やはり趣味を極めるのは間違っていないはずだ   作:hideo99777

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出口のない会議室

選挙から何日経ったかはもう覚えていない。

ここ最近はいつ辞めるかしか考えておらず、一日一日の記憶がない。

 

奉仕部は相変わらず何も無い。

いつになればボロを出すのか…

 

そんなことを忘れて俺はPS2のエミュレータで思い切り遊ぶ。

せめてゲームをやっているときは何も考えず遊ぼう。

 

完全に誰かの知らない世界に入り込んでいると、ドアがノックされる。

 

 

 

「せんぱ~い。やばいですやばいです」

 

吐き気を催す涙目の表情で一色が入って来る。

 

「一色、ちょっと…」

 

比企谷は一色と共に出ていこうとする。

だが、一色は俺の方を少し見やる。

そして俺は無言で財布を取り出しながら立ち上がり、飲み物買いに行きますアピールしておく。

 

 

 

「何の用だ」

 

俺は財布を手に持ったまま無表情で尋ねる。

 

「生徒会の活動のクリスマス会の準備を手伝って欲しいんですよ」

「どういう繋がりだよ…」

 

比企谷の意見は確かにごもっともだ。

だが、少し考えれば地域関係か他校との共同作業と言う所は判るだろう。

 

「向こうが言って来たんですよー。私たちがそんな面倒な事する訳ないじゃないですかー」

「どこの高校とやるんだ?」

 

 

俺はあくまでも声に感情を込めずに尋ねる。

こんな面倒な事を提案するスカした奴の居る高校はどこだろうな。

 

「海浜総合高校です」

 

ああ、あの折何とかとモブの高校か。

 

「それで、企画会議に参加して欲しいんですよ」

「企画会議にねぇ…」

 

まぁ確かに、俺にはまだ借りが残っている。

これが最後のご奉公だ。

 

「それ、奉仕部じゃなく個人での依頼でも良いか?」

 

比企谷が話し出す。

 

「はぁ…まぁいいですけど…実際先輩二人のほうが使い……頼りにしやすいんですよ」

 

使いやすいだろ、別に言い直さなくていいよ。

 

「じゃあこの後校門で待ち合わせしましょう」

「今日からやんの?」

「あまり時間ないんですよ…」

「じゃ、待ち合わせ場所は変えてくれ。一緒に帰って友達に噂されると恥ずかしいし」

 

比企谷、お前がその冗談を言ってもスベるだけだ。

世代のせいにしようとしても無理なレベルで。

 

「…まぁいいですけど…」

 

一色は何の返しもなくただ真顔で、その後冷たい声で言う。

お前の普段はそれなのはよーく分かった。だからその甘ったるい声は何とかしてほしいと思う。

切実に。

 

「コミュニティセンターって分かりますか?そこ集合で、後三上先輩はどうするんですか?」

「俺も現地集合でいい、ちょっとゲームしたいし」

 

一色は少し怪訝な表情を浮かべる。

なんにせよ俺は一旦家に帰らなければならない。

退部届を書くためだ。

 

そして、一色はいつもの調子に戻る。

 

「ではでは、よろしくでーす」

 

そう言い、滅茶苦茶な敬礼をする。

右手で合っているのだが、手のひらを左下方に向け、人差し指を頭の前部にあてがう。

これが一番有名な挙手注目礼のやり方だ。

お前はどこの共産主義者だ。

確かピオネールとかいう名前だったな。

 

 

 

共産主義者への軽蔑も一通り済んだ所で、俺達は部室へと戻った。

そして、椅子に座り、一息つく。

 

「いろはちゃん、何だって?」

「文句言ってたが何とか納得したらしい」

「…そっか…久しぶりにやれればよかったけど…」

「そのうち来るんじゃねぇの?」

 

雪ノ下は、どこか上の空な様子で言う。

 

「本当は依頼なんてないほうが良いかも知れないわね…」

 

俺はその言葉に静かな怒りと疑問が腹の中でもだくっていた。

じゃあ、今までの吐き気を催す時間は何だったのか。

俺がここまで心と体をボロボロにしてまでここで過ごさなければならないのはなぜなのか。

彼女はあまりにも無責任で、最悪だ。

ドブネズミに噛み砕かれて吐き出されたほうがましだ。

 

そして俺は、適当な嘘を吐き、部室を後にした。

 

 

 

 

 

 

退部届に必要事項を記入した俺は、重い足取りで玄関へと向かい、ドアを開ける。

玄関に立った途端嫌悪感を催す。

そして、イヤホンを耳に突っ込み、THE OFFSPRINGのHurting As Oneを思い切り大音量でかける。

外の音なんて何も聞こえやしないまま、コミュニティセンターへ到着する。

 

会議室へと音もなく入り込み、椅子に座る。

海浜総合高校の連中は、談笑しているのに対し総武高の生徒は椅子に座って、皆浮かない顔をしている。

 

俺はこの光景で、この問題の根の深さ、そして最後のご奉公としてのふさわしさを感じた。

もう最後ならどうなったっていい。危なくなればありったけぶちまけてやる。

 

 

 

俺は、誰にも知られないままこの会議で漂っていようとしたが、一色がぶち壊してくれた。

 

「僕は海浜総合高校の玉縄。生徒会長なんだ。よろしく」

 

「ども…」

 

比企谷が困ったように会釈をし、それに続いて俺は無言で会釈した。

 

「良かったよ、フレッシュでルーキーな生徒会長同士で企画できたし。お互いリスペクトできるパートナシップを築いて行こうと思っててさ」

 

のっけからストレートかよ。面倒な奴だな。

メイウェザーの様にでもなるつもりか。

そして、俺は頭の中でありったけの悪態をついた後、席に座る。

会議まであと何分だろう。

 

 

 

思案に暮れていると、会議が始まる。

さっさと終わらせよう。

 

「えー、じゃあ前回と同じブレインストーミングから始めていこうか」

 

あ?こいつ馬鹿か?

こんなメンツじゃ列挙した膨大な量の意見をまとめられない。

それに、絵空事ばかり見ていては、馬鹿を見るか誰かが苦労する。

こちらに面倒事が及ぶリスクを考えろ。自己保身が最優先だ。

 

「議題は、コンセプトと内容のアイデアだ」

 

そして、早速手が挙がる。

別に意見が出ないということでもなさそうだ。

 

「高校生の需要を考えると、やっぱり若いマインド的な部分でイノベーションを起こすべきだと思う」

「そうなると、コミュニティ側と俺達とのウィンウィンな関係を前提として築くべきだと思う」

「戦略的思考でコストパフォーマンスを考える必要もあるね」

 

内容薄っぺらい!

何これ?マジカルバナナじゃねぇんだよ!

つい規制もなしに名前出しちゃったけどさ。

じゃあ、何をするのかなんも言ってねぇじゃねえか。

イノベーション起こすんなら何すんだよ。

コストパフォーマンスったって何も金使うとこ言って無ぇじゃねぇか。

 

「皆、もっと大切なことがあるんじゃないかな」

 

玉縄の言葉で我に返る。

この生徒会長は少しは期待できるか少し見ておこう。

 

「ロジカルシンキングで論理的に考えるべきだよ」

 

やばい、吹き出しそう。

同じ事を二回繰り返してるだけじゃねぇか。

なんならオウムのほうが優秀だ。

ロシアの森でせいぜい爺と一緒にいるなり、段ボール好きの潜入してる蛇に食われるなりして来い。

 

「お客様目線で、カスタマーサイドに立つっていうかさ」

 

よし分かった。こいつの俺の中のあだ名はオウムだ。

ジブリじゃない方の。

 

そして、散々中身もくそも無い業界用語の飛び交う会議が終わった。

 

 

 

 

 

後日、俺はこれでもかというほどの胃への負担を心配しながらも、会議に出席する。

 

「企画がまだ固まり切っていないから、昨日の続きからやっていこう」

「せっかくだし、もっと派手にしたいよね」

「それ、あるあるー」

 

その言葉をきき、玉縄はキーボードを打つ。

一方俺はMac Proでちょっくら息抜きにゲームを。

副会長が怪訝な目で見ているが気にしない。

 

「確かに小さくまとまり過ぎていたかもしれないな…」

 

嘘つけ。まとまってねぇだろ。

ソビエト仕込みのパルチザンか、べトコン並みだ。

 

「俺何やるか分かんないんだけど?」

 

俺は最後の希望か、はたまた部の悪い運試しのような気分で一色に話しかける。

 

「まぁ、具体的にはまだ決まってないですからね」

 

今のなし。絶句して地獄の底へ落ちてった。

 

「ちょっと、規模を上げようと思うんだけど、どうかな?」

「あー……そうかもですねー」

 

その言葉を聞いた副会長はため息とともに項垂れる。

合掌。

 

「時間と人手も足りない。無理だ」

 

比企谷がそう漏らしたように俺に話しかける。

 

「そうじゃない。ブレインストーミングはね、相手の意見を否定しない。時間的問題と人員的問題で大きくできない。じゃあどうすればいいか。そうやって意見を発展させていくんだ。そう早々と結論付けちゃいけないよ。だから君の意見はダメだよ」

「お、おう…」

 

否定してんじゃねぇか、どこかのやらせのほこたてにでも出せるんじゃねぇか。

というかそれじゃただの独裁に等しい。

 

「どう可能にするかを考えよう」

「近くの高校をさらに入れるのは?」

 

おい、まさかそんな調子でうちの高校呼ばれたのか?

だとしたら糞喰らえだなお前ら。

 

というか、どうしてこう意識高い系の人は一緒にやりたがるの?

何?共産主義者?独裁者もいるしぴったりだな。

あいにく俺は根っからの反共産主義者だ。糞アカ共。

 

「いいね。地域コミュニティを巻き込むっていうかさ」

 

そして、比企谷は俺達総武高に発言権がないような状況下で口を開いた。

 

「これはフラッシュアイデアだが、さっきの提案のカウンターとして、2校のより密接な築くと共に連携をとることで、最大限のシナジー効果を期待する方がいいと思うが…どう思う」

「なるほど…じゃあ高校じゃ無いほうが良いね。大学生とかかな」

 

ヘマこいたな。比企谷。

 

「いや…待て…それだとイニシアティブが取れん。コンセンサスを得るにしても、具体的なマニフェストをサジェスチョンする事が出来るパートナーシップをだな…」

「お前、意味分かって言ってるか?遊戯王みたいになってるぞ」

「いや、俺も言っててよくわからん」

「分かんねえのかよ」

 

「確かに」

 

ん?いや、たぶん分かってない。小学校とか出してくるんじゃ…

 

「じゃあ小学校とかどう?」

 

PJ!てめぇ対地攻撃しない癖に余計なところまで気を遣うんじゃねぇ!

お前のせいでフラグを即回収じゃねぇか!

 

「ゲームエディケーションって言うのかな。ああいう風に楽しく作業出来れば、地域の小学生の力も借りられるんじゃないかな?」

「うん!それある!」

 

どれがだよ!このクソ○○○!

お前のせいで言えねぇ言葉口走りそうになっただろうが!

それと玉縄、お前の手の動き自重しろ。

 

「小学校へのアポイントとネゴシエーションはこっちがやるとして…その後の対応、お願いしていい?」

 

玉縄は一色に尋ねる。

 

「そうですね…うーん…はい!分かりました!」

 

俺は肘をついて、目を隠した。

項垂れて、ため息をつき、やり場のないこの怒りを鎮めることを最優先にした。

 

そして、地獄を存分に味わった俺は、帰ってやることが終わるとゲームもせずにすぐに眠ってしまった。

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