イヅナが斬る!   作:ちょめのすけ

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第一話「その名はイヅナ」

 

 

 

「――で、あれから二週間。どうしてアタシ達は喫茶店なんかやってるんだ? 教えてくれよイヅナ」

 

俺が厨房で色々と準備に勤しんでいると、カウンター越しに文句をつけてくる奴がいた。

金髪とグリーンの瞳を持つ北の異民族の出である少女、ドーヤだ。

 

「だから何度も言ってるだろう? 大事なのは拠点と情報、それを両方満たせるのがこの店だって」

 

この店の名前は『キツネのしっぽ』

俺が地位と権力を利用して建てた自慢の店。

帝都のメインストリートから遠くない所で、住宅街からも近い、スラムからも来られる位置。

つまり様々な客が来ることが出来るということだ。

秘密裏に動く為の情報収集には様々な人が集まる場所が必要だからな。

我ながらほぼパーフェクトな位置だ。

ちなみに店の裏手には家が建っており、ここの店員は全員そこに住んでいる。

拠点と情報、両方バッチリだぜ。

 

「いや、それは何度も聞いたけどさ。いつまで経っても動き出さないじゃない」

「まだ動くタイミングがないからなぁ。情報は着々と集まってはいるが」

 

そう、まだ動くタイミングではない。

幸運にも重要な情報を引き出せる客を既に何人か確保できているから、色々な情報が入ってはいるけどな。

しかし俺が妖術によって客の思考と少しの記憶を読み取って情報を集めているから他のみんなは知らない。

客もまさか記憶により情報が漏れてるとは思わないだろうから不審に思われる心配もない。

素晴らしい情報収集手段だ。

 

「いくらエスデス率いる北方征伐部隊でも制圧にはまだまだ掛かるだろう。慌てるなって」

 

ドーヤの焦りは分かる。

自分の祖国が攻められているのだ。気にならないわけがない。

しかしあれはもうどうしようもないし、俺達が帝都で一波乱起こすまでヌマ・セイカが頑張ってくれるかどうか……。

 

「むう……じゃあこれなんとかならない?」

 

言うことがなくなったのか、ドーヤは話を切り替えて自分の頭部と臀部付近に付けられたものを指す。

そこにあるのはキツネ耳とキツネの尻尾。

そう、それこそこの店の最大の特徴。

女性店員は全員メイド服にキツネの耳と尻尾を着用しているのだ!!

俺が普段は隠している耳と尻尾を出していても不審に思われないためのカムフラージュなのだが、既に一部の客層から熱狂的な支持を受けている。

それもそのはず、この喫茶店の店員は俺を除き美少女しか居ないからな。

うけるに決まっている。

そんな感じで店の調子はかなり快調だ。

とても開店二週間とは思えない。

 

「それはこの店最大の特徴でありメイン武器だ。絶対に外させないからな」

「はぁ……はいはい」

「それじゃあお前も働け」

 

そう切り捨てるとドーヤはぶつぶつと文句を垂れながらも仕事に戻っていった。

 

情報を集めるなら喫茶店より酒場をイメージする者が多いだろう。

実際酒場の方が都合が良いのは確かだ。

俺の妖術は完璧じゃない。

ある程度気を緩めている相手しか使えないのだ。

相手が酔っ払いならもっと多くの情報を読み取れるのだが、酒場を経営するには問題が多い。

 

一つは時間の問題。

秘密裏に動くなら動く時間は深夜だ。

酒場が賑わうのは夜だから、経営しながらは難しい。

それと、見た目の問題。

女性店員の方は一人の除いて三人が成人しているし問題ないのだが、問題は俺にある。

実年齢は200を越えているのだが……見た目は14歳程にしか見えないのだ。

銀髪に赤い瞳、身長は160程。我ながらとてもひ弱そうな外見である。

格好は白い小袖に緋袴。我が一族の正装らしい。遥か昔に母親から習った気がする。

窮屈な格好なので多少着崩したり改造したりしている。この辺では見ない格好なので目立つが仕方ない。

だがどう見ても子どもにしか見えないので、この姿で酒場を経営するのは些か問題がある。

妖術で姿を変えられるが……俺はこの店を本職にしたいからな。

本職で姿を偽る事はしたくない。

 

 

「ですがイヅナ、もう少し私達にも協力させてもらえないか?」

「既にここで働いてもらってるじゃないか」

 

今度は今まできちんと働いていたタエコがやってくる。

ドーヤと同じくグリーンの瞳を持ち、凛とした佇まいがカッコいい彼女。

しかし黒髪のポニーテールと薄紫のアホ毛、それにキツネ耳が合わさって頭の上が賑やかなことになっているな。

やはりこれは可愛い。

 

「しかし、私達は全員戦える力を持っています。例えば本職の方を手伝わせて――」

「ダメだ。戦力なら俺一人で十分」

「ですがここで働くだけというのは……」

「お前らは確かに強い。だが、必要になるまでは絶対に出さない。俺はお前らを大切にしたいんだ。分かってくれ」

 

貴重な俺のハーレム要員だ。絶対に失ってたまるもんか。

特に軍の仕事で使えば反乱軍に狙われる可能性がある。

軍に狙われたなら相手を始末すれば済む話だが、反乱軍の場合はそうもいかない。

反乱軍に入れば良いのだろうが、リーダーが俺では信用されないだろう。

だから俺達は独自に動く。

 

「イヅナがそういうなら……仕方ないな」

 

タエコは素直に引いてくれる。本当に良い娘だ。

 

カランカラン――。

入り口のベルが鳴る。

今日はじめてお客さんか。

 

「いらっしゃいませー!」

 

タエコが対応に出る。

彼女はこの店で一番仕事が上手い。

迅速で丁寧な対応が出来る上に周りへの気配りも怠らないからな。

ドーヤはあまり積極的ではないし、セリューは真面目で積極的だがちょっと雑な所があり、あまり向いているとは言えないだろう。

そしてもう一人はドジ踏むし……ってあれ、そういやさっきから見ないな。

 

まぁ、それはいいとしてお客さんだ。

来店したのはこの店の記念すべきお客第一号を飾り既に常連となっているお方、マインだ。

 

「イヅナ! いつものお願いね!」

 

ピンクのツインテールにピンクの衣装と派手で女の子全開な彼女であるが、実は今帝都を騒がせている賊、『ナイトレイド』の一員である。

勿論そのことがバレているとは当人は微塵も思っておらず、時間がえればこの店に通ってくれている。

彼女は決まってカウンターに座るので、俺が直接紅茶を注いで差し出す。

さて、今日はどんな情報が引き出せるだろうか。

 

 

 

「ひゃああああ!!!」

 

ガシャーン!

という何かが割れる音が悲鳴と共に奥から響く。

あぁ、この音はまたやらかしやがったな……。

 

恐る恐る音のした方へ向かってみると、案の定ドジッ娘のレムスが倉庫で材料棚をひっくり返していた。

元々雪のように白い髪と肌、薄い水色の瞳と色素の薄い彼女が、小麦粉を被ってさらに白くなっている。

 

「……なにやってんの?」

「ひゃうう……」

「いや、ひゃううじゃなくて……」

「すいません~~」

「いや、すいませんでもなくてだね……」

 

まぁ、いいか。

幸いまだ時間が早いし、厨房はタエコに任せて買出しにでも行って来るか……。

ついでに買っておきたいものとか色々あるしな。

 

「レムス、とりあえずここは片付けておいて」

「はい……」

 

レムスに倉庫の清掃を命じフロアに戻る。

 

「タエコ、すまんが買出しに行って来るからその間頼んだ」

「了解した」

「ちょっと! 私来たばっかりなんだけど!?」

「あー、すまん。文句ならレムスに言ってくれ」

「あのドジッ娘またやからしたの!?」

 

マインは既にここの店員達とも仲が良く、割りと馴染んでいる。

まぁレムスのドジによく巻き込まれるので、話すようになったのだが。

 

フロアを通って店を出る。同時に耳と尻尾を隠す。

まだ朝ということもあり人通りはそこまで多くない。

さてと、早めに戻りますかね。

 

 

 

 

 

 

買出しを終え、両手を頭の後ろで組んで鼻歌を歌いながら店に戻っていると、面白そうなやつを見つけた。

あの足取りは確実に帝都にロマンを求めてやってきた田舎者。

それ自体は珍しくもないのだが、纏っているオーラから面白そうな匂いがプンプンする。

 

「そこの少年」

 

思わず声をかけた。

 

「ん? ってお前の方がガキじゃねぇか」

 

振り返った少年が漏らす。

まぁいつものことだ。気にしちゃいけない。

 

「まぁ気にするな。ところで、見たところ地方から来た仕官希望者みたいだけど……違うか?」

「!? 何故分かった!?」

「挙動不審な足取りと手持ちの武器、纏っている雰囲気でなんとなく……な」

「帝都の子どもは凄いんだな……」

 

いやそんな子ども居たらこえーよ。

 

「んで、右も左も分からず迷っている……と」

「全くその通りだ」

 

うんうんと頷く少年。

もうすっかり、俺を信じてるな。

こんなホイホイ人を信じちゃう奴大丈夫か。

 

「とりあえず仕官ならここから真っ直ぐ行ったあの建物を右に曲がって暫く行くと軍の施設があるからそこへ行くといい」

「なるほど。帝都の子どもは軍事施設にも詳しいのか。サンキュー」

 

だからそんなわけないだろうが。

 

「帝都は広いが、また会うかも知れんな……名前を教えてもらえるか?」

「俺か? 俺はタツミって言うんだ。いずれのし上ってやるから覚えておくんだな!」

「そうか。俺はイヅナだ。覚えておいて損は無いと思うぜ」

 

タツミ、か。

こいつなら間違いなく審査は通るだろうし後で捕まえておくか。

 

「それにしても……」

 

タツミが俺をまじまじと見つめて呟く。

 

「帝都では変わった格好が流行ってるのか?」

 

田舎者にまで言われたよ畜生。

 

「これは俺の出身地特有の服装でな……」

「ふーん、そうなのか。それじゃ俺はそろそろ行くわ。ありがとなー!」

 

タツミはそれだけ言うと走り出した。

落ち着きがない。帝都の華やかさに浮かれてやがるな。

無事に審査を通ればいいが……心配になってきたぞ。

 

 

さて、そろそろ客も増えるだろう。

急いで店に戻らなければ。

 

 

 







皆様は初めまして。
ちょめのすけと申します。

小説を書くというのは殆ど経験がないので指摘アドバイス等ありましたら遠慮せずにお願いします。


さて、この作品ですが基本的に原作と時間軸を合わせた上で、違う組織の話をしていきます。
が、ナイトレイドやイェーガーズとは良く絡む予定なので、あまり気にならないかもです。
今回登場したキャラは主人公であるイヅナを筆頭に6人。
本編御馴染みのタツミとマインに加え、零に登場したキャラクターであるタエコとレムス。
そしてクロメの骸人形として本編に登場しているドーヤですね。

ドーヤは喋っているシーンがないので性格は完全な想像。
レムスは色彩が不明なのでこちらも想像で補完。
こちら側でまともに原作キャラと言えるのはタエコぐらいでしょうか。
名前だけ出してますが残り一人はセリューちゃんです。

ハーレム形式っぽい何かなのでキャラはドンドン増えていきます。


この作品はアニメ、又は原作コミックス(本編、零両方)既読を前提として作られているので読んでない方は多少分からない所が出てくるかもしれません。
出来るだけ補うつもりではありますが、何分作者は素人丸出しなので分からなかったらすいません。

それと、作者もコミックスでしか読んでいないためガンガン組の方々はネタバレ禁止でお願いします。

亀の不定期更新ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。


それでは今回はこの辺で。


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