れいむとシロ   作:ねっぷう

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第91話 「希望」

阿求「皆さん、これはかの有名な博麗の巫女の霊夢です。そしてこちらに居るのはかつて白面の者として恐れられたシロと名付けられた妖怪です。二人は今まで幻想郷の平和を乱したり、人間に仇なす妖怪をその強力な力で退治してきました。ご存知の通り霊夢は妖怪退治の専門屋、シロはその身一つでたくさんの国を滅ぼした妖怪…二人が揃えば妖怪に対しては無敵、幻想郷では最強!今、幻想郷は八頭龍という邪悪な龍に滅ぼされようとしています。でも諦めないでください!!大丈夫です、彼女らが居ます、我々に守る力が無くなったわけではないのだから!」

 

霖之助が持ち込んだマイクに向かって、霊廟に避難している人々にそう呼びかける阿求。

その演説に、人々は次第に笑顔を取り戻して活気づいてきた。

 

 

文「以上、射命丸文がお送りしました」

 

阿求の演説と同じ内容の事を大きなカメラに向かって話す文達鴉天狗。河童が数時間にかけて総動員で造り上げた巨大モニターにビデオカメラ。巨大モニターを大天狗を含めた各部署の長が幻想郷や地底と言った各地に運び、ビデオカメラに映った鴉天狗たちの報道と演説をモニターに流して見せたのだ。

 

文「はぁ、しばらくはこれをリピートで流してもらえばいいのね。でも霊夢は行方不明、シロは既に八頭龍に殺されたのに…嘘の報道を私たちがしちゃうなんてねぇ…」

 

はたて「あることないこと広めるのはいつもと同じかもしれないけど、今回の嘘は違うんじゃない?」

 

 

阿求たちのいる仙界にもモニターはいつくか届けられ、そこにスライドショーのように映っている天狗が収めていた霊夢とシロの写真を流している。

 

「あ、アレは前に僕を助けてくれた白い妖怪だ!」

 

人間の少年はモニターに映るシロを指差しながらそう叫ぶ。

里にガシャドクロが出現して食われてしまいそうになったとき、シロが我の獲物だと言って叩き落として救ったのがこの少年だ。

 

ミナエ「ほら、前にお母さんに話したでしょ、お墓参りの帰りに妖怪に襲われた時にあのシロっていう妖怪に助けてもらったの!!」

 

墓参りの帰りに、動物や草木を初めとした喋らないものの声を聞く耳を持つ妖怪、岩耳に襲われていた所をシロに助けられたナミエは興奮気味に話している。

 

 

はたて「今回の嘘は、なかなか私たちが伝えられないものを乗せることができたじゃないの…そう、希望ってやつをさ」

 

 

かつて、幻想郷を揺るがす異変を引き起こし、そして霊夢にそれを阻止された者たちは思い出した。

 

レミリア「あの時みたいに…」

 

レミリア・スカーレット。日光を嫌い、幻想郷全体を霧で覆って日光を遮ることで昼間でも活動できるようにしようとしたことで異変を起こし、霊夢に倒されそれを防がれた。

 

 

永琳「姫様、これは…」

 

輝夜「ええ、あの時みたいに…」

 

月の賢者、八意永琳が黒幕。月の逃亡者、蓬莱山輝夜を連れて帰ろうとする月の使者を幻想郷へと来させないために、トラップとして偽の月を造ったのが理由だった。これは異変だと、霊夢らは立ち上がり、夜を止めた犯人と戦った。

 

 

天子「あの時みたいに…」

 

退屈だったのでかまってもらうために幻想郷の天候を不安定にさせ、挙句には博麗神社を倒壊させた。当然の自業自得とはいえるが、その結果霊夢に敗れた。

 

 

霊烏路空「あの時みたいに…」

 

山の神によりもたらされた八咫烏の力を取り込み、急激に力をつけた。そして、地上を破壊すれば新たな灼熱地獄が生まれると愚かにも考え、異変が起きることとなった。だが霊烏路空は霊夢らに敗北し鎮まった。

 

 

更に、シロに助けられ、何らかの形で接したことのある者たちも思い出していく…。

 

フラン「見てみて!シロだ!」」

 

ヒダル神、という憑いた者を飢餓感に陥らせる妖怪に憑りつかれていたところを、姉のレミリアとシロが妖怪を体内から追い出し、フランを救ったのだ。

 

 

靄子「シロさんだ…」

 

地底に住む気弱な鬼の靄子。自信の無い暗い性格をしていた彼女だが、星熊勇儀や霊夢やシロと黒竜を打ち倒したことで自信が持てるようになり、それからは今までよりも楽しく暮らしてる。

 

燐「さとり様、ほら、あの時の…」

 

さとり「ええ…」

 

火焔猫燐にさとりも同様に、霊夢やシロと共に地底の危機を救うのに貢献した。

 

 

正邪「アイツかよ…すごかったよな」

 

正邪を捕え、残虐な方法で痛めつけようとした妖怪たちの前に偶然通りかかったシロが正邪を助けたのだ。

 

 

ルナサ「ほら、前に幾星霜に襲われた時…」

 

リリカ「そうね、あの時のように…あの二人がきっと…」

 

プリズムリバーの三姉妹。かつて冥界への境付近で幾星霜という霊を捕まえて取り込んでしまう悪霊に襲われていた所を霊夢とシロによって救われた。

 

 

小傘「あの時みたいに…」

 

別の傘の付喪神に憑りつかれて人々を怖がらせて周っていたところを、霊夢とシロによって助けられた。以後、その傘は食べる感情の種類ややり方が違っただけで境遇は自分と同じだったと知り、二人でコンビのようなものを結成している。

 

 

「…」

 

彼も思い出した。森に一人住んでいたゴリラの彼は、迷い込んでしまった外来人の女の子を死にそうになりながらも博麗神社まで届け、彼を追ってきた妖怪狒狒を退けてもらった。

 

 

ミスティア「霊夢とシロだ…私を助けてくれたこともあった」

 

ミスティア・ローレライ、森のハズレで旧鼠に喰われそうになっていた所を霊夢とシロに助けられた。

 

 

ナズーリン「ひょっとしたら…」

 

命蓮寺での暴動の際に捕らわれてしまったが、シロが聖を殴り倒したことでできた隙を縫って逃げ出す事が出来た。その後は封獣ぬえに痛めつけられるも駆け付けた霊夢に助けられた。

 

 

チルノ「くっそー、なんで私たち今まで忘れてたんだろ!」

 

リグル「あの二人ならきっとやってくれる!」

 

チルノは大妖精と魔理沙、そしてシロと共に湖を牛耳ろうとする悪精と戦った。

そしてリグル・ナイトバグは妖怪の山で八雲藍に襲撃されたシロに、チルノと共に加勢したことが有る。

 

 

妹紅「そうだ…あの二人はとても強かった…」

 

シロを仇の妖怪の勘違いし退治しそうになったがそれが誤解だったと知り、その後はシロたちの協力もあって仇の妖怪を見つけ、倒す事が出来た。シロがもっとも信頼する者の一人でもある。

 

 

華扇「幻想郷を救う事が出来る巫女が居る…」

 

とら「どんな奴でもぶっ殺せる無敵の妖怪が居る…」

 

早苗「もしかしたら…」

 

 

魔理沙「霊夢と…シロなら!」

 

その時、霊夢とシロの事を思い出した全ての者の頭の中から婢妖が飛び出した。婢妖たちは知っている、主亡き今、自分らが何をするべきかを。主より命令された記憶奪回を成した婢妖が何をすればいいかを。

 

 

 

『シャアアア…まさに、この八頭龍に敵は無い…』

 

黒雲の上から、紫色の二股に分かれた舌を出し入れするジエ。

 

『さてと、ワシもいよいよこの幻想郷を喰らい尽くしてやる…滅ぶまでボロボロに喰らってやって、そうしたら次の場所へ…。…!?』

 

だがジエの舌が異変を感じ取る。目を細めて遠くの雲の中を見つめる。雲の中に居るのは…物凄い速さで雲の中を進み、同時に大嵐の黒雲を斬り払って散らしていく、にょろにょろと細い尾を動かしながら飛行する…小さな妖怪であった。

まさか…あれはまさか…

 

『白面の者かァアアア…!』

 

分かる、わかるぞ…あの小さな妖怪共からは白面の匂いがする。この異界のあちこちから飛んでくる妖怪共からは、奴の匂いがするぞ!

 

『その向かう先は何処だ!?』

 

自分のすぐ目の前を飛んでいく婢妖たちの行く先を、出し入れしている舌で感じ取ろうとする。

ここから東…何が来る…?

 

あの巫女か!!

 

ジエが感じたのは、紫や神子たちと共にこちらへ向かってくる霊夢の姿だった。

あの時、ワシが消し飛ばし損ねたというのか?

 

『そうか…あの妖怪は白面の手下。奴が最後の最期でひり出した手下が、巫女のもとに集ろうというのだな…』

 

嵐まで消し飛ばしながら向かって行く手下どもが、ここの住民どもの記憶を元に戻してしまったのか。そうならば…手下ごと…あの巫女を!

 

『今度こそ本当に叩き潰すのみ!』

 

今、シロから放たれた婢妖は霊夢とシロの記憶を元通りにし、幻想郷中から駆け下る。婢妖たちがした判断は霊夢の元へ戻って彼女を支援すること。そしてそれを阻止せんと婢妖を追って行くジエ。このまま行けば、いずれ霊夢たちとジエはぶつかり合う事になるだろう。

その時こそ…最後の戦いとなるはずだ。

 

『おのれ、白面の者…巫女の元へたどり着く前に、今度こそあの巫女を叩き潰してやる!』

 

 

 

 

全壊状態の人間の里。当然ほとんどの建物が崩れ去り、その瓦礫や残骸は吹き飛ばされて竹林や魔法の森の方まで移動していた。デコボコに変形した地面の上には各家の家具や道具などが散乱している。

 

妹紅「そこに誰かいるのか?」

 

そんな里の中で、降り注ぐ豪雨に臆することなく生存者を捜している藤原妹紅。

空からの龍の攻撃によって息絶えた妖怪の死体が積み重なっている中に、かすかな子供の声を聞いた。

 

「た、助けて…」

 

妹紅はすぐにそこに駆け寄り、下敷きになっている子供を助け出す。

 

妹紅「皆が避難している場所が有る。そこへ行こうか」

 

ふらふらと立ち上がった子供に背中を向け、おぶってやろうとする。だがその時、子供の姿が揺らいだかと思えば人型の妖怪に変化した。

 

妹紅「どうした…!?」

 

後ろから噛みつきかかる妖怪からすぐに離れる。

 

「ち…やっと生きてる人間を見つけたのによ…」

 

どうやらコイツは人間に化けて妖怪の死体の中に紛れて誰かが助けようとするのを待っていたらしい。

その妖怪は再び妹紅に飛びかかり、妹紅はとっさに迎撃の構えをとる。

 

「か…!?誰だァ?」

 

妹紅の脇の隙間を縫って飛来した札が妖怪の胸に貼りつき、その箇所が爆発する。

 

妹紅「アンタは…!」

 

札を投げたのは、シロとも面識のあった霍青娥だった。彼女が符咒を使って妖怪を攻撃したのだ。

 

青娥「あら…妖怪が人を襲うというのは分かるけど、今はそんな事をしてる場合じゃないし…他にやることがあるんじゃなくて?」

 

「く…」

 

青娥に笑みを向けられた妖怪はその場から走り去っていった。

 

妹紅「久しぶりじゃないか…師よ」

 

青娥「そうね、藤原さん…」

 

そう、妹紅の「禁」などといった符術は道教、仙道の一部であり青娥から教わったものだったのだ。

20年前、仇の妖怪を討つためにはより多くの術が必要だと考えた妹紅は中でも特に興味を持った符咒について詳しい仙人を捜すことにした。しばらく探して見つけたのが霍青娥。他の仙人とは違う、何かを妹紅は感じたのだ。

全てを話された青娥は拒むことなく妹紅を弟子にとり術を教えた。妹紅の不死身の身体は常人では無茶に尽きる修行を多くこなす事が出来、元の戦闘能力が高かったためすぐに術を会得できたという。

その後も自分で術を磨いてきた妹紅は、今ならば容易に師を超えているだろう。

 

青娥「ところで、仇の妖怪に復讐はできたのかしら?」

 

妹紅「おかげさまでね。霊夢とシロの…協力有ってだがね」

 

青娥「あの二人…私は今まで忘れていましたわ」

 

自分の頭に触れて首をかしげる青娥。

 

妹紅「アンタは何しに来たの?」

 

青娥「豊聡耳様からの命令ですわ。アナタと同じに生存者の発見…でもこの大嵐じゃ、さっきの攻撃で生きている人が居ても今頃は…」

 

その時、しきりに降っていた豪雨が少し弱まった気がした。ふと上を見上げる二人。

すると空に浮かんでいたのは無数の婢妖だった。婢妖が通った場所にあった雲は消し飛んでいき、どんどん雲は薄くなり隙間から太陽の光が射し始める。

 

そう、婢妖は知っている。次の自分たちの役目は、この大嵐を消すこと。龍の起こした嵐を消せば幻想郷は水没の危機を免れる。その効果は目に見えて現れていて、既に幻想郷各地では雨が弱まり日が射していたのだ。

 

 

 

藍「本当に、申し開きもできない…八頭龍に記憶を操作されていたなど…」

 

飛んでいる霊夢の横から頭を下げる藍。

 

神子「私たちがもっとしっかりしていればこんな不利な状況には…」

 

霊夢「違うわよ。全然不利じゃない。いい?アンタたちは一度八頭龍に酷い目にあわされてるから不利だなんて思ってしまうだけで、実際に紫が負けたのも一人だったから…天狗たちが負けたのも天狗だけで戦ったから…私が負けたのも私だけで戦ったから…」

 

布都「それは…」

 

霊夢「でも今はみんな一緒。だから…だからね、個々で戦えば確かに不利だけど、皆で戦えば…そんなのわからないわよね?幻想郷の妖怪たちが一つになれば…相当強いと思うわ、私たち!」

 

強い…?私たちが皆、もろともに強い…?

 

紫「気付きました?豊聡耳神子さん…」

 

神子「ええ、八雲紫…。あの言葉だけで私たちと妖怪の怯えを拭い去ってしまった…」

 

紫「これが…博麗霊夢の不思議な力か!」

 

霊夢の言葉にあの強大な八頭龍に対する恐怖を拭い去り、今団結している自分たちは強いという自信と希望を持った妖怪たち。自分たちのよく知る、博麗霊夢が言ったからこそここまでの自信へとつながったのだ。

 

霊夢「アレは…」

 

しかし、霊夢はずっと西の方からこちらへ向かってくる黒い塊を見ていた。

その前の方には無数の小さな妖怪たちもこちらへ向かってきており、どうやらそれを追いかけているようだ。

 

『見つけたぞ、巫女、妖怪どもォオ!』

 

やってきたのは、八頭龍のリーダー、ジエだった。ジエは身をくねらせながら物凄いスピードで婢妖と霊夢たちの間に割り込み、その身で婢妖の進行を妨げた。

 

『一匹残らず喰らってやる!!』

 

大口を開け、婢妖の群れに食らいつこうとするジエ。

 

霊夢「ちいい、八頭龍!」

 

ジエの蛇腹の下で叫ぶ霊夢。

だが、横から現れた大きな閃光を見て、さらに驚愕の表情と声を上げた。

 

霊夢「あ、アレは…!」

 




皆が思い出してくれます。

うしとら原作でもこのシーンアツすぎですよね?そんなアツさをちょっとでも文章に載せて再現することができたかな…?
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