大逆転! 大東亜戦争を勝利せよ!!   作:休日ぐーたら暇人

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お久し振り……なんて言えないぐらいの久しぶりの更新です。
終戦記念日ですので、此方を更新致します。

英霊の皆様、ありがとうございます。安らかに。



主力作品のここ数ヶ月の更新出来なかった理由はコロナを含む生活リズムの激変とスランプが原因です。

今回の話はオリジナルです。


18 討論会

2月6日 上大崎 海軍大学校兵棋演習室

 

この日、空母航空隊を中心とした海軍航空隊(基地・教育隊を含む)の各指揮官・参謀ら現場側、艦政本部を含む軍政機関側、オブザーバーとして中島知久平社長や堀越二郎をはじめとした航空技師・関係者が参加した意見交換会が行われていた。

そして、意見交換会は開始1時間もしない内に白熱したモノになっていた。

 

 

(…まあ、仕方ないと言えば仕方ないけどさ)

 

上座に座る松島宮の隣に控える形で椅子に座っており、ある意味第三者視点で意見交換…と言う名の議論を見る滝崎は内心で苦笑いを浮かべ、呟いた。

実際、主に空母航空隊関係者が『これからは全金属機が主力になるから、大型空母の量産だ!』と言えば艦政側は『大型空母は金と時間と物が掛かる! 良くて中型空母の量産が理想だ!』と返し、それを起点に互いの論争へと発展していた。

無論、これに関しては互いに正しい。

現場派の航空隊からすれば大型正規空母に多数の艦載機を搭載し、大兵力で攻撃すればいいのは子供でもわかる話だ。

対して、軍政派の艦政側からすれば、数が有れば強力なのは承知しているが、その数を揃えようとすれば大型正規空母は建造期間も消費する資材や金も膨大な為、小回りが利いて消費が抑えられる中型正規空母や適合する既存船舶の改造空母にしたいのも計算が得意な子供なら分かる話だ。

しかし、悲しかな、資源と国力が少ない日本においてはリソース選択が必要であって、『どっちかに決めないと成り立たない』のである。

 

 

(にしても、軍政代表の山本次官も、現場代表の堀司令も互いに言わせるだけで介入しないのは…まあ、先ずはガス抜きなんだろうな)

 

開始早々の激論も流れに任せる盟友な山本次官と堀司令。

そして、互いに言いたい事を吐き出し尽くした両者が一息吐いた時に山本次官が動いた。

 

 

「諸君らの貴重な意見は全て聞かせてもらった。無論、どちらの主張も一考の余地があるものばかりだ。しかし、少し視点が違う者の意見も聞いてみようじゃないか」

 

手を叩いてそう言うと山本次官はワザワザ滝崎の所までやって来てから、松島宮に一礼した。

 

 

「少しよろしいでしょうか?」

 

 

「構いません。お好きにお使い下さい」

 

ニヤリと笑う山本次官、ニコニコと笑う松島宮。

このやり取りに滝崎は内心苦笑いを浮かべる…なんだよ、裏で段取りしてました的なこの茶番劇の様なやり取りは。

 

 

「さて、ここに居る全員が初見であろうが、彼、滝崎正郎君は高松宮殿下の代理人である松島宮殿下の付き人となったいるが、それは事実でもあるが建前だ。彼が今から語るのは諸君らの意見に答え、更に諸君らに新たな悩みを生み出す事になるが拝聴してくれ」

 

最後にウィンクする山本次官とヤレヤレと言いたげな堀司令を見ながら滝崎は死刑台に立たされた感覚を覚えた。

 

 

「…ご紹介に上がりました、滝崎正郎です。これからお話する事は日本の運命を左右する事になりますので、冷静にお聞き下さい」

 

 

 

時間を掛けて全てを滝崎が語り…時々、感情的になった人間が居たが全てを知る山本次官や堀司令が制してくれた…終わった時、室内はまるで葬式の式場の様な重い沈黙の場になっていた。

そして、山本次官や堀司令、松島宮以外の人間の顔はある者は絶望感、ある者は魂が抜けた様に、またある者は顔を真っ青に、そして、またある者は反対に怒りで真っ赤にしていた。

 

 

(……これ、後で俺、殺されるんじゃあね? いや、予想は出来てたけどさ…)

 

長い沈黙と場の空気が空気だけに「やっちゃったか?」と滝崎が思わずにいられなかった時、隣に控える主人が立ち上がる。

 

 

「何を絶望しておるか! いま、ここに居る皆が次の大戦では現場や組織の中心になる者ばかり! 滝崎がこの場で話す事を我が許したのは皆に絶望を与える為では無い! 迫る悲劇と絶望を跳ね除け、問題点を解決し、日本が生き残る手段を考える為であるのだぞ!」

 

そう松島宮が一喝すると、オブザーバー陣の中から手が挙がった。

 

 

「松島宮殿下、発言してもよろしいでしょうか?」

 

 

「中島社長か。我に構わずともよいぞ」

 

手を挙げたのは中島知久平社長だった。

 

 

「では…滝崎君、軍艦にしろ、軍用機にしろ、そのアメリカの生産数を我々が超える事は可能と思うかな?」

 

 

「正直に申しますと無理です。航空機だけを取れば中島社長はご存知の通り、御社はアメリカ式のベルトコンベア式組み立てライン方式。例え他の航空会社の生産ラインを中島式に変えても、航空機の部品や組み立て、その手法確立に時間を取ります…そもそも、人も物資も工場の数も圧倒的過ぎますね」

 

 

「…ですな」

 

政治家でもあり、元海軍(機関科)士官だけあって中島社長は直ぐにそこが計算出来た様だ。

 

 

「ならば、次期海軍艦上戦闘機の一件はどうしますか? 海軍さんからの要求はある意味無茶が多過ぎます」

 

色々と溜め込んでいたであろう堀越技師が吐き出すかの様に言った。

 

 

「だが、長距離戦闘機は必要だ。どう転ぶにしろ、護衛も無しに陸攻を突っ込ませるなんて出来んぞ。話にも出たが、頑丈が売りのアメリカ重爆でさえ、護衛無しでの空襲は被害が多かった訳だしな」

 

 

「うむ、陸攻の搭乗員も数多の金と長い時間を使って育てた者ばかりだ。陸攻の防御力にも限界がある以上、長距離戦闘機は必須だ」

 

ここで現場である大西瀧治郎と教育隊の市丸利ノ助が発言した。

 

 

「だが、先の話によると、空母をどう守るんだ? 次期艦上戦闘機…零戦の初期型は急降下性能で四空母を守れなかった事になるぞ? 無論、空母にも各種装備は施すが…それも限界がある」

 

艦政側からも声が上がった。

 

 

「それに関しては面倒かもしれませんが、護衛機と迎撃機の二本立てにするしかないでしょう。しかも、早急に…滝崎君の話が本当ならば、5年後に本土空襲の練習、7年後には本番が控えています」

 

堀越技師が苦い顔で言った。

そこから先は現場・軍政、軍官・民間の垣根を踏み越えての本格的な論争の場になった。

 

 

「……やっぱり、ヤバい事になっちゃったな」

 

 

「何を他人行儀な事を言っておる。お前もあの渦中に行って知恵を貸してこい」

 

そう言って松島宮は無防備な滝崎の背中を押し、三者論争の渦中へと放り込む。

そして、放り込まれた滝崎は瞬く間にその論争の渦中に飲み込まれた。

 

 

 

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