れいむとシロ   作:ねっぷう

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第9話 「白面の者」

霊夢「そう、アンタには聞きたい事が山ほどあるのよ!まず、なんで神社の下にこのシロが封印されてたの?なんでそのこと

 

を教えてくれなかったの!?それと…」

 

紫「…そう、霊夢の持つ疑問に答えようと思ってね…」

 

霊夢「じゃあまず、このシロは何!?なんで妖怪なんかが博麗神社の御神体な訳?」

 

霊夢はずっと紫に聞きたかったことを大声で尋ねた。

 

紫「その妖怪は御神体じゃないわ。500年前に幻想郷に現れた大妖怪よ」

 

霊夢「…え?」

 

紫の言葉に霊夢は声を漏らす。

 

シロ「…」

 

紫「その妖怪は2500年以上前、外の世界の印度という国で発生したその大妖怪、白面の者はこの世の正義なるモノを全て滅ぼす邪念に燃えていた。白面の者は外の世界の当時の中国という国の王妃を喰い殺して化け、人々に圧制を敷くことで目的を達成しようとしたわ。妖怪たちも白面の者には手向かえず、人間は妊婦の腹を裂き胎児の性別を当てる賭けを平然と行うその妃に慄然としたと聞くわ」

 

霊夢「シロが…?まさか、このシロがそんな大層な事できるわけないじゃないの…」

 

紫「…本当はやりたくないけど仕方ないわ、霊夢を納得させるためだものね…」パチン

 

紫が指を鳴らすと、シロの身体からどす黒い妖気が放出される。両腕で頭を押さえ、苦しむように唸り声を上げる。

 

シロ「お…オ…」

 

霊夢「シロ!?どうしたの!?」

 

霊夢がシロの顔を覗き込むと、その表情は苦痛に歪んでいた。今までシロのこんな顔は見たことが無い。

 

シロ「おぉ…お…オ…」

 

メキメキ

 

藍「ついに本当の姿を現しましたね、白面金毛九尾の狐…」

 

紫「いえ、通称…」

 

シロ「お ぎ ゃ あ あ あ あ あ」

 

紫「『白面の者』」

 

身も凍るような甲高い叫び声と共にシロの腕が粘土のようにグニャリと捻じれ、霧の湖での悪精との戦いの時に見せたような白い毛並みの鋭い爪の生えた獣の腕に変わる。そして顔半分が大きく歪み、胴体から足へと順を追って獣と化していく。

今まで9本の尻尾の生えた人間の姿だったシロは尻尾を抜いて6~7メートルの白い獣に変貌してしまった。

 

シロ「ハァ…ハァ」

 

シロは少し息を荒くしながら、背中を丸めてじっと下から紫を睨みつけていた。

 

紫「これが白面の者の正体よ、霊夢!」

 

変貌したシロを指差しながら高らかに叫ぶ。

 

霊夢「…シロ…?」

 

シロ「…」

 

霊夢が恐る恐る呼びかけてもシロはじっと紫を睨んだままだ。

 

紫「500年前、幻想郷のある地で眠っている白面の者を見つけた賢者たちは、眠りながらも強大すぎる妖気を撒いて幻想郷を蝕むその白面の者を倒そうとした。だが白面の者は自分に結界を張っていて倒すことができなかった…だから賢者たちは眠っている白面の者が目を覚ましてもその場から動けぬように何重にも結界を張ったの…」

 

霊夢「それが、シロの言ってた体に纏わりつく結界…?」

 

紫「でも、あんなに強い結界も何重も張ったのに簡単に出られたのは白面の者の力を見誤っていたわ。今、かつて私が纏わせた結界だけを取り除いた…」

 

藍「それだけでこの重圧な妖気!」

 

同じ九尾の妖怪である藍が慄くほどの不気味な妖気。紫を含めた賢者たちでさえも封印することしか敵わなかった力は本当のようだ。

 

紫「そして、さらに白面の者が目を覚ましてもその場から動けないようにして押さえつけるために、私はその上に博麗神社を建てた。その神社の封印を解いたのが貴方よ」

 

霊夢「私が…?」

 

紫「この事を霊夢に教えなかったのは私の責任だわ…でもね、その白面の者と霊夢を関わらせなくなかったのよ」

 

霊夢「シロと私を関わらせたくなかった…?」

 

紫「ええ。それにそいつはシロっていうヤツなんかじゃないわ、邪悪な大妖怪…『白面の者』よ」

 

藍「紫様は貴方に白面の者について教えることで、貴方を危険にさらしたくなかったのです」

 

霊夢「何よアンタら!2人してシロを悪い奴呼ばわりして!確かにこいつは敵なら妖怪だろうと何だろうと殺そうとする奴だけど、悪い奴じゃないわ!!」

 

そう、シロはそんなんじゃない…シロは私や魔理沙と一緒に妖怪退治だってしてきた、確かに私を攻撃したこともあったけど本気で敵意を向けてきたことなんてない。

そんな気持ちを込めて霊夢はシロを見た。獣と化したシロのこの世の絶望を全て集めたような目がほんの一瞬に寂しそうに歪んで霊夢を見た。

しかし、すぐにいつもの冷たい目つきに戻り、紫を今世紀最大の憎しみを込めて睨んでいた。

 

紫「さぁ、そろそろまた結界をかけるわ」

 

紫が両手をシロに向けると、シロの周囲に電気のようなエネルギーが発生し、それがシロに迫っていく。

だがシロは9本の尾でそれを振り払い、叫ぶ。

 

シロ「…我以外の妖怪は…皆死ね!!人は生かす!人の恐怖や絶望は我の悦びなり!!」

 

シロの目にひび割れたような亀裂が走り、その目を見開いた。

そしてすらりと伸びる9本の尾が振り回され、マヨイガの屋敷ごと紫と藍を吹き飛ばす。

さらにシロは空中に舞い上がるとマヨイガと紫に向けて火柱を吐くと、流星のように尾を引きながら空へ消えていった…。

 

霊夢「シロ!どこ行くのよ!?」

 

藍「いつつ…やはり白面の者は危険な妖怪…」

 

紫「今のでわかったでしょ?あの白面の者はやはり危ない…霊夢と私とで新しく結界を張って封じ込めないとこの幻想郷が危ないわ…」

 

霊夢「私は嫌よ」

 

藍「な…あんな奴さっさと封じ込めてしまわないと、この幻想郷が…!」

 

霊夢「いい?シロはそんな危ない奴じゃないわ!アンタらが言うような奴だったら、もうとっくに幻想郷は滅んでるはずじゃない?」

 

紫「それは賢者たちの張った結界があったから能力を限られていただけで…今まで女の姿をしていたのは、白面の者が幻想郷

 

の規定に収まろうとした結果で、それが無くなった今どうなるか分からないのよ?」

 

霊夢「でも…私はシロをどうこうするつもりはないわよ…」

 

紫「…」

 

霊夢「…」

 

しばらくの沈黙が続いた。霊夢の決意に固められた目は変わらなかった。紫もそれに気づき、肩をすくめた。

 

紫「分かったわ、そこまで言うなら、これまで白面の者がしてきたことを、シロの過去を貴方自身が見てきなさい。それを見てもまだそういう事を言えたのなら、考えてあげるわ」

 

霊夢「シロを過去を見るって…?」

 

紫「冥界の果てにある白面の者の欠片…そこに行けば全てが分かるわ」

 

霊夢「分かったわ。そこに行けば…シロの過去を知れるのね?」

 

紫「ええ」

 

霊夢「…じゃあ行って来るわ」

 

次の瞬間には、マヨヒガの有った場所からもとの草地に戻っていた。霊夢は紫たちに背を向けると、その奥へと歩いていった。

 

藍「本当にいいのでしょうか、あの妖怪を完全に封じなくて」

 

紫「これまでの白面の者の悪行を見れば、ああ言う霊夢も封じる気になるでしょう…」

 

その紫の話を黙って聞く藍だが、その目には不安と、白面の者に対する敵意が込められていた。

 

 

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