「ひゃっ!」
「あっ……すまん。驚かせたか」
幽霊ならば驚かせるのが普通なのだろうが、残念ながら俺にはそんな趣味はない。
つか、趣味だとしても、そんなことをしてる場合じゃねぇよなぁ……。
「えっと……君、名前は?」
驚かせといて名前を聞くのもどうなんだろうなぁ、と思いながら聞いてみた。
意外と、女の子はすんなり教えてくれた。
怯え顔付きで。
「ソ、ソフィア……」
「ふむふむ、ソフィアちゃんか。中々上品そうなお名前で」
何となく、ソフィアって名前はきれいな人ってイメージが付いてるんだよなぁ……何でだろう。
「…………」
ソフィアちゃんが、なんか、ものっそい顔が赤いんだが……照れてる?
可愛いって言われたら照れるのか……?
あ、照れるわ。俺もかっこいいって言われたら顔を赤くする自信がある。
そんな日は一生来ないだろうがな! 髪型も顔もぱっとしないし!
「んで、えーっと、ソフィアちゃん。俺みたいな人を、普通に皆は見ることが出来るのか?」
聞いておきたい質問をソフィアちゃんに飛ばす。
この子にしか見えない、ということがあるかもしれないから。
「……うん、皆、言っても信じてくれないの。だから、多分、見えないと思う」
「そっかぁ~……幽霊っつったらそんなもんなのかぁ……」
やっぱり、幽霊は幽霊だったようだ。
……あーあ、友達増やしましょう計画なんて、夢のまた夢だな。実行する気はないが。
「……でも、あなたみたいなゴーストさんは、初めて会ったかも」
「んん? どういう事?」
幽霊じゃなくてゴーストのようです。
しかし……俺みたいなゴーストに初めて会ったとは、どういう事なんだろ。
「だって……他のゴーストさんは、人のパンツを覗こうとしたり、イタズラが大好きなんだもの」
……それ、絶対おっさん、だよな、ロリコンっつぅド変態の。
「うん……ロリコンだな、そいつら」
「ロリコン……って、何?」
「知らなくていいです、ええほんと」
純粋な瞳をこちらに向け、首をかしげるその姿。
そんなの見たら、教えられないじゃないですかっ!!
「そ、それより、俺がド変態っていう可能性が有るのに話しかけたのか?」
「……うーん、話しかけた、と言うより、心配した、かな? だって、何か君が、叫んでたもん」
……思わず右手の人差し指と中指を、自分の眉間に当ててしまう。
興奮しすぎ、だったかなぁ……。
「あー……まぁ、ゴーストなりたてだし、物に触れるうわーいって感じだったから……」
「……なるほど、ね」
納得してくださって何よりです。
っと、折角今の俺について少し教えてくれたんだから、何かお礼をしなくちゃな。
「そういや、何か手伝えることはないか?」
「えっ?」
「あぁいや、こんな森に来るってことは何かやりに来たんだろ? って思って」
そうでもなきゃ、こんな森の中よりは町の方が良いだろ。
「……うん、私は、木の実を採りに、来たの」
「よしよしならばお兄さんが手伝っちゃうぞっ!」
「……私だけで大丈夫、だよ」
引き下がらんぞ、絶対手伝う。
「いやいや、1人より2人のほうが効率上がるぜ?」
「……まず、どの木の実か分からない、でしょう?」
「あっはっは、そこはソフィアちゃんに教えてもらってだな」
「だから、大丈夫だって……」
こんな感じで互いも譲らぬ会話を続けていたが、結局ソフィアちゃんが折れて、俺が手伝うことになった。
ふっ、粘り強い者が勝利する世界なんだぜ!
「いやぁ、結構集まったなぁ」
「君よりも、私のほうが、いっぱい採った、よ?」
「ぬっ、見た目では確かにソフィアちゃんのほうが多いが、俺はスペースの有効活用でぎっしり詰まってるだけだぜ?」
木の実を採り終えたあと、俺達はソフィアちゃんの住んでいる村に向かいがてら、木の実を採った数の競争をしていた。
確かにソフィアちゃんが背中に背負った籠には、木の実が山になるほど入っているが、俺だってスペースの有効活用でぎっしり詰まってるんだよ!
「……絶対それ、中身がすっかすかだよね?」
「何を言うか、俺は悪知恵が働くからぎっしり詰めやすいんです!」
「言ってること、よくわかんないっ」
「ふっ、それが俺とお前の差だっ!」
ドヤ顔で言ってみたかっただけです、後悔はするわけがない。
しりとソフィアちゃんも膨れっ面で、
「むっ! 差なんてないもん!」
と言い返してきた。
……何だか、結構仲良くなってる気がする。
だって、話し方とかリアクションとか、会った頃からすっげぇ変わってるし。
短時間で変わりすぎだろ。
……ただ、それは良いことだろうな、と俺は思う。
まぁ、俺にとって、という話だが。
拐われ、殺され、ゴーストになり、そんな3連続の不幸は、さすがの俺も疲れるレベルだった。
アルバとかいう奴に対する怒りだけで動いていた、と言っても過言ではないかもしれない。
でも、ソフィアちゃんとの会話は、和やかで平和で、疲れが取れそうなくらいに心地良い。
……ゴーストにならなきゃ会えなかったのかな、と考えてみると、中々貴重だなぁ。
「? どうしたの?」
「あぁいや、ちょっとした考え事だよ」
いけないいけない、考えていて、思いっきり無視するとこだった。
考えると言えば……あれ、俺って他の人に見えないんだよね?
「えーっと……ソフィアちゃん、俺、どうすりゃいいんだろうね……?」
「えっ?」
「いや……ほら、俺って他の人に見えないんでしょ? 俺の持ってる木の実、どうすんの?」
ちなみに、籠はどうにかなる。
どうやら籠は魔力とやらで出来ているらしく、体の中に魔力として収納できるらしい。
ただ、木の実は天然物なので、収納できない。
「あっ……な、なんとかなる……よね?」
「なるのか……?」
なんとかならないと思います!
「あっ、そうだ!」
唐突に、ソフィアちゃんがポンッと手を叩いた。
「隠れながら私のあとを追えば、誰にも見られないですむよ!」
「……いや、それ難しいんじゃ……行けると思います! だから泣かないでお願いします!」
否定しようとしたら、ソフィアちゃんの瞳がうるっとし始めた為、慌てて賛同する。
……こりゃあ、早速頑張らなきゃいけないご様子だ……。