!離してくれー!」

 

団子屋の前の長椅子に腰かけていた男が叫んでいる。

手に持っている団子の串をあの怪鳥が咥えて引っ張ろうとしているようだ。

 

霊夢「見つけた!」

 

「カ!」

 

霊夢がこちらに向かってくるのに気付くと、怪鳥は威嚇のつもりか翼を大きく広げて見せる。

それに霊夢が警戒して動きを止めると、それを狙っていたかのように突然お尻をこちらに向けて屁をかました。

 

「げぇ、くっさ!」

 

周りの見物人たちがその屁の勢いと匂いに鼻をつまんだり顔の前をはらったりする。

 

霊夢「確かにくっさ…って、待てー!」

 

屁でひるんだ周りの人間の間を縫うように道を走って逃げていく。

 

 

霊夢「はぁ…はぁ…何処に行ったのかしら?」

 

怪鳥を追っているうちに森の中まで入って来た霊夢。

 

霊夢「ここまでコケにされて、絶対にタダじゃおかないから!」

 

お祓い棒をぶんぶんと振り回す。

相手は只の抵抗して襲い掛かってくる妖怪じゃない、こちらを明らかに意図的におちょくっているのだ。

霊夢のプライドが許すわけがない…。

 

霊夢「いたいた。ってまた寝てるし」

 

森の中のど真ん中でまた眠りこけている怪鳥。

その怪鳥の背後にそろそろと忍び寄り、お祓い棒を構える。

 

霊夢「ふん!」

 

ゴキィ

 

「コエ────…」

 

脳天をぶん殴られた怪鳥は片足で放心したようにフラフラと目を回す。

 

霊夢「トドメよ!」

 

もう一度お祓い棒を振りかざす霊夢だが、突然怪鳥が発した超音波のような鳴き声に耳をふさいだ。

その隙に怪鳥は霊夢の頭を踏みつけて踏み台代わりにし再び空に飛び立っていった。

 

 

 

カー カー

 

華扇「それで、それを7つ集めた私は外の世界にある探し物をしに出かけたんですよ」

 

シロ「ほう」

 

もう夕暮れの光が差し込む博麗神社の縁側でまだ話し込んでいる二人。

遠くの方には鳴きながら飛んでいくカラスの群れが見える。

 

華扇「結局探し物は惜しいところで見つけられませんでしたが、やはり外の世界は肌に合わなかったわ。こっちに慣れ過ぎた所為かもしれないけど…」

 

華扇は以前、幻想郷に出現したオカルトボール、という集めると願いが叶うという不思議なボールを集めきったことが有る。

まぁ華扇の場合はオカルトボールの危険性に気付き、いち早く集めようとしたわけなのだが…。

そしてそのボールを集めきると外の世界へと飛ばされることとなる。その時の異変に関わった一部の面々は外の世界を体験することとなった。華扇もそれに乗じて探し物を捜すことにした、という訳だ。

 

シロ「そうか?別にどっちも変わらんと思うが…」

 

シロがそう言った時、突然バサバサと大鷲が降り立ってきた。

 

華扇「ああ、竿打。迎えに来てくれたのね」

 

シロ「いつもの鳥か」

 

華扇が自宅にて飼っている若い大鷲である。

 

華扇「では私もそろそろ…ん?」

 

だがその時、また別の羽ばたきの音と共に竿打よりも大きなものが舞い降りて来た。

 

「クェ────」

 

あの怪鳥だ。

結局霊夢を上手く巻いて戻って来たのだろうか?

怪鳥は丸い目を竿打に向け、それに気づいた竿打も怪鳥を睨みつける。

 

華扇「ほう、これは…」

 

2匹の鳥は互いに威嚇し合う。竿打はじっと怪鳥を睨みつけたままだが、怪鳥の方はその場でピョンピョンと足を踏み鳴らしている。

 

華扇「あの怪鳥、私の家で飼うわ」

 

シロ「おいおい、アレをか?」

 

華扇「だって、『以津真天』なんて珍しいじゃない。霊夢に退治されるくらいなら是非連れていきたいわ。それに、あの竿打のいい競争相手になると思わない?」

 

シロ「いや、分からん」

 

華扇「竿打、先に帰っていてくれない?その鳥を家まで案内して」

 

竿打は驚いたような仕草で怪鳥をちらりと横目で見る。

そして飛び上がる時に怪鳥の鼻先を蹴飛ばしていった。怒った怪鳥は竿打の後を追いかけるように、空の彼方へ消えていった。

 

霊夢「はぁ…えらい目にあったわ…」

 

華扇「あらおかえり」

 

猫背になってふらふらと腕を前に垂らしながら霊夢が歩いてきた。

丁度怪鳥が去った直後のタイミングだ。

 

霊夢「くっそ…あの鳥め!次会ったら絶対に…」

 

霊夢はそう言いつつ部屋の中に入ると、どっとその場に寝ころんだ。




茨歌仙、4巻まで買って読んでみましたが面白いですね。

あとちょこっとオカルトボールの話を出したんですが、深秘録もやってみたいですね。
紅魔郷とかの弾幕系はどれもからっきしダメだったので…
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