大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

12 / 60
一言……滝崎の語りは熱くて長い!


12 226始末と昭和天皇

2月26日 帝都 宮城(皇居)内

 

 

 

「…………………ねぇ、これ、どう言う訳??」

 

 

「阿呆! 私もわからんわ!」

 

昭和最大の武力事件である226事件がある今日………なにもおきなかった。

それもそのはず、滝崎の告発を受けた東久邇宮殿下、前田侯爵、石原大佐が憲兵隊を使って捜査した結果、中心人物となる陸軍青年将校と民間協力者を事前に拘束した。

こうして、226事件は防がれた……のだが、高松宮殿下から呼び出しを受けた2人はこうして皇居に来ていた。

 

 

「呼ばれて来てみれば、いきなり皇居に連れて来られて……うん、わからん」

 

 

「まさか、陛下の身に何かあったか?」

 

「松島宮、それは冗談でもヤバい」

 

そんな会話を交わすうちに高松宮殿下が東久邇宮殿下と共に部屋に入ってきた…後ろから昭和天皇を連れて。

2人は慌てて立ち上がり、直立不動になる。

 

 

「よいよい、今回の一件で1番の功労者だからね。さあさあ、座りたまえ」

 

 

「「は、はい」」

 

今上天皇に勧められては応じる訳にはいかず、2人は座る。

 

 

「さて、松島宮徳正王…いや、徳子だね。様々な事情がありながらも若い身で軍務に就くこと、朕としてはとても誇りに思う」

 

 

「え、あ、い、いえ、皇籍の末席の末席の更に末席とは言え、皇国の為に軍籍に入るは慣わしですので」

 

 

「その事に関しても色々とあったであろう。だが、それにもめげず、皇家の役目を果たさんとする貴殿は誉れである」

 

ガチガチに固まりながら話す松島宮に昭和天皇は微笑みながら言うと滝崎の方をみた。

 

 

「そして、滝崎正郎君。君の事は先日、東久邇宮から今回の一件の報告で聞いた。君のお陰で永田少将をはじめ、多くの臣民、重臣達を救ってくれた事に礼を言いたい。ありがとう」

 

この時、滝崎は自らが日本人である事を再認識した。

あの昭和天皇に礼を述べられる…これ程、身を震わせる事はない。

しかし、故に言わねばならなかった。これがまだ小さな一歩でしかない事を…。

 

 

「陛下、感謝の御言葉、大変ありがたく感じております。しかし、これはまだ序の口です。ようやく、陸軍部内の内部闘争を収束させたにすぎません。ですが、これから、この日本に降り掛かる災いは一歩間違えれば取り返しのつかない破滅の道へ向かうものです」

 

 

「それは重々承知している。だからこそ、私にも聞かせてくれないかね? これからの日本が歩む道のりを」

 

昭和天皇の言葉に滝崎は頷くと語り始めた。

 

 

 

何度も著名な偉人に話した内容とは言え、流石の昭和天皇に話すとなると緊張の他にも混ざって、若干困った。

しかし、滝崎も予想していた通りの反応だった。

盧溝橋事件・第2次上海事変で始まった支那事変、それに伴うアメリカ・イギリスとの関係悪化、開戦からソロモン消耗戦までは静かに聞いていた。

だが、通州事件や末期戦の話になり、神風特攻やサイパン・沖縄での悲劇、本土空襲、原爆投下、敗戦と引き揚げの中での悲劇……これらの話では明らかに憤慨していた。

戦後になり、焼け野原からの復興とそこからの発展には素直に喜んでいた。しかし、話が冷戦とこれに絡んだ数度の安保闘争、そして、歴史・政治・外交問題になると再び憤慨、特に取り戻せぬ領土よりも国の骨幹とも言える奪還出来ぬ拉致被害者や東日本大震災の対応には怒りを抑えていたらしく握っていた拳が震えてさえいた。

全てを語り終わった時、滝崎が見た昭和天皇は明らかに憔悴しきっていた。

 

 

「……確かに我々の行動によって民には犠牲と破壊をもたらし、未来の子孫達には多大な迷惑を掛けた。無論、言い訳を言うつもりはない…だが、我々の行動は民族生存と子孫達の良き未来への歩みを守る為のものでもあったが……我々の行動は間違っていたかな…」

 

忠臣を殺され、自ら近衛師団を率いて鎮圧に乗り出そうとし、終戦では自らの身さえ捨てる覚悟で御聖断を下した昭和天皇とは思えない落胆ぶりに滝崎は思わず声を張り上げた。

 

 

「何をおっしゃいますか、陛下! この時代を生き、戦い、未来の為に自らを犠牲にする決断を下した貴方方に責任はありません! いえ、それどころか、民族の矜持を捨てず、奴隷の平和に甘んじず、真の自由と幸福、未来への戦いを果敢に挑んだ日本は70年経って尚も世界が賞賛しています。もし、責任があるのならば未来の子孫たる私を含めた自分達です!! 我々が貴方方の戦いを、決断を、犠牲を誇りに思わず、正当・冷静な評価を下さずに悪者の行為とその結果だと見捨て伝承を怠った結果が70年後の未来です!!」

 

……本人も気付かぬ内に立ち上がり、周りも忘れて熱弁を振るっていた。

 

 

「世界は日本の行動の正当性を知っていますし、そして、その結果、白人相手に人種戦争を挑み、世界情勢をひっくり返した日本の行動は世界が賞賛しています。アジア・アフリカ諸国は果敢に挑んで負けながらも有色人種の力を見せ付け、独立と地位向上に寄与した日本に感謝しています! 対して、自分達はどうか? 未だ『侵略戦争』の呪縛から逃れずに普通の国家の行動が取れない! 国民すら救えない! 先人である貴方方の犠牲を再び繰り返す事態が迫っているのに軍隊は使えない! 話し合いで解決出来ると無知蒙昧な事をほざき、自国民より他国民を優遇せよと馬鹿な事を言う! 政治家やマスコミが他国の手先になり、政権を取った挙句に国民を見捨てる! 貴方方の苦悩を、犠牲を忘れ、連合国から与えられたと勘違いした繁栄を享受しながら日本を嫌い、貴方方に文句を言う奴らを殴りたいと何度も思いました! そんな様相になっても未だ自分が日本を好きで誇りに思うのは貴方方がいたからです!! だからこそ、悲劇を防ぎたい! 歴史を変えたいんです!!」

 

そこまで言い切り、漸く気付いた……自分達のヒート振りに。

 

 

「も、も、も、申し訳ありませんでした!! 平にご容赦を!!」

 

素早く頭を床に付けて土下座する滝崎。

 

 

「わかった、わかった。お前の熱い想いはよーーーーーく理解出来たから少し黙ってろ…陛下、末席の私が言うのもなんですが、滝崎の言葉は本当です。身近にいるからこそ、この者の想いと行動は理解出来ます」

 

 

「いや、私も滝崎君の話を聞いて弱気になってしまった……問題はこれからだな。高松宮、東久邇宮、滝崎君をサポートし、この先の戦いに勝ってくれ。必要なら、私も出よう。先ずは支那での悲劇を防ぐ事だ!」

 

 

「「「「わかりました」」」」

 

 

次号へ




ご意見ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。