やはり趣味を極めるのは間違っていないはずだ 作:hideo99777
高校生活は時間の無駄だ。
楽しくもないし、まずやることなんて成績のみ。
勉強さえがんばればいい。
今世の中は何かと考えすぎる奴は求めてはいない。
何も考えない操り人形か、笑みを絶やさない道化だ。
使えないものはトカゲのしっぽとして切り落とす。
至極真っ当だ。利用価値のない人間はただの喧しい生ごみに過ぎない。
バリスティックシールドの代用品程度か、腐らせてバイオ燃料の代わりにでもしたほうがよっぽど価値はある。
わざわざ何かをやろうなんて事は出来はしない。
何も考えないのは楽で、手っ取り早い。
必要以上の自我はただの攻撃材料だ。
俺は何も考えない歯車でいいかもしれない。
だが中身は何もない。
鉄などのように密度はない。
とにかく結論を述べよう。
俺は髑髏になりたい。
—2年F組三上 隆人の作文より。
けたたましい目覚まし時計のアラームが耳をつんざく。
体が鉛のように重い。ストレスフルな学校に行かなければならない。
誰もいないリビングで水を一杯胃の中に放り込み、また自分の部屋に戻る。
遅刻時間ぎりぎりまでコントローラを握ることになる。
とうとう学校についた。神経をベルトサンダーにかけることになる。
どうせ授業など適当に聞けば良い。
「三上、後で職員室に来るように」
え?何?何かやらかしたっけ?平塚先生怖いんだよなぁ…
言い知れぬ不安を躍起になって払拭しようとするも、無駄だと悟り、職員室に入る。
「おお、来たか」
「どんな要件でしょうか」
「作文の件だ」
「作文?ああ、高校生活がどうとかのやつですか」
「ああ」
「何か不備でも?」
「はぁ…」
平塚先生がため息をつきながら僕の作文を見せる。
「問題はないようですね」
「問題ないわけないだろう!なんだこの常時後ろ向きの文面は!」
「仕方ないでしょう、どうせ2,3年たちゃすぐに忘れるし意味ないですよ」
「そんなんでいいのか…高校生活は一瞬なんだぞ」
「いいんですよ、僕はまだ子供です。後悔するのが僕の大人になった時やるべきことです」
「何歳だ、お前は…」
「僕はまだ17、青臭い、汚れも、人生も何も知らない子供です」
「はぁ…ついてきたまえ」
まじか。もう家に帰りたいんだけど。
死刑台に上るような気分を味わいながら、平塚先生の後を追う。
ここで逃げたら平和な日常が盛大に吹き飛ぶ。
逃げようという自分の本能と格闘していたら、いつの間にか着いてしまっていた。
平塚先生に促され、入ると、二人、一人は美少女、もう一人は目の腐った男子。
確か、女子は雪ノ下とかいうやつだ。
「平塚先生、ノックを…」
「悪い悪い、実は、彼の更生を手助けしてやってほしいんだ」
更生ってなんだよ。
俺は精神異常者じゃないし、犯罪者でもない。
増してやクスリをキメてるキチガイでもない。
「彼は、三上 隆人。基本ゲームなどの自分の趣味にしか眼中に無い。ある意味比企谷よりもタチが悪い」
「あの…更生って?」
「お前にはここへの入部を命じる。異論、反論、抗議は受け付けん」
「平塚先生…私は今、このろくでなしの更生で忙しいのですが」
「おい、無関係な俺までディスるのはやめろ」
「仕方ありませんね、先生の依頼ですので無下にはできませんし…」
「決まりだな。頼んだぞ、雪ノ下」
そう言い残し教室を出ていく。当の僕は周りの音をイヤホンでシャットダウンし、黒のフライトスーツをアマゾンで探していた。因みにちゃっかり椅子を出し座っているが。
やっぱヘルメットは実物買わないとダメかな。あれ2万位するんだけど。
まあなんちゃってヘルメットなら、五千円程度で済むだろう。
決してSPECの津田助広ではない。
MGSVのXOFだ。
とにかく、おうち帰りたい…そんな素朴な願いもかなわぬ地獄に突き落とされた。
ここで俺は平穏な日常を送れるかどうかが問題となる。
「で?そもそもここは何部なんです?」
「当ててみて」
「いや、あの、そういうのいいんで…正直面倒だし」
雪ノ下は芋虫を噛み潰したような表情に変わる。
「奉仕部だよ」
目の腐った男子が教えてくれた。
「そうか…名前だけで嫌な予感がするけど…」
「まぁ想像してる通りだと思って良い」
「はぁ…」
思わず溜息をついてしまった。
「ようこそ奉仕部へ。歓迎するわ。あなたの問題を矯正してあげる。感謝なさい」
「無理。そもそも上から目線じゃんか…そんなんじゃやる気失せるわ」
「これはあなたの問題なのよ」
「なんなら平塚先生に言え。別に俺は希望してないし」
欠伸交じりに言う。
「はぁ…あなたは変わらないと社会的にまずいレベルよ」
「いいのさ。何も考えない髑髏になる。その方がやりやすいだろ」
「私の見たところによると、あなたの体質の原因は捻くれた感性や腐った根性が原因みたいね」
「腐っちゃいないよ。だって無いんだもの。感性だなんて面倒なんだよ」
雪ノ下は、嫌悪感を露にする。
「雪ノ下、邪魔するぞ」
「先生ノックを…」
ああ、ノックしないのは日常茶飯事なのね。
「悪い悪い。どうやら三上も一筋縄ではいかないようだな」
「本人が問題を自覚していないせいですね」
「さした問題じゃないでしょ」
薄らいだ笑みを浮かべながら喋る。
「なにも変わんなくていいじゃない。何も感じないほうが楽なのさ。それに、考えすぎなんて好ましいもんじゃない。社会じゃ何も考えない歯車や道化か髑髏が求められてんだよ」
「それじゃあ悩みも解決しないし、誰も救われないじゃない」
「救われなくてもいいのさ。なにも僕じゃない。困ってるやつなんざ見捨ててグダグダ生きてるほうが楽しいのさ」
「二人とも落着きたまえ」
「落ち着いてますよ」
俺は肩をすぼめて言う。
「とにかく、三上にはここでの奉仕活動を命じる。頼んだぞ」
あぁクソ…嫌だ。
仕方ない何も考えないまま過ごしていればいい。
ゲームならノートPCでも出来る。
今は適当に過ごしておこう。
日常を失った悲しみを強引に喉の奥に押し込む。
本格的に悩むことになりそうだ。
どうすればいいのか分かりゃしない。
今は時を待とう。