逸る気持ちを抑えられずに早めに一話分書けたので、いつものペースよりも早く投稿しちゃいます。
人は一人で生まれ出でて、一人で死に滅んでゆく。
よく聞く言葉だ。そして人は言う、「孤独の中にこそ心理を見いだせる」と。
「フザケルナ」
お前達は本当の孤独というものを知っているのか?
ただ永遠の闇の中で一人、憎しみに胸をたぎらせる者の存在を知っておるのか?
我は進む。
いつ終わるかもわからぬ無限の荒野を。
その上で繰り広げられる、光の世界。
我は進んでいく、目の前に立ちふさがるあらゆる存在を殺して殺しまくりながら。
我が何をした?我は何の咎で、このような思いをしなくてはならない!?
誰か…我の話を聞いてくれ…
我と共に歩き、話を聞いてうんうんと頷いてくれ…
だが、我はそんな時…出会ったのだ…。
おぎゃああああ……──
霊夢「…はぁっ!?」
目を覚ました。
頭が痛い…昨日の酒が抜けてないかな…。それにしても、もうお昼か。
随分寝たんだな…。
霊夢「それにしても、嫌な夢見たなぁ…。シロが死ぬ夢なんて…」
霊夢はいつの間にかかけられていた布団を片づけると、歯ブラシを咥えながらシロを呼んだ。
霊夢「シロ、居るのー?…居ないのか」
どうやらもう出かけているらしい。
台所に置いてあったトマトを丸かじりすると、草履をはいて外に出た。
何となく私も出かけたい気分だ。
霊夢「よっと」
霊夢は里へ通じるけもの道を歩いていった。
しばらく歩くと里にたどり着き、里の門番に挨拶をした。
霊夢「どうも」
「え?え…あぁ、どうも…」
霊夢「…?」
ん?何か変だな。いつもは笑いながら挨拶を返してくれる気さくな門番が、まるで初対面の人を見るかのような態度だ。
そういえば風呂にも入っていない。少し匂ったか…?帰ったらまず風呂に入ろう。
霊夢「あ」
霊夢は道の先に魔理沙が居るのが見えた。
どうやら団子屋で団子をかじっているようだ。
霊夢「あら魔理沙じゃない?」
魔理沙「…何だよお前は」
霊夢「あれ?もしかして昨日私が紫たちと飲んでたの知って怒ってるの…」
魔理沙「いや、だからお前…誰だよ?」
え…?誰って…もしかしてからかっているの?
だけど、魔理沙の顔はとてもふざけているとは思えない、演技とは思えないほど自然な顔だった。
霊夢「私よ、何言ってるのよ…。霊夢よ、博麗霊夢!そうやって脅かそうたって…」
魔理沙「何だよ、大声出して…私はそんな名前聞いた事ねぇぞ」
とら「何だァ、さっきから喚きやがって」
魔理沙の近くに座っていた男が突然ぐにゃりと変形してとらになった。
霊夢「なんだ、とらか!聞いてよ、魔理沙が私の事を…」
とら「…お前…誰でぇ?」
とらまでもが、まるで霊夢の事を知らないような素振りだ。
霊夢「ちょっ…とらまで何言ってるのよ?」
とら「お前の知り合いか?」
魔理沙「知らない。行こうぜ、とら」
魔理沙は団子の串を投げ捨て、その場から歩いて立ち去ろうとする。
その態度に霊夢も腹を立てて歩いていく魔理沙の襟を後ろから引っ張った。
霊夢「さっきから馬鹿にしてるの!?アンタ、シャレになんな…」
魔理沙「うるさいな、知らないって言ってるだろ!?」
魔理沙は腕を振り上げ、霊夢の顔をひっぱたく。
霊夢はよろけてから魔理沙を顔を見る。その顔を見て、本当に魔理沙は自分の事を知らないか忘れてしまったんだな…と思った。
魔理沙「ふん、行くぞ」
とら「…」
魔理沙「…暇だなぁ。…アレ?私いつも、暇なとき…誰と居たんだっけ…?」
何かぽっかりと穴が空いてしまったような心に少し疑問を持ちつつ、魔理沙ととらは霊夢から離れていった。
その後、霊夢は焦りながら里中を回った。だが、鈴奈庵の娘も、依然知り合った里の知人も、里で霊夢を覚えている者は一人も居なかった。
霊夢「…どういうこと?今…何が起こっているというの?」
そう呟きながら、空を見上げて立ち尽くす。
その時、空にある雲の隙間から霊夢は不思議な物を見た。
霊夢「何よ、あれ?」
なんと空に、ぽっかりと黒い穴が空いているのだ。
だが他の者がそれに気づいている様子はない。アレが関わっているのか…?
…そうだ、ではアイツらはどうだろう?
異変を起こして私に退治された者たちだ。奴らはどうだ、私の事を覚えているかも…。
霊夢はまず、紅魔館へ向かった。
かつての夏の日に、突如幻想郷全体が妖気を帯びた紅い霧で覆われ、日光が遮られた。
人間の里の人々は妖気を帯びた霧のために体調を崩し、また家から出ることすらかなわず、 さらにこの霧は幻想郷を越えて外の世界にも干渉しそうになった。
この状況に、ついに霊夢が立ち上がり悪魔の住む館、紅魔館へと乗り込み異変の主犯であるレミリア・スカーレットを倒したのだ。
美鈴「…紅魔館に、何か御用ですか?」
紅魔館の門番、紅美鈴は霊夢に問う。
ああ、この態度からして美鈴も私の事は覚えていないのだろう。
しかし希望を捨てる訳にはいかない…もしかしたらパチュリー、咲夜、そしてレミリアの誰かが自分の事を覚えているかもしれない。
霊夢「私は博麗霊夢という者。東の山の上にある博麗神社の巫女をやってます。この館の主であるレミリア・スカーレット様にご用件があり、やってきました」
なるべく美鈴を刺激しないよう、丁寧に名乗る。
美鈴「…いいでしょう。案内しますよ」
美鈴は快く霊夢を受け入れ、門を開けて館の中へ案内した。
美鈴「来客の方です」
玄関に入るなりそう大きめの声で言うと、瞬時に館のメイド長である十六夜咲夜が現れた。
時を操る能力で移動してきたんだろう。
咲夜「要件は?」
霊夢「あ、えっと…主のレミリアさんと話したいことが…」
咲夜も駄目か、この様子では私の事を覚えていそうにない。
咲夜「分かりました、お嬢様の部屋へ案内します」
レミリア「私に客とは珍しい。して、私に話とは何かしら?」
霊夢「ど、ども…」
レミリアの部屋の丸机を挟んで座る霊夢。
霊夢「えっと、私が誰だか分かりますか?」
自分は何を聞いているんだろう。
もうレミリアも私を覚えていないと分かっているのに。
レミリア「?お前は博麗の巫女、じゃないのか?今さっき名乗ったでしょう」
霊夢「…そうですか。では貴方は昔に赤い霧を放って異変を起こし、誰かにそれを辞めさせられましたね?」
レミリア「…そうだが」
霊夢「その後、貴方はロケットなるものを作らせて月に行き、そこで月の使者のリーダーに敗れた」
レミリア「ちょっと待った、それを何故お前が知っている?」
霊夢は続けた。
霊夢「その異変を解決したのと、月に行ったときの同乗者に私は居なかった?ねぇ?」
レミリア「可笑しな奴ね、捕まえなさい」
レミリアが席を立ちながら静かにそういうと、咲夜は一瞬で霊夢に近づき、ナイフをその首に突き立てた。
霊夢は寸でで飛びのいてそれを避ける。
霊夢「なぁ、咲夜もアンタも…何があったのよ…?」
レミリア「私たちはお前なんて知らないし、お前には不審な点がありすぎるわ。拘留させてもらう」
霊夢「くっ…」
咲夜の投げるナイフを避け続ける。
がその攻撃の中にいつの間にか魔法のような物が混じっており、その魔法を辿っていくとパチュリーまでもが自分に襲い掛かって来た。ついさっきまで持っていた紅魔館の最後の希望が断たれた。
ついにパチュリーの魔法陣のような物の上で動きを止められた。
レミリア「地下へ連れていきなさい」
咲夜「かしこまりました」
咲夜は拘束した霊夢を連れて部屋を出ていった。
レミリア「それにしても、可笑しな奴だ。あの時の異変を解決したのは霧雨魔理沙とあと一人だったはずだ。…あれ、後の一人は…誰だったっけ?」
パチュリー「そうね…月に行ったときのロケットも、動力源として協力して貰った人が居たわ。でも、誰だったかしら…思い出せないわ…」
レミリアは咲夜と霊夢が出ていった部屋のドアをじっと見つめた。
レミリア「…まさか、な…」
真っ暗な地下牢に、霊夢は一人座り込んでいた。
魔法で強化された鉄格子はビクともしない。
霊夢「どうしたら…いいの…。わからないわ…魔理沙にも、レミリア達にも忘れられて…」
孤独。以前の霊夢ならばずっと一人でも問題なかっただろうが、今は違う。
一緒に酒を飲んだり異変解決に赴いたりする仲間ができてしまい、それが当たり前のようになってしまっていたからいざ孤独になると身が裂けそうなほど寂しい。
霊夢「一人ぼっち、か…」
霊夢がそう呟いたとたん、檻の前に誰かが現れた。
その誰かは鉄格子を掴むと、いとも簡単に捻じ曲げて檻に入って来た。
暗闇の中でも白く発光する9本の尻尾…シロだ。
しかし、その脚や背中に矢が何本も刺さっており、服にはシロ本人のものか返り血かはわからないが血の跡がみられる。
霊夢「シロ…」
そうだ、シロはどうなのかしら?私の事をやっぱり忘れてるんじゃ…。
魔理沙やとら、レミリアみたいに…。
やけに心臓の鼓動がうるさく響く。緊張がとまらない。
シロ「…らしくないな、博麗霊夢」
そのシロの言葉を聞いたとたん、霊夢は軽くガッツポーズをした。
皆が主人公の事を忘れる…うしおととら本編と同じです。丁度アニメが再開されたところと同じですね。
一緒じゃないかよ、って思うかもしれませんが、これまたちゃんとした理由があるんです…