やはり趣味を極めるのは間違っていないはずだ 作:hideo99777
翌日、俺はまたあの地獄かそれとも肥だめといった方が良いか。
そこへ戻る事がどんなに嫌なことだとしても将来に関わる。
クズだと思われそうだが、こいつらを殺していないだけまだましだ。
人を巻き込んじゃいない。
人を巻き込むのは好きな物同士でやれ。
いや、どっちかっていうとこんな雑草共なんざ気には留めない。
内申の材料にも面接のでまかせにもならねぇし。
これ以上突き詰めようとも何も出てこないと悟り、教室に入る。
どこかのアサシン並のテクで入り込む。黙って席に座り適当にゲームをする。
「おう」
「どした」
「いや、昨日休んだろ」
「ああ、それか」
「どうしたのかって思ってな…」
「ああ、大丈夫だ、胃腸炎でな、ストレス性のだが」
「ストレス性?」
「どこかの女王様の哀れな泥人形のおかげでな」
「はは…納得」
「物わかりが良いもんだな」
「国語学年三位なめんな」
「そうだな…で数学は?」
「…分かってんだろ…」
「へへ…まぁな」
「そういや…委員会は?」
「相変わらずだ…そういや、スローガン決めするらしい、考えとけ」
「ぼちぼち考えとくよ」
授業が終わり、城廻先輩の質問責めに遭う
「三上くん!大丈夫だった?」
「はい、僕なら大丈夫ですよ」
「良かった…でもどうしたの?」
「胃腸炎です。明太子が駄目だったんでしょう…」
「ふふ…あ、もう始まっちゃう…行こっか…」
「はい」
さぁーて知らん存ぜぬスタンスの発動だな。
スローガンは誰に決めてもらうか。
俺はそんなにスペシャルな存在ではない。
ましてやVault-tecもないし、pip-boyもない
「…相模さん、もうみんな集まったよ」
「あ、はい」
「…雪ノ下さん?」
「え?…あ…それでは委員会を始めます、本日の議題ですが連絡があった通りスローガンについてです」
そしてすがすがしいまでに迷走したスローガンが書かれてゆく。
特に一つ、絶対雪ノ下が書いたもんだろ。
容易に想像できすぎて怖い。
「うわぁ~」
相模の案に差し掛かったところで比企谷が呟く。
相模の顔が引きつり、すぐに見破れる作り笑いを浮かべながら問う。
「何かな?何か変だった?」
「いや、別に」
「何か言いたい事があるんじゃないの?」
「いや、まぁ別に」
「そう…いやならほかに案出してね、三上君も」
そんなに嫌な顔してたか。
「折衷案ってことで頼むわ」
「おう」
意見を紙に書く比企谷に小声で話しかける。
「それじゃ…三上との折衷案なんですけど"人 よく見たら片方楽してる文化祭"とか」
会場の雑草共が絶句する。
こんなスパイスのきいたブラックジョークなんざ笑えない。
俺は笑える部類に入る。
強化外骨格もそうだ、何故なら今机に突っ伏して笑っているからだ。
「比企谷、説明を」
「人という字は支えあってとか言ってますけど、片方寄りかかってんじゃないですか、誰かが犠牲になることを容認しているのが人って概念だと思うんですよね、だから実行委員会に相応しいと思いまして」
さすが比企谷、俺の想像できない意見を平然と言ってのけるッ!
そこにしびれるあこがれるゥ!
聞いときゃ良かった。
「犠牲というのは?」
「俺とか超犠牲ですよ。アホみたいに仕事させられてるし。人に仕事押し付けられてるし、これが実行委員長言う
所のともに助け合うってことなんですかね、助け合ってないんで俺はよく知りませんが」
「はぁ…三上は何かいうことは」
お鉢が回ってきた。まぁこの事が事実だということだけ言いますか。
あとは本音を添えるか。
「まぁ、彼の言っていることも強ち間違いではありません、既にノルマの五倍の仕事量で、欠席者の分の仕事をしなければなりませんでした。まぁ結論から言えば最悪ですね」
「どういうことだ?」
「当たり前でしょ、こんな好きでもいる訳でもない、実行委員会でどうせくだらない言い訳でサボってる見ず知らずのクズ野郎の仕事押し付けられて、こんなもん助け合いじゃない。俺たちゃ奴隷じゃないし、世話焼きでもありません。というかわざわざ助け合わなくてもできる仕事の量が前提です。寝ぼけたことばかり言って、正直迷惑してますし、委員長さんが仕事したのは見た事ありませんしね」
「それに、出来もしない事を高望みしてもできないものは出来ないです。そのせいで他人の時間を使わせている事を念頭に置いてください。それに、使えない奴なら皆クズです。いくら委員長でも、クズはいりません。クズはクズらしく処分されてほしいもんですがね」
皮肉めいた口調で嫌味ったらしく毒を吐き出す、これが現実だ。
見てこなかったお前らが悪い。
散々こっちの言い分を無視して、利用しようなんざ虫の良い話なんてものは無い。
お前らには蛆虫か、蛭がお似合いかな。
いや、肥溜めだから蠅かな。
クズはちゃんと分別して、くずかごへ。
ヒャッハー!汚物は消毒だー!
ともあれ、満面の笑みで却下されちゃいました。
比企谷、残念そうな顔しない。絶対教育委員会に呼び出し食らうぞ。
「相模さん、今日は解散しましょう、どのみちろくな案が出そうにないわ」
「え…でも…」
「これで一日消費するのは愚かな選択よ、実行委員全員、各自で考え、明日決めましょう。残りの作業については
全員前日参加にすれば十分取り戻せる…でしょう?」
「じゃあ皆さん明日からまたお願いします。お疲れさまでした」
ようやく終わり、疲労が俺の肩と腰にタングステンの比にならないほどの重みがのしかかる。
「よぉ、やらかしたみてぇだな」
「高田…お前いたのかよ…」
「あぁ…寝てたわ…」
「お前寝てたって…」
「あぁ…ごめんな」
「死ぬかと思ったぞ!こっちは!」
「珍しいもんだな、お前がノルマの五倍の仕事量やってたなんてな」
「お前こそだ、普通に信じると思わなかった」
「はいぃ?」
「お前は右京さんか、あんなん嘘に決まってるだろ。こんな肥溜めで仕事までさせられたら死んじまう」
お互い乾いた笑い声をあげながら、二人で並んで歩く。
こうして俺たちはラーメンを食って帰って行った。
翌日、スローガンを決める作業に入る。
これまた、迷走しました感が否めないスローガンがホワイトボードに大きく書かれる。
とりあえず、スローガンの入れ込み作業を淡々とこなす。
勿論ノルマぴったりである。
他人の仕事は押しつけに来た野郎にファイルを後頭部にぶん投げて追い返した。
ざまぁ。
「やーやーしっかりと働いてるかね?」
「そりゃまぁノルマは一応…」
「ホントに~?」
「まぁ、嘘ついてもしょうがないじゃないですか」
「君はホントにつれないな~」
「面白さなら比企谷の所に行った方が良いんじゃないですかね」
「ふふ…分かった!じゃあね~」
俺は、彼女に感づかれないように溜息をつき項垂れて終わった仕事をまとめたファイルを積み上げた山を見つめる。
こんなに疲れるとも思っていなかった。
俺は何でこんなことをやっているのか。
俺は何でこの部活で働くのか。
なんでだろうかなど考えても無駄なことは分かっていた。
目つきがつい悪くなる。
俺はどこかを見つめていたらしかった。
もう嫌になっていたのか。俺は。
こんな日常なんざ消えてなくなればいいなんて思わない。
仕方ないのだ。有るがまま受け入れる事しかできない。
抗おうとしてもどうにもならない事は分かっている。
この分かっているという感情があるからこそここまでやってこれた。
俺の脳の感情を司る部分が囁きかける『逃げればいい、隠れているんだ、そうすれば諦めてくれるだろう』けれどもそうならないという事は分かっていて、何とかしなければならないということも分かっている。
そうして今までやってきた。
こんな生活はもう嫌だ。
いつしか俺はこの高校生活に、俺自身に嫌気が差していた。
最初、俺は失われた日常を悲しんでいた。
だけどもう違う。
俺はこの場所も、高校生活も、俺自身も嫌いだ。
ノルマを終わらせていた俺は、会議室を出て行った。
俺の足音は周りの音にかき消されていたのか気付かれることも無く、気が楽だった。