数分間薄暗い森の中を歩くと多少ひらけた場所に出る、そんな場所に家が一件だけ存在していた
「ようこそアリッサ、ここが私の家よ。さぁ、あがってちょうだい」
「お招きいただき恐縮にございます。では、失礼を」
私は靴を脱ぎ、懐からもう一組の靴を取りだしそれに履き替える
「あら、別に履き替えなくてもそのままあがってもらっても構わないわ」
「いやなに、私の考えた配慮でして。外出用と屋内用にと分けて履き替え、家の従者たちの掃除の負担を少しでも減らせるようにと考えたんだ」
「へぇ、従者が居るってことは屋敷にでも住んでいたのかしら?」
「山の中にポツンと建っている小さなお屋敷です。しかし、自然が豊かで心地の良い場所です」
雑談を終えて屋内用の靴に履き替えて中に入る。家の中は整理されて落ち着いた内装になっている
棚にはさほど多くないが本が数冊に裁縫道具等も置かれていた
「今、紅茶を淹れるわ。お砂糖かミルクはいる?」
「ストレートで頼む」
「分かった。座って待っててちょうだい」
台所に向かいお茶の準備をするアリスと上海
私は席に着き、トップハットを頭からとり膝の上に乗せ紅茶を待った
先程から言わないようにしていたがあちらこちらに上海と同じような小さい人形たちが各々で掃除や道具の整理をしている
まさか、独自に動ける人形をこんなに作っているとはアリスはかなりの才能を持っているな。それに比べたら私は・・・はぁ~
ため息を吐きながらじっと待っていると
「ホラーイ」
「ん?」
私の横から上海とは違う喋り方をする赤い人形がやって来た
「どうしましたお嬢さん?」
「ホラーイ」
人形は低空になり、私の膝の上にあるトップハットのつばを掴みクイクイッと引っ張る
「興味があるのかな?はい、どうぞ」
「ホラーイ」
トップハットを渡すと人形は玄関付近にある木製のコートハンガーに引っ掛けきた
どうやら帽子や脱いだ上着の類はあそこに掛けてもいいようだ
「ありがとう。女性の手を煩わせるのは少々心苦しいが感謝するよ」
「ホラーイ♪」ナデナデ
お礼の言葉とお詫びに頭を撫でてあげると彼女は嬉しそうにしていた
「もう蓬莱とも仲がよくなったのアリッサ」
ティーカップとポットを持つアリス、その後ろからはクッキーの乗ったお皿を運ぶ上海がいた
「蓬莱という名前なのか。はじめまして蓬莱、私はアリッサという者だ。お見知りおきを」
「ホラーイ!」
私の自己紹介に答えるように蓬莱は返事を返した
紅茶をカップに注ぎ、私の前に置いたアリスも席に着く
私は紅茶の入ったカップを持ち、すぐに口に運ばず鼻に近づけまずは香りから堪能した
しばらくしてから音を立てずに少量を口に運ぶ
「んー・・・香りだけでなく味わいもいい、それに熱すぎず、しかしぬるくもないこの丁度よい温かさ。流石ですアリス」
「別にこだわっているわけじゃないのだけど、お口にあってよかった。アリッサもお茶を淹れたりするの?」
「えぇ、大抵は従者たちに任せますがたまに自分で淹れて飲んだりしています。私は紅茶には何も入れず今までずっとストレートしか飲んでいませんでした、その方が今日はどんな出来になったかすぐ分かりますし楽しいんです。アリスは?」
「私は気分によるわね」
お互いにそんな話をしながら二人は静かなでも楽しい小さなお茶会を楽しんでいた
そしてアリスは間をみて本題に話を変えた
「アリッサ、そろそろ貴方が置かれている現状を話すわね」
「おっと、そうでした。それで此処は何処なんです?貴方の外来人という言葉から推測するに私は元居た国から違う国に来たようにと考えますが?」
といってもこの推測もただ外来人というキーワードから考え出した答えでしかない
違う国によっては似ているような言葉が実はどちらも違った意味で使われているなどよくあることだ、生活や文化によっても些細な言葉に大きな意味を持っていたりする
「まず、此処は幻想卿と呼ばれる人間と妖怪が共存している世界よ。外の世界、いわゆる貴方が居た世界から隔離されその世界からやって来た人たちを私たちは外来人とよんでいるの」
「幻想卿、人間と妖怪、外の世界、隔離されたこの場所、そこに来た者を外来人と呼ぶ・・・・大体は理解出来た、しかし外来人という言葉があるという事は隔離されているこの幻想卿にやって来る者は少なからず居るのではないかな?」
「えぇ、本当に時々だけどやって来る者はいるわ。その大体が八雲紫というスキマ妖怪が連れて来るか、もしくは外の世界で“忘れ去られて”幻想卿に入るかこの2択ね」
「・・・はぁ、覚悟はしていたがそういう事か」
「そうね、一体スキマ妖怪は何を考えて貴方を連れてきたのかしらね。まぁ、面白半分に連れて来たのでしょうけど」
「いや、アリス。違う、それは違うよ」
カチャッとティーカップをテーブルに置いてから私はアリスにいつもより低い声で俯いたまま言った
アリスもいきなり声が変わったアリッサに半心驚きながら聞いてきた
「どういう事?貴方が忘れ去られるような理由があるの?」
「私はね・・・同じなんだよ」
「な、何と?」
「・・・君の作った彼女たち。そう上海や蓬莱、その他の人形と同じように」
顔を上げて、私は真剣な表情で彼女に告げた
「僕はとある魔法使いに“創られた人形”なんだよ」