俺達/私達の関係   作:クロウズ

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9話目

 ある日の放課後。体育館裏に一組の男女がいた。男子の方は栢嶋京。今日も犬耳のような癖毛が目立っている。そして女子の方は櫻井明音。京をこの場に呼び出した彼女はいつもは昼の放送などで知られるように明るいのだが、この日は借りてきた猫のようにどこか大人しく、顔を赤らめてもじもじとしている。

 呼び出された京は彼女が口を開くのを無言で待ち続け、その沈黙に耐えられないのかぎゅっと目を閉じたかと思うと、頬を叩いて京に目を合わせる。そして、

 

 

「ねぇ、栢嶋くん。私と、付き合ってくれないかな」

 

 

 はっきりと、そう告げた。それが京は予想外だったのか、フリーズしているように黙ったままである。再び訪れた沈黙が辛い明音は、またもじもじとし始め目をあちこちに泳がせる。

 

 

「……………うぅ」

「俺で……」

「え?」

 

 

 少ししてから京が声を出したが、その表情はどこか疑念を持っているようなものだった。

 

 

「俺なんかでいいのか?チビだし、男っぽくないし」

「確かに小さいけど、頑張り屋さんだし気配り上手なのだって知ってるよ。たまに悪ノリするとこあるけど」

「うぐ………」

「私、一緒にいたいなって思った男の子、君が初めてなんだ」

「………。結構スケベなとこあるけど、それでもいいのか?」

「栢嶋くんがいいの。ううん、栢嶋くんじゃなきゃ駄目なの」

「そっか。それじゃ、こんな俺でよければ」

「うん、これからよろしくね」

 

 

 そう言って差し出された明音の手を、京は握る。が、

 

 

「カーット!!駄目駄目!」

 

 

 突然茂みの中から漫研の3年生、小野寺(おのでら)千鶴(ちづる)が現れては2人の間に割って入る。

 

 

「なんでそこで手を握るのさ!腕を引っ張ってキスだって台本に書いてたでしょ!?」

「出来るわけないでしょうがキスなんて!馬鹿なんですか!?」

「小野寺ー、そろそろ京返してくれないかー?」

 

 

 どうも、先程の2人のやり取りは千鶴の用意したであろう作品の1シーンを演じさせていただけらしい。その千鶴が出てきたことから終ったか中断されたかと判断した乙女も、体育館の陰から出てくる。

 

 

「義姉さんまでいたの!?」

「ところで、これって先輩の作品なんですか?」

「いや、文芸部の子の。挿絵頼まれたから、せっかくだし誰かにモデルやってもらおうとね」

「3年には有名なバカップルがいるんだからそっちに頼めばよかったんじゃ……」

「あの2人今日早々に帰ったからね」

 

 

 私たちも帰るよ、と乙女は京の手を引く。

 

 

「じゃあな櫻井、また明日」

「うん、ばいばい栢嶋くん」

 

 

 引っ張られながら手を振る京に、明音も手を振り返す。2人が見えなくなると手を振るのを止めて、深く溜め息を吐く。

 

 

「はぁ……緊張した………」

「やっぱり告白だと緊張しちゃうんだ?」

「それはそうですよ。演技とはいえ、告白したのなんて初めてですし。それより、挿絵のモデルだけならシーンの再現はいらないんじゃ」

「まあまあ細かいことは気にしないで。それに、気になる男子に告白出来たんだし満更でもないんじゃないの?」

「細かくないと思いますが……それに、栢嶋くんとは何も……」

「ほほう?」

 

 

 恥ずかしそうに目を逸らすと、千鶴は眼鏡をキラーンと光らせ制服のポケットから1枚の写真を取り出す。それを見た明音は、一瞬で真っ赤になる。その写真には櫻花祭の後夜祭で2人が仲睦まじく寄り添っている様が写っていた。

 

 

「そ、それは!」

「随分と仲良さそうだけど、ほんとに何もないのかねぇ?」

「あ、あわわわわ……」

「ま、これはあげるよ。そんじゃねー」

 

 

 写真を明音に渡すと荷物をまとめて千鶴も帰る。残った明音は、写真を見つめ恥ずかしそうにしながらも小さく笑い、ポケットにしまって嬉しそうに帰る。

 

 

 

 

 

   ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲

 

「まったく、小野寺には困ったものだよ」

「義姉さん……手痛いんだけど」

「あ、ごめん」

 

 

 無意識のうちに力を込めていたようで、慌てて手を離す。そして心配そうに見てくる乙女に、京は握られていた手をぷらぷらと振って大丈夫だと告げ、隣に並ぶ。

 

「義姉さん、もしかして怒ってる?」

「怒ってなんか、ないよ。……怒ってなんか」

「?」

 

 

 首を傾げて乙女を見上げると、いきなり抱き締められる。

 

 

「あー京は可愛いなー。嫉妬してた自分が馬鹿みたいだよ」

「義姉さん苦し……あとここ公道だから………!」

「あー、癒されるぅ~」

 

 

 バシバシと腕や肩を叩いて離せと訴えるも、乙女は幸せそうな表情でさらに抱き締めてその場でくるくると回る。するとそこへ

 

 

「オヤ、乙女サン?」

「ふぇあ!?」

「ふぎゅっ……!!」

 

 

 帰宅途中だったクラスメイトのクロエが声を掛けてきて、驚きのあまり腕に力を入れてしまい京から呻き声が発せられる。

 

 

「うわわ、京大丈夫!?」

「きゅう………」

「オー、いつも通り仲良しさんデスネー。ワタシも入れてくだサーイ!」

「え、ちょっ、待って……!」

 

 

 止めようとしたが時すでに遅く、ドーンと言いながら京を挟むように乙女に飛び込む。それによって京から潰されたカエルのような断末魔が上がる。クロエはそのまま京に手を回して抱き着き、乙女はどうしようかと困惑してる間に、京がぷるぷると震えだすも数秒ほどで意識を失った。

 

 

 

 

 

「ごめんって、京」

「ふん」

 

 

 意識を取り戻した京はあの後2人を小一時間説教し、今は乙女と2人で帰る途中。明らかに怒っていますと言わんばかりに素気ない態度で先を歩いている。乙女はその後ろから何度も謝っているが、京はまったく目を合わせようとしない。が、それも長く続かなかったのか、家に着く頃には並んで歩いていた。家に着いて京が自分の部屋に入ろうとし、

 

 

「京。私、京のこと好きだよ」

「はいはい、俺も好きだよー」

「そうじゃなくて」

 

 

 乙女の言葉を適当にあしらっていたら振り向かされ、彼女の唇が自分のそれに押し付けられる。

 

 

「……ふぇ?」

「………こういうこと」

 

 

 理解が追い付かず放心状態の京を置いて、乙女は頬を赤らめながら自分の部屋に入っていく。

 

 

「あー……やっちゃったやっちゃった………!!」

 

 

 部屋に入った乙女はベッドに飛び込みゴロゴロと転がりながら悶える。

 

 

「京と、キス……。~~~~っ!!」

 

 

 ピタッと止まり、先程のことを思い出してにへらと笑いまたゴロゴロと悶え始める。

 

 

 

 その夕食時、いつもよりぎこちない2人に両親は首を傾げていた。




 最新鋭軽巡のクロウズです。嘘です。
 今回ついに乙女義姉さんが動いたり、序盤での明音のやり取りが怪しかったりと、今後どうなることでしょうね。楽しみです。そろそろ終りが見えてきたかもしれません。幻かもしれませんがね。




 それではこの辺で。ほう、これはいいな、Спасибо.
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