れいむとシロ   作:ねっぷう

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第8話 「欠片」

妖夢「ちょっといいですか」

 

今日も博麗神社に来客が訪れた。

冥界という浄土にある白玉楼に住む剣術指南役兼庭師、魂魄妖夢だ。

 

霊夢「…何よ」

 

うちわで自分の顔をを扇ぎながら霊夢は気だるげに言った。

 

妖夢「相談があるんですけど聞いてください」

 

相談、か。やけに真剣そうな面持ちだ。

 

霊夢「はぁ」

 

霊夢はため息をつくと、横に向けていた体を妖夢へと向けた。

 

妖夢「最近、冥界の幽霊たちが落ち着きないんですよ。まるで何かにおびえてるみたいで…」

 

幽霊が落ち着かないせいで、勝手なことをしたりする幽霊が増えているらしい。

どうやら、その理由を突き止めて何とかしてくれって事か…。こんなに暑いのに。

 

妖夢「私も協力しますので」

 

霊夢「で、その原因は大まか分かってるの?」

 

妖夢「…幽々子様は冥界の果てにある邪悪な破片だと仰っていました」

 

シロ「ほう、我がどうかしたか?」ヌッ

 

妖夢がそう言った瞬間、彼女の背後から真っ白な指が伸び、首を触りながらシロが顔を出してきた。

 

妖夢「うひゃああああ!!?」

 

それに叫ぶほどびっくりしたようだ。

仕方ない、シロだって一応自称大妖怪だし、そりゃ突然後ろから首触られたらビビる。

でも、自分も半分幽霊なのにあそこまで驚くのはちょっと笑えるかも。

 

霊夢「あぁ、シロ居たの」

 

シロ「我の欠片がどうかしたか?」

 

霊夢「我の破片って、その破片ってシロの破片なの?」

 

シロ「確かにそれは昔に我が飛ばした体の一部…欠片で間違いないだろう。だが、それが何故冥界という地にまでたどり着いたのか、我にもわからぬ。心当たりはあるがな」

 

霊夢「心当たりって?」

 

シロ「それを教えることは我の過去を教える事…言ったろう、お前に我の事は教えないと」

 

霊夢「…そう」

 

妖夢「手伝っていただけますか?」

 

怒りながらシロの腕を掴んで今にも殴ろうとする霊夢を、妖夢がそう割り込む形でとめた。霊夢はやれやれと言ったように目を瞑りながら立ち上がる。

 

霊夢「まぁいいけど…シロも来なさいよ」

 

シロ「だからなんで我が…」

 

霊夢「その破片はシロの欠片なんでしょ?なら、シロが居れば早く見つかるでしょ」ニコ

 

シロ「…ふん、まぁよいわ」

 

妖夢「じゃあ早速冥界へ向かいましょう」

 

 

ミーンミーンミッチョワミッチョワ

 

じりじりと照り付ける日差しの中、霊夢と妖夢、そしてシロは空を飛んで冥界へと向かっていた。

冥界とは、罪の無い死者が成仏するか転生するまでの間を幽霊として過ごす世界のことだ。比較的善良な幽霊が住んでおり、虫や鳥、動物も基本死んでいるものらしい。

 

霊夢「暑いわね…夏にあそこに行くのは初めてかしら…」

 

シロ「そのまま暑さにやられてしまえばいいのに…」

 

霊夢に聞こえないようにブツブツとシロが呟く。

 

妖夢「あ、アレは…」

 

文「おや、ご揃いでどうしたんですか?」

 

そこへ颯爽と、黒い翼を持った影が目の前に現れた。霊夢と妖夢は見覚えがある、その姿は鴉天狗の射命丸文であった。

メモ帳とペンを持ち、にっこりと笑顔を向ける彼女。天狗には新聞を作り、配って読むという娯楽が有り、そのために日々新聞に使えそうなネタを求めて一日中幻想郷中を飛び回る天狗も珍しくない。

そしてこの射命丸文も、新聞のネタの為に霊夢たちのもとへやってきたのだろう。

 

妖夢「貴方には関係ないです、早くどこかへ行ってください」

 

妖夢はさっさと追い払おうと素っ気ない態度をとる。文の書いている新聞はたまにある事ない事書かれることが知られており、さらに取材を受けるとなるとかなり面倒臭いことになる。

 

シロ「…」ギロ

 

それに今は急ぎの時。苛ついたシロが文を人睨みすると、文は取材道具をしまった。

 

文「あ、あや~、お邪魔だったようですね…ではさようなら~」

 

天狗とは強い者の前では礼儀正しくなるようで、シロの圧倒的な実力を感じ取ったのだろう、すぐにそそくさとどこかへ逃げるように飛び去っていった。

 

霊夢「先を急ごうかしら」

 

 

しばらく飛んでいると、雲の中に歪みのような穴が生じていた。死者ばかりの世界だが最近、冥界と顕界の結界に穴が空き、行き来が容易となっている。

 

シロ「あそこから行けるのか?冥界とやらは随分と簡単に踏み入れられるのだな」

 

3人はその穴に飛び込んだ。

穴を抜けたとたん、急に下が空になった。上を見上げると、上には地面がある。入った拍子に上下が逆さまになっているようだ。

 

ザワザワ

 

霊夢「うわっ!」

 

霊夢たちが冥界に入った瞬間、横を無数の幽霊が横切っていく。

やはり何かにおびえて混乱しているようだ。

 

妖夢「早速幽々子様の待つ白玉楼へ行きましょう」

 

 

幽々子「よく来てくれたわね、ささ、上がって上がって」

 

妖夢に連れられ、冥界にそびえる『白玉楼』という屋敷に行く。長い階段を上り、門を通って庭へ足を踏み入れる。

すると迎えたのは、西行寺幽々子という亡霊の女だった。

 

霊夢「…」

 

シロ「…」ギロ

 

幽々子「やだわ、そんなに睨まないでちょうだいな」

 

霊夢「妖夢から聞いたわ、この冥界の果てにある邪悪な欠片に幽霊たちがビビってるんだって?」

 

縁側に座った幽々子の横に霊夢が座り、ずばり本題を聞き出す。

 

幽々子「ええ、私がその欠片を調べてみたんだけど、その欠片は500年以上前から冥界にあるようなんだけど何故今になって幽霊たちが意識し始めたのかわからないのよ」

 

霊夢「それは多分このシロに関係してると思うのよ」

 

幽々子「あら、そういえば何方?」

 

シロ「…お前が説明しろ」

 

霊夢「こいつは500年前からつい数か月前までうちの神社の下に封印されてた大妖怪。それでその欠片っていうのはコイツの体の一部が何らかの形で冥界にまで飛んできたもの。それが、シロが目覚めた事によって欠片が動き出したって…いうのかな?」

 

シロ「…そういう事だ」

 

幽々子「…あら、そうなの。貴方の欠片なら…霊夢とシロちゃんに何とかしてもらおうかしら」

 

霊夢「そうね、めんどくさいけど行くよ!シロ」

 

シロ「シロちゃん…?」

 

妖夢「私も手伝いますよ」

 

妖夢が霊夢たちについていこうと立ち上がる。だがシロがふいにそれを遮った。

 

シロ「いや、我と霊夢だけでよい。我の欠片など…あまり見せたくないのだ」

 

妖夢「はぁ、それは失礼しました…」

 

きっと、この妖怪にも知られたくないことがあるのだろう。そういったことに触れるのはあまりよくないかもしれない。

と、妖夢は思った。

 

霊夢「じゃあ行って来るわ!じゃあね!」

 

霊夢とシロは意気揚々と白玉楼から出ていった。

 

幽々子「…私がどんなに力を込めてもビクともしなかったあの邪悪な欠片…あの子たちに何とかできるのかしら…?」

 

 

白玉楼から出た二人は、冥界の奥地にある草原を歩いていた。辺りには靄がかかっており、生ぬるい不気味は風が身体を撫でて来る。

 

シロ「…霊夢」

 

霊夢「…えぇ、誰かに見られてるわね…

 

シロ「霧が深くなってきたな、気を付けろ」

 

霊夢「…って、あれ?さっきまで草の道歩いてたのに…いつの間にか砂利の道に…」

 

シロ「…」ピリ

 

霊夢(シロがやたら緊張している…何か妖怪の仕業!?)

 

ヒョオオオオ…

 

目の前に大きな影が現れる。そこで霧が少し晴れ、見えたのはさっきの白玉楼とは違う大きな屋敷。

黄色い霧が立ち込める屋敷の門が開く。

 

(ここはマヨイガ…その門に入りなさい)

 

霊夢「…紫!?」

 

聞こえてくる聞き覚えのある声に、霊夢は驚きを隠せない。

 

シロ「…」

 

霊夢「アンタなの!?アンタには聞きたいことが山ほどあんのよ!ほら出てきなさい!!」

 

フワリ

 

霊夢とシロが門の中に入り、屋敷の庭で霊夢がそう言うと霧の中から現れたのは2人の妖怪。一人は中華風のドレスに身を包み、空中に浮かんでいる黒い空間の裂け目のような場所に腰かけている。もう一人は動物の耳のように尖がった帽子を被り、腰から生えている九本の立派な金色の尾を風に揺らしている。

 

八雲紫と、その式である八雲藍だ。

紫は霊夢とシロを見ると、口を開いた。

 

紫「この時を待っていたわ、霊夢と…」

 

藍「そこの白き妖怪が共に冥界に訪れるのをな…」

 

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