アリスSIDE
「・・・え?」
彼は私の想像もしない、いや、想像も出来ないような言葉を口にした
何処からどうみても只の人間にしか見えない筈の彼が上海たち同じように作られた人形?
私はこの答えだけはどうしても信じられなかった。信じられないと思わせる程の根拠があるからこそ信じようと思えない
「う、嘘でしょアリッサ?貴方が人形なんて・・・だって貴方には」
「“魔力”が見えるから、ですか?それを言ってしまった上海も蓬莱も貴方の魔力供給のおかげで糸(支え)が無くても動けるのでは?」
・・・やはり、彼は外来人でありながら魔法を知っている
初めて会った時も私が魔法使いと言っても何も反応しなかった、その後から現れた上海の方に気が行ってしまったからとも思ったけど彼は幻想卿に来る前から魔法という存在を知っている
「でも、今この場に貴方へ魔力供給をしてくれる魔法使いはいない。例え貴方に魔力を与える者が居たとしても理論的に考えて今の貴方へ魔力を送れる範囲には私以外には誰もいない、そんな中で仮に貴方が人形であるならもう動ける筈はないわ」
私は今まで得てきた知識を持って分析した結果を彼に提示した
確かに上海と蓬莱も元は他の人形と同じなのは確か。でも、私の編み出した術式を組み込み魔力供給をすることによって上海たちは普通の人形とは違い言葉も話すし近くにいれば好きに動ける
もし、それと同じもしくは近い方法で彼が動いているなら今この辺りで私以外の魔法使いがいない中で彼がずっと動ける筈がない
ましてや、彼は私の目の前で紅茶を“飲み”、菓子も“食べた”
物である人形には空腹という概念は存在しない
「ふふ、口で言っただけでは信じてもらえないのは当然の事。では、あまり気は進みませんが証拠を見せるとしましょう」ガタッ
アリッサは立ち上がって私に背を見せながら何かを始めた
プチ・・・プチ・・・
微かに聞こえる小さな音が聞こえてくる
一体何をしているの?音からして何かをはずしているような音に聞こえなくもないけど・・・
バサッ
「え?」
彼は突然、上着を脱ぎ捨てた
そしてまた何かを外す音が鳴り始め、首に巻かれたネクタイも外し・・・ま、まさか
「あっ、アリスさん。出来ればあまり見ないで下さいね、人形でも“元人間”ですから羞恥は微妙にありますから私も」
「ッ!!///」バッ!
彼は私の目の前で衣服を何の抵抗もなく脱ぎ始めた!
私はとっさに後ろに振り向いて見ないようにした!い、一体彼はなぜ服を脱いでいるの!?人形だと信じてもらう事と服を脱ぐことに何の関係性があるの!?
「シャンハーイ///」
「ホラーイ///」
「二人とも、そんなまじまじと見られると普通に恥ずかしいのですが、女性なのですから恥じらいは持たないと。ほら、アリスを見てみなさい、あれがこの状況で女性がする正しい反応ですよ」
上海と蓬莱は何をしているの!!
というか、普通に恥ずかしいのに今の私の反応が正しいと上海たちに教えている貴方は本当に羞恥心ってないの!?
「しゃ、上海!蓬莱!こっちに来なさい!」
「ほら、お呼びですよ」
「・・・シャンハーイ(´・ω・)」
「・・・ホラーイ(´・ω・)」
何故か私の元に来てから元気がない二人
術式に問題がありそうね。あとで異常がないか見ておこう、そうしよう
「アリス、私の本から鍵を取ってくれませんか?表紙を開いた所にあるので」
「?、分かったわ」
テーブルの上にある彼の本の厚い表紙を捲ると表紙の裏に一本の鍵があった
形はシンプルな丸い輪っかのある鍵だ
「さて、準備は良し。その鍵をください」
「え、えぇ」
衣服を全て脱ぎ、上半身は丸裸になったアリッサ
しかし、特に表情は変えずいつも通りにこやかな表情のまま私の差し出した鍵を手に取る
「ッ・・・か、鍵穴?」
一目見てすぐ気づいた
彼の左胸、位置的に心臓があるであろう場所に鍵穴が確かにあった
「開けるのは十年ぶりか二十年ぶりかな?では、ご覧あれ」
カッ、カチャ!
左胸にある鍵穴に鍵を差し込み、抵抗もなく勢いよく回す
鍵が開いた音を確認し、彼は差し込んだままの鍵をゆっくりと引っ張る
ギ、ギィーーー・・・
重い木の扉を開けるような軋む音と共に左胸が開いた
「・・・なに、これ」
中にあったのはとても人間が持つものとは思えない物だ
中の回りは確かに木で出来た壁のようだが、私が一番目についたのは丁度中心にあるもの
上下から少し大きな筒状の物が伸び、その真ん中に黒く四角い箱がある
通常はそれだけしか無いように見えるが黒い箱からは無数の糸が伸びていた、普通の人なら見逃していたかもしれないけど私のような人形使いならこの程度の細い糸なら見逃すことなどない
「糸に魔力が流れてる・・・この箱から?」
「そう、これが私が一人で動ける装置であり、私という人間の体から人形に創り替えた魔法使いの最高傑作のようなもです」
・・・無茶苦茶、出てきた言葉はソレだけ
人間の体から人形に作り替える?そんなの不可能を通り越して狂っているとしか思えない。仮に出来るとしても実験をしないで出来るわけがない!だとすれば、彼の前にこれを完成させる為に実験体になった人が居たとしても・・・うっ!
口を塞ぎ、吐き気を抑えるが想像するだけで悪寒と気持ち悪さが込み上げてくる
こんな事、人形を作るものとしてましてや魔法使いとしても度を越えている。許される事じゃない
「この装置は私が口にした物を魔力に作り替え、作り出した魔力がこの無数の糸に渡っていき私の骨組みを支えてくれるのです上から出ている筒から食べた物が箱に落ちていき、下からの筒は此処からは見えませんがバラバラに別れ関節部分や脳、いや脳を模したカラクリなどに行き最も魔力が行くように作られた、いわばパイプです」
「これは・・・魔法使いとしても人形使いとしても認めたくないけど、気にならない訳では無いのが魔法使いとして悲しい性かしら。確かに人形だと分かりやすい関節の部分も全て上手く隠せてる、普通なら誰も人形だなんて思わないわね。でも貴方の肌の感触は堅くなく柔肌の感触だけどこれは・・・」
「皮膚さ。私が人間だった時の皮膚をそのまま使っている、これも魔力のおかげで腐ることはない。私から魔力が見える主な原因がこれさ。因みに鼻や耳など骨が必要無い部分は生身をそのまま使っている、血を全て抜き魔力で守っているから萎れる事もないのさ」
「骨が無い部分は生身・・・ね。ん?」
あれ、確かアリッサは男よね?女性で骨を必要としない箇所と言った鼻と耳以外は胸くらいだけど、男性はさほど骨を必要としない箇所ってあまり無・・・あ
「ん?どうかしたかなアリス?」
「い、いえ・・・何でもないわ」
「?」
そ、そうね。そこは必要無いけど・・・まさかね
「さて、信じて貰えたかなアリス?」
扉を閉じ、鍵を閉め、鍵をもとの場所にしまい本を閉じた
「えぇ、ありがとう。貴方の言った事は信じるわ・・・アリッサ、あの」
「では、改めてもう一度自己紹介しようアリス。とある魔法使いから創られたもっとも新しい人形
『人間のような人形(ヒューマンドール)』
アリッサ
お見知りおきを」
胸に手を当てながら頭を下げるアリッサ。初めて挨拶した時よりも静かな声で言った
・・・これ以上、詮索はしないでおこう。もしかしたら、いつか彼から話してくれる筈だと信じて
「えぇ、改めてよろしくアリッサ」
長い時間の中で話した彼の秘密の一部
すでに日は傾き、まだ温かかった筈の紅茶は冷めきっていた
主人公の設定はそのうち書きます