~~~~翌日
「ふぁ~~~~あぁぁ~~~」
「馬鹿でかい欠伸ね、響」
俺がファミリア近辺にある借家の玄関先で周囲に憚ることなく大欠伸をしていると後ろから声をかけられた
「ん?あぁ、なんだローズか」
話しかけてきた人物はギルドのアドバイザーで俺の担当を務めてくれている狼人の女性であるローズだった
「なんだとは失礼ね。まぁ、基本その辺の礼儀はしっかりしてるアンタのことだから考え事でもしてたんでしょうけど、どうせまた何か問題事でも頼まれたんでしょ?」
「うっわ、流石ローズ。これが亀の甲より年の功って奴なんだろうか」
「その喉元噛みちぎるわよ?」
「こっわ、なまじ美人なだけに笑顔で言われたら迫力倍増だな・・・・って、待て待ておもむろに金槌なんて取り出して何する気だ!?」
「何って?・・・勿論」
そして左手で綺麗な紅髪の長髪を弄りながらこう言った
『躾の必要な
「いってぇーーーーーー!!」
〜〜〜〜〜〜〜
「で?アンタは今日もダンジョンに潜るの?」
痛みがある程度引いた頃、見計らった様にローズが尋ねる
「いんや、今日は我らが主神様から重大な仕事を仰せつかったんで休みにする予定ですよ?というか徹夜明けにダンジョンみたいな薄暗いところにいたら間違いなく寝るって」
「そう。まぁ、その様子で潜るなんてほざいてたらどうしてやろうかと思ってたけど、アンタに関しては無用の心配だったみたいね。その辺の自己管理はしっかりしてるか・・・ほんと基本手のかからないのにどうして偶にやらかすのかしら」
「それについては諦めてくれ。問題の半分以上は他の冒険者とかモンスターのせいだ。
例の虫退治とかで問題を起こして迷惑かけてるのは認めるけど、カツアゲしてた冒険者を麻痺させて放置させたり、慈善事業も行ってるんだから目をつむってくれると嬉しいんだけどな~・・・この間のケーキ美味かったろ?食ったんなら見逃して?」
「やっぱり賄賂か!!何が『日頃お世話になってるお礼だから存分に食ってくれ』よ!!アレのせいで体重が2kgも増えたわよ!!どうしてくれんのよ!!」
「いや、体重は俺のせいじゃないだろ・・というかアレ一応自作なんだけど、まさかもう20個全部食べたのか!?渡したの昨日だぞ?」
「食べたわよ!!止まらなかったのよ!!悪い!?というかアンタがあんな今まで見たこともないスイーツを持って来るのが悪いのよ!!というか自作だったの!?どんだけ多才なのよ!!なんで冒険者なんかやってんのよ!!」
「いや、まぁ恩返しと儲かるからだけど・・・・」
「でしょうね!!」
「そんで?ローズ、こんな時間に話しかけてきたのは結局何の要件?また誰か冒険者捜索の
俺は眠気の残る頭から切り替えて真剣な表情で訊ねる。
・・・一応、その手のクエストに関してはギルドの貢献率でダントツ首位に居るのでそれについては問題ない。俺の耳を使えばだいたいの階層さえ分かれば、どこに居ようと見つけるのは難しいことではないからだ。・・・・生きているかどうかは別として
あと、ケーキに関しては一部を除いてほとんどレシピ見ながら作ったのばっかりだから別段難易度の高いことはしてないんだけどな・・・
「ふーーふーーふーー・・・・アンタの所為でしょ。あと今回のはそっちじゃなくて完全に個人的な用事での頼み事よ」
「ん?冒険者は恋人にしないって公言してるローズが俺に?珍しいこともあったもんだな。ついに俺ってローズの胃袋掴んだ?」
「掴まれたことは否定しないけど、アンタは冒険者じゃなくてもお断りよ。けど、今回の頼みごとについてはそこらの奴に頼むよりアンタに頼んだ方が信頼出来て早く済むし、確実だからね」
「毒舌がデフォのローズにしては珍しいくらいに偉く持ち上げるな・・褒めても俺特製の解毒剤ぐらいしか出ないぞ?」
「むしろそっちが狙いよ。近所の子供が昨日から熱を出してね。市販の薬を試してみたけど、どうにも容体がよくならないのよ。」
「あぁ、なるほど・・姉後肌のローズらしいな。俺の解毒薬は服用者の抵抗力を一時的に劇的に向上させるから大概の病気にも特効薬として使えるし、今後の風邪の予防にもなるからな~」
「そういうことよ。で?代金はいくら?」
「いいよ、ローズにはいつも世話になってるし、新作をタダで融通するよ。その代り、治ったら薬のデキを教えてくれ。今度広告に使うから」
「・・・相変わらず商人でもやっていけそうね。どうせだし、商人にでも転職したら?」
「主神様に作品が認められてから考えるよ」
「・・・まだまだ先は長そうね」
「そんじゃ、ローズ。俺はもう行くから」
「何しに行くかは知らないけど、こっちの用は済んだし、さっさと行ってきなさい。ただし、問題は起こさないでよ?せっかく休み取ったのに呼び出されるなんて御免だから」
「あぁ、わかってる。極力気を付けるよ・・・半分は俺の意思に関係ないことだから絶対の確約は出来んけど・・・」
「・・・ほんと、アンタって素直に送り出し難い奴よね」
「俺もそう思う」
・・・そうして互いに苦笑いをした後、俺は北のメインストリート方面に、ローズは自宅のあるギルド方面に向けて歩き出したのだった。
~~~~~
「・・・・やっぱり街中はノイズが多くて人探しは面倒だな」
そう言って眺めた先には・・・
「やぁ、君!!僕の眷属にならないかい!?」
バイト先の商品を片手に10歳前後の少女(おそらく客であろう)に対して、輝くような笑顔でファミリアの勧誘をしている主神の神友の姿であった。
なまじヘファイストス様と同じく神であるゆえに整った容姿と小柄な身長に見合わない巨乳を持つゆえに周囲の視線を集めている。・・・ヘファイストス様のホームでの自堕落な姿を見ていた俺としては素直に頷けない。というか彼女の食事や世話全般を引き受けてたの俺だしな
・・・しかし、だからと言って勿論今の彼女の努力を認めない訳ではない
一応ヘファイストス様からの紹介でここで働くことになったので当初は紹介した先輩|鍛治師≪スミス≫曰く想定していたよりも問題は起こっていない・・・それどころか彼女が来てくれたおかげでこの辺り一帯が明るくなったという感謝の言葉を贈られたようだし、見た限り元気だし、勧誘はしていても仕事は全く疎かにしていないのだからその内に彼女の明るさに惹かれて入団したいと希望する人間も現れるだろうし、ヘファイストス様もそこまで心配する必要は・・・・
「あ・・・あったよ」
そういえば今の彼女の住処といえば・・・僻地にある廃教会だった筈だ。近所の餓鬼ども曰く『お化け教会』などと呼ばれており、仮に勧誘が成功したとしてもよっぽどの人物でない限りファミリアに入団する意思を撤回しかねないレベルで・・・・いや、一応原作ではベル・クラネルという主人公が無事入団なんかしてたんで大丈夫だと思うんだ・・・・けどさ。その肝心のベル・クラネルっていつ来るの?
という問題に突き当たったのだ。
一応|予言の書≪原 作≫は一通り、読んだのだが俺が読み飛ばしてしまったのか無かった様な気がする。
その為・・・
原作の開始がわからない。
どうしたものか・・・と思考を重ねていると《ぐぅ~~~》と腹の虫が空腹を主張してきたことで思考が打ち切られる。
・・・そういえば朝飯食べてなかったな。とりあえず、進展は無さそうだけど元気そうなのはわかったし。後でヘファイストス様には報告すればいいだろう。
そう思った俺はその場を後にし、行きつけの店である豊穣の女主人のある西のメインストリートへ向かうのだった。
「持参金でも持って来るんだな!!」
「ちょ、話を聞いてくださ・・・うわ!?」
・・・・・向かうのだった?
『あれ?さっきのフレーズってどこかで聞いたような・・・というか今ゴロゴロと転がって行った白髪の少年・・・どっかで似たようなのを見たような』
そう思って一応確認のために目元をゴシゴシと拭い、再度確認すると
「いたたたたぁ~・・・」
視線の先には・・・先ほどまでいつ来るのかと疑問に思っていた兎君・・・もとい、ベル・クラネルっぽい、白髪の少年が頭を押さえて蹲っていた。
〜〜〜〜〜
「ん?響じゃないかい!・・・しかし、可笑しいね。今日はアンタんとこには注文は出して無かったと思うんだけどね〜」
「いやいや、ミアさん。俺だって仕事以外でもここを利用することだってありますよ」
・・・ここを常連にしているロキファミリアのアイツさえ来なければ毎日だって通っているだろう程にこの店の料理は絶品なのだから
「というわけで、大盛りカルボナーラを2つ」
「あいよ、ちょっと待ってな・・・って2つ?」
「今回連れがいるんだよ」
そう言って俺のコートの後ろに隠れていた少年を見せる
「アンタがファミリア以外の子とつるむってことは・・・また、いつもの人助けかい?」
「一応、性分なもんで」
「いつも言ってるけど、やりすぎてヘマするんじゃないよ?」
「わかってるよ。目標もあるし死ぬ気はないさ」
「そうかい、ならいいんだけどね」
納得したミアさんが調理場に向かっている間に店の隅の空いている席に座ると正面に少年も座る
「で、自己紹介が遅れたけれど・・・俺はヘファイストス・ファミリア所属の冒険者でヒビキ・ホシノだ。一応、趣味で人助けをやってる」
「・・・べ、ベル・クラネルで・・す。」
あ、やっぱりベル・クラネルだったのか
けど、本当にウサギっぽい子だな…目と髪もそうなんだけど、なんというか小動物的な愛くるしさがあって世のマダム方、可愛いもの好きの女の子達からとても可愛がられそうな少年だ
マスコットとか弟的な扱いで…これなら原作で担当のエイナちゃんが放って置けなかったのも解る気がする。いや、だって放っておけないもん
「そうか、ベル君か・・・俺相手に緊張する必要なんてないぞ?というか、するだけ損だ。呼び捨て・・・が厳しいなら『ヒビキさん』でも『お兄さん』でも『先輩』でも好きに呼んでくれてもいいぞ?」
「えと、ならヒビキさんで」
「そんじゃ、ベル君。一応聞くけど君はダンジョンに憧れて冒険者になりに来てるって認識をしてるんだけど間違ってる?」
「・・・」(ぶんぶんぶん)
「うん、一応正解みたいだね。なら次の質問だ・・・・
君は冒険者になって何がしたい?」
「ぼ、僕は・・・っ!!ーーーーーーーーーーーーーっ
!!」
うん、やっぱりこの少年を見てるのは想像以上に面白いことになりそうだ。真っ先に迷わずにそれを言える人間は少ないし、けど…
「なら、やっぱりウチのファミリアはオススメ出来ないな」
「え!?ヒビキさんって冒険者じゃなかったんですか!?」
「いや、ベル君。あのな・・・冒険者って一口に言っても色々な奴がいるんだよ。そんでファミリアごとに特色があるんだ。例えば俺の所属するヘファイストス・ファミリアは鍛治師・・・つまり武具や防具を造ることを主体としたファミリアだ。他にも商人のファミリア、薬師のファミリアとか色々とあるけど、君がさっき投げ出されたのは戦闘系のファミリアだけど、ああいうのは大概同派閥の推薦でもないと、入団試験さえ受けられない。まぁ正直恩恵を持ってると大人だ子供だなんてのは基本的に物差にならないから正直やる意味がわからないけどね・・・デカイからって強いとは限らないし・・」
「なら、どんな神様を探したら良いって基準とかってありますか?」
「あぁ、それならあるぞ?取って置きのが」
この時の俺は料理を運んできたウェイトレスのリュー曰く、とてもいい笑顔をしていたらしい
ちなみに言った言葉はこうだった。
『北のメインストリートにあるこの街の名物を堪能してきたらいい出会いがあると思うぞ?』
そうしてすぐに届いたカルボナーラをベル君と食べたのちに俺はベル君に北のメインストリートの方向を教えて別れたのだった。
その後、俺は先程の事について考えを馳せる
『僕は冒険者になって童話に出てくる英雄になりたいです!!』
「予定とは違ったけど、これはこれでこれからが楽しみになりそうな展開だ…」