やはり趣味を極めるのは間違っていないはずだ 作:hideo99777
修学旅行も終わり、進路関連の話が多くなってくる。
あの出来事以来、カースト上位の独裁者は何も変わらない。
奉仕部の方は後少しで崩壊するので、俺はほくそ笑んでいたが、そうはならなかった。
勝手に瓦解してくれればよかったがそれほど甘くはない。
もっとも、その程度なら文化祭あたりでとっくに無くなってしまう。
それだったらどんなに良かった事か…少なくともこんな風に悩んじゃいないと思う。
奉仕部のイスにもたれ掛かる。
少し目が疲れた。
ウ○フェンシュタインずっとやってるからな。
比企谷が目の前に座るも皆は黙ったままだった。
「…そういやさ、みんな普通だったね…」
由比ヶ浜は消え入りそうな声で、最後の方はもうほとんど聞こえなかった。
「見た感じはな…」
それに比企谷が答える。
告白の事は広まってはいない。結果オーライか。
まぁ壊れてしまえば最も良い結果だったけどなぁ。
「なら良かったのだけれど…」
「あたし達が心配するようなことでも無かったよ…」
とうとう勢いも続かず由比ヶ浜は俯いてしまう。
なら話すな。
「………何考えてんだろ…なんにも分かんないや…」
「そんなこと元々分からないわ」
雪ノ下は冷たく言い放つ。
「お互いを知っていたとしても、理解なんて出来ないわ」
今更何を話しているのか…人なんて理解しようと何になるのか。
俺にはそれがどうしても分かりはしない。
知ろうともしちゃいないがな。
「普通にしてりゃいいだろ」
「…そっか…」
「それがあなたの普通なのね…」
「ああ」
「変わらないと言うのね…」
雪ノ下は、視線を落としつつ、言い淀む。
比企谷は先を見越した上で言葉を待っているように見えた。
考え過ぎかもな。
そして、二人の間に由比ヶ浜が割ってはいる。
ノックの音が鳴り響き、適当に俺が返事をすると扉が開かれる。
「邪魔するぞ…」
平塚先生のようだった。
いつもはノックをせず入っていたため、少し違和感を感じる。
「頼みたいことがあって来たのだが…何かあったのかね?」
ノックに俺が返事をしたことがよほど珍しいのか聞いてくる。
「いえ、何も。それで何か?」
「そうったな…入ってきていいぞ」
「城廻先輩…?」
「こんにちは…三上くん。今日は相談があるんだ」
城廻先輩と共に入ってきたのはいかにも私可愛いですアピールをしている女子だった。
どうも不信感が拭えない。
「いろはちゃん!」
「結衣先輩!こんにちは!」
そして、彼女は依頼内容を伝えるため、椅子に座る。
「生徒会長選挙の候補者?」
「はい」
ふと、彼女はこちらを向く。
「今向いてなさそうとか思いませんでした?」
「いや別に」
表情一つ変えず即答する。
「よく言われるから分かるんですよー。トロそうとか、鈍そうとか…」
いや、お前はトロいとか鈍いとかじゃなく頭が悪い。
「それで何か問題が?」
「一色さんは、生徒会長に立候補してるんだけど…その…当選しないようにしたいの」
「どういうことです?やりたくなければ立候補しなければいい話だと思うのですが」
怪訝な顔をしながら尋ねる。
「えっと、私が立候補したんじゃなくて、勝手にされててー」
ああ、こういう人間をあざといと言うのか。
こういう奴は本気で女子に嫌われそうだな。
ジャグリングみたいに男子を手玉に取ってそうだな。
もういっそジャグリングしたらどうだ。
前にSAAでやったら物凄い酷い目にあった。
1kg以上の重りがつま先に当たるんだもの、物凄い痛い。
「いたずらにしてもずいぶん手が込んでますね…立候補には三十人以上の立候補が必要だったと思いますが」
「そんなに!?よく集めたね」
「無論しでかした生徒はこちらで指導する」
地獄ですね。分かります。
「やりたくないなら選挙で落ちればいい…というかそれしか方法ねぇだろ」
「うーん…ただ、立候補が一色さんだけだから」
「となると信任投票ですね」
「信任投票で落選って超かっこ悪いじゃないですか」
それしか方法ないだろ。
かっこいい、悪いの問題じゃない。
ならやれや。
「応援演説をやるやつは決まってるのか?」
「いえ…」
「なら、簡単で手っ取り早い」
「えっと…どういうこと?」
「最悪、信任投票になっても確実に落選できて、そのうえ一色がノーダメで切り抜けられれば良い」
こいつなんざ致死量のダメージ与えたって何ともなんないだろう。
「要は一色が原因で落選したわけじゃないって事を皆がわかってりゃ良い」
「そんなことできるの?」
「応援演説が原因で不信任になるんなら誰も一色のことは気にしないだろ」
由比ヶ浜は少しの間固まっていたが、言葉を続ける。
「ねぇ、その演説ってさ…誰がやるの?」
「…………」
「そういうの…やだな」
「…出来る奴がやればいいんじゃねぇの?」
「そのやり方を認めるわけにはいかないわ」
雪ノ下が冷たく言い放つ。
なんでだよ。手っ取り早いじゃんか。
こいつが傷つこうが関係ねぇじゃねぇか。
賛成派だった俺は雪ノ下に懐疑的な視線を向けた。
「理由は?」
比企谷も同じく懐疑的な視線を向ける。
「それは…確実性がないからよ…それに、不信任になるような演説は一色さんにも迷惑が掛かるわ」
俺はありったけの不満をぶちまけたくなった。
「仮に不信任になったとして、再選挙なんてわざわざしないわ」
比企谷は彼女を黙って見つめている。
「それから…生徒会への関心が低いのだから結果だけでも誰も気にしないわ!その気になればいくらでも…」
「雪ノ下…」
「失言でした…撤回します」
クールダウンしたようだ。
「ほかの候補を両立して選挙で勝つしか方法はないですね」
「やる気のある奴ならもう立候補してるだろ」
「でも、やってくれそうな人に当たってみれば…」
「すぐ結論は出ないな…また後日にしよう…」
「はい…」
城廻先輩とあざとい女子は退出していった。
実は名前が出てこない事は秘密だ。
「平塚先生、少しよろしいでしょうか?」
2人の後に出ていこうとドアへ歩み寄る平塚先生に雪ノ下が呼び止める。
「今のところ勝敗はどうなっていますか?」
「勝敗?何だ?それ?」
「誰が一番人に奉仕できるか、人の悩みを解決できるかって勝負だ。
平塚先生が言い出しっぺだな…でも、忘れてるんじゃないか?
「勝ったら何でも言うことを聞いてもらえる」
「そんなものあったのか」
なんだ、じゃあ勝って奉仕部やめよう。
「そ、そうだな…ま、協力して事に当たる場合が多かったからな…」
忘れてたんですね。分かります。
「皆良くやってる感じだな…うん」
しばらく沈黙が続いていたが、雪ノ下らの視線に根負けしたように話し出す。
「四人の相対的な評価であれば、私の独断と偏見で決める事も出来るが…」
「それで構いません」
少し微笑んだのち話し出す。
「単純な結果だけなら比企谷が一歩勝る、もっとも、過程や事後の経過を考慮すると、雪ノ下が良かろう」
俺は何もやっていない。いい評価は期待はしていない。
「ともあれ、いずれにしても由比ヶ浜の貢献無くしては成り立たないものではあるがな」
「三上だが…彼は何とも判断しにくい。表沙汰になるような事をして来なかったからな…文化祭を除いてはな。だが、文化祭での功績は十分彼らにも匹敵する」
「つまりは勝負はついていないと?」
「そういうことだ」
「なら、私たちの意見が割れても何ら問題はないということですね」
「どういうこと?」
「私と彼は同じやり方をとる必要はないのよ」
「ああそうだな、お互い無理して合わせない方が良い」
「それで…解決するまで部活はどうする?」
「自由参加で」
良し、明日からは行かねぇ。
俺は鞄をこしらえ、比企谷の後に続いて出て行く。
「馴れ合いなんて私もあなたも一番嫌うものだったのね」
言葉を無視し、歩き出す。
さて、部活には参加しなくても良くなった。
あいつらに任せてバカ騒ぎするか。
身勝手な考えだが、俺の心は清々しい気持ちで満ち溢れていた。